※2025/5/12 レース設定微修正のため記事内容も修正しました
2025年4月20日はキリスト教にとって重要な祝日・イースターでした。というわけで先週のNASCARカップシリーズはシーズン唯一のお休みとなっていました。一方でトラック、エクスフィニティーの両シリーズはレースが続き、ロッキングハム スピードウェイでレースが開催されました。また、4月23日には今年のオールスター戦のレース概要が公表されましたので、そのあたりの話題も併せて書いていきます。
というわけでまずはロッキングハムでのレースから簡単に振り返りましょう。ノースカロライナ州ロッキングハムにあるロッキングハムスピードウェイ、1965年開場で1周約1マイルのトラックです。Dシェイプでバンク角はターン1・2が22度、ターン3・4側が25度とかなり高い上に左右非対称。ノースカロライナ州といえばシャーロット モーター スピードウェイが思い浮かびますが、シャーロットとここは直線距離で約100km、実際は真っ直ぐ行く道路が無いので130kmほど離れた場所にあるようです。
1965年から2004年までカップシリーズは合計78戦開催されましたが、1990年代に入って設備が古く手狭であるこのトラックはカップ戦開催が継続できるのか雲行きが怪しくなり始め、また所有権をめぐって裁判が起きるなどごたごたとした状況が続きました。結局2004年を最後にカップシリーズは開催されなくなり、その後NASCARとしては2012年・2013年にトラックシリーズが一時的に開催されはしたものの、お金が無くて以後ほとんどトラックは放置状態となっていました。
2018年に新しい投資家が現れてここを音楽や自動車レースの場にしようと再建に乗り出し、州知事・ロイ クーパーも財政支援を行ったことでようやく再舗装など老朽化した設備の改修に着手。2020年はCOVID-19 パンデミックに見舞われますが、クーパー知事は自動車レースを州の大事な産業として支援する姿勢だったこともあって追加の支援が得られ、これによって再びレースが開催できるようになりました。
ちなみに、2021年に再開後初のレースとしてCARS ツアーというレイト モデルのレースを開催するはずが、当時は世界的に物流が目詰まりしていた時期だったので、タイヤ供給メーカーが必要な数のタイヤを準備できなくなってしまい中止になる、というまさにこの時期ならではの問題にもぶち当たったそうです。また、再舗装後にトラックの長さを再計測したら、従来の1マイルではなく0.94マイルだったことは分かったそうです。
今回、イースターの週末にNASCARが12年ぶり、エクスフィニティーシリーズなら21年ぶりに復活。ここにARCA メナーズ シリーズ イーストのレースも併催される豪華3本建てとなりました。
・ARCA Menards Series Rockingham ARCA 125
ARCA東シリーズの2戦目となるこのレース、ロッキングハムはARCAとしては2010年以来の開催になるようです。レースはジョー ギブス レーシングの若手・17歳のブレント クルーズが125周のうち121周をリードする圧倒的な力でチームメイトのウイリアム サワリッチを退けて優勝しました。クルーズはARCA全国シリーズの第2戦・フェニックスでも優勝しており、JGRはそもそも車が速いというのもありますがこのレベルだと無双状態です。
なお唯一の日本人選手・古賀 琢麻は11周遅れの15位でした。
・Craftsman Truck Series Black's Tire 200
トラックシリーズは思わぬ幕切れ、最終ステージに入ってリーダーはチャンドラー スミスでしたが117周目に発生したコーションでピットへ。これでステイアウトしたコリー ハイムがリーダーとなって残り77周でリスタートすると、彼とチームメイトのジオ ルジェーロはいずれも残り30周ほどで給油のためピットに入りました。ところがタイラー アンクラムをはじめ複数のドライバーはノーピット狙いで燃費走行を続けます。
アンクラムに対しては燃料を持っているスミスが来ており情勢は不利。アンクラムと同じ戦略のドライバーは残り周回数が少なくなると力尽きてピットへ向かっており、アンクラムも無理かと思われました。ところが残り4周、先に燃料が尽きたのはなんとスミスでした。直線ドリフトでもするのかというぐらい車を振り回して燃料を絞り出しています。
これでスミスに対して5秒以上の大差を付けたアンクラムですが、スロットルを半分も踏まないような超絶節約走法でも残り2周でとうとう限界が近づき空走し始めました。優勝か、ガス欠か、最後まで目が離せない戦いとなりましたが、アンクラムがなんとか最後まで耐え抜き、2019年第13戦ケンタッキー以来130戦ぶりの通算2勝目を挙げました。服部さん、アンクラムがやりましたよ!
このレースはトリプルトラックチャレンジの最終戦だったので、アンクラムはボーナス賞金5万ドルも獲得。2位はポールシッター・ジェイク ガルシアでしたが6秒差。結果として燃料さえなんとかなればピットに入らなかったのが正解で、ハイムは1周遅れの8位でレースを終えました。スミスは最後に力尽きたので1周遅れの13位でした。アンクラムの見た目、なんかかわいいですね(笑)
・Xfinity Series North Carolina Education Lottery 250
なんとケイシー ケインが2018年以来7年ぶりにNASCARに復帰するという驚きもあったエクスフィニティーシリーズ。ケインはリチャード チルドレス レーシングの33番で、スポンサーはヘンドリックカーズドットコム、カップシリーズでいつもラーソンが背負っているお馴染みの外観で登場しました。RCRなのにヘンドリック!?という感じですが、ケインはNASCARを引退した後はダートのレースに出ており、ラーソンが共同創設者になっているクボタ ハイ リミット レーシング シリーズという選手権に出ているため、ラーソンとは連絡を取り合う仲間だとのことで、そういった関係から実現したと思われます。
45歳のケインは2004年のカップシリーズ最後のロッキングハムのレースに出場しておりこの時は2位。エクスフィニティーでも5戦に出場しており、たぶんトラック上でいちばんここのことを知ってるんじゃないでしょうかね。
しかし52周目、サワリッチが周回遅れのキャサリン レッグに追突し、その流れでケインも貰い事故で被弾。外装がけっこう壊れ周回遅れとなってしまいます。レースはその後も大荒れとなり、終盤はトラックと同様に燃料サバイバルへ。残り10周のリスタートでは2列目にいたクリスチャン エッケスがガス欠したので後ろにいたライアン シーグなど有力どころが巻き込まれ、残り4周のリスタートも次第にぐっちゃぐちゃになって多重事故となりオーバータイムへ。
オーバータイム、常にこのレースを積極的に戦って速さを見せていたジェシー ラブが2列目リスタートからサミー スミスを押しのけてリードを奪いそのまま1位でチェッカーを受けましたが、レース後の車検でなんと失格。これで繰り上げによりサミー スミスが今季初・通算3勝目を挙げるとともに、ちょうどダッシュフォーキャッシュ対象選手だったので賞金10万ドルも手にしました。
ケインは周回遅れを挽回して14位でした。また、カート経験者でeNASCAR コカ コーラ iRacing シリーズで活躍、『eレーサー』という認識を持たれているビセンテ サラスがエクスフィニティーに初登場し24位。ホームステッドには真っ黒な車で登場したジャスティン ボンシニョーアは今回はちゃんとスポンサーが付いていましたがクラッシュでリタイアした上に、ラグ ナット装着不備の違反でレース後に失格になりました。
そしてレース後、ケインを巻き込むクラッシュの起点となったレッグに対してはSNS上で中傷投稿が相次ぎ、彼女によれば殺害予告や性的な内容の投稿もあるとのこと。これに対しては、競技における批判ではなく単に女性であることに対する差別的内容だとして断固抗議する姿勢を見せました。
〇 2025 オールスター戦概要
さて、ここからは5月18日にノース ウィルクスボロ レースウェイで開催されるオールスター戦についてです。2023年からここで開催されるようになって今回が3回目、1周0.625マイルのショート トラックです。今年もちょっと新しいネタを持ち込んできたNASCARさん、事前に勉強しておきましょう。まず出場条件ですが、これは毎年お馴染みです。
・2024年、2025年のカップシリーズ優勝者
・2025年にフル参戦している過去のオールスター優勝者
・2025年にフル参戦している過去のカップシリーズチャンピオン
このいずれかに該当していれば自動的にオールスター本戦に出場が可能、現時点で20人が権利を持っています。ただこの中でハリソン バートンだけは今年のカップに居場所が無いので、出るためにはどこかのチームが居場所を用意してあげる必要がありますね。ここに加えて後述のオールスター オープンの上位2名と、ここまでに出場権を得られなかった選手の中でファン投票の得票数1位の選手がオールスター本戦へ出場することができます。なお、ファン投票はこちらから行うことができます。既に出場権を得ている人は一覧から外れていますので、結構対象者が少ないです(笑)
〇 ピット クルー参加型予選
予選は普通に走るのではなく、各ドライバーはトラック上を2周してピットに入り、ピットで4輪交換を行ってからピットを出てもう1周する『3周+4輪交換』の時間で計測を行います。昨年はこの方式でオールスター本戦出場権を持つ人がヒート レースの順位を決定、オールスターオープンのスタート順位は別途"普通の"予選で決めていましたが、今年はオープンに参加する選手も全員この方式に参加します。
オールスター本戦のスタート順位はヒートレースを経て決定されますが、例外的にこの予選で最速だった1人だけはヒートレース/オールスター本戦の双方でポール ポジションを得ることが確定します。また、ここでは4輪交換のピット作業単体の時間も同時に計測されるピット クルー チャレンジが同梱されており、レースでのピット位置選択権はピットクルーチャレンジの順位に基づいて与えられます。
〇 ヒートレース
決勝のスタート順位を決める予選レースとなるのがヒートレースです。予選順位で奇数の人が出るヒートレース1と、偶数の人によるヒートレース2、いずれも75周のレースが行われます。30周目あたりにはコーションがだされます。ヒート 1の人は結果順にオールスター本戦で内側に並び、ヒート 2の人が外側に並びます。ヒートレースは1回だけオーバータイムがあります。
※当初は60周のレース設定でしたが、75周・1コーション必須性に変更されました。
〇 オールスターオープン
オールスター本戦出場権が無い人による100周のレースです。40周目あたりでコンペティション ブレイクとしてコーションが出される実質2ステージ制となっており、最終順位の上位2人がオールスター本戦へ出場することができます。こちらも1回だけオーバータイムがあります。なおオープンから本戦へ出た場合、スタート順位は最後列となります。
〇 オールスターレース
そしていよいよオールスター本戦、昨年は200周でしたが今年は250周に増量されました。100周目付近でコンペティションブレイクが出されますが、これ以外に220周目までのどこかのタイミングでは、運営側が任意でコーションを出すことができるという『プロモーターズ コーション』というものが導入されます。いつ出るかは運営のさじ加減次第、公表された概要には回数が書かれてない気がするんですがたぶん1回だけでしょう。ただし運営コーション未使用の状態で200周目以降に自然にコーションが出た場合には、もう運営コーションは出せないと規定されています。たぶん100周目以前には出ないでしょうし、かといって出しそびれるのも勿体ないので、まあ180周目ぐらいに出るんじゃないですか、知らんけど(笑)
オールスター本戦だけは通常のシリーズ戦と同様に回数無制限のオーバータイム制度が導入されます。また、いずれのレースもグリーン フラッグ周回だけ数える特別規則は適用されず、普段のレースと同様に全ての周回が数えられるので事故多発で周回数が増えずに無限ループする現象は起きません。優勝すると賞金100万ドルが送られます。
〇 マニュファクチャラー ショウダウン
なんかいきなりグランツーリスモみたいな名前が出てきましたが今年新設される表彰規定みたいなものです。オールスター本戦に出場している車両をメーカー別に集計してメーカー対抗戦もやってしまおうというもので、シボレー、フォード、トヨタの3メーカーの選手のレース順位を比較して、足し算で最も少なかったメーカーが勝利となります。
ただし全メーカーから同一の人数がオールスターに出るとは限らないので、最も人数の少ないメーカーに他のメーカーが合わせる形になります。たとえばシボレー10人、フォード8人、トヨタ5人だった場合にはトヨタに合わせてシボレーとフォードもそれぞれ5人が対象となります。公表された文章だと『オールスターの最終スタート順位に基づいて選ばれる』と書かれているだけなので、たぶん5人だったら各メーカーの予選上位5人が対象者になるんじゃないかと思います。
対象となるドライバーのオールスターでの順位をそれぞれ合計し、最も数字が小さかった(=平均順位が高かった)メーカーが優勝、もし数字が同点だったら最高順位で上だった方が優勝となります。ってこんなところまで観戦しながら見る余裕あるかね、私は45周目ぐらいに忘れる気がするぞ(笑)
さあ、次戦は恐怖のタラデガでのレース、トラックシリーズはお休みとなります。
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