2月7日、日本のNASCARファンがちょっとだけ「お!?」となるニュースが飛び込んできました。長年NASCARに参戦し続けている数少ない日本人選手・尾形 明紀が2025年のクラフツマン トラック シリーズに、自身のチーム『アキノリ パフォーマンス』としてカー ナンバー63のトヨタ タンドラ TRD Proでスポット参戦すると発表しました。初出場レースは第2戦のアトランタとなります。ドライバーは彼自身に加えて三浦 健光も出場するとしています。尾形選手は
「これは私にとって大きなチャンスである一方、今シーズンは大きな挑戦になると思います。」
2022年は年間3勝を挙げてリミテッド レイト モデル クラスで年間2位となりました。この間に様々なスポンサー企業から協力が得られ、そうした支援が今回の自チームでもスポンサーとして名前を連ねています。現在51歳の尾形選手ですが、デイトナ500に出場するという目標はおそらくブレていないでしょう。
「私には素晴らしいトヨタタンドラTRDプロと素晴らしいサポートがあります。シーズンを通して戦う準備ができています。」
と意気込みを語りました。63という番号はMB モータースポーツというチームのオーナー・マイク ミトラーへの敬意からだそうです。MBモータースポーツは決して優勝を争うような大規模チームではありませんでしたが、1995年のトラックシリーズ創設初年度から参戦を継続していたチームでした。しかし2019年にオーナーのミトラーさんが亡くなってチームは消滅、尾形選手自身もMBからトラックシリーズに出場したことがあり、お世話になったチームでした。
と、ここで正直私も尾形選手のことは詳しく知らないので、改めて尾形選手の公式サイトや、尾形選手についての特集記事が載っているジャパン ニュース クラブというミシガン州あたりで日本人コミュニティーについての様々な情報を伝えているサイトなどから拾ってきて、どんな人なのか基礎知識を。間違ってたらごめんなさい。
1973年生まれの尾形選手、14歳でモトクロスを始めて結果を出していたにもかかわらず、この世界に付きものの怪我に見舞われてしまいます。そんな時に偶然出会ったのがNASCARのミニカー、これをきっかけに興味を持つようになったとのこと。バドワイザーで11番の車だったそうなのでダレル ウォルトリップの車でしょうか。
その後NASCARへの関心が強まり、新婚旅行で訪れたアメリカでミニカー屋さんに大量のNASCAR商品があるのを自分の目で見て、元々ミニカー好きだったこともあり早速日本でNASCARショップを開設。知りたくなる、ミニカーを手にする、知識を身につける、さらに知ろうとする、という循環だと思いますが、尾形選手はNASCARというアメリカの文化そのものにも大きな関心を持つように。
再度渡米してデイトナでのレースを見たことで完全に心が決まり、将来のNASCAR参戦を目指して26歳だった1999年にはツインリンクもてぎで開催されていたダートミジェットのレースに参戦を開始。モトクロスをやっていたのでダートや速度に対する適応性という点では実力を持っていたと思われます。ここでも実績を積んだ尾形選手はついに2003年にアメリカでのレース出場を手にするため現地での活動を開始。
とりあえずもてぎで支援してくれていたスポンサー企業はあったものの、よく分からん日本人が突然現れたところでスポンサーが1つあれば乗せてくれるチームがあるわけではなく、レイト モデルのウイークリー シリーズに1戦出るだけでも大きな苦労を強いられます。スポンサーだってずっとお金を用意してもらい続けるわけではないので資金集めに苦労し、お金があっても乗る場所は無く、という中でも懸命に活動を続けていました。ミジェットでのレースにも出場していたようですし、全然レースに出られない時間が長く続くこともありました。
2009年には地道な活動の継続の甲斐あってかエンジンとオイルをエネオスのアメリカ法人から供給してもらう契約をするなど諦めずに戦い続け、2010年にはNASCAR選手として就労ビザが発給されたのでアメリカへの定住が可能となり、とうとう活動拠点をノースカロライナ州ムーアズビルに移しました。NASCARを志してもてぎのレースに出てからもう10年以上経過、30代後半ですからどこかで諦めてもおかしくなかった、というか普通は折れると思うんですけど相当タフで意思を曲げなかったんだなと改めて感じますね。
主にヒッコリー モータースピードウェイでのNASCAR ウイークリー シリーズで腕を磨くことになった尾形選手、2012年にはとうとうK&N プロ シリーズの4戦に出場。2014年にはトラックシリーズ、2018年にはエクスフィニティー シリーズへの出場も果たし、現在までにトラックシリーズ合計15戦、エクスフィニティーシリーズ合計10戦に参戦してきました。そして何と言っても2022年、ヒッコリーでのウイークリーシリーズでとうとう初優勝を手にします。日本人選手がNASCAR公認シリーズで優勝するのは史上初でした。
2022年は年間3勝を挙げてリミテッド レイト モデル クラスで年間2位となりました。この間に様々なスポンサー企業から協力が得られ、そうした支援が今回の自チームでもスポンサーとして名前を連ねています。現在51歳の尾形選手ですが、デイトナ500に出場するという目標はおそらくブレていないでしょう。
参考ページ
挑む~NASCARドライバー
尾形明紀公式サイト
アキノリパフォーマンスのスポンサーには共和産業、ムーンアイズ、YKK APなど従来から支援している企業が継続して伴奏してくれる模様。アキノリパフォーマンスというのはおそらく元々彼が活動拠点としているレースショップの法人として登記されているものだと思いますが、フェイスブックのページを見るとこの組織が共和産業と、電動工具メーカー・信濃製作所の製品販売ディーラーであると書いてあるので、こうした製品販売の代理店業も活動の一環として担っている感じでしょうかね。
ちなみに私はGT7で尾形選手のタンドラを模した車両を作ってみたことがあるんですが、たしかその話をXでシェアしたらたまたま検索ワードでかかったのか、尾形選手ご本人のアカウントからいいねを押してもらった記憶があります。日本でNASCAR知ってる人が少ないからなんか世間が狭いんでしょうかね。このプライマリースポンサーがキョーワエイドミラーこと共和産業です。
また、三浦選手はロード コースで出場する予定があると発表されていますが、当ブログでは過去にも何度か名前が登場しています。本業はニーズ24というレーシングインストラクターなどの自動車関連業務を行う企業の代表取締役。乗用車のインプレッション動画を好んで見る方なら私より遥かに詳しい方もいらっしゃるかもしれません。こんな風にトヨタの公式動画にも出演しています。
本業の傍ら2017年から4年間はNASCAR ウィーレン ユーロ シリーズに参戦し、2018年にはいうなればジェントルマン クラスでのチャンピオンを獲得しました。ちなみに所属チームはアレックス カフィー モータースポーツ、古いレース好きならピンと来ると思いますが、1986年からオセッラ、スクーデリア イタリア、フットワークなどでF1に参戦していたあのカフィーさんのチームです。
ユーロシリーズでの実績が認められてトラックシリーズでのライセンスが発給され、2022年のミッドオハイオでトラックシリーズに初参戦。さらに昨年はシカゴ市街地でエクスフィニティーに乗る機会も手にしましたが、こちらは残念ながら予選落ちして決勝には出ることができませんでした。
尾形選手はヒッコリーでレースをするために自分たちでガレージを所有しているので、タンドラもTRDの支援を受けながら完全に自社メンテナンスでくみ上げるのか、あるいは協力チームがあって車体を大まかに組んでもらった上での参戦なのか詳細は分かりませんが、服部レーシングが体制を縮小していってちょっと寂しかっただけに、こちらの活動も楽しみにしたいです。
なお全くの余談ですが、調べものをしている最中にエイベックスのユーロビートとヒッコリーで戦う尾形選手をコラボレーションさせたこんな動画を見つけました、いいですね。(エイベックスは外部再生禁止なのでYouTubeへどうぞ)
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