フォーミュラ E 第7戦 モナコ

ABB FIA Formula E World Championship
2025 Monaco E-Prix
Monaco Street Circuit 3.337km×29Laps=96.773km
※規定により30周に延長
Race Energy:38.5kWh
Reference Lap Time for FCY/SC=4:15
winner:Sébastien Buemi(Envision Racing/Jaguar I-Type 7)

 フォーミュラEモナコ大会、史上初の2連戦となった2戦目です。1戦目は1周目に追突されたミュラーがタイヤ交換して大きく後方に下がり、追い上げようとしたせいでエナジー消費が早くてたまたまFCY中に1人だけピットブーストできて超絶得した!地獄から天国!と思ったら不具合で充電されてなくて残量不足に陥り、しゃあないからチームメイトのデニス先輩のために後続を抑え込むというなかなかの珍事がありました。ローランドが既に今季3勝目を挙げてチャンピオン街道、もしくはシーズン最後の大逆転負けフラグに向けて快走中です。

・練習走行

 FP3ではエバンスが全体の最速を記録、ただタイムは前日のデュエルスと比べると少し落ちる範囲にとどまっており、もうさすがにタイムの伸びしろは無さそうな感じです。前日のFP1、FP2で最速だったティクタムは350kWでのアタック中にプール横シケインで緊急ブレーキが作動したらしくそのまま止まってしまい、セッションの最後まで走れませんでした。

・グループ予選

 ・・・FP3は晴れていたのに、一転して大雨で路面が水浸し。A組の走り出しはあちこちに水たまりがあって1周2分もかかる悪条件です。ダコスタに対してはエンジニアから「トンネルの中でタイヤをできるだけ温めてくれ。」と唯一雨の影響を受けにくい場所で熱を入れるように指示されていますね、危ないけど。とりあえず全員無事に12分間必死で走り続け、結果最速だったのはデフリース。2位にダコスタ、3位ローランド、4位ティクタムとなりました。ダコスタ以外は昨日もデュエルスに出た人たちです。エバンスは最後まで車が滑りまくって9位で脱落、FP3での速さは全く役に立たず。

 そんな滑りまくる人たちの様子を映像で見ていたB組のみなさん、とりあえず雨は止んでいるようなのでさっきよりはいくらか速く走れはするものの、ホーム ストレートは緩く曲がっているため相変わらず全開だとまともに真っ直ぐ走りません。そんな中でもなんとかセッションは終盤まで進みましたが、さあこれからという残り2分46秒、サム バードがターン1を全く曲がれず真っ直ぐ突っ込んでしまいレッド フラッグとなります。ブレーキを踏んだら水に乗って左の壁に当たって、弾き飛ばされてもう減速もできずに正面の壁にまともに突っ込みました、ちゃんと手を離していたので手首は怪我してないと思いますが車は直るでしょうか。

 設備を修復してセッションは残り2分46秒から再開されますが、何せ1周2分近くかかりますから急がないと計測に間に合いません。タイヤも冷えてしまったのでピット出口やトンネル内でわざと後輪を空転させるという普通なら絶対あり得ない行動で無理やりタイヤを叩き起こし、なんとか全員が計測に入りました。さぞかしグダグダだろうと思ったらさすがプロの選手はこの状況でも自己記録を更新し、最速は今季まだデュエルス進出が無かったセバスチャン ブエミdした。ジャン エリック ベルニュ、ストフェル バンドーン、マキシミリアン グンターが続きます。ブエミは最速だったんですが、先にピットを出た人が遅く走って時間切れを起こそうとしたと無線でキレており、よくこんなタイヤとメンタルの状態で最速を出せたなと思いました。

・デュエルス

 アウト ラップは後輪駆動なのにアタックになったら4輪駆動、滑りにくくはなるけどさっきとは進入速度が全然違ってしまうし、滑らないからって踏んだらどこで急に水に乗っかる危険があるのかも分からない。その場の適応力がものすごく試されることが素人でも想像できるデュエルス。セッション中にまた雨が降ってきたせいか、A組の準決勝ではデフリースとローランドが両方ともターン1を曲がれず退避路へ逃げ、B組のベルニュとグンターはいずれもヌーベルシケインを止まれず白線を超えて、誰もまともに1周出来ないという珍事が起きました。
 ターン1の退避路は白線が引かれていないので一応記録としては有効、シケインは白線を超えているから無効になってしまいます。規定では記録が出ていない人には勝ち上がる資格がないためB組の選手はいずれも決勝に出られず、結果としてA組準決勝で一応速かったローランドが決勝の対戦相手無しによる不戦勝でジュリアスベアポールを獲得しました。以前の規定では対戦相手がいなくても一応走らされていましたが、間抜けなので走る必要が無い規定になっています。

 準々決勝でも複数の選手が白線を超えてしまったので記録がなく、予選順位がどうなるのか正式発表を見るまで分からん状態でしたが、結果としてローランド、デフリース、グンター、ベルニュ、バンドーン、ダコスタ、ティクタム、ブエミの順となりました。
 ちなみにモナコでは2年前のシーズン9のデュエルス決勝でも珍事があり、この時はジェイク ヒューズがヌーベルシケイン不通過で記録無し、対戦相手のサッシャ フェネストラズは最高出力350kWを瞬間的に超えてしまったのでデュエルス決勝は規定違反による記録無効となり、『1周したけど記録無し vs 規定違反で無効』という謎の対決によってヒューズがポールを獲得していました。

・決勝

 雨は止んだようですがもちろん路面は濡れたまま。バードは車を修理してピットからスタートすることができました、この状況だと変に18位とかからスタートするよりピットのほうが安全で良さそう(笑)こんなコース状況でもグリッド2個移動の通常スタート、おそらく各ドライバーはピットを出てグリッドに付くまでの1周しかコースの状況を確認できていないと思います、なんかキャシディーはその時にヘアピンでスピンしたらしいけど。そんなわけで何が起きるか分からんのでスタートからターン3あたりまで非常に上品なスタートでした。

 まずは1分57秒台とドライから見れば20秒近く遅いペースでの走行、こうなるとあんまり節約を考える必要がなく、3周目から早くもアタックを使うドライバーが現れました。4WDパワーの威力は絶大、後輪駆動とのタイム差という点では乾いてから使うよりも今使った方が影響があるので効果的かもしれませんが、まだ水の多いラインを通って抜くのはリスクも高いので、やっぱりできるだけ350kWを地面に伝えられるようになってから使うべきか悩みそうです。
 半数以上のドライバーは早い段階で1回目のアタックを使ってしまいますが、ローランドは人に流されずに待ちの姿勢、ベルニュにリードを明け渡しましたが、それ以外には抜かれず2位でとどまりなかなか良い感じの展開となります。
 
 5周目、ターン1で14位のデイビッド ベックマンがヒューズに軽く当てられて退避路へ、最下位に後退。ベックマンと言えば前回のマイアミでも接触されてタイヤをパンクし、その際にエンジニアから「どのコーナー?(コーナー=角、4つのタイヤのうちどれがパンクしてるのかという意図)」と聞かれて「ターン10で押し出されたよ!」と「どのコーナー(曲線)での出来事なのか」を聞かれたものと勘違いして会話がかみ合わない場面があったのを紹介しましたが、今回は

エンジニア「よし、追い上げるぞ。」
ベックマン「パンクした(-_-)」
エンジニア「了解。どのコーナー、どのタイヤがパンクした?」
ベックマン「ターン、えーっとリア・・・ああもう、左リア」

 同じ状況で冗談言ってじゃれてたとは思えないので、エンジニアはまた同じ聞き方をしそうになって気づいて訂正するも、運転手さんはもう押されて出遅れたし滑りまくるしで頭がいっぱいなので「コーナー」の部分に反応しかけて、やっぱり途中で気付いた感じです。基本的にはエンジニアさんがドライバーに対して気を使って聞いてあげないといけないですかね。
 
 レースに戻りましょう、7周目に最初のエナジー残量が公開されるとみんなまだ20%ぐらいしか使っていないので配分とするとおそらくやや余り気味、このぐらいペースが上がらないといつものような極端なリフト&コーストは必要なさそうです。7周目にルーカス ディ グラッシがクラッシュしてFCYが出ましたが、これはモナコの魔術師が素早く片付けてほどなく解除となりました。
 12周目、ベルニュ、ローランド、デフリースのトップ3でしばらくレースは静かな展開、ローランドはできればデフリースを1.5秒ほど引き離してタダでアタックを使える状態にしたいのかなという印象で、デフリースもそれを理解して1.2秒前後の差で踏ん張ってるように見えます。節約要素が薄いと車・ドライバーの実力通りに差が開きやすいので、4位のグンターは4秒以上離れてしまいました。
 しかし13周目、ターン4のエイペックスに近い場所に18位走行中だったミュラーが車を止めてしまい、これはFCYではなく即座にSCとなりました。ミュラーはアタックモード中で攻めていたらターン1を止まり切れずにむしろ損してしまい、挽回しようと攻めたらターン3でミスって壁にぶつけ自力でピットへ戻れる状態ではなくなりました。前日のある意味ヒーローだったミュラー、今日は誰のせいでもない自分のミスの連鎖でした。

 すぐ近くに車を引き出せる場所があったので作業はすぐ完了、15周目にリスタート。なんかこれならFCYで行けた気がしなくもないですが、再開後はどの順位も争いがハゲしくなっています。なんかコーションがコーションを呼びそう^^;
 18周目、さすがにここでローランドも1回目のアタックへ、デフリースにだけ抜かれて3位となり、すぐに抜き返そうとヌーベルシケインで外から狙いましたがデフリースがギリギリまで寄せてきたのでローランドの右側のタイヤは縁石に乗ってしまいました。きちんと減速できずシケインを無視、これはマズイのでデフリースに対して無線で怒りながら順位を返し、翌周のホームストレートで改めて抜き返します。笑いながら怒る人みたい。

 ただローランドとすると、このアタック中にベルニュまで抜かないと1回目のサイクルで逆転されたことになってしまいます。それは困るのでシケインでまたもや外から勝負しますが、今度は並んだままシケインに入って道幅が足りずに少しはみ出してしまいます。これもまた順位を返さないといけないのか、押し出されたからセーフなのか、とか思っていたら、その隙にさっき2回目のアタックに入ったデフリースが2人まとめて抜きにかかってきました。デフリースはちょっとタバコ コーナーに突っ込みすぎていたのでローランドが抜き返しますが、こうなると間に車が挟まったのでベルニュに順位を返すとか言ってる場合ではないややこしいことになってしまいました。

 こんな感じで、限られたアタックの時間でわちゃわちゃやって時間を失うというのはけっこうな痛手で、21周目にはこういう争いから離れて走っていたブエミが全員ぶち抜いて気づけばリーダーに。続く22周目にローランドは2回目のアタックに入ってブエミを追いかけたいところでしたが、チームから順位を返すように言われたのでアタックモード中にベルニュに譲るため減速、なんだか矛盾した行動を取らされます。


 ローランドは改めてアタックでベルニュを抜いてブエミを追い上げますが、なんやかんや無駄があったので差が4秒ほどまで拡大、残ったアタックの時間では詰めきれず、3秒ほどの差が残ったままアタックが終わってしまいました。レースは今日も1周追加されて合計30周となりますが、ローランドはブエミを追うどころか離されてしまって4秒以上に差が開いてしまいます、これはもう追いつかない流れになりました。
 最終的にブエミは4.169秒というフォーミュラEとしてはけっこうな大差を付けてそのまま優勝、2019年7月に開催されたシーズン5・第13戦ニューヨーク以来約6年ぶりの通算14勝目となりました。通算14勝はディグラッシ、エバンスの13勝を上回って歴代最多勝利。またモナコでは短いレイアウト時代のシーズン1とシーズン3で優勝しており、これでモナコ通算3勝目、新旧両方のレイアウトで勝った初のドライバーです。なおこれで33回目の表彰台でもありますが、これはディグラッシ、ベルニュに続く歴代3位。ディグラッシは通算41回も表彰台に登っています。


 2位はローランド、今回はちょっと作戦的に色々狙いすぎて逆に自分から混戦を作ってしまったのかなあという印象も受けましたが、この2連戦で優勝+2位+ポールで合計46点も稼いでほぼ満点の戦いでした、選手権2位・ダコスタとの差はさらに広がって46点差( ゚Д゚)そして3位はなんと14位スタートだったキャシディー、濡れた路面で抜群の速さを見せて気づいたら表彰台でした。ちなみにキャシディーの表彰台は通算21回目。
 ダコスタ、デフリース、ベルニュ、ベアライン、デニス、グンター、バンドーンのトップ10でした。今回は濡れた路面で白線を超えてしまう人が多かったためか、バーナード、バード、ティクタム、ゼイン マローニーの4人に対してトラック リミット違反3回以上ということでレース結果に5秒が加算されましたが、いずれも入賞圏外だったので大した影響はありませんでした。

 エンビジョン レーシングはシーズン9ではキャシディーがワークスのジャガー以上の速さを見せてチーム選手権でチャンピオンを獲ったのに、キャシディーが抜けた昨シーズンは全く結果が出ずに未勝利でチーム選手権6位に後退。今回2年ぶりに優勝しましたがレース前の段階ではチーム選手権最下位でした。25点獲ってなんとか9位に浮上しましたが何せ現在のチーム選手権3位はマヒンドラ レーシングです。エンビジョンはまだ39点だけどマヒンドラは既に91点、むしろこれにびっくり。
 Gen3導入時のI-タイプ 6は効率性に優れている上に、チームもドライバーもその戦い方を手にするのが非常に早かったですが、今シーズンのI-タイプ 7に関しては進歩の度合いが少なかったのかジャガーそのものが苦労していて、カスタマーのエンビジョンが苦戦するのはある意味当然。今回のブエミも悪条件でドライバー勝負になってくれた影響が大きかったと思います、キャシディーの3位もそうですね。チェッカーを受けた時点でブエミは1%以上、ローランドは2%以上、キャシディーに至っては6%以上エナジーが余っていたので使い切れないレースでした。
 ペース的には最後の8周ぐらいは1分39~40秒台で走っていて開始時よりは15秒近く速くなりましたが、それでも前日の晴れたレースよりは8秒以上遅いペースでした。路面が思ったほど乾かなかったというか、モナコは毎年のようにつぎはぎで再舗装も多いので路面がなんか油っぽいような、全然食いつかない部分もあったのかなあという印象です。トンネル入り口の手前とか局所的に水が溜まってて最後まで滑ってる場所もありましたし、何より直線で踏めないままでしたね。
 とりあえずは結果として『モナコで2レースってどうよ問題』は充電の有無に加えて天候で勝手にレース設定を変えてもらえたので、180度別のレースになって別個のものとして盛り上がったので良かったかなあという感じ。2戦とも全く同じペロトンスタイルならさすがに困りそうですが、ブーストの有無はけっこう効くのであとはちゃんと不備の無い運営と、やっぱり映像上での分かりやすさ、見せ方でしょうね。稲妻マークが白か緑か、みたいなのは一瞬で見て状況を把握しにくいので、もうちょっと考える余地ありだと思います。自分で言うのもなんですけど、私ですら画面を見てうまく把握できないものは大半の人にも理解できないと思います(笑)

 さあ、次戦は5月17日・18日にふたたびフォーミュラEが東京にやってきますよ。

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