2025 AUTOBACS SUPER GT Round1
OKAYAMA GT 300km RACE
岡山国際サーキット 3.703km×82Laps= 303.646km
GT500 class winner:au TOM'S GR Supra 坪井 翔/山下 健太
(Toyota GR Supra GT500/TGR TEAM au TOM'S)
GT300 class winner:LEON PYRAMID AMG 蒲生 尚弥/菅波 冬悟
(Mercedes AMG GT3/K2 R&D LEON RACING)
今年もオートバックス SUPER GT 選手権が始まりました。例年通り年間8戦ですが、今年は2019年のタイ以来7年ぶりの海外戦として第3戦にマレーシアが組み込まれています。その代わりと言いますか、2021年以来5年ぶりに鈴鹿サーキットは1戦だけの開催に縮小されています。そしてGTは文章量が長すぎてアレだったので、レースの感想や考察に重きを置いて中身はザックリ減らしてみようかと思います、いや、ぶっちゃけ下書きが消えたので戻せないのが最初のきっかけだったんですけどまあ良い機会です(笑)
・2025年の変更点
まず大きいのが予選制度の変更。昨年に導入されたタイム合算方式の予選が概ね旧来の制度に戻りました。そもそもは特にGT500のコーナリング速度が上がり続けて危険性が指摘されている中で、なんとか車両性能を変えずに全体の速度を落とすための策として『制度を通じてタイヤの最大グリップを落とさせよう』というのが制度の意図でした。単にGT500を性能調整で遅くしても300の中核であるグループ GT3車両は事実上の世界標準車両だから勝手に極端に遅くする調整ができないので、GT500だけ遅くなったらクラス間の差が無くなってしまうんですね。
制度を通じて長寿命のタイヤを開発させることでタイヤ競争も維持しつつ車も遅くしてメーカーにお金を投入する大義名分までできる名案!という感じで導入したものの、公平性や分かりやすさに大きな課題があり、また特にGT500ではブリヂストン一強をさらに強めたと言わざるを得ません。『予選とはその週末に最も速い人を選ぶ、最も速い状態の車が走る舞台であるべし』という考え方にも押されたかもしれませんが、制度の継続は困難でした。
合算制度に合わせて予選の上位3組に3~1点が付与されていた配点も、旧制度に戻ったということでポール ポジションに与えられる1点だけになりました。2023年までと違うのはQ2への進出台数を少し増やしたぐらいでしょうかね。GT300のQ1組分け制度も結局復活しました。
GT500クラスの車体に関しては、開発コスト削減のためにおおよそ2年ごとにしか空力開発を行えない枠組みを採用しています。昨年は開発可能な年でホンダはシビック タイプ R-GTを導入し、せっかくだから日産もZ NISMOに変更していましたので2024年から2025年にかけては外装に変更なし、空力開発凍結シーズンとなっています。一方で見えていない中身の方は2020年から使用してきたモノコックを新造品と入れ替えて新しくなっています。
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外観は去年と色以外に変化なし |
カーボン製共通モノコックはかなり頑丈ですが使っていれば当然強度は低下していき、何年も使っていると『計測したら強度は落ちてヨレてるけどそれなりに機能してる』みたいな状態になっています。これを新品にするとガチっとなりますので、仮に旧モノコックと同じ状態で車を仕立ててもモノコック強度の違いだけで車の挙動は変わってしまいます、つまり去年のセッティングのデータにある程度補正をかけないと上手くいかない可能性があります。
SUPER GTはシーズン中のテストは何回かありますが本番の週末に試せる時間があまりないのでいわゆる持ち込みセットが決まっていないと優勝を争うことが難しくなります。オフのテストとシーズンの実走を経ていかに早く最適なセットを導き出せるのかは重要になりそうです。過去5シーズンに何台かやむを得ずモノコックを新調したチームもありましたので、そうしたチームが持っているデータも役に立つ気はしますね。
ドライバー面では新人さんはアステモ リアル レーシングの小出 俊が唯一。フォーミュラEから残念ながら戻ってきたサッシャ フェネストラズがTGR チーム サードに加入していますが各チームのドライバーも比較的残留が多くなっています。ただ日産ではロニー クインタレッリが引退したので、代わりにニスモに高星 明誠が加入して千代 勝正との組み合わせが2年ぶりに再結成。高星の代わりにニスモNDDPに加わるのは、昨年GT500からGT300へと移っていた佐々木 大樹。1年でGT500に帰ってきました、ちなみにヴィッセル神戸にも『佐々木 大樹』という選手がいるそうですがこちらは『だいじゅ』、ニスモにいるのは『だいき』です。
一方変更が多すぎるのがGT300クラス、まず選手権ポイントの制度がGT500と別建てになり、1位:25点~15位:1点と入賞圏が15位までに拡大されました。台数の多さやどうやっても強豪チームがだいたい入賞してしまう傾向を見て、もうちょっと増やした方が良いと思ったんでしょうかね。またポイント×2倍のサクセスウエイトなので、優勝したら次のレースでいきなり50kgもウエイトが乗るというのもあります。ポイント×3倍制度は車が重くなりすぎて続けられなくなったので、いかに上位チームに早くたくさんの重りを乗せるか、という観点もあったと思われます。またGT300のウエイトの上限は今シーズンは80kgとされています。
チームやドライバーも変更点が多いですが、新規参入としてカーガイ MKS レーシングとseven × seven(セブン バイ セブン)レーシングが登場。MKSは2024年を『休会』としていたヨギボー レーシングの監督・芳賀 美里がその枠を使って改めて立ち上げたチームとなっており、GT300や他カテゴリーでも活動実績のあるカーガイと組む形で新規参戦というか復帰というか、改めての登場となりました。車両はフェラーリ 296 GT3、かなり速いやつです。
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スポンサーにアーツ銀座クリニック・・・植毛? |
そしてセブンバイセブンですが、こちらは現役ドライバーである藤波 清斗が2022年に設立したKFモータースポーツがメインとなるスポンサーの名前を冠した参戦者名で新規参戦した形です。KFMでの活動は結果的に藤波が不祥事を起こしてニスモを切られることに繋がったのでちょっと悪い意味で存在が知られているかもしれませんが^^;
車両はポルシェ 911 GT3、ドライバーは藤波とポルシェ使いとして知られる近藤 翼で、驚くのはチーム監督兼エンジニアが伊与木 仁であること。伊与木さんといえば昨年JLOCに加入してウラカンを見事にチャンピオンに導いたばかりですが、チームには残らずにまた新たな挑戦に進んだようです。なおスポンサーのセブンバイセブンは霞ヶ関キャピタルという会社が展開しているホテル事業の1ブランドで、過去に何度かSUPER GTの大会スポンサーをしているFAV ホテルも同じ系列、車両にもFAVのロゴは入ってますね。またセブンバイセブンは今シーズンはGT300のウインドウ ステッカーのスポンサーにも付きました。オートバックスがスポンサーを降りてからのこの2年間、誰もスポンサーが無くて黄色い帯だけというちょっと格好悪い状態でしたが3年ぶりに役に立ちます。
そしてちょっと残念ですが、昨年に続いてケイ コッツォリーノ/リル ワドゥーの組み合わせになるはずだったポノス レーシング、開幕直前に本人側からの要請でワドゥーとの契約を解除することになり、篠原 拓郎が急遽起用されることになりました。理由は明らかにされていませんが、ワドゥーは並行してELMSとIMSA ミシュラン 耐久 カップにも参戦しているため日米欧に活動範囲が跨り、日程の連続や重複による欠場もある状態でした。無理があったと考えられています。
・予選
GT500クラスはQ2・残り2分ほどでau TOM'S GR Supra・坪井 翔が1分16秒516のコース レコードを記録し、さらに翌周も塗り替える勢いでしたがミスったかタイヤがそこで落ちたのかダブルヘアピンの2つ目で失敗した様子で更新ならず。それでもまあこのタイムがポールになるやろうとちょっと油断してたらENEOS X PRIME GR Supra・福住 仁嶺が0.075秒上回るさらなるレコードでポールを持って行きました。中継スタッフも油断してたのか映してない(笑)
GT300ではやたら速かったD'station Vantage GT3・藤井 誠暢が1分24秒536を記録。Q1では全体最速で大本命と思われたLEON PYRAMID AMGでしたが蒲生 尚弥は0.2秒ほど及ばず、車体を一新したSUBARU BRZ R&D SPORT・山内 英輝も0.043秒及ばず。もう誰も更新するやつおらんかなと思ったら、最後にグッドスマイル 初音ミク AMG・片岡 龍也が藤井を0.116秒も上回ってみせ、チームとしては2023年第4戦富士以来、片岡選手にとっては2017年最終戦もてぎ以来のポールとなりました。2017年最終戦→2025年開幕戦なので、これを『8年ぶり』とするか『7年ぶり』とするか媒体によって微妙にブレがありましたが本人はSNSに『8年ぶり』と書いてますね。私なら『7年ちょっとぶり』と書くでしょうか(笑)
・決勝
西日本は土曜日の夜から雨、岡山国際サーキットなら午後には雨が上がって天候が回復する、と思ったら思ったよりその時間が後ずれしたっぽくてスタート時は雨。それどころか開始直前はかなりの大雨でした。おかげでSC先導スタートとなり、5周目にSC退出で実質のスタートを切ってもターン1でいきなり6位スタートのKeePer CERUMO GR Supra・石浦 宏明がスピンして他車も巻き込む多重事故でレッド フラッグ。
11周目にリスタートするとGT500では坪井が早速ダブルヘアピンの1つ目・レドマンで福住をかわしそのまま快走。14周目にも3度目のSCが発生、雨が止んでもなかなか路面が乾かない中でGT500は47周目あたりからウエット→ウエットのタイヤ交換サイクルと、その後に61周目あたりからスリックへの交換サイクルが発生しましたが、坪井、山下 健太とも常に大きなマージンを持っていたので後ろに合わせて手堅く進めることができました。
あろうことか68周目に4度目のSCが導入されて20秒以上あった差が消し飛び残り10周からリスタートされましたが、全く動じる様子もなく山下はリスタートからさーっと逃げて行ってauトムス・坪井/山下組が昨年に続いて開幕戦2連勝、昨年の最終戦から年跨ぎの2連勝を挙げました。どれだけ何が起きても全然崩れる気配がしなかったですね。
2位はずっとトムスを追いかける2位だったエネオススープラで、3位にはGT500最後尾・15位スタートだったはずのDENSO KOBELCO SARD GR Supra・関口 雄飛/サッシャ フェネストラズでした。着順で言えば3位はこれまた予選14位だったDeloitte TOM'S GR Supra・笹原 右京/ジュリアーノ アレジでしたが、3回目のリスタートの際に他車をうっかりコース外に押し出してしまって10秒加算のペナルティー。最後のSCが無ければ10秒加算しても3位のまま行けそうでしたが、隊列が詰まってしまったので最終結果は5位でした。サードは後半に乾いていく路面の中をフェネストラズが、デロイトトムスは前半の雨量が多い中を笹原が、いずれも抜群の速さで順位を上げまくっていてドライバーの腕で順位を取り返した印象でした。
一方でとても悔しい終わり方だったのはAstemo CIVIC TYPE R-GTのルーキー・小出でした。3位を走っていてARTA MUGEN CIVIC TYPE R-GT・松下 信治に追われながらなんとか順位を守っていましたが、最終周のヘアピンで松下に飛び込まれてラインが交差。その隙にフェネストラズが脇から2人とも抜いて行ったわけですが、松下と小出はなお並走した状態で切り返しのリボルバーに向かおう、としたところでちょっとよろけた松下が接触、小出は弾みで弾き飛ばされました。
思い返せばアステモシビックは昨年の開幕戦で1周目にリボルバーを立ち上がったところで太田 格之進が前方の事故を避けられない貰い事故でリタイアし悔しさをあらわにしていましたが、何の因果か後任の小出選手も最終周にほぼ同じ場所でコース外に車を停めてしまいました。救いは8位完走扱いで入賞はできたことでしょうか。松下選手はこれでレース結果にドライブスルー相当の40秒加算ペナルティーを受けましたが、リード ラップ車両が少ないので7位という結果でした。ちょっと複雑な心境かも・・・
一方GT300は出入りがすごく激しいレースでした。スタート直後、多重事故でSCが出る前の僅かな時間でDステーションバンテージ・藤井が片岡を抜いてリードを奪い2回目のリスタート後も好調に見えましたが、どうもウエットでもソフトのタイヤっぽい雰囲気で周回を重ねると片岡が接近。もう抜くのは時間の問題という雰囲気でしたが、20周目のパイパーコーナーで接触してしまい藤井がスナーバックスに入店。リード チェンジとはなりましたがこの接触で片岡にドライブスルーのペナルティー、大きく後退しました。ヴァンテージはこのレース24位でした。
これで一時的にはBRZが実質1位でしたが、こっちもやはりダンロップでタイヤがしんどそうな雰囲気、レオンAMG・菅波 冬悟が事実上の1位に浮上して以降のレースを独走していきました。菅波選手はグリーンブレイブとチーム土屋で3年間GRスープラに乗っていましたが4年ぶりにK2 R&D レオン レーシングに帰ってきました。
ただGT300はタイヤ幅、エンジン出力、電子的な運転補助機能などの関係でGT500よりも乾き始めた路面状況でスリックへのタイヤ交換が早く行えるというのが一般的な見解。多くのチームはドライバー交替のタイミングで直接スリックには繋げないと見てGT500と同様ウエットへの交換でしたが、マッハ車検 エアバスター MC86 マッハ号は木村 偉織をスリックで送り出す賭けを採用、みんなこのタイムを参考にすることになりました。でもMC86はタイヤにあんまり荷重がかからない車だから本来こういう時は不利なんですよね。けっこう長い間コースに留まるだけで精いっぱいという感じ、よくすっ飛ばなかったなと思います。
そんな中でレオンはというと、どうせスリックに交換する必要があると考えたか43周目にタイヤ無交換でドライバーだけ蒲生に交替するちょっとした奇策を発動、これもあって2位との差が1分という独走態勢になりました。一方でスタート位置が悪かった中団チームはドライバーの規定最大運転距離ギリギリまで引っ張ってスリックに直接つなぐ戦略を実施、これが奏功してレオンが55周目に2回目のピット作業を行うと、コースに戻った時にはUPGARAGE AMG GT3・小林 崇志が前に出ました。NSX GT3に変わって安心安全のAMGを購入したアップガレージ、12位スタートからいきなり大金星のチャンス。
しかしGT500の68周目に出たSCで10秒ほどあったアップガレージの貯金が無くなり、リスタート後は蒲生が小林をつつきまくります、自力ならやっぱりこっちが上。リスタートの翌周、アトウッド カーブで蒲生が内側に飛び込んで、側面がガシャッと接触、小林はコース外の砂場を通過して順位を下げました。これはどういう裁定になるかと思ったら、おそらくターンに飛び込む時点で既に並走から少し鼻先が前に出るぐらいだったことが考慮されたんだと思いますが、5秒加算のペナルティーとなりました。
2位にはアップガレージと同じ戦略で21位スタートから浮上していたANEST IWATA RC F GT3・安田 裕信が付けており、もしドライブスルーだったら大逆転優勝が転がり込むところでしたが、5秒加算だとちょっと蒲生の5秒以内でゴールするのは無理でした。レオンAMG・蒲生/菅波組が優勝、蒲生にとっては昨年の第6戦SUGO以来、菅波にとってはおそらく2020年の第4戦もてぎで初優勝して以来の2勝目ですね。
2位にアネスト岩田 RC F・イゴール オオムラ フラガ/安田 裕信、グランツーリスモ界のスーパースター・フラガ選手とチームは初表彰台、安田選手もゲイナーにいた2022年以来の表彰台ですかね。3位は振り向けばこの車、リアライズ日産メカニックチャレンジ GT-R・ジョアン パオロ デ オリベイラ/平手 晃平でした。ミク号はドライブスルーを受けたことでちょっと開き直って早めにスリックに換えたのが成功して4位です。
そして5位はなんとPACIFIC アイドルマスター NAC AMG・阪口 良平/冨林 勇佑でした、おそらくこのチームの入賞は2022年開幕戦以来で2023年にAMGを使い始めてからは初めてです。予選から6位と好成績ですが、今年チームは車両を更新していました。昨年まで使っていたものはかなりAMG GT3の中でも古くて製造番号が9番と記載されており、ですからEvoモデルとして製造されたやつではなく前期型で製造されてアップデートキットでEvo化されていたかなりのお古だったと思われます。4位が初音ミク、5位にアイマス、これぞジャパニーズGT。脱毛ケーズフロンティアGO&FUN猫猫GT-Rは・・・23位だ(笑)
GT500はどこまで行ってもスープラ圧倒という印象でしたが、とりあえず最初に両クラスとも勝敗に影響したのはスタート時のタイヤ選択だったと思います。路面水量がかなり多かったので5周目のリスタート時点ではソフト系の強雨用タイヤの方が合っていたと思います。実際、スピンした石浦選手はハード系で熱が入っていなかったようです。ところが事故と赤旗で再開を待っている間に雨は弱まってしまい、2回目のリスタート時はもうソフトで旨味がある状況から遠ざかっていました。そもそもソフトは乾いていけば必ず不利になってくるのでそこまでの貯金が大事ですが、そこを奪われたら厳しいですね。
結果論ですがスタート前のえらい雨量を見たら10分ほど開始を待つかSC周回をもう少し伸ばしていれば多重事故の危険性を減らすこともできたかもしれないので、そこは何を優先して何を捨てるべきか、人によっては早すぎたと思う判断だったかもしれません。ちなみに今シーズンはウエットタイヤに関して『少なくとも1セットはヘビー ウエット コンディションでも機能するとみられるタイヤにすること』と規則に記載されています。近年は『どうせ雨量が多すぎたらレースは止まる=ヘビーウエットに対応するタイヤを作る意味は無い』という考えでタイヤを作っていると思われるので歯止めをかけた形ですが、客観的に運営がそれを証明する方法が無いのであくまで努力義務、性善説に近い内容な気がします。実際問題タイヤの排水性を上げてもGT500は床下から上に空気と水しぶきを撒き散らすから、どっちみちレースにはならない気がするんですよね。
GRスープラは昨年唯一スケーリングのベースとなる車両が変更されておらず、なんなら2020年から変わっていません。ベースを変えて再スケーリングすると多少なりとも全体の形状が変わり、チリツモな空力部品の効果も全部変わってしまうのでやり直しになりますが、GRスープラはそれが無いので継続性をもって空力デザインを行えます。大外れしないのでセッティングの基礎も固めやすく、その継続で現在は3メーカーで最も扱いやすい車ではないかと思います。
その中で特にトムスは空力に頼りすぎず決勝で長い距離を安定して走ることを得意としているからこそ連覇しており、こうした条件が悪い中でもその車づくりは生きていると思いますし、ドライバーもまた安定性がとにかく高いです。昨年投入した新型のエンジン・RI4BGも非常に出来が良いという話で、しかもここからまた伸びしろのあるエンジンですから、このままトムスが独走して今度は最終戦前にチャンピオンが決まってしまっても私は驚かないですね。実際は他のスープラも速いのでそうはならないでしょうが、『スープラ同士で点を獲り合う』というより『常にスープラが誰か上にいるからライバルは大量得点できずトムスに追いつかない』というパターンの方が現実味を感じます。
シビックもZもこの状況だと昨年の課題だった部分、Zならニスモのブリヂストン習熟度合い、シビックは高速コーナーがどのぐらい変化したのか、というのが全然素人では分かりませんでしたが、少なくともこのレースは貰い事故も含めてちょっと落ち着きが無いまま終わってしまった印象です。
GT300はAMGの万能ぶりが見える展開だった一方でGTA GT300車両はあまり目立ちませんでした。今年は前輪の大きさに関して昨年よりも上限サイズが小さくなって基本的にどのチームも幅が狭く、直径も小さくなります。受け止められる力の上限が下がりますからコーナーでの限界領域に影響すると考えられ、加わる力が変わるのでサスペンションのジオメトリーなど見直しが必要となることもあるようです。
シーズン中でも車を改善していけるのがGT300規定車両ですが、まだ足もとがきちんと定まっていない中でさらに雨まで降るとなかなか難しかったのかなあというところ、次戦の富士は従来ならタイヤ無交換などの技が飛びやすいレースで「え、古いタイヤでそんなに走るんすか」ということが多々ありましたが、ここにも影響するかもしれませんね。まあ何せ雨だと真の力が分からんのだよ(笑)
それと、結果としては最悪でしたがアップガレージは作戦を的中させ、アネスト岩田も同様でした。待って待ってスリックへ直接、という展開を期待しても我慢しきれなかった、あるいは燃料的にそこまでは走れなかったチームもあったかもしれない中で、上位では無いので攻めやすかった立場とはいえ周りに流されなかった彼らの戦いは素晴らしかったと思います。
逆にレオンは大量リードを活かして無交換という非常に臨機応変な対応で、これもまた見事でしたね。ブリヂストンのタイヤがあんだけ乾き始めた路面を走り続けても全然潰れない、というのも要因として大きかったと思います。これが10秒差とかで走ってたら選択肢も判断も全然話が違ってくるので、見る側としたら誰か1台ぐらい見える範囲で追っかけてもらえてるとよかったんでしょうけどね。
次戦は5月3日・4日にお馴染みの富士長距離戦、3時間レースとなっております。
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