Formula 1 Louis Vuitton Australian Grand Prix 2025
さらに既にF1に参戦してはいるもののフル参戦では初めてとなるのがハースのオリバー ベアマン、アルピーヌのジャック ドゥーハン。そしてなんと言ってもレッド ブルでマックス フェルスタッペンの相棒というできるならばやりたくない仕事を仰せつかったリアム ローソン。ローソンは『角田を乗せろ』と思っている日本のファンと、『ペレスをクビにしやがって』と思っているメキシコのファンからあまり良く思われていない可能性があるのでちょっと気の毒と言えば気の毒ですね。選定しているのは上層部だからローソンに何か責があるわけではないんですけど。。。
Abbert Park Grand Prix Circuit 5.278km×58Laps=306.124km
※スタート手順やり直しのため57周に減算
winner:Lando Norris(McLaren Formula 1 Team/McLaren MCL39-Mercedes)
早いもので今年もF1の開幕がやってきました。今年の開幕戦は久々のオーストレイリア、2020年以来です。と言ってもあの時は開催直前に中止になって車が1ミクロンも動いておらず未開催扱いなので、実際に開催されたレースとしては2019年以来6年ぶり、まあ無事に開催されれば、ですけど(不吉)
来年から大きく車体の規則が変更になるのでひとまず区切りとなるのが今シーズン、限られた予算の中で今年と来年の車両をどう開発するのかが思案のしどころです。上位チームは昨年から小幅な変更に留めてくる、のかと思ったらフェラーリの新車・SF-25はフロントのサスペンション形式をプッシュロッドからプルロッドへ変更。プルロッドは低重心化や空力性能面で優位性がある一方で、設計が難しく整備性も悪いという欠点があるために『扱いにくい』とされています。今年チャンピオンを獲るためなのか、来年以降のための壮大な実践テストなのか。
来年から規則が大きく変わる、とは言っても規則の中で物理法則に従って最も効率の良い動作をする製品を生み出す、という大原則は変わらないですから、形状や規則が違うからと言って今年の車の開発が全く来年に生きないということでもありません。ひょっとしたら見ているこっちが理解できないだけで、今年の車体の開発が来年のための重要なデータ集めになっている可能性もありますから、来年までのトータルで評価しないといけないなんてこともあるかもしれませんね。
そしてドライバー面でも今シーズンの注目はフェラーリに移籍したルイス ハミルトン、常勝チームの経験を持ち込むことでウマゴンが覚醒するのか、ハミルトン自身は蘇るのか、輝かしいキャリアの最後にしょうもない失敗を付けるだけに終わるのか、嫌でも注目されます。赤いスーツのハミルトン、全然見慣れないのよねえ。なんにせよフェラーリが注目を集め続けるのは間違いないでしょう。
昨年は2023年から誰一人ドライバーが変わらない状態で開幕するという歴史的珍事でしたが、今年はハミルトンの移籍で玉突きになったカルロス サインツがウイリアムズに加入するなど移籍が多く、新人さんもメルセデスのアンドレア キミ アントネッリ、レーシング ブルズのアイザック ハジャー、ザウバーのガブリエル ボルトレート。
オフのテストでははっきりしない勢力図が開幕戦でようやく見えるわけですが、ここアルバート パーク サーキットは市街地系サーキットでストップ&ゴーですので、空力性能を含めた総合性能を見るのはあんまり向いていないサーキットです。ここで速かったらアゼルバイジャンとかは速いんでしょうけどね。
・フリー走行
昨年のサウジアラビアではぶっつけ本番ながら高速市街地を無事故で走り切り、新人離れした落ち着きを評価されていたベアマンでしたが、フル参戦デビュー早々にFP1でクラッシュ第1号。さらに土曜日のFP3でもまたやらかしてしまい、いきなり高い修理代金を発生させながらの船出となりました。記録としてはFP1はランド ノリス、FP2はシャルル ルクレール、FP3ではオスカー ピアストリがそれぞれ最速でした。
・予選
Q1、アントネッリは縁石をまたいだ拍子に車の床下を少し壊したらしく、本領を発揮できなかったか16位。ローソンもグダグダの18位で脱落し、ベアマンは車に不具合が出て計測すらできませんでした。アントネッリを0.009秒差で蹴り出したボルトレートがQ2進出と新人同士の仁義なき戦いが早速始まります。
ポール争いはマクラーレンvsフェルスタッペンという雰囲気で迎えたQ3でしたが、1回目の計測でオスカー ピアストリは最後の2つのコーナーをミスってガタガタ、ランド ノリスはターン4ではみ出して記録無効。一方でフェルスタッペンが1分15秒671を記録して暫定の最速となります。
しかし2回目の計測でピアストリは1分15秒180とフェルスタッペンに大差、これに続いてノリスは15秒084とえげつない記録を出しました。フェルスタッペンは自己ベストを更新したものの全く届かず、ノリスが今年初のピレリ ポール ポジションを獲得、マクラーレンが1列目を独占しました。ピアストリはオーストラリア人選手として初めてのオーストラリアGPでのポール獲得にあと一歩届きませんでしたね。
4位にジョージ ラッセル、そして5位にはなんと角田裕毅、6位にアレクサンダー アルボンと中団チームの2人が番狂わせ。ルクレール、ハミルトンが続きました。マクラーレンは2人ともセクター3がむっちゃ速かったんですが、コース特性的にセクター3だけ違う特徴があるようにも思えないし、ひょっとしたらタイヤが最後までもつかどうかの差なのかなとも思いました。だとしたら速い上にタイヤがもつって無敵なのでやめてください(笑)
とはいえこの週末は最初から日曜日が雨になるという予想で、前日段階でも決勝は高確率で雨予報のまま。セッティング面でどこまで雨を織り込んでいるのかという話があるため、どこまで行っても今回の予選結果は全体の勢力図をきちんと表しているとは言い難そうです。マクラーレンが速いことはたぶん間違いないと思いますが。
・決勝
さすがは現代の天気予報、がっつりと雨です。日本時間の昼間なのでリアルタイムで見やすいですが、私は献血に行ってたので全然間に合いませんでした(笑)ランス ストロールだけウエット、ほかは全員インターミディエイトで通常通りのスタートになるはずでしたが、ターン1を出たところでハジャーが滑ってクラッシュ。せっかくのデビュー戦はまさかの0周リタイア、コース脇からガレージに戻るまでハジャーはずっとヘルメットを脱がずに目頭を抑えるしぐさ、マーシャルさんが励ましてくれてます。がんばれ、20歳の若者。
これで15分押しでスタート手順は仕切り直し、今度は全員無事にフォーメーション ラップを走りきって今度こそ2025年のF1世界選手権スタート。蹴り出しが最も良さそうなのはフェルスタッペンでしたがターン1は危なそうなので自重、それでもターン2でトラクションがかからないピアストリを楽々かわしてまず2位に順位を上げます。するとターン5の先で今度はドゥーハンがクラッシュ、即座にSCとなり、さらにSC導入後の最終コーナーでサインツも事故りました。サインツは変速でどうも不具合があって急な駆動力変動があったみたいですね。
競技状態ではないのにベテランが自爆してくれたので若手とするとちょっと安心したかどうかはわかりませんが、2台のお片付けには時間がかかって8周目にようやくリスタート。幸いこの時間帯は雨が降っていないようで徐々に路面は乾いていく状況、リスタートから3周もすると早くもノリスは直線で水を探し始めたのでタイヤの温度が上がりすぎているようです。なんか回頭性が悪そうでタイヤが路面を撫でているような動きに見えます。
徐々に乾いて来たので12周目にDRS解禁、15周目にはノリスからピアストリまでがDRSトレインになります。4位のラッセルは遠く離れてこの争いに参加できません。でもまた次の雨が来るらしいので、次に降ってくるまではちゃんとタイヤをもたせて耐えないといけません、この段階での焦りは禁物でしょう。
均衡が崩れたのは17周目、少しノリスから離されたフェルスタッペンがターン11で止まりきれず内側ががら空きになってしまい、ピアストリが簡単に2位を取り返しました。フェルスタッペンにしては珍しいミスですが、この後マクラーレンの2人に全然付いて行けません。うーん、予選でマクラーレンの方がタイヤがもつかもと思ったのとこの状況だけ切り取ったら符合しますね。
リスタートからのこの10周ほどの間にはSC中の手順違反に関する審議の情報がフェルナンド アロンソ、角田、ハミルトン、アルボンと小出しに表示されてなんだかフォーミュラE的な状況、国際映像のテロップは黄色い『!』マークだらけになります。集団ペナルティーかと思ったら全員が処分なしとなり、見ている側には何が審議されていたのかもよくわからず(笑)
ここから先は映像を見る範囲ではたまーに強風とともに強い雨が打ち付けたり弱くなったり、という雰囲気でノリスとピアストリが2秒以内、フェルスタッペンはタイヤが駄目になってきたらしく10秒以上の差にはぐれました。4位ラッセルに続いてスタートで順位を上げたルクレールが5位にいて角田、アルボン、ハミルトンのトップ8。この難しい状況なんですがみんなミスしないし、そうなるとラインを外して抜くのは難しすぎてあんまり順位変動も起こりません。
そんな中で28周目になるとピアストリがノリスのDRS圏に到達、母国ドライバーの攻勢にお客さんも盛り上がっていますが、開幕戦からいきなり同士討ちとか絶対やめてほしいなあ、というのは視聴者だけでなくチームも同様で、とりあえず路面が乾くまで順位を維持するようピアストリに指示が出ました。ところが数周すると「自由に戦って良いぞ、決まりごとは分かってるな。」と修正。国際映像的にはこの無線の少し前にピアストリはミスっており、ノリスと2秒ほどの差になりました。実際の時系列はひょっとしたら自由に戦って良いと言われて気合入れたらミスったのかもしれませんけど^^;
もちろんまだまだレースは残っているのでこの2人の争いが楽しみになるはずだったんですが、34周目にアロンソが単独クラッシュ。これでSCが導入されて上位勢がピットへ駆け込みました。ちょっと予定より早いかもしれませんがスリックへの交換です。アロンソおじさん、ターン6出口でズラ踏んで自爆してました。こういう単純ミスが何回か続くとドライバーは引退を考え始めるんだ・・・
残り20周ほどの距離が残っているので多くはハードを選択しましたがフェルスタッペン、角田、アルボンがミディアム。アロンソの車がものすごく片付けにくい場所で止まったのでちょっと時間がかかります。このSCは位置関係の問題で上位5人ほどとそれ以降でピットに入れるタイミングに1周のズレが出てしまいましたが、特に問題なく元通りの順位でタイヤ交換を終えました。
せっかくみんなスリックに交換したものの、どうやらこの後に強い雨が一瞬だけコースを通過する可能性があるとのことで嫌がらせみたいな天気になってますが42周目にリスタート、1周したらもう空が真っ暗になってきて2周したら雨が降ってきました。44周目、ターン12でノリスとピアストリが相次いで飛び出し、ノリスはなんとかこらえましたがピアストリはコースに戻った後に耐えきれずターン13の芝生へ飛び出してしまいました。もう空回りするばかりでほとんど動けません。かなりの時間を費やしてなんとか脱出しましたがもちろんビリ。
ノリスはそのままピットに入ってインターミディエイトに交換しますが、フェルスタッペンを先頭にスリックで耐えて勝負する人もいて順位は大混乱。一時は角田が暫定2位だったものが、気づいたらそのへんの人を全部抜いてハミルトンが2位になっていて何が起こっているのかさっぱりです。さすがのフェルスタッペンも46周を終えてスリックは無理と諦めピットへ、もう完全に大雨になりました。
この周になおもステイ アウトしたハミルトンが一時的にリーダーとなりますが、もはや限界を超えていて半周ともたずノリスにかわされます。そしてこの雨で耐えきれなかったスリックのローソンとインターのボルトレートが相次いでクラッシュ、当然ながらSC導入となりました。ローソンはハジャーとほぼ同じ場所で事故りましたね(汗)ここまでスリックで耐えていた人たち、もうタイヤを換えるしか無くて完全に後手に回り、その中の1人だった角田は上位争いが一転入賞圏外へ。。。
ノリス、フェルスタッペン、ラッセル、アルボン、アントネッリのトップ5で52周目/残り6周でリスタート。雨がやんで明るくなってきましたがもうさすがにスリックに交換する時間は無いのでインターで最後まで走るレースです。フェルスタッペンはリスタート早々にミスってノリスと1.2秒差に開いてしまい、ここから盛り返して最後の2周は真後ろで重圧をかけたものの逆転はできませんでした。ちょっと一か所やらかしてはしまいましたが、ノリスがポール トゥー ウインで2025年の開幕戦を制しました。
フェルスタッペンは2022年のスペイン以来63戦・1029日に渡って一度もドライバー選手権で首位を明け渡していませんでしたが、2年半以上ぶりに選手権1位の座を失いました。逆にノリスは初めての選手権1位となり、マクラーレンの選手が1位になるのは2012年カナダでのハミルトン以来です。
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消火剤かけられてるみたい^^; |
3位はラッセル、そして4位にはインターミディエイトで前の車をバンバン抜いていたアントネッリが入りました。18歳203日での入賞はフェルスタッペンに次ぐ史上2番目の年少記録、1回スピンもやらかしましたが積極果敢なレースにチームのタイヤ選択も的中しました。アルボン、ストロール、ニコ ヒュルケンベルグ、ルクレール、ピアストリ、ハミルトンのトップ10でした。完走14人は2023年のブラジル以来となる少なさでした。
オーストラリア人ドライバーは母国GPで優勝はおろか表彰台にもなぜか上がったことが無い、というもはや呪いレベルのジンクスは今回ピアストリにも立ちはだかりました。いや、厳密には2014年のオーストラリアではダニエル リカードが表彰台に乗るには乗ってレース後に失格になったんですけど、それは置いといて最低でも2位は確実に手に入るだろうと思ったのにまさかの落とし穴。
ターン12でコース外に飛び出した際には前を行くノリスよりもさらに芝生の遠いところまで行ってしまいました。車載映像を見ると芝から舗装に戻る途中にスロットルを一瞬踏み込んでいたように見えます。たぶん反射的な反応で、とにかく芝の上でのブレーキは完全にロックさせて逆効果になるので少しでも早く舗装の上でブレーキを踏みたい、あるいは後ろが流れて巻き込むのを防ぎたいというカウンターアクセルだったように見えます。
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オスカー「誰か止めて~~~(T T)」 |
ただ舗装路に戻った場所がもうターン13の近くなので減速できる距離が限られており、しかも加速したぶんだけ勢いがありすぎて全くコース内では止まり切れなかった、そんな雰囲気に見えました。最終周には2台並んだら危ないターン9~10でハミルトンを外から抜いて1つ順位を取り返しましたが、相手がハミルトンでちゃんとラインを残してくれてたからどうにかなった場面だったと思います、ピアストリはちょっとウイングの端っこ踏んづけて行ってましたね。
アロンソがクラッシュしてSCが出ていなかったら、あの2回目の土砂降りまで各陣営はインターミディエイトで耐えていたのか、2セット目をどこかで入れたのか、それとも一旦はスリックに換えて同じ混乱が起きていたのか、というもしもの世界の展開が個人的には気になりましたが、まあ色々あっても最後に上位に残ったノリス、フェルスタッペン、ラッセルが今シーズンの主役になる気がしましたね。もちろん冒頭にも書いた通りこのレースは勢力図を見るには適さないんですが、この3人はどこ行ってもそんなに大外ししない感じがします。
5位できっちりとまとめたアルボンも例年通りの信頼感と車の100%の力を引き出す力があって、ウイリアムズはサインツとともに今年も時々番狂わせしてくれそうな楽しみを感じました。対照的にレーシングブルズは内野ゴロを転がしたら1点入るのにわざわざホームランを狙った大きなスイングで3者連続三振したような暗転でした。でも起きてしまったことは仕方ないので、角田はここでまたすぐに汚い言葉を使って吠えてないように気を付けないといけません。本人は鼓舞しているつもりなのかもしれませんが、雰囲気が悪くなってみんな仕事の意欲が落ちて逆効果だと思います。
次戦は開幕早々の2週連続開催で中国へ向かいます。今のところ天気予報は、、、んん?季節外れな温かさか!?
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