NASCAR 第10戦 タラデガ

NASCAR Cup Series
Jack Link’s 500
Talladega Superspeedway 2.66miles×188Laos(60/60/68)=500.08miles
winner:Austin Cindric(Team Penske/Menards Quaker State Ford Mustang Dark Horse)

 NASCARカップシリーズはイースター休暇を終えてここから残る27戦+オールスターが休みなく11月まで続いていきます、28週間連続開催はNASCARの歴史でも最長。休み明け最初のレースは今年3度目のドラフティング トラック・タラデガ。デイトナよりもちょっとだけ大きいシリーズ最長オーバルにして、もっとも危険でヤバいレースです。1969年の初開催レースを巡っては、舗装が荒すぎる上に車が速くてタイヤが数周で潰れてしまうため極めて危険であるとして、シリーズの主力ドライバーは出場を見合わせたという出来事がありました。
 よく知らないとただアクセルを踏みっぱなしにしてぶつけあいをやってスリップストリームから最後に前に出たら勝ちなだけの頭の悪い単純なゲームでしょ、と思われてしまいますが、実際はとにかく見えない風の流れを見極めてドラフティングを上手く使い、実はフラフラする車を制御して事故を避けつつも最終ステージの最後の給油を終えた時に上手く前方にいられるように逆算し、そして最後の最後、トライ オーバル部分よりちょっと奥にあるフィニッシュ地点で相手より1mmでも前にいられるように空気と相手の車の動きを読み続けて、そこに運が味方してくれないと勝てない190mphで走る頭脳ゲームです。ちなみに大会スポンサーのジャック リンクスはビーフジャーキーなどを製造・販売する会社、日本でも三菱食品が輸入してるみたいですね。

 1969年に初開催、翌年から年間2回開催が続けられて1997年以降は概ね4月と10月で行われています。春のレースは普段のレースでなかなか勝てない人たちにとってプレイオフの1枠に飛び込む大チャンスという存在、秋はプレイオフ制導入以降コンテンダーにとって天国にも地獄にもなる一番ヤバいレースという印象です。昨年の春の勝者はレディック、秋はステンハウスが優勝者でしたが、遡ると2020年秋のレース以降9戦連続で異なる勝者が生まれておりタラデガ最長記録となっています。

・ちょっとしたデータ

 タラデガは長年チーム ペンスキーが強くて、現役で複数勝利を挙げているのはブラッド ケゼロウスキーが最多の6勝、ブレイニーとロガーノがそれぞれ3勝。ただ上記の通り過去9戦は誰も複数回勝っておらず、結果で言えばペンスキーが強かったのはGen6車両の話と言えGen7となった過去6戦では2023年秋のブレイニーが唯一の勝利です。
 ドラフティングトラックでは僅かな車体形状の違いなのかフォードが単独で速いのが傾向として明らかに出ており、レースでもフォードの誰かが上位を走ってレースを主導する場面が多いものの、フォード同士の自滅クラッシュや台数の多いシボレーの戦略が機能して結局は勝てていないというパターンが多く見られます。今年のドラフティングトラックは既にデイトナとアトランタがありましたが、フォードのドライバーは全周回の約72%でラップリードを記録していながら、トップ5フィニッシュした人が述べで1回とほとんど上位で終えられていません。

 タラデガでポールシッターの優勝確率は13.5%に過ぎずかなり低いもので、過去6戦に限れば全員が17位以下でレースを終えています。最後にポールから勝ったのは2020年のハムリンでした。ただ統計的には2位スタートが勝率約18%、上位5人以内からのスタートなら約50%となっており、ドラフティングトラックだからどこからスタートしても勝てる、というほど実態は甘くもありません。やっぱり予選で前に出られる単独の速さは、数字とすればほんの僅かな差でもレースに有用で、後ろにいると多重事故に遭いやすくなります。
 Gen7のタラデガで最も平均順位が良いのはバイロンで7.7と唯一の1桁台、優勝はありませんが現在4戦連続トップ10フィニッシュを継続しています。他に過去6戦でトップ10を4回記録しているのはエリック ジョーンズしかいません。トップ5フィニッシュならブレイニーとケゼロウスキーの3回が最多です。ここではフロント ロウ モータースポーツが単独での速さを持っており、トッド ギリランドは平均順位14.5で全体6番目の数字になっています。逆にロガーノは全レース19位以下で平均27.5と今年フル参戦しているドライバーではゼイン スミスに続いて2番目に悪い数字です。ただしスミスは3戦しか出場経験がなく、今年は最強(?)フロントロウのドライバーになっています。
 ロガーノはここまでの9戦でまだ1度もトップ5フィニッシュが無く『前年度のカップシリーズチャンピオンが開幕から一度もトップ5フィニッシュしていない連続記録』で1989年のビル エリオットと並んで最多タイとなっています。ビルは10戦目のシャーロットで5位となって記録を止めましたが、ロガーノは最近相性の悪いタラデガで記録を止められるでしょうか。

・レース前の話題

 ジ アスレティックが匿名の関係筋の話として、来シーズンの最終戦は開催地がフェニックスからホームステッドへ移されると伝えました。昨年は全体的な数字で見るとそれほど成績がよろしくないロガーノがチャンピオンになったことからプレイオフ制度について批判的な声が上がり、その一環として1年間戦ってきたシーズンの決着が毎回フェニックスの結果で決められることに対する批判もありました。そのためNASCARは最終戦開催地を固定しない方針を固めたとみられ、2027年もまた別の開催地になるとアスレティックは伝えています。

 そしてトラック上では衝撃のニュースです、スパイアー モータースポーツはジャスティン ヘイリーのクルー チーフ・ロドニー チルダースを解雇したと発表しました。今週からライアン スパークスが競技ディレクターと兼業という形でクルーチーフに戻ってきます。ケビン ハービックと共に勝利を積み重ね、スチュワート-ハース レーシングの消滅に伴って加入が実現した大物クルーチーフが僅か9戦でクビになるとは思いませんでした。
 双方の話を総合するといわゆる方向性の違いという単語に集約されるようです。共同オーナーのジェフ ディッカーソンによると、チルダースとヘイリーが不仲だったという話ではなくむしろ逆で、いずれもどちらかというと昔ながらの考え方を持った似た者同士だったので、変革を求めるチームにとっては適材では無いと判断された模様。早期に決断に至ったのは、このままズルズルと行ってしまうのではなく1週間の休みが明けるこのタイミングが最適と考えたためだとのことです。

 最後に、NASCARは多様な背景を持つ選手・クルーを支援する目的で2004年に創設した『ドライブ フォー ダイバーシティー』の名称を『ドライバー デベロップメント』にひっそりと改称していたことが明らかになりました。ドナルド トランプと支持者の影響でアメリカでは多様性などの表現に関して圧力が強まっています。そもそもNASCAR D4Dについては2023年の段階で、現在は次席補佐官となっているトランプの取り巻き・スティーブン ミラーが『白人への逆差別だ』と雇用機会均等委員会に対して調査するように請願も出されていました。
 なおD4Dでは現役のカップドライバーではラーソン、ウォーレス、ダニエル スアレスが卒業生、下部カテゴリーだとニック サンチェス、ラジャ カルースが該当します。

・ARCA Menards Series General Tire 200

 JGRのサワリッチとベンチュリー二 モータースポーツのローレス アレンがレースの多くでリードを争いました。レースは終盤のコーションでオーバータイムとなりますが、これもリスタート早々にクラッシュが発生してレースは終了。コーション時点で前にいたアレンがARCAシリーズ初優勝となりました。昨年までは3年間トラックシリーズにフル参戦していましたが、今年はトライコン ガレージからのスポット参戦契約にとどまっていて、トヨタユーザーであるベンチュリー二からARCAへの出場機会が増えているようです。

・Xfinity Series Ag-Pro 300

 エクスフィニティーのドラフティングトラックで強いのはリチャードチルドレス。コーションの出ない平穏なレースの中でステージ1をラブ、ステージ2をオースティン ヒルが制します。レース終盤になると徹底マークされている様子ですが、最終周にはラブ、ヒルが外ラインで並んでリーダーのコナー ジリッチを追撃。結果、バックストレッチでバンプの連鎖からジリッチがすっ飛んで単独でクラッシュしました。
 多重事故ではないもののNASCARはコーションを出したのでこの時点でレースは終了ですが、3人が並んでいて順位は写真判定になりました。スタート/フィニッシュ地点なら専用のカメラがありますがそれ以外は必ずしも判別可能な角度で撮影しているとは限らないのでなかなか難しいところ、さあ分かるかな・・・


 結果、コーションのボタンが押されたことが記録されていた時刻の写真で前にいたのはヒルと判定され、今季3勝目・通算13勝目を挙げました。タラデガではこれが初優勝でしたが、ドラフティングトラックではデイトナで3勝、アトランタで5勝しており通算9勝目。これはトニー スチュワートとデイル アーンハートが持っていた記録を塗り替え、エクスフィニティーの歴代最多記録となりました。まあ昔はアトランタが普通の1.5マイルですし、この2人はカップでチャンピオンを獲った殿堂入りドライバーですから比較するのも難しいんですけどね。


・カップシリーズ
 予選

 フロントロウ強し、ブッシュライトポールはZ.スミスが獲得しました。彼にとって初、フロントロウは昨年のマイケル マクダウルから続いてタラデガで3連続ポール獲得です。2位はカイル ブッシュでしたがなんと0.132秒の大差でした。スミスはQ1でも2位に0.14秒の差を付けており、予選で飛びぬけた速さでした。


 なお、カップシリーズをずっと見ている方はもうご存知でしょうが現行のGen7は無理に速さを追い求めない設定で車両を作ったので下位カテゴリーであるエクスフィニティーと一発の速さで言えばほとんど差が無く、今回の予選タイムもエクスフィニティーでラブが出したタイムより0.019秒遅いものになっています。もっと言えばエクスフィニティーとARCAの車両もタイム的にそこまで大きな差が無く、先週のロッキングハムの予選タイムだけならARCAの方が速い記録でした。日欧だとあんまりこういう状況ってあり得ないし上下を明確にしたいので運営がやろうとしないですよね。
 3位ロガーノ、4位プリースと続き、決勝日の4月27日が35歳の誕生日となるオースティン ディロンが5位。クリス ブッシャー、オースティン シンドリック、ジョッシュ ベリー、ブレイニー、ギブスのトップ10となりました。Q2に進んだのはフォードから7人、シボレーはRCRの2人だけ、トヨタはギブス1人だけ、まあだいたいいつもの結果です。
 バイロンは16位、インディアナポリス500の練習走行でクラッシュしたラーソンは25位、スポット参戦のビアード モータースポーツ・アンソニー アルフレードは31位、急にクルーチーフが交代したヘイリーは37位でした。今回はせっかくなのでディロンのバースデー勝利を期待してみましょうかね、過去にカップシリーズで達成したドライバーはケイル ヤーボローとカイルがそれぞれ2回、そしてマット ケンゼスが1回の計3人/5例しかありません。


・ステージ1

 スタート コマンドはジャックリンクスの最高財務責任者・アダム スミスとサスクワッチ(北米大陸に住むと言われる毛むくじゃらの無確認生物、ビッグフットと同じような物)とイエティー(ヒマラヤ山脈に住むと言われる未確認生物)、どういう画面やねん(笑)これを見ると、毎回オートバックスの役員さんが堅苦しい挨拶するSUPER GTってなんか物足りないなあとか思ったりします。あれは言うなれば全戦でオートバックスがグランドマーシャルだからそういうものなんでしょうけど。


 珍獣ハンターイモトが現れないうちにレース開始、4周もすると綺麗な4ワイドが完成、放送席もしきりに燃費走行だと解説しているように、この段階での順位に大した意味は無いので見ている方は気楽です。そのまま気楽に25周ほどが経過するとトヨタ系チームが突然頭を切り替えた模様、ブリスコーを先頭に6人で燃費走行をやめて飛ばし始めて前に飛び出します。フォーミュラEといっしょでみんなが燃費走行モードで走っていれば比較的簡単に前に出ること自体は可能です。
 そのまま41周目にブリスコーを先頭にトヨタの仲間だけでなく中団にいたシボレーの選手もセットで総勢14人がピットへ。ブリスコーはエンストしてリードを失いましたが辛うじて集団には残ることができました。続いて43周目にはフォード勢がピットに入ると思われたんですが、なんか動きが危なっかしいと思ったら


 やっちまいました。ケゼロウスキーとカイルが接触してセットで姿勢を乱し、暴れたケゼロウスキーがブレイニーに一発ぶちかましてノックアウト。多重事故発生で本日初のコーションです。ケゼロウスキーは前に続いてピットに入る意思だったけど、周りの減速が早かったのか本人が突っ込みすぎたのかかなり減速の開始が遅く、後ろを走っていたカイルはケゼロウスキーが減速するとは思って無くて避けきれず当たってしまった、という流れに見えました。ブレイニーはただ真っ直ぐ走ってたらぶん殴られた感じです、不運が続きます。

 まだ給油していない人にとってこのコーションは順位的に損でしたが、そもそも燃料がもう底をついていて早くピットが空いてくれないと困ります。ダメージ ビークル ポリシーの見直しによって、とりあえずドライバーは車に乗ったまま牽引でも何でもとにかくピットに帰りさえすれば復帰できる手段があります。それゆえ希望する人を順に送り届けないとトラック上の撤去作業が完了しないため、こうして複数台が自走不能の事故になると特にコーション発生からピット開放までの時間が延びると思われます。ベリーはエイプロンを走って距離を短縮しなんとかガス欠を避けようと必死です。

 幸いガス欠前にはピットが開き、どうせトラック ポジションは守れないので多くの人は予定を前倒しする形で4輪交換と満タンまでの給油を行いました。52周目/ステージ残り9周でリスタートし、ましたがまさかの展開、外側の先頭だったベルがターン2出口でスピンして内側にいたブッシャーを巻き添えにクラッシュ。ターン2出口の荷重が抜けやすい場所でハムリンがベルを押しすぎたようで、ちょっと判断ミスの雰囲気。自分のミスだったらごめん、とハムリン。


  なお、ベルがぶつかった部分はトラックの内側から車両が出入りする接続部分だったので壁が出っ張っている箇所でした。高速のオーバルではたびたび問題になる形状ですが、今回ベルが特に危ない角度でまともに突っ込んだので、NASCARは次回の開催までに形状を改めることを表明しています。こういう事故があるたびに出っ張りとかSAFERバリアの設置抜けとかって順に対応されてるはずなんですけど、未だにタラデガにそんな場所が残ってるというのはむしろ驚きですね。

 57周目にリスタート、ハムリンをそのまま勝たせてくれるはずもなく2周ほどすると後ろから車が押し寄せ、ちょっと危ない場面もありつつ最初にグリーン ホワイト チェッカーを受けたのはラーソンでした。バイロン、ステンハウス、チェイスとシボレーの4人が上位を占めましたが、おそらくさっき4輪交換してる人たちです。ウォーレス、ハムリン、アルメンディンガー、そしてコディー ウェアーがなんか知らんけどステージ8位、ライリー ハーブストが9位でした。ウェアーとハーブストは今季のフル参戦ドライバーでステージ ポイントを1点も獲っていない選手でしたが、同時に初ステージポイントを記録しました。


・ステージ2

 アルフレード以外は全員給油と必要に応じてタイヤ交換。ラーソンはさっきタイヤを換えたばかりなので給油だけでしたがなんと速度違反で時間を短縮した意味が無くなりました。またホースバーは無線の調子が悪いのでヘルメット交換、今週もピットで色々起こります。ステージ1でがっちり組んだトヨタ勢はすっかりバラバラになって67周目にリスタートしました。ここからまたしばらくは燃費レースでしょう。

 アルフレードが多くの周回でラップリードを記録しつつステージ2も後半へ、残念ながら99周を終えたところで彼は一足先に燃料が無くなって単独で給油に向かいました。これだとステージ2はもやは勝負権はないですが、どうやら本人は無線で「人生でこれまで経験がないぐらいむちゃくちゃ楽しかった。」と言っていたみたいです。アルフレードはカップにフル参戦していた頃は下部カテゴリーの経験が浅くて事故が多いので叩かれまくってましたけど、エクスフィニティーでの戦いを含めて成長してる感じがありますね。


 一方トラック上は「さーてアルフレード抜けたしそろそろやるか」という雰囲気でピットへ向けた多数派工作が始まり、109周目からピットサイクルとなりました。もっとも大所帯だったのは112周目の集団、このサイクルでは出入口での速度違反やピット出口でのスピンなどポロポロと争いから外れて行く人が出ましたが、コーションは出ることなるサイクルが一巡して集団再合流、そのままステージ最終周へ。
 最後はロガーノとウォーレスがリードを争ってステージ最終周のターン4を立ち上がり、ロガーノはチームメイトのオースティン シンドリックから最後に一押し貰える、と思ったら素通りされました。これで勢いを失いウォーレスが逃げてステージ2を制します。このシンドリックの動きに対してロガーノは無線で激怒し、

「来いよオースティン!馬鹿か!ふざけんな!なめてんのか!ボケが!あいつらを行かせやがって、トヨタをステージで勝たせてな。良い仕事だ、よくやったよ。」


 ウォーレスはステージ終了後に窓から手を出してシンドリックに「ありがと~」という感じでたぶんちょっとバカにして手を振り、直後にロガーノが親指を立てて「トヨタを勝たせてやるなんて最高だな。」という感じの嫌味をジェスチャーでも残していきました。シンドリックからすると、後ろのベリーから直前に勢いよく押されてちょっと姿勢が乱れており、そのまま押したら先輩をクラッシュさせてしまうので避けたみたいなんですが、ロガーノはそんなこと知る由もありませんでした。

 また、ステージ優勝を狙う人がいた一方でJGR勢はステージ残り3周でピットに入って給油と4輪交換を行う、というステージ制初期のドラフティングトラックではよく見られたロードコース作戦を久々に展開。これでステージ間コーションはステイアウト、ないしは短い給油だけにして最終ステージを前で始める戦略です。そういえばいつからこの作戦はドラフティングトラックでは流行らなくなったんだろう。


・ファイナル ステージ

 ロード コース作戦を実行したブリスコーたちが短い給油だけで済ませて狙い通り上位に来て始まった最終ステージ、展開はステージ1と似た形で上位にまとまったトヨタ勢が1列になってやや先攻、7列目あたりから後ろが2ワイドという状態です。トヨタは台数が少ない上に単独では3メーカー中最も遅いと思われるので、単純に燃費レースをやるだけでは大きな集団を形成して速度を保ちオーバーカット、という展開を描きにくく、自分たちから積極的に前に出た上で勝ち馬に乗ってくれる他の陣営を呼び込みたい意図があるんじゃないかと思います。願わくばフォードの中団チームとかに付いてほしいところでしょうかね。
なぜかってそう!馬だけにね。(デーーーーン)マスターーーーーーーーング!!

 残り24周、トヨタ勢のドライバーとスパイアーモータースポーツの総勢10人がピットへ。入った時はギブスが先頭でしたが、出た時にはホースバーが前に来ていました。ホースバーはステージ2終了後のピット作業でクルーの手に持ったタイヤがベリーの車に当たってあやうく怪我をしそうになり順位も下がっていましたが、集団の後方に付けて燃費走行し給油時間が短かったようです。接触された要因にはホースバーの停止位置がピット ボックスの手前すぎた、というのもあるのでチームで要改善ですがそれはまた別のお話。

 その後残り17周から残った人たちが2組に分かれて給油しサイクル一巡、最初に入ったホースバーとトヨタの愉快な仲間たちはできるだけ前に行きたいところでしたが、ホースバーを押す係だったハムリンに対してチャステインがかなり嫌なラインでブロック。ハムリンが完全に減速させられてしまい、支援役ハムリンを失ったホースバーも、ハムリンの後ろもみんな勢いを削がれてあえなく集団に埋まってしまいます、ハムリンは絶対チャステイン不満ゲージが溜まったでしょうね。その後サイクル一巡で前に来たのは最後にピットに入った人たちでした。シンドリックが先頭、ここにラーソン、バイロン、ボウマンとヘンドリック勢が続いています。さあ、いよいよ残り周回数が1桁になってきたらこのレースの本番です。


 残り4周、内側の先頭はシンドリックがピット後ずっと維持していましたが、外側はバイロンが抑えたいたところに内側の3列目からプリースが勢いよく飛び出して両レーンをフォードが抑えました。シンドリックの後ろはラーソン、プリースの後ろはバイロン。いずれもフォード-ヘンドリックシボレーの組み合わせとなります。ヘンドリックとすると良い位置に付けたように見えますが果たして。
 お約束とすると残り3周ぐらいで場所取りしていた4列目あたりの多重事故によりオーバータイム、というパターンですが、なんと今回は綺麗な2列を保ったままあれよあれよとホワイト フラッグ。もうこれでオーバータイムの可能性はありません。バックストレッチに入っても大きな動きは無く、ラーソンもバイロンも目の前の相手を押しまくります。そしてターン3に入ったところで押すのをやめて前方に放り投げ、あとは失速した相手を最後にひっくり返すという全く同じ考え、基本中の基本を徹底しました。が、あれ?


 なんか前方にちょうど周回遅れがいます。ひょっとして先頭走者も最後にドラフトを拾えてしまうのでは?と思わぬ外的要因が頭をよぎり、現地解説も当然これに気づきつつフロントストレッチへ帰ってきました。普通ならここでバンプと追い抜きと鬼ブロックがごちゃごちゃに混ざるはずなんですが、

 明らかに内側を走るシンドリックには周回遅れ2台分のドラフトが効いており、思ったほど失速しませんでした。シンドリックはドラフト欲しさに内側徹底維持、外にいたプリースはシンドリックにサイド ドラフトをかけようとしたのか横に車を並べ、バイロンはなんとかそのプリースを押していたので、シンドリックの後ろにいたラーソンは全く行き場が無く、シンドリックを押してあげる以外にできることがありませんでした。思ってもみなかった平穏で綺麗な隊列による結末となり、シンドリックが今季初・通算3勝目を挙げました。


「このチームを本当に誇りに思うよ。ピットサイクル、速い車、給油だけのピット作業、そしてスポッターのダグ。メナーズとジョン メナードのためにカップ戦優勝を勝ち取ろうと、3、4年も努力してきたんだ。この鮮やかな黄色の車は先頭を走るのが似合うね。みんなの応援に感謝している。フォード パフォーマンスのラウシュ イェイツ エンジンは、のようなトラックで比類のない性能さ。ミーティングのたびに、なぜこれまで一度もレースに勝てなかったのかを話し合ってきたんだ。ただただ努力を誇りに思うとともに、ディスカウント タイヤ、NAPA、オート トレーダー、ロジャー ペンスキー、そしてこの勝利を可能にしてくれたすべての人々に心から感謝しているよ。」


 2位からプリース、ラーソン、バイロン、ロガーノと続き、ようやくロガーノはトップ5フィニッシュを記録、ブチ切れた相手のチームメイトが勝ってしまいましたがとりあえず最低限の結果が出て一安心です。ノア グレッグソン、チェイス、ホースバー、ボウマン、ウォーレスのトップ10でした。誕生日のディロンは12位、ポールシッターのスミスは・・・あ、21位だ。

・ステージ 車検場

 なんとレース後車検で2位プリース、5位ロガーノに失格裁定。いずれもスポイラーに関するもので、プリースはシム(隙間を埋めるための部材)が規定の2枚ではなく3枚入っていたため、ロガーノは18本あるスポイラー締結ボルトのうち1本が緩んでいたためでした。いずれのチームも決定を受け入れて確定しており、以降のドライバーは順位が繰り上がりました。正式結果はシンドリック、ラーソン、バイロン、グレッグソン、チェイスのトップ5です。
 ということでロガーノの連続トップ5無し記録はさらに延びてしまいましたね。ちなみにロガーノの無線の暴言について、元アトランタ ブレーブスの名選手・チッパー ジョーンズがSNSで厳しく批判。ロガーノがさらにチッパーへ反論するちょっとした遠隔口論になりました。

 ドラフティングトラックは空気抵抗が勝敗に直結するので、たぶん車検で普段以上にかなり細かいところまで見てくるんだろうなと思います。ネジ1本ちょっと緩んだぐらいで、と思われますがちょっとした変形・歪み・たわみが性能を変えることがあり、見逃すとわざとそれを利用するところが必ず出てくるので、形式的な違反に見えますけどものすごく重要な問題です。今回は双方ともおそらく故意に何かインチキを働いてバレたのではなく単純に組み立て作業ミスだったと思いますが、偶発的に利益を得てしまっていたのかどうかは誰にも分かりません。
 RFKレーシングに関しては昨年の秋のタラデガでルーフ レールのボルトが緩んでレース中にどっかに行ってしまうという問題があったばかり。この時は当該ルーフレールが安全対策として急きょ追加された部品だったせいもあってかNASCARからの処分はありませんでしたが、この時にも『ペナルティーを課さないことによる問題は、故意に外れるように仕込むチームが出てくる可能性があること』と指摘されていました。今回はチームが3台体制になって従業員さんの体制が行き届いてない、という単純な問題に起因してるんじゃないかとも思いますけどね。

 一方ロガーノですが、あんなキャラなので分かりにくいですけど、3回目のチャンピオンを獲ったのにプレイオフ制の不備だという意見でどちらかというとその結果を認めてもらえていないような状況で、そこに加えて開幕から今一つ力強さに欠けています。今回の失格を受けてもポイントでは11位、だいたい13位前後でレースを終えているのでむちゃくちゃ酷いわけでもないんですが、文句を言わせないブレイニーみたいな結果を出したいけどそうならない現状はけっこう気にしてるんじゃないかと思いますね。あ、ちなみに去年は第10戦を終えた段階でポイント15位、今年より悪かったです(笑)


 YouTubeで見ると動画の尺が4時間弱あるので乱戦だろうとは思いつつできるだけタイムラインを見てみぬふりしていましたがまさかのえらくスムーズな決着。たぶんビッグワンを期待していた皆さんは拍子抜けだったと思います。ただ今回は『フィニッシュ直前にリーダーの前方に周回遅れがいる』という稀な状況が発生しており、普通ではあり得ないような終わり方でした。たぶん長い歴史でもドラフティングトラックであんなタイミングで周回遅れが出てきてレースに影響したことってほとんど無いと思います。
 もしあの2人があと0.5秒でも前方にいたらシンドリックはそんなにドラフティングの効果を受けられ無くて抜かれていたでしょうし、逆にあと0.3秒でも後方にいたらチェッカーを受ける前に追いついてしまい、最後の最後に『チェッカーに向けて争いながら周回遅れを避ける』という前代未聞と言える状況が発生してほぼ全員巻き込む大事故でもおかしくなかったと思います。あんなにリーダーにとって最高の条件で周回遅れが出てくるなんて狙ってやろうとしても無理なレベルです。ある意味で歴史的・奇跡的な決着だったとも言えます。
 今年のドラフティングトラックはこれで6戦中3戦が終わって3つの開催地を一巡しましたが、バイロン、ベル、シンドリックと3メーカーの3大チームが見事に勝利を分け合う形。シンドリックを意外な勝者とみなすべきかは多少議論の余地がありそうですが、とりあえず大きなサプライズは無く終えた感じですね。
 
 次戦は左右非対称1.5マイルのテキサス、その翌週はやはり1.5マイルのカンザスと続きます。これが終わるともうオールスター戦です。

コメント

日日不穏日記 さんの投稿…
昔、G+でウィナーが連続で違う例でソノマが紹介されていた記憶があります。確かソノマで、2005年にトニー・スチュワート以来、2015年、負傷明けのカイルが優勝するまで毎年優勝者が違うという。さて、ステージ2、3がノーコーションのタラデガを始めて観た気がします。ビッグワン、オーバータイムを予測していましたが、そのまま逃げ切るとは。やっぱりラップダウン目前の2台が影響していたんですね。プリースを応援していましたが、車検の結果からすれば、シンドリックの優勝で良かった気が。父親のティムが、NASCARから離れるので、尻に火のついたシンドリックが覚醒した・・・ような。ポストレースが20分もあったので、シンドリックのハイテンションぶりをたっぷり見ました。既婚者のジェイミー・リトルを抱き上げたら、問題だったけど、スミスなら別に良いか(笑)。ロガーノの失格で繰り上がったウェンディーズ(スアレス)がトップ10に入ったのは、唯一の救いでした(笑)。RFKは2台が潰れ、1台失格と散々な結末。字幕ではラウシュ・イェイツの200勝目とか出てましたし。そうだとしたら、皮肉以外の何物でもありません。最後に余談を2つ。ポルシェのスポーツカープログラムで、少し前にチーム・ペンスキーがホワイトハウスに招待され、ロガーノ、ブレイニー。インディ500、2連覇中のニューガーデンが招待され、ロジャー御大がスピーチ。チームとしての招待であれば、チャンピオンの訪問ではないので、良いのかな。さすがにロジャー・ペンスキーも、NASCARの了解は取っての参加だとは思いますが、ニューガーデンで検索掛けて、このニュースが出たので驚きました。最後に自分がプライベートで使っているgooブログがサービス停止。アーカイブが残るなら、残して移転も問題ないんですが、20年分のデータがあるので、何処に移転するのか四苦八苦。現時点でライブドア、はてな、ムラゴンに絞り込んでいますが、大手のgooが無くなるとは。アメーバで2つブログを運営する(出来るか知らんけど)気はないので、9月末のサービス停止(投稿、編集はここまで)にあたふたしている今日この頃です。
アールグレイ さんの投稿…
テレビでトランプ大統領のニュースをたまたま見ていたら、ロガーノのマシンが映っていたので調べてみるとペンスキーチーム全体でホワイトハウス訪問していたんですね。
ロジャーオーナーやロガーノやブレイニー、インディ500連覇のニューガーデン、今年のIMSAのデイトナ24時間を制したヴァントール/ナサーとメンバーも豪華でしたが、スポーツ界の大先輩にも言い返してしまうロガーノをこういう場に行かせて大丈夫なのかと心配になりましたw

ジリッシュの怪我による欠場は残念です。
早く戻ってきて欲しい気持ちは勿論ですが、カートやデイルジュニアの様に数戦の欠場で済むと見込まれていたのがシーズン終了まで長引いたケースもあるので、まだ若いジリッシュには無理しないでほしいです。
ベルのクラッシュもそうですが、ドラフティングトラックでインフィールドのウォールにぶつかった時のダメージは大きいでしょうね。

スミスがポールを取って、マクドウェルが今シーズン3度目のファステストラップポイントを取ったことも考えると、FRMもマクドウェルも速かったという事が分かって良かったです。

ロガーノは最悪な形で記録更新をしてしまいましたね。
チッパージョーンズはFRMの1-2が達成された時のタラデガ戦でグランドマーシャルを務めていた事が印象に残ります。
プリースも応援していましたが幻の自己ベストである2位になった事も残念です。

シンドリックはデイトナ500を勝ってるとはいえ、チームメイトとの連携にも課題を残す形の勝利ですが、もうカップシリーズも4年目ですし、エクフィニィティーではチャンピオン取った事もあるんだから先輩に必要以上に遠慮する事もないと思います。
SCfromLA さんの投稿…
>日日不穏日記さん

 プリースが勝ってたら失格で落胆が大きかっただろうからまあシンドリックで良かったんだろうなと思いますね。お父さんはNASCARからは離れるけどペンスキーをやめるわけじゃないので、ロガーノがあんなにボロカス言って大丈夫だろうかと余計な心配をしてしまいました(笑)
 ブログサービス終了は記事が多いと影響でかいですよね~、SNSに押されてるだろうから企業の集約が進んでしまうとは思いますが、移行サービスがあるようなのが救いですかね。
SCfromLA さんの投稿…
>アールグレイさん

 ロガーノは相手が社長の息子でも全然遠慮が無いんだなと思うとなんか笑えてすら来ますが、成績的にはちょっと笑えない感じな上にヒールキャラとは別の意味で「成績の悪いチャンピオン」という変なマイナスイメージが付加されてますから、長期契約があるとはいえ大丈夫かなとは少し気になってしまいますね。
 シボレーとトヨタは下からどんどん若いやつが出てくるのに、フォードはどうしても組織的に弱くてそれがないだけに、たまたまとはいえスミスが手元に戻ってきたのは好機だと思うので、フロントロウもフォードも本人もこの機会を上手いこと活かして欲しいなあと思っています。