NASCAR Cup Series
Shriners Children's 500
Shriners Children's 500
Phoenix Raceway 1mile×312Laps(60/125/127)=312miles
winner:Christopher Bell(Joe Gibbs Racing/Reser's Fine Food Toyota Camry XSE)
NASCAR第4戦、ようやく普通のオーバルがやってきまして1マイルのフェニックスです。と言っても半径が大きくて旋回時間の長いターン、かつ左右非対称の形状なのでわりと得手不得手が出やすくて特殊な部類ではありますけどね。ここは最終戦の開催地ですからチャンピオンを見据えるチームとドライバーにとっては、単なるレギュラー シーズンの1戦にとどまらず最終戦で戦うための貴重な走行機会の場でもあります。
しかし今回のフェニックスは変化球が投げ込まれました、プライムとオプション、2種類のタイヤが供給されます。昨年のリッチモンドと同じ仕様のタイヤで、プライムは練習用1セットと予選・決勝用7セット、オプションは練習用1セットと決勝用2セットです。予選ではオプションを使用することはできず、決勝のスタートは予選からの持ち越しタイヤなので必ずプライムです。使用義務では無いので余らせて帰っても問題はありません。そしてNASCARは最終戦ではオプションを使わないとしているので、今回のレースを最終戦のテストにしにくいという微妙な厄介さまで備わっています(笑)
リッチモンドでは複数のラインで走れることもあって、オプションを使うと0.75マイルのトラックで1周0.3秒以上速く走れて抜きまくれるというえげつない武器でした。一方で元々タイヤ摩耗が激しいトラックなので限界が訪れるのも早く、非常に戦略性のある設定となりました。プライムだろうがオプションだろうがリッチモンドの場合はステージ中に2回もタイヤ交換するので、上位勢は最終ステージを『オプション→プライム→オプション』とするか、終盤にコーションが出た場合に切り札のオプションを1セット残す陣営が目立ちました。結果としてはオーバータイムのレースになったのでオプションを残すのが正解でした。
フェニックスの場合はステージ中に1回しかタイヤを換えませんので、約120周のステージをオプション→オプションでも走れるのかどうかがポイント。無理ならステージ内でオプションを2回使わないでしょうから、終盤のコーションを警戒しないのならとりあえずステージ2で1セットは使えます。
昨年のリッチモンドでは多くのドライバーがファイナルステージにオプションを2セット残す中、逆張りでステージ2リスタート時にオプションを入れたスアレスが順位爆上げ、ここで得た利益を維持して上位でレースを終え、その順位の上げようを『マリオカートのスターのようだった』と表現したそうです。終盤のコーションという『ブラック スワン』をどこまで警戒すべきか、これははっきり言って正解のある戦略ではなくほぼ『運ゲー』です(笑)
・レース前の話題
開幕戦デイトナで車両規定違反により100点の減点ペナルティーを受けて控訴していたブリスコーでしたが、3月5日に全米モータースポーツ控訴委員会で行われた審理の結果このペナルティーが取り消されました。委員会はチーム側の主張に沿う形で、スポイラー取り付け部分の車体にあるネジ穴が広がっているのは取り付け作業で生じたもので、規則が定めている違法な改造行為にはあたらないとしました。ブリスコーがデイトナの予選でやたら速かったのがセッティングの結果なのか、実はネジ穴が合わないスポイラーを強引に取り付けたせいで僅かに空力的に影響があって偶然速かったのかは分かりませんが、何にせよブリスコーは『選手権ポイントがマイナス』という不名誉な状況を脱しました。
次に、6月に予定されているメキシコシティーでのレースが中止になるのではないか?という噂が一部で広まってしまい、NASCARが否定する話がありました。これは『nascarrumornostalgia』という普段からNASCARに関する噂話を投稿しているインスタグラムのアカウントからの投稿が発端のようで、同アカウントが『NASCARがメキシコシティーのレースを中止するという噂が急速に広まっている。代替としてデイトナのロードコースで開催される可能性があり、既にデイトナのホテルを予約したという噂もある。』とする投稿がえらく広まりました。
このアカウントの流す噂は過去に当たったものもあれば事実でないものもありいわゆる眉唾というやつですが、NASCARも反応するしかなくなって噂を否定。またこのアカウント自身も
『うわ、夜遅い時間にも関わらず噂の投稿が大騒ぎになっているようです。繰り返しますがこれは単なる噂です。たとえ噂が真実だとしても、それはバックアップ プランである可能性はあると思いますが、確実なものではありません。私の言葉を聖書のように鵜呑みにしないでください。噂はニュースではありません。』
と呼びかける始末。政治情勢的に、現在アメリカの大統領と称する非常識で下劣な独裁者気取りが好き放題やってメキシコとの関係が悪化していることや、連戦の中でメキシコへ移動する物流的な課題の話などが存在することで思った以上に真実味が出てしまった、というところでしょうか。
最後に、今回のレースにはスポット参戦でキャサリン レッグがリブ ファスト モータースポーツから参戦。カップシリーズではダニカ パトリック以来の女性ドライバーとなりますね。デイトナにはARCAシリーズで出場して運悪く開始早々の多重事故でリタイアしていましたが、念願のカップシリーズデビューです。NASCARでの経験はエクスフィニティーに2018年 4戦、2023年 1戦の計5戦出ただけ、リブファストの車では誰が乗ってもリードラップでレースを終えることも簡単ではないでしょうが、とりあえず無事に完走したいところです。
・ARCA Menards Series General Tire 150
開幕戦の勝者・ブランドン"バタービーン"クイーンがレースの中盤から主導権を握っていましたが、最終周にスピン車両によるコーションが発生。ARCAシリーズでは最終周でもコーションが出たら『1周だけ』のオーバータイムが実施される規則なので1周のシュートアウトとなります。しかしこのリスタートは早々に事故発生で2度目のオーバータイムへ。このリスタートを決めたクイーンではありましたが、迫るブレント クルーズがターン3で接触覚悟でじわじわせり上がって来て、軽く当たったかラインを外れて壁に接触。これで前に出たクルーズが通算3度目のARCAシリーズ優勝となりました。クルーズは今月末で17歳という若者です。
・Xfinity Series GOVX 200
エクスフィニティーは昨年のチャンピオン・ジャスティン オールガイアーがステージ2中盤からレースを支配し、2位のエリック アルミローラに1.5秒近い差を付けて優勝目前でした。ところが残り8周、チームメイトのカーソン クワポーが破片を撒きながらパンク。最悪の形でコーション!と思ったらカーソン君がどこにもぶつけずピットへ戻ったので危機は回避されます。
ところがその僅か4周後、ニック ライツがほぼ同じようなパンクをしてこっちはクラッシュ、やっぱりオーバータイムになってしまいました。リスタート前からバチバチやりあうオールガイアーとアルミローラ、ターン1~2でオールガイアーは相手を意識しすぎて大外まで寄せてしまい2人とも順位を下げてしまいます。
これでリーダーはスポット参戦でポールシッターでもあったボウマンになりましたが、諦めなかったアルミローラは背後に迫り、そして最終周のターン3~4で内側からせり上がってボウマンを壁に挟みました。かなり力業でアルミローラがエクスフィニティー通算8勝目を挙げました、ボウマンは「出口で僕にレーンを与えてくれたらよかったのに。彼はまるで僕がそこにいないかのようにターンを出た。彼の方が僕たちより速かったのは確かだが、僕はただリスタートをうまく利用してレースに勝とうとしていただけだった。フェンスに押し込まれ、レースカーは破壊された。」と不満気。
・カップシリーズ
予選
ブッシュライトポールはバイロンが獲得しました、通算14度目。バイロンはレース前の段階からGen7導入以降のフェニックスで予選平均順位が全ドライバー中最高で、今回のポール獲得で平均スタート順位が4.14とさらにぶっちぎりになりました。2位に0.098秒差でロガーノ、3位にはホースバー。以下ジョッシュ ベリー、エリック ジョーンズ、チェイス、マクダウル、ジャスティン ヘイリー、レディック、ハムリンのトップ10でした。Gen7のフェニックスで決勝平均順位2.8と異様な成績を誇るライアン ブレイニーは12位スタート、レッグはポールタイムから1.13秒遅れの最下位でした。
なお練習走行のデータによるとオプションとプライムのタイム差が逆転する、いわゆるクロスオーバーが訪れるのは事前予想では30周目ぐらいだろうと言われていたものが、実際の練習のデータだと上手いドライバーなら40周目ぐらいまで来なかったとのことです。崖が来なかったら60→60でオプション繋ぎでも行けてしまうんでしょうかね、まだ全く見れていない現段階では主流の戦略が不明です。全く見当違いの話を書いていたらごめんなさい。
・ステージ1
開始からわずか4周、キャサリン姉さんが単独スピンして最初のコーションが発生、酷いタイトでターン2の壁際に行ってしまい回りましたが、大きくはぶつけずにピットへ戻ったのは本人とするとけっこう大事なポイント。10周目にリスタートしますが、今度はターン2の連鎖的な接触でリッキー ステンハウス ジュニアが回ってしまいます。今日のステンハウスは車の色が緑でちょっとレッグと被っています(笑)
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なんか似てる^^; |
先ほどのリスタートでバイロンをかわしたロガーノが15周目のリスタートからそのままレースをリード、と思ったらなんと反則リスタートの判定。規則ではスタート/フィニッシュ ラインを通過するまでは走路を変更してはいけないことになっていますが、ロガーノはラインを通過する時点で既に黄色い線よりも内側に左前輪が入っていたので違反とみなされました。かなり珍しい理由でバイロンはリードが戻ってきました。ちなみにABEMAの解説・古賀 琢麻によれば『ここの内側はドライバーから見えにくいのでけっこうやらかしがち』とのこと、実際に走っている古賀選手ならではの情報ありがとうございます(←記事を完成させつつラジオ感覚でABEMA実況を聞いてる)
一方ここで注目なのはコーション中にタイヤをオプションに交換したライアン プリース、フォーミュラEのアタックモード並にバカスカ抜きまくって33位リスタートからほんの10周で10位まで浮上。グランツーリスモで言うとハードとソフトぐらい差があって全く勝負にならないのはよく分かりましたので、あとはタイヤがどのぐらいもつのかです。個人的には路面温度が下がって、他の人もオプションを使って路面に一気にラバーが乗る最終ステージの連投が良いと今のところ思ってるんですけど。
プリースは30周使ったタイヤでもまだ元気なようで、46周目にベリーを抜いてとうとう3位に浮上、ここでもまだリーダーのバイロンより0.2~0.3秒ほど速いので崖は来ていないようですが、クルー チーフからはタイヤを守るように指示が出ているのでかなり警戒はしている様子。前を行くレディックとは3秒ほど差があって追いつかないのでもうここからは攻めよりも守りです。
ステージ1はその後特に何も起こらずバイロンがステージ勝利、レディック、プリース、ベル、ブレイニー、ベリー、ホースバー、ハムリンと続きました。プリースは特に崖を迎えることなく45周走っていたので、オプションでもマネージメントしたら60周以上走れそうな気がしますね。
・ステージ2
中団以降の人たち数名がここでオプションを投入、チャステインは当初プライムを装着も、速度違反でペナルティーを受けたので作戦を変更してオプションにしました。72周目にリスタートしてまずはバイロン、ベル、レディックのトップ3となりますが、オプション勢最上位のシンドリックが早々にトップ5圏内まで進出し、88周目にはもうバイロンをかわしてリーダーとなりました。他にもオプション勢がどんどん上がってきています。
ところがそのオプション勢の一角だったマクダウルが92周目にパンク、壁に接触してコーションとなりました。リードラップ車両はピットに入り、まだまだオプションでかっ飛ばす予定だった人たちにとっては流れを削がれることとなりました。ピットを出たのはベル、バイロン、シンドリックの順番。そしてステージ1で後方に落ちていたロガーノが順位挽回のためにオプションを投入しました。ステージは残り85周ほどで燃料としては走り切れますが、プライム勢を含めてタイヤがもつのかが注目。
99周目にリスタートしますが、ターン2で4ワイドの争いから多重事故が発生、ホースバー、ヘイリー、ブリスコーなど7人が巻き込まれるかなりハゲしいものとなりました。各々の走り方に特段問題があったわけではないものの、だだっ広い入り口から出口へ道幅が狭くなったら見事に全部ぶつかった、という状況です。一番内側にいて接触の起点となったのはタイ ギブスでしたが、色が同じなので放送席は当初ライリー ハーブストと誤解されていました、ややこしいねん(笑)
車両撤去と清掃作業に時間がかかったので次のリスタートは113周目、10周以上のコーション周回はオプションを履くロガーノにとって追い風となりそうです。リーダーのベルにあっという間に追いついて129周目にリードを奪いました。この段階では毎周0.4秒ほど他のドライバーより速いので、プライム勢からするとご自由にどうぞな感じ。あとはタイヤをもたせるだけです。
一方ピットでは先ほど使用したオプションについての情報、チャステインのタイヤを見るとまだ使い切ってはおらず寿命が残っていそうなので、場合によってはレース終盤に中古オプションをもう1回使うかもしれないと言っています。せいぜい20周以下の短距離戦でしか使えないとは思いますが、在庫があと1セットしか無いと決めつけてはいけないようです。
リーダーのロガーノはベルとの差を2.7秒ほどにまで広げましたが、周回遅れの存在もあって150周目あたりでペース差が無くなってきました、と言ってもこれにはベルが速すぎるという要素もあり、3位のバイロン以降に対してならまだロガーノの方が速い状態です。2位のベルと3位のバイロンには5秒以上の差が付いていてオプションタイヤが無ければベルがぶっちぎりのリーダーになっているはずでした。
さらに10周するといよいよベルが本格的にロガーノに追いつき始めて攻守は交替した模様、この後ベルが大量の周回遅れに取り囲まれたために少し時間はかかったものの、178周目/ステージ残り8周でリード チェンジ。そのままベルがステージ2を制しました。ロガーノ、バイロン、ブレイニー、レディック、ハムリン、シンドリック、スアレスと続きました。でも放送席的に盛り上がっていたのはフリーパスを争うレガシー モーター クラブのチームメイト対決でした(笑)
・ファイナル ステージ
ここで多くのドライバーが最初のオプションを投入、しかしベルはタイヤ交換で手間取ってピット内でロガーノに抜き返されました。そのロガーノも2セット目のオプションを投入しており手持ちを使い果たしました。さすがに70周使って崖を迎えた中古は再利用できないのでもう逆さに振ったって在庫は出てきません。
195周目にリスタート、ベルはリスタートからの動きが今一つだったのでレディックが2位となります。放送席も2スペックタイヤで若干混乱気味で、クリント ボイヤーが「ロガーノは固いタイヤで順位を下げずによくやっている」と誤解した発言をしてすぐに指摘されると、実況のマイク ジョイも「オプション勢最上位は20位のプリース」とこれまた言い間違いをしていました、プライム勢最上位ですね。慣れるまで大変だけど慣れるほど2スペック制のレースがないのよね(笑)
オプションをいかに長く使えるのかが重要なのでしばらくは静かなレースになると思ったんですが215周目、周回遅れのキャサリン姉さんが端っこに寄って道を譲っている、と思ったらまたターン2でタイトになってベリーと軽く接触。これで内側に巻き込んでスピンしてしまい、運悪くスアレスがそこに突っ込みました。とんだ貰い事故のスアレス、このレース23位でした。
これでリードラップ車両が一斉にピットへ、残りが90周ほどで燃料的には最後まで走れますが、オプションを使って走り切るにはちょっと長すぎる印象。というわけでみんな給油とプライムへの交換となり、普通に行ったらオプションの在庫切れで不利だったはずのロガーノは条件が一時的に対等になりました。ただ残念ながら今回はロガーノがピットで順位を下げてしまい、ピットを出たのはベル、レディック、バイロン、ロガーノ、ベリーの順でした、ベリーはぶつかられたけど軽微で良かったですね。ただこの中で2位のレディックはコーション前から「ひょっとするとパワステが壊れたかもしれん」という話でリスタート後の動きが気になります。
224周目/残り89周でリスタート、レディックはやはりパワステが壊れていると訴えておりベルが単独走行になります。でもレディックはなんとか2位で耐えている模様、旋回半径が大きいからパワステ無しでもなんとか耐えられるのかもしれませんが、あと80周も腕がもつんでしょうか、ブリストルなら絶対無理やぞ・・・
大半がプライムを選んでいるこの状況ですが果敢にオプションで攻めた人もおり、コワモテお兄さん・プリースがその1人。またしても無敵モードで236周目にベルをかわしてリードを奪います。さらにタイ ディロンもオプションで順位を爆上げしており、なんとこちらはまだもう1セット新品が残っています。弟ディロンはさっきフリーパスでリードラップに戻ったばかり、ずっと周回遅れの境界をさまよっていたのでオプションの出番が無くて、スーパーひとしくん的にタイヤが残っていました。思わぬ大チャンス到来。
プリースはベルとの差を3.3秒まで広げましたが35周ほど経過したところでクロスオーバーが到来。まあ現実的にプリースはこれでベルに勝つことではなく、タイヤを潰さずにリスタートよりも良い順位で帰還できれば作戦成功なので、とにかく丁寧にタイヤを使うことに集中していると思います。
と、残り48周で意外な光景、18位にいたチェイスがピットに入ってプライムからオプションに交換しました。プライムで89周を走り続けるよりも、半分に割ってオプションを使った方が速いという判断です。さらに2周後には5位のバイロンもピットに入りますが、これとほぼ同時にコーションが発生。ウォーレスのブレーキがぶっ壊れたようですごい勢いでクラッシュ、破片が出ていました。
当然みんなピットへ駆け込み在庫がある人は新品オプションへ。プリースはプライムしかないので防戦が予想されますが、そもそも作業に手間取って9番手へ後退して撃沈。さらに腕がパンパンであろうレディックは速度違反、そして大チャンスを迎えたはずの弟ディロンも前のめりすぎたか速度違反でチャンスを台無しにしてしまいました。バイロンはコーション前のピットで大損、ウエイブ アラウンドで後方に回ります。
上位勢に色々と起こった結果、残り36周のリスタートを最前列で迎えたのはベルとハムリン。コーション前は6位だったハムリンですが超速タイヤ交換と上位勢のミスで突然現れました。リスタートではさすがにベルがリードして3連勝が近づいてきますが、無風では終わらないのがこのレース、かなり前から「パワーが無い」と言っていたブレイニーの排気管からとうとう白煙が出て壊れた様子、オイルによりコーションが出てしまいます。ブレイニーはこれでリタイアですが、ステージ2までの事故でリタイアが多発していたので28位となりました。ステージで稼いだので22点もポイントを持ち帰ることができました。
残っているドライバーにとってはこれは厄介なコーションで、今使っている中古オプションで行くか、一旦使った中古オプションを取りに行くか、新品プライムにするか、立場や在庫によっても判断が分かれます。結局ピットに入ったのは比較的少数で、チャステインはレース中盤の情報通り中古オプションを再利用しました。リポートが役に立った!
残り17周でリスタートしましたが9周後に今度はギブスがクラッシュ。ウォーレスと同様にブレーキがぶっ壊れたようで、これでレースは残り2周からの超短距離戦となりました。オーバータイムではなく普通に311周目からのリスタートです。ARCA、エクスフィニティーがいずれもオーバータイムでカップもグリーン-ホワイト-チェッカーの状態ですから今週末は劇的です、いや、この流れはもう1回事故ってオーバータイム行きか?
もちろんステイ アウトする上位勢、ベルとハムリンの1列目でリスタート。先ほどのリスタートでは簡単に前に出ることができたベルですが、ここはハムリンが意地を見せて外側で粘り続け、2台で並んで争ったので背後からはラーソンも争いに加わり三つ巴。そのまま最終周に入っても並び続けるJGRの大ベテランとエース、たぶんうしろでごっつぁんを狙ってるミヤタさん、さあどうなる!
併催レースと同様、内側にいるベルがターン3にやや深く入ってターンをせり上がるパターン。ハムリンと僅かに接触したかどうかというところですが、ハムリンは避けるためにラインを外れることになり、そのぶん立ち上がりが鈍りました。最後はごっつぁんを狙ったラーソンがちょうどベルのお尻をごっつんする形になり、ベルがハムリンを0.049秒差で退けて最初にチェッカーを受けました。これでアトランタ、オースティンに続いて怒涛の3連勝です。
3連勝は2021年のプレイオフ第6戦~第8戦に3連勝したラーソン以来でGen7になってからは初めて。NASCARによるとカップシリーズの3連勝は1972年の近代NASCAR史上29例目、このうち12例は同年のチャンピオンを獲得しています。(ただし1987年デイル アーンハートと2021年ラーソンは年間に2度達成しているのでシーズンとしては10度)
「レースファンのみんな!どうだい!?なんてこった。思いつく中でも最悪の状況さ。レッド タイヤを履いて、よーし、20~30周イエロー出るなよと思ってたらそれが起きた。それから10周したらまたイエローだ。リスタートで誰が抜け出せるかが全てだった、僕らは両方とも抜け出せなかった。僕らは本当に最後まで激しく争った、JGRでワンツーだよ、すごいだろ。」
サングラスの奥に落胆の表情が見えるハムリンが2位、
「スポーツ クリップス チームは素晴らしい仕事をしてくれた。レースが進むにつれて良くなっていったよ。ピット クルーは素晴らしい仕事で争いに留まらせてくれた。途中でピット作業がうまくいかなかったけど、最後には挽回できた。レースの終盤で初めてクリーン エアーを得ることができて、車は本当に速かった。グリーンのまま行きたかったね、特にこのタイヤなら自分たちが得意だと思ったんだ。リスタートはうまくいった、5番(ラーソン)がリスタートのフロントストレッチと、バックストレッチでも僕を本当に押してくれたんだ。こっちが20番の前にいたけど、彼が突っ込んでくるだろうと思っていた。少しラインから外れてしまったけど、でも素晴らしいフィニッシュだったよ。」
ラーソン、ベリー、ブッシャーのトップ5。バイロン、ボウマン、カイル、ゼイン スミス、チェイスのトップ10でした。ロガーノが13位、オプションタイヤを有効に使って目立ったプリースが15位、レディックは20位に終わりました。
オプションタイヤは予想通りほとんど当てモノになりました(笑)基本は最終ステージでオプション2連続使用のはずがコーションのタイミングでそうはならず、結果として早めにオプションを注ぎ込んで順位を稼いだ人が得をした、と思ったらその後のコーションでやっぱりオプション在庫のある人が優勢にさらに話が移っていきました、勝った人のやったことが正解!
個人的には、残り48周でアンダー グリーンでチェイスがタイヤを交換したのがちょっと不意打ちという感じでしたがものすごくザックリした計算をしたら納得。ピットに入ってタイヤを換えるとロスが32秒ほど。プライムのデグラデーション レートは1周あたり0.02秒ほどで、45周使ったタイヤなら新品より0.9秒遅くなります。タイヤが単一なら残りの45周を新品で走っても稼ぐのは40秒ほどで、計算上は追いつくけど実際はどうかなというぐらい。しかしオプションならデグが大きいとはいえじゅうぶんピットのロスはお釣りが来そうです。
バイロンが動いたら周囲もわざわざ違うことをする必要性が薄くなるので基本的に他の人も同じ作戦に出て、でもオプションが残っていない人は新品プライムへ繋ぐか覚悟して走り切るかの選択になったでしょうから作戦面でもう一波乱あってもおかしくなさそうでした。それでもベルの優位は1mmも動かなかったどころかもっと楽勝だったかもしれませんが、コーションで幻になりましたね。最終戦では絶対オプションタイヤ投入したらあかんなというのも改めてよく分かりました、運ゲーすぎるし分かりにくい(笑)
FOXの中継テロップだとおそらくオプションを履いた選手はドライバー名の背景が赤色に変わっていると思うんですが、国際映像仕様はそれがないので実際に見て覚えるしかなく、しかもチームによってはタイヤに緑色のテープを貼っているため、赤いロゴと緑のテープが混ざって高速回転したら黄色いロゴ=プライムに見えてしまうという罠まであります。国際映像さんももうちょっとがんばってください(T T)
そんな中でのベル3連勝、アトランタは運要素が大きかったとはいえ種類の異なるトラックで、おまけにタイヤの種類まで複雑化してそれでも勝てる位置で争っているのが彼のオールランドぶりをよく表しています。車とタイヤに負担をかけずに走らせるという彼の能力がここ2戦はいかんなく発揮されたと思います。年間に10人以上の優勝者が生まれる混戦を生み出しているGen7における3連勝というのも非常に価値が高いと言えるでしょう。
次戦はもちろん4連勝を狙うレースとなりますが、3連勝が29回も記録されているのに対して4連勝となると近代NASCARでも僅か8人/8例。過去30年では2007年のジミー ジョンソンと1998年のジェフ ゴードンの2人しか記録していません。ジョンソン以降に7度の3連勝がありましたが、4連勝を狙った結末には最終周でのガス欠、最終ターン手前でのパンクなど呪いかと思うような信じられない結末があり(しかもいずれもポコノーで起きた)、あの有名な2015年の『ケンゼスミサイルでロガーノ撃墜事件』も4連勝を狙ったレースでした。ベルがこの壁をも打ち破るのか、新たな呪いが生まれてしまうのか。
そんな次戦はラスベガスへ、ようやく普通の1.5マイルが今シーズン初登場です。ベルにとっては優勝経験がないばかりか、1.5マイルとしてはこれまでに最も平均順位が低くて相性の悪いトラックです。
コメント
ABEMAも放送開始早々にワケの分からんアトランタ、ロードコース、そしてオプションタイヤを使うフェニックスと普通のレースが出て来ないんで大変だなあと思いますね。でも再来週のホームステッドはなんと解説が桃田さん予定なのだ!
「バウマン」「ワーレス」は違和感ありますけどだいたいはそんなに外れてない印象でしたね~。実況の増田さんもG+時代にNASCAR経験があるっぽいし、時々「このスポンサーはこういう会社」という話も入って来て、NASCARを通じてアメリカの雰囲気そのものを楽しむという雰囲気になってるのでなかなか良さげでした。
ただヤングライフというスポンサーがキリスト系関係の団体なのを知って、アルミローラの個人スポンサー?なのかもしれませんがギブスのスキームで見ることがあるHe gets usを思い出してなんか複雑な気持ちです。
今回はカップ戦1ー2や、エクスフィニティーも含めてJGR大活躍でしたが、カイルがよく春のエクスフィニィティーのフェニックス戦を勝ってたなーと思い出して調べたら、JGRのフェニックスでのエクスフィニティーシリーズ18勝は全トラック中最多なのを知って驚きましたw
連勝自体NASCARでは珍しいイメージがありますが、2018年には3人が達成し、2021年にはラーソンが2度達成するなど3連勝は近年意外に多いんですね。
それでも、ベルのドラフティングトラック→ロードコース→難易度の高い1マイルトラックと言う流れでの3連勝はもう何も言えません。
一昨年の3戦連続ポールの時は一発の速さタイプなのかなと思いましたが、ハムリンがチャーター関係の訴訟問題込みでいつまでオーナー業と両立できるのかも考えればもうチャンピオンを獲らないといけないチームのエース的存在になったと言っていいでしょう。
5連勝以上は調べた限り近代NASCARではまだ達成されてない様ですね。
(2009年のトラックシリーズではホーナデイJrが5連勝を達成しています)
近代NASCAR以前の記録も含めれば1967年のリチャードペティの10連勝というとんでもない記録がありますw
今回記録を調べて3連勝と4連勝の間にある大きな壁を実感しましたね。特に今のように優勝候補が10人以上は簡単に名前を挙げられる時代ともなるとそうやすやすとは、という感じです。そして3連勝でも大したものだけどそれがチャンピオンと結びつくかというと確率で言えば半分にも届いていないあたりがまたNASCARだなあと思いました。