NASCAR 第11戦 テキサス

NASCAR Cup Series
Würth 400 presented by LIQUI MOLY
Texas Motor Speedway 1.5miles×267Laps(80/85/102)=400.5miles
※NASCAR オーバータイムにより271周に延長
winner:Joey Logano(Team Penske/AAA Insurance Ford Mustang Dark Horse)


 NASCAR カップ シリーズ、予想外にコーションが少なくて修理代が少なく済んだ(?)タラデガに続いて訪れるのはテキサス。通算44回目、2017年に再舗装と改修が行われてからは13回目の開催です。この2017年の改修ではターン1・2のバンク角が20度に削られ、24度あるターン3・4側と異なる左右非対称のトラックになりました。そしてこれがテキサスに様々な問題を呼ぶきっかけとなってしまいました。


 エンジニアは角度の低いターン1側で最大のダウンフォースが出るようにタイヤの内圧などを設定、これが角度の高いターン3側では過負荷になってしまってパンクが多発した他、ターン3側はトラックの下を通る通路に起因した路面の凹凸があり、特に並走や集団走行でいきなりグリップを失ってクラッシュするドライバーも多発。凹凸でサスペンションが底付きして車が飛び跳ねちゃうんですね。
 2018年のレースが退屈だと批判を浴びたので2019年は外側のラインにPJ1トラクション コンパウンドを使用したところ、舗装の隙間に入ったPJ1が以後のレースではグリップ力を低下させる逆効果をもたらし、いくら綺麗に除去しようとしても除去しきれずに『PJ1跡地』は避けるべきラインになってしまいました。
 そんな不評も手伝ってか2020年を最後に年間2回開催の権利を失って1回のみとなり、2023年には距離も500マイルから400マイルに。それでも維持されていたプレイオフでのレース開催もとうとう昨年外れてしまい、なんか不憫なぐらいに扱いが下がっています。もう1回全部やり替えた方が良いんじゃないか、アトランタと同じドラフティング トラック型にした方がいいんじゃないか、そんなことまで言われています。
 チャレンジングで難易度が高いこと自体は悪いことでは無いはずですし、片っ端からドラフティングトラックは面白くないので個人的にはこの非対称の個性は活かせば良いと思うんですけどね。

・ちょっとしたデータ

 Gen7導入後のテキサスは3回だけの開催ですが、優勝者は順にタイラー レディック、ウイリアム バイロン、チェイス エリオット。レディックはまだリチャード チルドレス レーシングにいた時代ですので全てシボレーの選手による優勝です。遡ると2019年春のレース以来8戦連続で優勝者は異なっており、現役で複数回優勝しているのはカイル ブッシュの4勝とデニー ハムリンの3勝。あとは先ほど挙げた3人とカイル ラーソン、ジョーイ ロガーノ、オースティン ディロンがそれぞれ1勝しています。
 後方乱気流を受けてしまうと圧倒的に不利なので、予選で上位5位以内からスタートした人の勝率が約55%、最も勝率が高いスタート順位はなぜか3位で約18%。ただ昨年のチェイスは24位、一昨年のバイロンも18位スタートとデータ抗う結果になっています。
 Gen7の3戦だけのデータでは、平均順位が最も良いのはバイロンで3.7。次いで意外なことにブラッド ケゼロウスキーが5.7。さらに意外なことに、チェイス ブリスコーはあの苦戦するスチュワート-ハース レーシングに所属しながら平均7.0で全体3番手です。3戦全てでトップ10フィニッシュだったのはこの3人だけでした。
 先週はチームメイトのオースティン シンドリックに対して無線でブチ切れた上に車検に引っかかって失格になったロガーノ、ここでは平均11.3。キャリア全体でも通算29戦出場で13.8とそれほど悪い数字ではありません。一方でライアン ブレイニーはテキサスの過去2年がいずれも28位以下、1.5マイルのトラック全体でも過去8戦でトップ10フィニッシュが2回に対して32位以下に終わったレースが5回と、どうもこのところあまり1.5マイルで良い結果を出すことができていません。ちゃんと走り切ったら速いはずなんですけどね。

・レース前の話題

 レガシー モーター クラブがリック ウェアー レーシングからチャーターを1つ購入する契約を結んだものの、RWR側が契約締結後に難色を示しているとしてレガシー側が訴訟を起こした問題。レガシー側は、問題が解決するまでの間RWRが当該チャーターを他社に売却等ができないように仮差し止めの申請を出し暫定的な差し止め命令が出ていましたが、ノースカロライナ州高等裁判所はこの差し止め命令について却下する決定を出しました。この過程における裁判資料から、両者がどういう取引を行い、何で揉めているのか見えて来たようです。
 ざっくり翻訳で話を整理するとたぶんこういう話です。レガシーはRWRのチャーター番号36番(現在コディー ウェアーの51号車として使用しているもの)を4500万ドルで購入する契約で合意。ところが実際の契約書の書面では、売却対象のチャーター番号が36番ではなく27番(元々RWRが15号車として使用していたもので、今年はRFK レーシングの60号車として貸し出されているもの)になっていました。

 規則によりチャーターは7年につき1度しか貸し出すことができません。そのためRWRとRFKは予め契約を結んでおり、来年は貸し出せない27番チャーターを手元に戻し、入れ替わりで36番チャーターをRFKに貸し出すという契約を既に交わしていたようです。もしレガシーが27番チャーターを買ったらレガシーの手元にはお金は入りますが自分たちが参戦するためのチャーターが無くなり、分配金がほとんど貰えないオープン参加チームになるか、ガレージを畳むかになってしまいます。かといって36番のチャーターは既に来年貸し出すことが決まっていますから、レガシーに売ってしまったら二重契約で大問題になってしまいます。
 ここから先は調べた範囲だとやや分かりにくかったんですが、RWR側とするとレガシーにはその旨を伝えた上で『最初からチャーター36番についての話をしてたし、来年はこれをRFKに貸し出して2027年にレガシーに売却する意図で最初から伝えてるんやから、書類で数字を書き間違えてもうたけどうちの考えは"36番を2027年に売却"や』という主張。
 一方レガシー側は『そっちがオーナーの入れ知恵で契約書のチャーターの数字を書き換えたんか知らんけど、この契約書を見た後に「500万ドル追加で支払うからチャーター27番が欲しい」って新たな提案も言うたやん。契約書に27番て書いてあんねんからちゃんと耳を揃えてチャーター27番をこっちに売らんかい』というような主張で対立が起きているのではないかと思います。差し止めの仮処分を申請していたのはこの27番の方みたいですね。

 発端がうっかりミスだったのか戦略だったのかレガシー側の勘違いだったのか、もう何が何やら分からない状況ではありますし、差し止めが認められなかったからと言ってチャーター27番はRWRが自分たちで使用する意思があるのならどっちみちすぐには売り先が決まるとも思えません。レガシーが折れて現実的に3台体制拡張を1年遅らせる契約を結び直すのか、徹底的に争ってRWRを潰しに行くのか、トラック外での争いは続きそうです。

 争いと破壊と言えば、ドナルド トランプと取り巻きによる荒唐無稽な経済理論のせいで、アメリカは世界各国からの輸入品に対して高率の関税をかけて争いを生み、特に中国からの輸入品には現時点で基本的に145%という実質禁輸と言える税率が課せられて結局自分たちの経済を破壊しに行っています。この影響がNASCARのミニカーを販売しているライオネル レーシングに波及。同社の製品は中国で製造して輸入されており、3月末の時点で20%の追加関税に対応するため卸売業者と一般顧客の双方に対して追加費用の発生を通知していました。しかしその後にさらなる関税の追加があったため、とうとう4月11日以降の新規受注が停止されました。
 そのまま2週間ほどが経過したため、4月28日に同社は声明を発表。現在新規受注・出荷とも見合わせの状態が続いているものの、これは関税の影響を見極めるための一時的な措置であり、新製品の開発には順次取り掛かっていて状況が落ち着き次第受注と出荷の業務を再開するとしました。ただその時期については当面の間としています。ライオネルレーシングのミニカーを買いたいみなさん、トランプに即時の関税撤回を求めましょう(笑)

・Craftsman Truck Series SpeedyCash.com 250

 予選は雨で実施できず指数予選方式、埃だらけの路面でスタートしたクラフツマン トラック シリーズ。ステージ2に入るとコリー ハイムが圧倒的な速さを見せ、コーションが出ずに進んだ最終ステージでは残り21周の段階で2位と約16秒差、7位以下は全員周回遅れの独走。ところがここからアクシデント連発でまさかのオーバータイムどころかダブル オーバータイムにもつれ込む激戦となりました。
 この2回のオーバータイムではいずれもハイムがリスタート直後に劣勢に立たされていましたが、ダニエル ヘムリック、ベン ローズとの3ワイドの争いで一歩も引かなかったハイムが順位を死守、今季3勝目・通算14勝目を挙げました。22歳のハイム、トラックシリーズで14勝目を挙げた時点の年齢としては史上最年少だそうです。

 なお、前戦で優勝したタイラー アンクラム、指数予選によって1位スタートでしたが決勝も頑張って4位、2戦連続で結果を残しました。

・Xfinity Series Andy's Frozen Custard 300

 エクスフィニティーは前戦タラデガでコナー ジリッチが負傷、怪我の詳細は不明ですが今週のレースは欠場となり代役としてラーソンが起用されました。レースの方はテキサス難易度高すぎ問題、スタートからスピンやちょっとしたミスに起因する接触事故が相次ぎます。そんな中でリーダー争いはジャスティン オールガイアーとオースティン ヒルが繰り広げていましたが、最終ステージ中盤の156周目についにここにも魔の手が。
 ピット サイクルでラーソンに逆転されたオールガイアーが攻めていたところ周回遅れのクリス ライトに遭遇。ライトはフラフラしていてかなりの速度差があり、オールガイアーはまともにライトに追突してクラッシュしました。
 これでラーソンが勝ちましたとさ、とはならず、残り13周でまたもやコーションが出るとタイヤを換えたラーソンに対してステイ アウトしたドライバーが立ちはだかり、大会の冠スポンサー・アンディーズ フローズン カスタードを自身のスポンサーとするサム メイヤーが抜け出して優勝へ。と思ったら無情にも残り6周でまたコーションでオーバータイム。さらにオーバータイムでもまたクラッシュが発生してダブルオーバータイムとなりました。
 ここまで耐えてきたメイヤーでしたが、タイヤの新しいラーソンがすぐ後ろまで来てしまうとさすがにお手上げ、ジリッチの代役で出場したラーソンがエクスフィニティーではブリストルに続く今季2勝目、通算では17勝目を挙げました。トラックシリーズに出てないので"トリプル"は無理ですが土日の連勝は狙うことができます。


・カップシリーズ
 予選


 ブッシュ ライト ポール賞はカーソン ホースバーが獲得しました、自身初です。バイロン、シンドリック、ラーソン、マイケル マクダウルのトップ5。6位がトヨタ車最上位のタイ ギブス、7位は大会スポンサー・ビュルトが付いているジョッシュ ベリー。ハムリン、バッバ ウォーレス、A.J.アルメンディンガーが続きました。ジャスティン ヘイリーが15位に付けておりスパイアー モータースポーツは3人が全て予選15位以内、2人のチェイスはブリスコーが22位、エリオットは29位でした。
 なお練習走行でもホースバーは最速、連続周回の平均タイムでも15周までは上位の記録でした。ロング ランの平均で数字が比較的良さそうだったのはシンドリック、ギブスあたりで、ギブスは30周以上連続走行した5人のうちの1人、その中では最速でした。ハムリンも30周以上連続走行しており、決勝重視の車両を確認していた様子が伺えます。



・ステージ1

 ちょっと危ない瞬間もあったけどホースバーがリード、クリーン エアーがなければバイロンでも接近することができず1秒以上離れますが、20周目にノア グレッグソンが単独スピンして最初のコーションとなります。ハムリン以外はここでピットに入り、その中でも2輪交換も多く順位がぐちゃぐちゃになりました。ここで給油すればとりあえずステージ1を走り切れるので、ハムリン陣営はどうせコーションが出ると踏んで裏をかいたのか?と思いましたが翌周に1人でピットへ。実は無線で複数の人が同時に会話していて作戦コードがよく聞き取れず、その中で「カウボーイズ」という単語を聞いたので「カウボーイズ=ステイ アウトの意味だな」と解釈したら、実際は別の単語だったようで連携ミスでした。そもそもコードの単語が似通っており聞き間違えやすかった模様。コードはちょっと遊び心を入れてる印象がありますがほどほどに。

 26周目にリスタート、シンドリック、ベリー、クリス ブッシャーの2輪交換3人衆がそのまま順位を維持、当初4位はホースバーでしたが20周ほどするとラーソンにかわされます。この3人、前から見たら白ベースなのでちょっと見分けが付けにくいんですが、ラーソンでもこの3枚の壁を破ることができずそのままステージ1は終盤を迎えました。


 この間に中団から上がってきたのがレディック、14位からのリスタートでしたが他の人とはちょっと違うライン取りで乱気流の影響を最小限にして順位を上げて行き、ステージが残り11周となったあたりでラーソンをかわして4輪交換勢で最上位。さらにちょうど周回遅れが出てきて前の3人もクリーンエアーではなくなったことでチャンスが生まれました。フォード3人衆も順に切り崩してステージ残り6周、とうとうシンドリックをかわそうというところでしたが、


 なんとハムリンオーナー様がバーベキュー開始。この少し前から既に失速して青白い煙が出ていましたが、オイルが漏れて排気管の熱で発火しつつオイルに乗ってスピンした模様、文句なしにコーションです。残念ながらレディックは2位の状態でコーションが出ており、そのままコーションの状態でステージ1終了となったためシンドリックが勝者となりました。レディック、ベリー、ラーソン、ブッシャー、ホースバー、バイロン、ギブス、マクダウル、エリック ジョーンズのトップ10でした。この展開からステージ2以降も2輪交換は多用されそうです。

・ステージ2


 なぜかカンガルーに飲み物をあげているジェイミー マクマーリーはほっといて、ステージ2はベリー/シンドリックの1列目でリスタート。しかしターン4でブリスコーが底打ちしたような動きでズリズリと滑って行ってスピン、テキサスあるあるを体験しました。続く94周目のリスタートではベリーとラーソンの1列目、手ごわい相手でしたがベリーは力強い走りで退けることに成功しました。ここまでのレース、シンドリックもベリーも走りから自信が感じられます。調子に乗りすぎてぶっ壊さないようにしつつ遠慮せず攻めてほしいですね。


 なんてことを書いたのがいけなかったのか125周目、リーダーのベリーが唐突にクラッシュ。周回遅れを抜くために外のラインを使ったら魔の凹凸にやられたようです。ちょうどステージ2の中間地点なので他の人はもちろんコーション中にピットへ、ラーソンはクリーンエアーを最優先して2輪交換で済ませました。同じくホースバー、プリースなども2輪交換で順位を上げますが、唯一トッド ギリランドだけがピットに入りもしませんでした。132周目にリスタート、動くシケイン状態のトッギリを抜いてラーソンがリードしレディックが続きます。

 ラーソンとレディックはずっと0.5秒前後の差で追いかけっこを続け、ブッシャーも1秒以内の差で続いてステージはそのまま終盤へ。レディックはずっと後ろを走っているもののラーソンとは逆のラインを選んで影響を抑えているようで、抜くには決め手を欠くものの非常に良い走りを見せています。しかしステージ終了目前の161周目、3位のブッシャーが右後輪をパンクさせたようで、ふらついて壁にゴツン。最終的にタイヤの一部が剥がれてトラック上に転がったのでコーションとなり、ステージ2もまたコーション下で終了となりました。ラーソン、レディック、アレックス ボウマン、プリース、ウォーレス、ホースバー、バイロン、ブレイニー、ロガーノ、カイルのトップ10でした。


・ファイナル ステージ

 ステージ間コーションで全車ピットへ。バイロン、チェイス、シンドリックが2輪交換した模様、これにラーソン、レディックが続きました。ただバイロンはピットを出る時にコール カスターとまともに接触しスプリッターの右端が持ち上がっています。とりあえずバイロンは172周目のリスタートを綺麗に決めましたが、ターン2で4列目あたりを起点に多重事故が発生して6回目のコーション。3ワイドの外側にいたウォーレスがターン出口で壁に軽く当たり、すぐ後ろにいたロガーノに軽く押されてしまってスピン。先週のタラデガではお目にかかれなかったビッグワンです、実況のマイク ジョイも同じこと言ってる(笑)

 179周目、バイロンとチェイスがリスタートから並走しますが、残念ながらチェイスはターン4でラインを外れて失速、こうなると乱気流の中を内側だけ古いタイヤで走る罰ゲームになり、曲がらない車で苦戦を強いられます。シンドリックもバイロンに迫る場面があったものの4輪を換えているラーソンとの争いに破れてしまい、こうなると完全にラーソンのレースです。190周目に手負いのバイロンをかわしてリードを奪いました。
 周回を重ねる中でラーソンを追う2位となったのはブレイニー、記事冒頭で最近の1.5マイルで結果が出ていないと書きましたが、スピード レーティングという指標では1.5マイルで今季最速と位置付けられており統計数値は速さを示しています。さらに210周を超えるとレディックも追い上げてきてラーソンの1秒差に接近。アンダー グリーンでのピットが迫っており勝負を分けそうです。

 215周目にはそれなりのドライバーがアンダーカットを狙って既にピット作業を終えていましたが上位3人はまだ動かず。すると219周目にジェシー ラブが単独でスピンしてコーションが発生、結果として下手にアンダーカットを仕掛けなくて正解でした。今回が2度目のカップ戦出場だったラブ、今回はRCRではなくビアード モータースポーツからの参戦でしたがこのレース32位、無線で「NASCAR.comの見出しに出ちまうな。」と新人にしてはえらく余裕のコメント(笑)
 リードラップにいた全員がこのコーションでピットに入りラーソンは4輪交換で先頭、しかしマクダウルが2輪交換で2位となってブレイニーとの間に割って入りました。コーション前にピットに入らなかった人が得をしてカイルが4位、ロガーノが5位と急にトップ5圏内に入り、レディックはピット作業でちょっと手間取って6位から、残り周回数を考えると痛手ですね。

 226周目/残り42周でリスタート。ブレイニーはあまり上手く行かず順位を下げてしまい、ラーソン、マクダウル、カイル、ブレイニー、レディックのトップ5でとりあえず隊列が落ち着いてしまいます。カイルファンにとっては勝てはしなくてもこの辺を走ってくれればいくらか満足感が、と思ったらその矢先、229周目にカイルが魔のターン4の餌食になりました。


 単独スピンして真後ろから壁に接触、幸い他の車には辛うじて当たらずサスペンションも壊さなかったのでレースは続けられそうですが、上位は厳しそうです。それにしてもセブンイレブンのスキームって珍しいですねえ。あ、ハンマーで別のクルーのハンマーを誤って叩くという労災事故一歩手前のヒヤリハット案件が起きてる^^;

むっちゃ危ない!

 続く235周目のリスタートはブレイニーがまあまあの動きでマクダウルを抜いて2位となりますが、翌周に後方集団で多重事故、かっ飛ばしすぎたホースバーがプリースを壁に挟んで双方とも事故りました。お次のリスタートは245周目ですが、ブレイニーは外側の1列目ではなくあえてラーソンの真後ろ・2列目の内側を選択。しかしこの選択は思わぬ展開に発展しました。
 マクダウルが反則リスタートを疑いたくなる飛び出しでターン1の段階でラーソンの頭を抑えリーダーに、クリーンエアーを失ったラーソンはレディックに狙われ、そしてターン3で2人ともまとめて外へ行ってしまった隙にがら空きの内側からふたたびブレイニーが2位に浮上します。さっきのリスタートが有効ならマクダウルが勝つかもしれないので情報に耳を傾けていましたが、2周後に後方でまたもや多重事故。ターン2でケゼロウスキーが単独スピンしたことをきっかけに複数が巻き添えになりました、10回目のコーション。さっきのリスタートは特に問題なかったようでマクダウルがそのままリーダーです。

 コーション中にピットから入った情報では、ブレイニーがさっき1列目を選ばなかったのは車がむっちゃくちゃルースだから外ラインにある凹凸に乗りたくなかったから、とのこと。しかしそれでは上手く行かないことが分かったので今回は1列目外側を選択しました。残り15周、マクダウル/ブレイニーの1列目でリスタート。2人はまるまる1周並走してなおも続きそうでしたが、今度はレディックがフロントストレッチで後ろから引っかけられてハーフ スピンしていたのでまたまたまたコーション。タラデガで出なかったぶんこっちで補充してるんでしょうか、11回目のコーションでこれでテキサスは5大会連続でコーションが11回以上となりました。


 コーション発生直前の計測地点ではマクダウルが0.001秒差でブレイニーの前にいたのでリスタートはまた同じ並び、残り10周でリスタート。マクダウルはブレイニーとの争いを制してとうとうクリーンエアーを手にしますが、2輪交換の影響でターンでの動きがややタイト。そこにブレイニーをかわして2位となったロガーノが迫ります。
 どう見ても速いのはロガーノ、マクダウルは後ろを見ながらなんとか順位を守ろうとしますが、残り4周のターン2出口でついに捕まりました。ブロックしようと進路を急変更してロガーノを白線の外にまで追い出しますが、それでもロガーノは止められず無念の2位後退。さらにブレイニーにもかわされます。なんとかブレイニーに付いていこうとなおも攻めましたが、265周目のターン2出口でスピンしてそのままけっこう派手にクラッシュ、結末は残酷でした。

 なんかもう気分的にはこれでレースが終わってしまった感じですが、もちろんそんなこともなくオーバータイムへ、今度はロガーノが優勝を手にすべく先頭からリスタートします。相手はチームメイトのブレイニーですが、何かあったらブチ切れるでしょうか(笑)
 オーバータイム、ターン1でブレイニーはロガーノを攻められず外へ流れてしまい、その間にロス チャステインががら空きの内側から2位へ。ただ残り1周半の段階で単独の先頭に立ったドライバーをこのテキサスで逆転するのはほぼ不可能でした。わけの分からん乱戦になると気づいたら勝っている男・ジョーイ ロガーノ、開幕からの悪い流れを断ち切る今季初勝利、今回はちゃんとスポイラーのボルトも締まってました。


「この競技の変化は激しいね。ローラー コースターに乗っているような気分で本当に驚きだし、チームを誇りに思うよ。ついにAAAインシュアランスをビクトリー レーンに導くことができた。彼らは僕がペンスキーに移籍して以来、13、14年もの間のパートナーなんだ。彼らとはまだ勝ったことがなかったから、ここで勝利を収めることができて本当に嬉しいよ。」


 通算37勝目のロガーノ、テキサスのレースではAAAインシュアランスのスキームという印象ですが、RacingReferenceInfoの記録を見てもたしかにこれまで優勝がありませんでした(2014年のテキサスで買った際はシェル/ペンゾイル)。これは2025年テキサスAAA仕様のミニカーはきっとお宝に、おっと今は買えないんだった()予選27位と後方のスタートから、多くのドライバーが追い越しの苦労する中でどうやって前に来たのか聞かれると

「ゆっくり、着実に、少しずつ。ピットの場所は本当に難しかったんだ。ピット クルーはうまく対応してくれて、あちこちで少しずつ挽回できた。車は速かった。それは昨日も分かっていたんだ。予選でうまくいかなかっただけだ。とにかく頑張った。あちこちで少しずつ挽回して、最終的にここで勝利を掴むことができた。勝てて本当に嬉しい。本当に嬉しいよ。」

 2位は31位スタートから飛んできてリスタートでちょっと期待したチャステイン、3位は「ドライバーが愚かな判断をして自分の仕事をできなかっただけさ。」と終盤のリスタートの攻防を振り返ったブレイニー。4位ラーソン、5位はジョーンズ、6位には予選で34位だったリッキー ステンハウス ジュニアでした。ディロン、ジョン ハンター ネメチェック、クリストファー ベル、ダニエル スアレスのトップ10で、この中で予選1桁順位だったのはラーソンだけです、統計役に立たず(笑)。バイロンは13位、レディックは21位、ホースバーは1周遅れの24位、マクダウルはそれ以前にリタイアした人が多かったので26位となりました。


 終盤はマクダウルが勝つことだけを願って見ていましたが、ロガーノが来た瞬間に正直終わったと思いました。ブレイニーはテレビの放送でルースである、外ラインを嫌っている、とはっきり言われてましたしその前から上位にいましたので、マクダウル陣営としてもどう対処すれば良いか分かっていたし、ブレイニーも自分の車にそこまで自信を持てていないような走りに見えました。ブレイニーが相手ならマクダウルは半分以上の確率で勝っていたと思います。
 これに対してロガーノはずっと中団にいたのでクリーンエアーでどんな車になっているのか状況が相手にも分からなかったでしょうし、何をしてくるか分からない怖さもあります。そんな中でマクダウルは内側のタイヤが踏ん張らずに外へ外へ流れてしまい、ダーティー エアーを浴びせてもなお近寄って来られるともう精神的に完全に不利な立場です。最後はもう力尽きたようにダウンフォースが抜けた瞬間回ってしまいましたが、画面の前の私は


こんな感じでした。でもスパイアーはこのレベルで戦える体制になってきたというのはホースバーとともに見えましたので、下を向かずに若手もおじさんも戦ってほしいですね。ステージ1中盤、ルースになって思いっきり巻き込みながらカウンターステア一発で立て直したホースバーに私は若い頃のカイルを見ましたよ、こういう反応できるドライバーは絶対伸びます。
 またこういう展開は抜きにくいテキサスだからこそだったと思いますし、悪い点も言い出したらキリがないんでしょうけど、ドライバーもエンジニアも戦略も1つの隙も見せられない緊迫した高速400マイルというのは、再舗装前のアトランタが路面バキバキすぎてそれがもはや名物だったように、テキサスもこれが売り物だと言って良いと私は改めて思いましたね。『何が難しくてドライバーやエンジニアは何がすごいのか』をもうちょっと伝えることができたらそれだけでも見方はだいぶ変わると思うんですよねえ。

 次戦はオールスター前最後のレース、母の日のカンザスです。

コメント

日日不穏日記 さんの投稿…
結果的には、「守りたい、このくどい笑顔」でしたね。10年前にケンゼスに復讐されるきっかけになったカンザスと違い、間違いなくマクダゥエルを抜ける状態だったので、多少のブロックはあったものの、リードチェンジ。正直、セブンイレブンのスピンでどうでも良くなり、徒歩で目の鼻の先にあるセブンにはもう二度と行かない、と暴言を書いたわけですが、フリーパスがカスターで、ぼっさんとパッと見、似ていることを再確認したりしました。貰い事故を間一髪避けたステンハウスに花丸贈呈。スパイアーは、近いうちに勝つんじゃないでしょうか。チームの戦力も上がっているし、ホースバーだけでなく、他の2人にもチャンスがありそう。バイロンもしっかり13位までリカバリー。チェイス、ボウマンが置いて行かれる感じがして、ホースバーにシートを取られるんじゃ、と心配になってきました。
SCfromLA さんの投稿…
>日日不穏日記さん

 ホースバーは間違いなくヘンドリックが次に据えてるドライバーなのでボウマンは危機感が強いと思いますね。スポンサー利益が大きいチェイスはその点チームとしてもそうそう決断できないのがこの競技の厳しいところです。
 カイルのセブンイレブンは非常に目を引いたのでまた支援があるのか気になるところですが、調べたら公式発表前にペイントスキームが情報漏れしてしまってプロモーション計画が台無しになった可能性があるようなので、なんというかRCRの組織体制のもろさを垣間見た気がしました。懲りずにまたぜひスポンサーやってもらいたいです。
アールグレイ さんの投稿…

RWRのチャーターもグチャグチャで凄いですw
27番って確か元々プレミアムモータースポーツの物ですし、36番もRWRでティフトが乗ってた時のイメージです。
色々なチームを吸収しているとはいえ、チームがちゃんとチャーターを管理してるのか疑われます。
かつては51番もチーム名をペティーウェアとしていた程の関係でしたが、これはRPMの時代の話だから、ペティ側もGMSと組むようになってからの体制変更で色々わからない部分もあるんでしょうね。

ラーソンは急な代役でも勝ってしまう所が流石です。
88番のオーナーズチャンピオンシップ争いに貢献してくれましたし、H1100も今月で忙しい中、よく代役を引き受けたと思います。

ホースバーのポール&ファステストラップ、マクドウェルの好走とスパイアーはもう勝っても大番狂わせとは言われないぐらいのところまで到達した感じがありますね。
後はクルーチーフを変更したヘイリーの7番がどうなるかにも注目したいです。

ロガーノは不名誉な記録を優勝でストップ出来た事は良かったです。
AAAもチーム・ペンスキーにはホーニッシュjrの77番の頃から15年以上スポンサーに就いている中で、このスキームで初めて勝った事は驚きでした。
今年も内容を求められるシーズンなのは勿論ですが、最終戦の開催地がホームステッドの時も1度チャンピオンになってるとはいえ、当時と車両も違う中でやっていくのを考えれば、来年以降の方がロガーノは大変になってくる気がします。
SCfromLA さんの投稿…
>アールグレイさん

 RWRのチャーターの話を理解するのにだいぶ時間がかかりました(笑)でもこういう形で売買価格だとか交渉の内幕だとかが裁判資料を通じて外に出てくるんだからあんまり変なことはできないなあと思わされましたね。日本のレース界だとたいがい有耶無耶にされて報道もされないので、その辺はちゃんと線引きしてビジネスとして問題があるものはある、争うものは争う、伝えるものは伝える、という文化が欲しいなとちょっとうらやましくもあります。
 ラーソンは元々多かったレースにさらに予定が増えて本当に大丈夫かなと思いますが、とりあえず1100を無事好成績で戦えることを期待します。同じ日に1100マイルって私はゲームでも無理です、そのぐらいiRacingで走ってる人は知ってますけど^^;