F1 第8戦 モナコ

Formula 1 TAG HEUER Grand Prix de Monaco 2025
Circuit de Monaco 3.337km×78Laps=260.286km
winner:Lando Norris(McLaren Formula 1 Team/McLaren MCL39-Mercedes)


 今年もやってきました、世界モータースポーツ好き寝不足ウイークエンド。F1のモナコからNTT インディーカー シリーズのインディアナポリス 500、そしてNASCAR カップ シリーズのコカ-コーラ 600へとぶっ続けになってしまう耐久レースです。でもモナコは来年日程再編の影響で6月に移動される見込みで、インディー500にはF1の別の開催地のレースが重なる予定です。あ、ちなみに私はF1は眠くなったら諦めて寝るし、インディー500は見ないし、コカコーラ600はYouTube公式待ちなので普段と何も変わりません(笑)
 ちょうど最近F1のYouTube公式動画に1992年モナコのレース終盤、ナイジェル マンセルとアイルトン セナによる歴史的な争いが公開されています。日本のファンにとってはここはフジテレビ・三宅 正治の名実況「ここはモナコ・モンテカルロ、絶対に抜けない!」が頭に浮かびますが、まさに抜けないことがモナコの課題。昨年は1周目に発生したレッド フラッグによってみんなレース中断中にタイヤを交換してしまい、事実上ノーピットでレースが終わってしまう事態となりました。

 というわけで運営さんもさすがにまた同じことが起きたら嫌なので特別規則を設定、このレースに限って決勝では2種類のタイヤ使用義務とともに、3セットのタイヤ使用義務も付けられました。中断中にタイヤを換えたら話は別ですが、基本的には2ピットが必要になる規則にすることで渋滞パレードを阻止しようという発想です。また、持ち込まれるタイヤも先週のイモラに続いてC4~C6という昨年より柔らかい組み合わせです。
 この義務がどういう効果をもたらすのかはやってみないと分からない部分があります。モナコが低速大渋滞になるのはよっぽど失敗しない限り追い抜きが不可能なので、とにかくタイヤを労わって走り続けようとし、それが車両間隔が広がらない状態を生み、間隔が無いとピットに入ったら集団に埋まるので誰も自分が先には入りたくなくなる、という連鎖が原因です。好意的に解釈すれば、2回もピットに入るのならギャンギャン飛ばしたって構わないので渋滞がそもそも発生しなくなる効果が期待できますが、その決断ができるのは1位の人だけ、2位以下はそう思っても前が遅ければ合わせるだけなので全ての運命は1位の人の考え方次第です。

 当然レッドフラッグかSC/VSCが出ている時にタイヤを換えた方が得なので、何かが起きるまではタイヤを換えたくないと思うなら低速渋滞は変わらないことになります。いざSC/VSCが出たら車両が殺到する可能性が高く、車両間隔が狭いままなら同一チームの後ろにいる人は待たされるか危険回避でステイアウトさせられるか。さらにSCなら退出まで少し時間があるので、交換0回のドライバーはSC中に2周連続でタイヤを換える間抜けな光景になることも考えられます。
 後方スタートのドライバーならスタートして1周目にいきなりタイヤを換えて隊列にすぐ追いつく、という逆さまの組み立ても考えられ、後ろが動いたならこっちも、と後ろから波及して最初のピット サイクルがスタート直後に訪れ、以降が1ストップレースでいつも通りというオチもあり得ます。さあ運営の思う通りになりますかね、まあだいたいこういう小手先の仕組みって不発になると思ってますけど。次元ノックアウト方式予選とかやる前から分かってた問題がやったら予想通りに起きて、それで騒いですぐやめましたからねえ。

・練習走行

 昨年のモナコ勝者・ルクレールがFP1からFP3まで全部最速!先週のイモラではあんまり良いところがなかったですが、母国に戻って来て蘇りました。FP2でピアストリがターン1を止まれず壁に刺さり、FP3ではハミルトンもマスネでガードレールにガシャン。一流選手でも車を壊しながら予選へと向かいました。

・予選

 Q1では当落線上の15位にいたアントネッリが最後にヌーベル シケインで内側のガードレールに左前輪を当ててしまいクラッシュ、記録上はQ2進出ですがもうこれ以上走れません。さらにQ2開始5分、ラッセルの車が動力を失ってなんとトンネル内で停止してしまいレッドフラッグとなりました。メルセデスは予選14位・15位で確定。

 Q3、少し早めに出て行ったマクラーレンの2人が先に記録を出し、まずピアストリが1分10秒140を出したものの、ノリスがこれを0.015秒上回って暫定1位を死守。そしてこの後タイヤを冷やしてさらにもう一度アタックに向かいます、これはタイヤがもつモナコ&マクラーレンならでは。
 その間に一発アタックの人も記録を出し始め、ルクレールが1分10秒063とノリスを上回って暫定1位。しかしノリスは2回目のアタックでとうとう70秒の壁を超えて1分9秒954を出しました。ピアストリも記録を更新したものの順位は変わらず、ノリスがピレリポールを獲得しました。開幕戦オーストラリア以来です。
O.Piastri:速いですね!
L.Norris:こんばんは。


 ノリス、ルクレール、ピアストリ、ハミルトン、フェルスタッペンのトップ5でしたが、ハミルトンはアタック妨害により3グリッド降格。これで予選6位だったハジャーが繰り上がって5位スタート、アロンソが6位、ハミルトンは7位スタートとなりました。エステバン オコン、リアム ローソン、アルボンのトップ10で、角田はQ2で脱落して予選12位。無線で「ホンマに不公平やろ!最初からこうなるんは分かっとったわ。」とえらく怒っていて何か予選の進め方等に問題があったようなんですが、予選後のインタビューでは「ここで言うことではない。」とその内容を明らかにしませんでした。

・決勝

 タイヤ選択が多少は分かれて上位3人がミディアムですが4位のフェルスタッペンはハード。全体はほぼ半々で12位の角田はソフトを選択していつになくバラバラのタイヤでスタートです。ノリスはスタートがあまりよろしくなくルクレールに迫られ、ターン1ではおもいっきり前輪をロックさせてしまいましたがなんとか1位を守りました、ピアストリもスタート大失敗で抜かれる寸前でした。
 昨年大事故があったターン1から先も無事通過したので一安心しましたが、ターン8・ポルティエでガブリエル ボルトレートがバリアに突っ込んでしまいました。アントネッリが勢いよく内側に突っ込んできて並走になり、切り込めずに壁に刺さったようです。アントネッリにペナルティーはありませんでした。
 ドライバーズ スタンダードなんちゃらだとエイペックスの位置関係でどっちが良いの悪いのという話になりますが、この巨大な車がポルティエで並んでは走れないのは明らかなのに後ろから飛び込んで相手が生き残る場所を残さず『基準でこう書いてるから無罰です』はちょっと世界最高峰のレースとしてどうなんだと私は思ってしまいますね。1つのケースで全てを説明すれば一貫性がある、というのは競技の特性を無視しすぎてる気がします。
うおそんなとこで飛び込んでkブフォオ・・・

 幸いボルトレートは自力で後退して壁から抜け出したので波乱なし、かと思ったら少し時間が経ってからやはり破片処理が必要になったかVSCのお知らせ。これを待っていたように角田など4人が1周目からタイヤを換えてしまいました。さあ混乱レースのはじまりだ。意外とVSCが長くて4周目の途中までかかりようやく再開、しかし今度は8周目にガスリーがヌーベルシケインで角田に追突。ガスリー自身は左前輪が千切れかけた状態でなんとかピットまで戻りましたが破片が現場に落ちました。
 さあこれはまたVSCのお出ましかと思ったら、レース コントロールはピット入り口を閉鎖と発表。その後にモナコの魔術師が片付けて11周目に大きな破片は消え去りVSCすら出ませんでした。ピット入り口を閉鎖した理由が、ガスリーの車がきちんとアルピーヌのピット ボックス内に収まっていなくてピットの通過が危ないからなのか、VSCは出さないしズルもさせないぞという意思表示なのかよく分かりませんが、なんか特別規則を作ったせいでレースコントロールが腫れ物に触るように事案に対処して変な感じになってるように見えなくもないですね。まだあと65周こんな感じでレースするんですよね・・・

 運営もドライバーも腹のさぐりあいという感じですがコース上では9位のローソンがやたらペースを落として後続の蓋。これはチームメイト・ハジャーの援護射撃で、14周目にハジャーが1回目のピット作業でソフトへ交換、ローソンが作ってくれた空間に入って前が開けた8位で戻りました。さらにローソンは蓋を継続し、ハジャーはなんと19周目にもう2回目のタイヤ交換、上位10人で最初に義務を完了させました。

 レーシング ブルズのこの戦略のおかげで上位に1箇所大きな空間が発生し、これで上位勢も1回目のタイヤ交換がしやすくなりました。18周目にハミルトンが5位で入って5位のまま合流、翌周にはリーダーのノリス、20周目にピアストリ、そして22周目にルクレールが入りました。ハードでスタートしたフェルスタッペンだけはまだ動かずにかっ飛ばしますが、周回遅れもいるのでそこまで速くは走り続けられず、あんまり引っ張ってハミルトンにアンダーカットされたら意味が無いので28周目にミディアムへ交換しました。

 30周目、概ね1回目のピットサイクルを終えてノリス、ルクレール、ピアストリ、フェルスタッペン、ハミルトン、アロンソとさほどスタートから代わり映えしない面々。7位のハジャーはすでに2回のタイヤ交換を終え、8位のローソンは何か起きるの待ちで未だにタイヤ交換なし。8人ぐらいがかたまった周回遅れの大集団に2位のルクレールは「これマジかよ。」とぼやき、3位のフェルスタッペンは「おおい、俺のシフトが1972年のモナコグランプリみたいな感触だ。」と謎の年代指定で不調を伝えます。
 ちなみに1972年のモナコってどんなレースだろうと軽く調べたら、予選ではエマーソン フィッティパルディーが自身初、ブラジル人選手としても初のポールを獲得。しかし決勝は雨になり、4位スタートのジャン-ピエール ベルトワーズがスタートで先行して独走。ベルトワーズは2位のジャッキー イクスに40秒近い差を付けて優勝し、これがF1での最初で最後の優勝でした。3位以下は全員周回遅れ、レース時間は2時間26分55秒だったそうです。

 2025年に戻ります、38周目にアロンソの車が薄い白煙を出して問題を抱えますが、自主退出して短期間のイエロー フラッグだけで解決、特別規則は今のところレースをややこしくしただけでこれといった効果を感じないままレースは後半となりました。ノリスとルクレールには5秒、ルクレールとピアストリには9秒の差があるので普通に行くと何も起こらず大差で終わるような状態になってきました。メルセデスの2人は何か起きるの待ちで未だにタイヤを換えておらず、それでいて11位・12位でもはや塩漬け株のような状態。今レッドフラッグが出たところであんまり役に立たなさそうです。
 上位の争いは何も起きなさそうですが入賞圏ではなおも作戦レース、ウイリアムズもレーシングブルズ同様に捨て石作戦を使っており、レース中盤まではサインツが蓋になってアルボンを逃がしてあげる作戦でしたが、アルボンが2回目のタイヤ交換を終えたら順位交換、今度はアルボンがサインツのために空間を作り始めました。1周3秒も遅いので後ろを走るラッセルは「むちゃくちゃ危ない」と苦言。

 48周目、あまりペースが上がらない3位のピアストリが2回目のタイヤ交換を行い、これを見てルクレールとノリスも反応、上位陣の2回タイヤ交換義務は大きな波乱なく終了しました。同じころ、50周目にはとうとうラッセルがキレてしまいヌーベルシケインを真っ直ぐ進んでアルボンを抜いてしまいました。その前の周にもなんかやろうとして失敗してたっぽいですね。
オサキデース

 ラッセル曰くアルボンの減速が早すぎて危ないから避けただけだしペナルティーを受けるつもりだということで、エンジニアのマーカス ダドリーは順位を戻すように言ってますが無視して走り続けます。実はこの会話も全部やらせでダドリーも承知の上なのか本当にラッセルの暴走なのか、真相はメルセデスのみぞ知る。ただ、この行為はレース前の時点で既に話し合いが行われており、ヌーベルシケインを通過して前の車を抜くインチキをしたら1回目からドライブスルーのペナルティーを課すことが通達されていました。
 ラッセルは当然ドライブスルーのペナルティーを受けて強制的にピットへ、でも面白いことにできるだけ飛ばして差を広げてからペナルティーを消化したらあら不思議、ラッセルはアルボンの前で戻ることができました。15秒ぐらいのペナルティーに該当するんですけど、それを支払ってもなお利益が残りましたね、だったらもっと早くやっておけば、とはさすがに言えません^^;

 さてコース上ではフェルスタッペンがまだ2回目のタイヤ交換を行わず我慢。もうどうやっても4位にしかなれないので待てるだけ待つ考えで、やがてノリスが追いついてこれに引っかかり、当然ルクレールも追いついてしまいました。ノリスにとっては思わぬ邪魔で、これでミスってルクレールに抜かれでもしたら長い大スランプにハマりそうですが、さすがにそんなことはありませんでした。
 残り1周でフェルスタッペンは義務消化のため2回目のタイヤ交換に向かい、前が開けたノリスは最終周に1分13秒221というファステスト ラップを記録。タイヤが余っていたことがよーく分かりましたが、ノリスが開幕戦オーストラリア以来のポール トゥー ウインで今季2勝目を挙げました。通算では6勝目、マクラーレンにとっては2008年のハミルトン以来17年ぶりのモナコ勝利で、チームとしてはモナコで通算16回目の優勝でした。


 ルクレール、ピアストリが表彰台に乗り、これでモナコは3年連続で上位3人がスタート順位通りにレースを終えています。フェルスタッペン、ハミルトン、ハジャー、オコン、ローソン、アルボン、サインツのトップ10。レーシングブルズとウイリアムズがそれぞれ片方を蓋にして2ピットをタダで済ませる戦略を採用し、とりわけウイリアムズはお互いにそれをやったので、運営の思惑とは裏腹にとにかく入賞圏に2人いるチームが徹底防御して渋滞するレースとなりました。なおウイリアムズがモナコで2人とも入賞するのは2005年のニック ハイドフェルド、マーク ウェバー以来20年ぶりです、この時は2位と3位でいずれも表彰台でした。

 
 というわけで、まあそうなるだろうと思いましたが2回タイヤ交換義務は戦略ゲームをより醜いものにしただけのオチでした。時短のために1周目のVSCでタイヤを換えてしまった人たちも、その後の蓋作戦にハマって身動きが取れず、気づいた時にはどうやっても順位を上げる方法が無くなっていました。


 ウイリアムズの代表・ジェイムス バウルズはかつての上司であるメルセデスのトト ウォルフに対してメールで「すまん、他の選択肢が無かった。」とわざわざ連絡。ドライバーも気持ちは同じで、アルボンはレース後に

「気に入らなかった。カルロスも気に入らなかったと思うよ。僕たちが本当に望んでいるレースの進め方じゃない。結局のところこれは戦術的なゲームで、うまく機能させなければならなかったんだ。RBがそれを始めた。彼らが始めたんなら僕たちもそれに対抗しなければならなかった。このせいでレースはめちゃくちゃになる。車に枕とコーヒーを持って行って少しリラックスすることもできたんだけど、不思議なことにあんなにゆっくりと走っていると集中力を維持するのがかなり難しいんだ。」

 と正直な心境を語ったようです。ハードならほぼ78周走り切れてしまうことが課題の1つなので、もういっそのこと考え方を180度ひっくり返してモナコだけはタイヤはC6ソフト1種類のみ、タイヤ交換義務なし、ノーピットで走りたきゃあやってみろやおら、という方が分かりやすくてすっきりするんじゃないかと思いましたね。モナコ不要論が叫ばれますが既に2031年までの開催契約延長は行われているので、レース距離を変えるとか意図的にここだけ内燃機関の出力を大きく制限して電動モーターを上手く使うとアタックモードのように強力な武器になるような仕組みを考えるとか、従来の枠組みに捉われずに考えてみるのもいいんじゃないでしょうか。そうでなければモナコが抜けないのは当たり前なんだから、変な場当たり的規則はいらないです。
 まあとりあえずこのレースはピアストリに負けっぱなしになっていたノリスがようやく勝って気持ちとしても一度落ち着けたので良かったというのが一番の出来事でしたね。次戦はスペインです。

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