NASCAR 第5戦 ラスベガス

NASCAR Cup Series
Pennzoil 400 Presented by Jiffy Lube
Las Vegas Motor Speedway 1.5miles×267Laps(80/85/102)=400.5miles
winner:Josh Berry(Wood Brothers Racing/Motorcraft Quick Lane Ford Mustang Dark Horse)

 NASCAR カップ シリーズ、第5戦はラスベガス。シーズン5戦目にしてようやく普通の1.5マイルがやってきました、ABEMAでご覧のみなさん、これまでの4戦はどっちかというと特殊なレースでこっちが普通なのでお間違いなきよう。と言っても段々特殊なレースが増えてはいるんだけど。ちなみに今週のアベマ解説は日テレG+の解説陣でもおなじみだったモータースポーツジャーナリスト・天野 雅彦。放送では愛称である"ジャック・アマノ"で紹介されてましたね。私はオートスポーツの連載で毎月天野さんの名前は見ており、記事の文章に天野さんの声を脳内再生して付けています(笑)

 今回の注目はやはり3連勝中のクリストファー ベルが史上9人目となるシーズン4連勝を達成するのかどうか。彼は2023年、2024年といずれも秋のラスベガスでは2位を記録、ポール ポジションも3回獲得していますがまだ優勝経験は無し。チームとしてもジョー ギブス レーシングはGen7のラスベガス6戦で一度も優勝が無く2021年のデニー ハムリンが最後となっています。JGRはチーム別最多・ラスベガスで通算8回のポールを獲っていますが優勝は4回しかありません。
 Gen7のラスベガスではジョーイ ロガーノとカイル ラーソンが2勝ずつ、ここにアレックス ボウマンとウイリアム バイロンが1勝ずつです。ロガーノは現役最多のラスベガス通算4勝、通算10戦以上出場経験のあるトラックでは最も平均順位が良くて好相性を誇ります。まあなんと言っても自身の主要スポンサーであるペンゾイルが大会スポンサーでもありますから、目立って活躍してナンボですね。でもGen7に限ればラスベガスで最も平均順位の高いドライバーはロス チャステインで、6戦中5戦で7位以内に入って平均順位5.5。そろそろ見たいぞオーバルのスイカ割り。

・レース前の話題

 オフからNASCAR界を騒がし続ける23XI レーシング/フロント ロウ モータースポーツとNASCARによる反トラスト訴訟問題。ざっくりと流れを追うと、両チームは2025年からの新たなチャーター契約の内容に納得が行かなかったので署名を拒否し継続交渉を訴えたものの、NASCAR側はチャーター契約に署名していない両チームには既存保有分、新規購入分ともチャーター チームとして参加する権利を認めないと主張。
 これを受けて両チームが『NASCARは優越的地位を使ってチームに不利益を与えている』として反トラスト行為で提訴し、判決が下るまでの間はチャーター権を有した状態で活動できるように仮処分を申し立てました。一度は却下されたものの、証拠類の提示や判事の変更などを経て裁判所はこの主張を認めて仮差し止め命令を執行、おかげで両チームはひとまず開幕からチャーターを有するチームとしてシリーズに参加。
 しかしNASCAR側も黙ってはおらず、仮差し止め処分の撤回を求めて控訴を行うとともに、3月5日には『23XIとFRMは共謀して反トラスト法だと騒ぎ立ててワシらを脅迫してきおった、お前らこそが反トラスト行為や』と新たに反訴も行いました。これでNASCARと両チームは互いに相手を訴えた裁判が平行する状態となり、しかも最初の訴訟は『NASCARは反トラスト行為を行ったか』という本筋と『判決確定まではチャーター権利を認める仮処分を継続すべきか』という2つの争点で争われています。仮処分に関する控訴審は5月9日、訴訟本体の公判は12月1日に行われるとのことですが、どっちも折れる雰囲気ゼロですね。。。

・Craftsman Truck Series Ecosave 200

 雨による中断を2回挟んだこのレース、16位スタートのコリー ハイムは最初のコーションでピットに入った際に速度違反をやらかして後方に落ちましたが、ステージ2終了時点で4位まで盛り返すと3回目のコーションでは迅速なピット作業により先頭へ。結局このレース最多の42周をリードし、追い上げてくるグラント エンフィンガーを0.825秒差で下して開幕戦デイトナに次ぐ今季2勝目・通算13勝目を挙げました。


・Xfinity Series The LiUNA!

 たぶんシーズンで唯一イベント名に感嘆符が付くエクスフィニティー シリーズ、1周目にいきなりコーションが出たものの、それ以降はステージ間コーションしか無い展開でした。ロング ランの安定性が求められるレースでは2人のベテラン・ジャスティン オールガイアーとエリック アルミローラが2人だけでレースをほぼ支配。最終ステージ終盤、リーダーのオールガイアーに対してアルミローラは一時2秒ほどあった差をじわじわと詰めて1秒以内に入ったものの、そこから先に踏み込むことができませんでした。このレース最多の102周をリードしたオールガイアーが通算26勝目、JRモータースポーツはエクスフィニティーで通算90勝目を挙げました。

 なお、このレースは次戦から始まるダッシュ フォー キャッシュの予選レースとなっており、オールガイアー、ジェシー ラブ、オースティン ヒル、サム メイヤーの4人が最初の賞金10万ドルを獲得する権利を得ました。

・カップ シリーズ
 予選

 なんとびっくり、ドラフティング トラックじゃないのにブッシュ ライト ポール賞はマイケル マクダウルが獲得しました、通算7回目。2位にロガーノ、3位はオースティン シンドリック。地元ラスベガス出身のカイル ブッシュが4位でエリック ジョーンズ、ボウマン、ジョッシュ ベリー、バイロン、ゼイン スミス、ラーソンのトップ10。ベルは予選13位でしたが車両の調整を行ったので後方スタート。車に満足できなかったのかなと思ったらスロットル系の不具合が原因で部品交換していました。
 チャステインは予選20位でしたが練習走行では2位を0.2秒以上ぶっちぎる最速で、平均ラップタイムでも概ね最速でした。ライアン ブレイニーは練習でクラッシュしたので後方スタートです。
 
・ステージ1

 スタートからの争いを制したロガーノがリード、さすがに予選と決勝は別物でマクダウルは少しずつ順位を下げて行きます。代わってシンドリックがかなり良い走りでロガーノを追いました。
 80周のステージ1ですがトラック ポジションを重視して30周目あたりから早くもピット サイクル到来。ところが33周目にチェイス ブリスコーの左後輪が脱輪、Gen7になって4年目ですが未だに脱輪案件が頻発して困ったものです。これでサイクル途中にコーションが出て面倒なことになります。
 まだ入っていなかった人はコーション中に給油とタイヤ交換、リスタート時点でリーダーとなったのはコーションとほぼ同時にピットにいて運が良かったシンドリックで、同じくコーション前に入っていたボウマン、ロガーノが続きました。ここにコーション中のピットで最上位だったカイルが続く、はずが痛恨の速度違反。繰り上がってチェイス エリオットが全体4番手となります。
 このコーションが最悪だったのはブレイニーで、後方スタートから追い上げて既に17位付近を走行、空いた場所を走るためにアンダーカットを狙って真っ先に30周目にピットに入っていたんですが、左前輪のナットを締める前に動いてしまって、締め直すのも上手く行かず合計33秒ほどの長時間滞在、これで追い上げが台無しになった上にコーションが直撃してリスタート時点で周回遅れになっています。

 41周目にリスタート、数周は抜きつ抜かれつでしたがやがてシンドリックが抜け出してクリーンエアーをゲッツ、ボウマンを1秒以上突き放します。シンドリックは周回遅れが前方に1台現れただけで急にボウマンに追いつかれているので極端なクリーンエアー番長にも見えるんですが、とりあえずそのままステージ1を制しました。ボウマン、チェイス、バッバ ウォーレス、ラーソン、A.J.アルメンディンガー、ロガーノ、ベリー、カーソン ホースバー、ベルのトップ10。
 シンドリックが快走してタイ ギブスを周回遅れにした結果、ブレイニーはフリー パスを得ることができなくてステージ2も周回遅れから始まることになりました。ロング ランが続くとフリーパスが得られない無間地獄になるので早いとこコーションを拾いたいですね。

 レースの優勝者はベルが3連勝中ですが、今季ここまでの9つのステージ勝者は全て異なるドライバー。FOXとすると各ドライバーの素材をちゃんと撮影しておいたのが役になっています。せっかく撮っても活躍しないとこのスタイリッシュカットの出番無いですからね(笑)

・ステージ2

 リードラップ車両がピットへ、チェイス、ウォーレス、シンドリックの順でピットを出ましたが、チェイスは速度違反でした・・・というわけでステージ2はウォーレス/シンドリックの1列目、89周目にリスタートです。
 本日は空軍がスポンサーのウォーレスがリーダー、スキームのモチーフはたぶんB-2型ステルス戦略爆撃機ですね。これにラーソンが続きます。シンドリックはクリーンエアーを失ったせいか後退、ボウマンはリスタートから僅か2周で異変を感じたようで緊急ピット、周回遅れになりました。集団で争っている中からいきなり1人だけ減速してピットに飛び込んだのでかなり危ない場面でしたが後続は見事に回避、さすがはプロ。


 ウォーレスのリードは長くは続かず、100周目にラーソンが前に出て一気に差を広げていきます。ちょっとタイトっぽい雰囲気のウォーレス、クリーンエアーを失ったらさらに苦しくなるんじゃ、と思ったら予想通り3位に後退。代わって2位に上がったのは、え、ベル!?うそでしょ!?この後107周目にターン2でシェイン バン ギスバーゲンがスピンしたためコーションとなります。ブレイニーはこれでフリーパスを得てリード ラップに復帰。
 リードラップ車両がピットへ、ウォーレスがリードを奪い返しバイロン、ラーソンが続きます。ベル君はなんか様子が変、、、と思ったら左前輪のナットが締まっておらず、クルー チーフのアダム スティーブンスは無線で「誰かのボックスで止まって!」と絶叫。ベルはチームメイトのブリスコーのボックスに入り、事情を聴いたらしいクルーからナットを締めてもらいました。前代未聞、他人のクルーでピット作業完了です(笑)
※ブリスコーのピットです

 自身のピット ボックスから外れたところで作業しているのでもちろん最後尾リスタートのペナルティーなんですが、枠からタイヤが10cmはみ出していても全然関係ない場所で作業しても、言われてみれば規則上は同じ扱いでそれ以上の罰則規定はありません。トラック上で脱輪させて2周ペナルティーを受けるより遥かにマシという機転の利いた戦略でしたけど、いやそれ以前にちゃんと締めて確認して発進するように心がけてくれ。

 113周目にリスタートしますがターン2でカイルが壁に接触、これもナットのゆるみが発端だったのか右後輪が外れて、さらにタイヤとホイールも分離して凶器がトラック上を転がりました。幸い誰にも当たりませんでしたが立て続けとなる4回目のコーション。コーションまでにバイロンとラーソンがいずれもウォーレスをかわしており、120周目はこの2人の1列目でリスタート。ラーソンが先行してバイロン、レディックが続きます。
 しばらくは0.5秒ほどの差でラーソンに付いていたバイロンでしたが、乱気流の中を走り続けたせいか次第に離されて行って、やがてラーソンから1秒以上離れた場所でレディックとの2位争いに。これで益々ラーソンの独走となっていましたが、147周目にトッド ギリランドが壁にぶつかって5回目のコーションとなります。ぶつかって跳ね返った際にリッキー ステンハウス ジュニアにも当たりましたが大きな損傷にはなりませんでした。

 リードラップ車両がピットに入りますが、ステージの残り周回数が少ないのでチャステイン、ジョーンズ、ハムリンの3人が2輪交換を選択。153周目/ステージ残り13周でリスタートするとジョーンズが上手いこと壁になってくれたのでチャステインは7周をリードしたものの、さすがに逃げ切ることはできず。むっちゃ速いラーソンがステージ2を制しバイロンが続きました。チャステインはステージ3位、コーション前は11位だったので作戦としては大成功、ウォーレス、ホースバー、ブレイニー、ダニエル スアレス、ベリー、レディック、ステンハウスのトップ10でした。ブレイニー、気づけばフォード勢最上位です。なおラーソンは今季2度目のステージ勝利、異なるドライバーによる連続ステージ勝利はここで止まりました。
・ファイナル ステージ

 今回も作戦が分岐、マクダウルとオースティン ディロンがステイ アウトを選択し、スアレスは2輪交換。そこに4輪交換のラーソンが続いて174周目にリスタートしました。もちろんラーソンは1周で全員抜いてリードを奪還し、続くのはやっぱりバイロン。このグリーンは長くは続かず、188周目にコディー ウェアーがクラッシュしてコーションとなりました。
 リードラップ車両がピットに入りますがコインの表裏の状況は継続、今回はまたチャステインが2輪交換して先頭でピットを出ました。ピット前の段階で既に3位にいたので堅実に4輪交換でも良かった気がするんやけどなあ。でも2輪交換でちゃんと順位が上がる人はまだマシなもので、ホースバーは2輪交換で素早く出ようとしたら入ってきたギブスとまともに接触。行く手を阻まれてしまい、これなら4輪交換の方がマシでした。ちなみに他人のピットで作業したら違反ですが、ボックス内に収まってさえいれば進行方向と逆を向いていても別に問題はありません(笑)

 195周目にリスタートしますがバックストレッチで別々の2件の事案が発生、前方ではターン2の出口で4ワイドになってしまい、間に挟まれたブレイニーが引っかけられてスピン、多重事故になりました。でもその遠因はターン1で3列目のスアレスがシンドリックの内側にノーズを突っ込もうとして接触し失速したためで、突っ込みたくなったのはシンドリックが2輪交換であんまり速くなかったため。作戦が分かれると思わぬところに波及するものです。ブレイニーはこれでリタイア、エンジンが壊れた先週に続いて2戦連続です。
 ここで上位6人を含む全体の半数ほどがピットへ、残りが70周弱なので給油しておけば最後まで走りきれる距離となっており、とりあえず燃費レースでの大損を回避しに行きました。さっきのリスタートでリードを失ったチャステインは開き直って4輪交換、やっぱりあのタイミングでの2輪交換は選択ミスちゃうかなあ。

 ステイアウトした人も非常に多く、レディック/スアレスの1列目で201周目にリスタート。ラーソンは9列目からのリスタートです。上位はレディックを先頭に比較的落ち着いている一方で、中団は速い人と遅い人が混ざってそこらじゅうで激しい争い、お客さんはたぶん今日一番楽しい時間でしょう。問題は上位の人が燃料をケチってこのまま走り切るのか、1ピットを前提にしつつコーションが出てくれるのを待つのか。昨年の秋のラスベガスも残り69周でリスタートして燃費レースになり、絶妙の燃料&ペース配分を行ったロガーノが勝っています。でも今回のステイアウト組は70周以上走る必要があるので、直線でもスロットルを戻すぐらいやらないと足りない気はします。

 レースが動いたのは230周目/残り38周、ここまでずっと2位にいたスアレスがレディックをかわしてリードを奪います。すると3周後、4位に付けていたハムリンがピットへ、さっきリーダーになったばかりのレディックもハムリンに続いてピットに入りました。燃料は気にせず飛ばしていたようです。ところが近くにいた数名は反応せずに走り続けており、ひょっとしたら最後まで行く気じゃないかという雰囲気。
 レディックがピットに入ったことでリーダーとなったスアレスも燃料を気にしたのか急にペースが落ち、オーダーはロガーノ、ベリー、スアレスのトップ3へと変動。さっきのコーションでピットに入った中ではチャステインが最上位の8位あたりにいますが、なんとなく燃費を気にして無理に前を追っていないように見えます。だとしたら上位勢はだいぶ燃料が厳しい気がするんですけど、ロガーノは燃料タンク増設してんのかと思うぐらい走る時あるからなあ。
 と思ってたら残り25周、ノア グレッグソンのタイヤがバーストしてクラッシュ、コーションが出て状況が一変しました。全員ピットに駆け込んで給油と4輪交換、ピット前に3位だったスアレスのクルーが会心の作業で最初にピットを出てベリーが続きました。一方でさっき先頭にいたロガーノは作業で失敗して20位あたりまで後退、映像が無いので分かりませんが右側の交換を終えた時点で既に抜かれまくっていたので、右側のタイヤ交換か、それ以前に出入りの交錯で時間を食っていますね。ああこれなら燃費レースの方がまだマシだった(っ ◠‿:;...,

 残り19周、スアレス/ベリーの1列目でリスタート、チャステインは2列目、ラーソンは4列目から。リスタートからの争いはやや劣勢に見えたスアレスを後ろにいたチャステインが押して助けてあげますが、依然として車の動きはベリーの方が良さそう。3周ほど並走した末に残り14周でベリーがリードを奪いました。

 本来なら前が並走している隙を衝きたかったチャステイン、実際にはバイロンと並走になった上、結局軽い接触があって2人ともライアン プリースに抜かれました。ベリーを追いかける強敵になるはずだったチャステインもバイロンも後退、最強ラーソンはまだ9位。これはもしやベリーの番狂わせか。ウッド ブラザーズ レーシングのクルーも緊張の面持ち、最古参チームらしくスーツはレトロな雰囲気のデザインですね。

 でもどうせ誰かがしょうもないミスでコーションを出して台無しになるんでしょ、と思ったらなんとそういうお約束もなくホワイト フラッグ。ジョシュア ウイリアム ベリー、テネシー州ヘンダーソンビル出身の34歳が2位のスアレスに1秒以上の大差を付けてカップシリーズ通算53戦目での初勝利。チェッカー直後の無線の声が案外落ち着いていたのが印象的でした。

 やべえ、このマスタングよだれが出るほどカッコイイ。ウッドブラザーズはカップシリーズ通算101勝目、ウッドブラザーズの優勝ドライバーはこれが通算20人目となり、ウッドブラザーズで初勝利を挙げたのはベリーが9人目です。ちなみにトレバー ベインとハリソン バートンは今のところウッドブラザーズでの初勝利による1勝だけしか挙げられてないドライバーです。ハリソン君はまだ分からないけどベインはもう戻っては来ないのかな・・・

「ああ、なんて考えればいいのか分からない。ただただ最高さ。このトラックが大好きなんだ、ラスベガスは私にとって本当に良い場所だった。ここでは素晴らしい瞬間がたくさんあったんだ。」

 ベリーはエクスフィニティーでの通算5勝のうち2勝をラスベガスで挙げており、とりわけ相性の良いトラックでした。

「ここではネクストジェンカーでは苦戦してたんだ。でもマイルズ(クルー チーフのマイルズ スタンレー)とこの21番のチーム全員、ウッドブラザーズレーシングのみんなが今日、私に素晴らしい車を用意してくれた。ひたすら争って争って争って、ああ、今日は私たちの日になった。信じられない。最後はダニエルと1.5マイルで激しくぶつかり合ってクレイジーだった!前に出た方が勝つだろうと思っていたよ。私たちは前に出ることができたんだ。」

 2位からスアレス、プリース、バイロン、チャステインのトップ5。シンドリック、ボウマン、アルメンディンガー、ラーソン、チェイスが続きました。4連勝を狙ったベルはナットを締め損ねた代償が高くついた形で12位止まり、ラーソンは15位、ポールシッターのマクダウルは16位。この週末にラスベガスのカジノでマジで27万ドルほど儲かったというハムリンはここで運を使い果たしたか25位でした、何してんねん(笑)


 ベリーは先週のフェニックスでも4位、このレースも普通に走っていたらトップ10には入れるような好走を見せていたので速さはそれなりにありましたが、そこにレース展開の要素が加わったとはいえまさか勝ってしまうとは全く想定外でした。ウッドブラザーズはペンスキーと提携してデータを貰ってはいますが、完全にペンスキーのクオリティーの車両とはいかず決勝で勝つほどの力が無いというのがおそらく誰しもが持つ共通認識だったと思います。
 今回もラーソンと1対1で勝負したらさすがに勝てる車では無かったと思いますが、戦略が分岐したことで強敵が追いかけてくる場所にいない、というなかなかありそうで無い絶好機を迎え、それを見事に制しました。スアレスとの争いは彼の言う通り雌雄を決するもので、焦って膨らみすぎてぶつけたりすることなくギリギリを攻めてリードをもぎ取った走りは見事でした。ラスベガスでは自信があった、というのは大きそうです。
 作戦が分かれたのは195周目からの8回目のコーションでしたが、ピットに入った上位勢の戦略は特に間違ったわけでもなく定石と言え、他方でまあもう1回ぐらいコーションは出るだろうというのを込みで行けるだけ行ってみる戦略もギャンブルというほどではないもう1つのセオリーと言えるものだったと思います。ロガーノとクルーチーフ・ポール ウォルフが燃費レースギャンブラーなのはお馴染みですが、今年ベリーのクルーチーフを担当しているスタンレーも昨年まで3年間ペンスキーでパフォーマンス エンジニアを務めており、それ以前の7年間はロガーノのレース エンジニアでした。つまりチャンピオンの戦い方をよーーーく知っています。
 ペンスキーのサイトによると、スタンレーはエンジニアとしての初期をフォーミュラ アトランティックで過ごし、先週スポット参戦していたキャサリン レッグとも当時仕事をしていたとのこと。その後ストック カーに転向してロビー ゴードンと一緒に仕事をすることになり、その結果ストックカーだけではなくオフロードの仕事もやることになってダカールラリーも経験することができました。その後BKレーシングを経てペンスキーに加入したそうです。あと、どうやら『マイルズ』はあだ名っぽくて本名は『サミュエル』みたいですね。クルーチーフとしてフル参戦するのは今年が初めてですが、ウッドブラザーズとしては彼の加入がひょっとしたら大きな戦力になっているのかもしれません。
 付け加えておくと、結果としては全くパッとしなかったバートンですけど優勝してプレイオフに進んだことで昨年のオーナー順位でウッドブラザーズを16位にしましたので、収益分配金という面で陰ながら彼の功績も役立っているのではないかと思います。

 次戦も1.5マイル、ラスベガスと違ってペーパークリップ型のちょっと特殊なホームステッドです。ベルの連勝は止まりましたけど、ここまでの勝者はバイロン、ベル、ベリーの3人なので苗字がBで始まる選手が開幕5連勝。Bはブレイニー、ボウマン、ブリスコー、ブッシャー、ブッシュもいてアルファベット別で最多の8人なのでこちらの連勝記録ならまだ続くかもしれません(笑)

コメント

首跡 さんの投稿…
ベリーの初優勝は本当に嬉しかったです。
ハリソン バートンの初優勝も印象に残っていますが、正直、ウッドブラザーズ レーシングが1.5マイルで勝つのは想定外でした。
前戦のフェニックスでも良い走りをしていましたし、ベリーはショートトラックでの経験が豊富なドライバーなので、チームとともに今後の活躍が非常に楽しみです。
SCfromLA さんの投稿…
>首跡さん

 ベリーはショートトラックなら展開次第でひょっとして、という印象はあったんですけど1.5マイルは全くの想定外でした。昔に比べればかなり平均年齢が下がってはいるものの、マクダウルを見てると遅咲きでもまだまだ一花咲かせられるレースではあるので楽しみが増えましたね。
日日不穏日記 さんの投稿…
タイヤトラブルとペナルティが多かったイメージはありますが、ラーソンとバイロンがスプラッシュをチョイスして、ポジションを落として、上がれなかったのが、結果的に大きかった気がします。オッズでは圧倒的にラーソンでしたから、ベリーに賭けてたら、「万馬券」じゃないかと。ファイナルラップでベリーがスアレスを引き離して時点で、震えが来ました。RFKレーシングのブッシャーのぬか喜びの再現にならないかと思いましたが、そのまま逃げ切りました。デイトナ500のバイロンのようにクルーに飛び込むのかと思いましたが、マシンの上で両手を掲げて、暫くマシンに座ってました。さすが34歳、落ち着いていると思いましたが、興奮してましたね。バートンは、ロードコースを完走して、1、2ステージでポイントを稼いでいたイメージがあったので、マシンのグレードアップがあったにせよ、ベリーは全てのステージでポイント獲得。最多ポイントを稼いでいるので、今後も期待出来そうです。
アールグレイ さんの投稿…
マクドウェルは前戦のファステストラップポイントやスパイアーの初ポールをドラフティングトラックじゃない所でもたらした辺り、移籍してから安定感だけでは無く速さもアピールしてて良いですね。
フェニックス戦以外はトップ20圏内で安定して完走しているのも、チームメイトの若手2人のお手本になる存在でしょう。

ベリーは去年のROTYをホースバーに取られるなど悔しい思いもあったでしょうが、優勝自体はホースバーより先に果たしましたね。
SVG程では無くても年齢的に活躍を急がないといけない感じもあるので本当に良かったです。
まさか、エクスフィニティーも含めたSHRのラストシーズンの6名のドライバーの内では、失礼ながら最も早く勝つとは思いませんでした。
逆にチーム的に有利なブリスコーがデイトナ500のポールで良いスタートを切ったと思いきやポイント大量減点のペナルティを喰らいそうになるなど不利な状況になってしまっているのも意外です。
今回3位だったプリースやグレッグソンもこれに続いて欲しい所です。
(全員がカップシリーズにいるだけでも凄いですが)

ウッドブラザーズもカップ戦通算100勝目を挙げるまで時間はかかりましたが、101勝目は割と早く達成出来たことも嬉しくなります。
ベインのデビュー2戦目でのデイトナ500制覇は自分がNASCARを見始めたシーズンの出来事だっただけに、今でも忘れられません。
そして、去年運もあったとはいえ、夏のデイトナで優勝したハリソン・バートンから替えてまでの起用もこれで肯定的に見られるでしょう。
チームのダーリントン戦のスローバックスキームも、1965年のインディ500を制したチーム・ロータスのジムクラークのものを再現する事が発表されたので、もっとこのチームに対する楽しみも増えました。
SCfromLA さんの投稿…
>日日不穏日記さん

 作戦的には私もラーソンたちの動きが正攻法だろうと思っていましたから、逆張りの人があんだけ大成功になる展開は想像できなかったです。こういう逆転劇があるからNASCARは油断できなくて良いですね~
SCfromLA さんの投稿…
>アールグレイさん

 スパイアーがポールを獲る、だけだったら「まあどうせレースでは落ちるでしょ」で済んでしまいそうなんですが、ベリーがあれだけ力強い走りで勝った姿を見ると「スパイアーもどこかで勝ってもおかしくないな」と認識を改めざるを得ないぐらいけっこう衝撃的なレースでした。
 見えてないところではもちろん問題もあるんでしょうけど、ここまでの3年と少し、Gen7はレースの質という面では本当に見る側にとって面白い結果を提供してくれているなと思います。