ABB FIA Formula E World Championship
フォーミュラE ジェッダ2連戦の2日目。前日は史上初のピットブースト導入で見ている側の頭の処理能力が追いつきませんでしたが、エナジー残量の差から残り数百メートルで逆転が起きるといういかにもフォーミュラEらしい結末のレースだったので終わりよければとりあえずヨシ!な感じでした。連戦で行われる第4戦はピットブースト無しのレースです。
バーナードは序盤2周ほどのペースが1分26秒台、昨日グンターが最も抑えた時のタイムよりさらにより4秒ほど遅くなっており、グループ予選の9秒落ちですからむちゃくちゃ遅いです。ペロトンスタイルで特にアタックを使っていると抜き放題という状況ですが、7周目になるとローランドが前に出ました、今日はペース配分間違えないでね。
ローランド師匠は10周を終えた時点で残量が上位勢で最も多いので、ここまでは上手く戦っている模様。14周目に上位では最初にアタック2分を使って自分からどんどん動かしていきます。これを見て翌周に実質2位のバーナードがアタック4分、13位スタートから実質3位まで上がっていたベルニュがアタック2分を使用。一時的にバーナードが前に出る時間があったものの、アタックが終わるとまたローランドが前に出ました。最初にアタックを使ったロビン フラインスが一時的に先頭を走る場面もありましたが、なんというかマラソンでテレビに映るために必死に沿道を走ってすぐ消えるお客みたいに気づいたらいなくなりました^^;
ローランドは1分22秒5前後を綺麗に並べて先頭を維持し、後ろではとりあえず様子を見る人と思い切って自分からアンダーカットを仕掛ける人での争いになります。一番積極的に見えたのは19位スタートのデニスで、16周目に周囲よりは遅めのタイミングでアタック4分を使って順位を上げると、22周目に今度は周囲よりも早く2回目のアタックを矢継ぎ早に投入。とにかく他の人が使っていない時に使って抜いていく戦略で、あくまで見た目上の順位とは言え1回目のアタック開始時に18位だったものが、24周目にはなんとローランドを抜いて1位になりました( ゚Д゚)
2位がこれでつぶしあいになったのでローランドは楽な展開となり、残りは昨日の反省も活かして適切な配分で快走。逆に2位争いはバーナードが順位を取り戻しに行く過程でややエナジーを使いすぎたので不足気味に陥った上、ヒューズがアタックを使って迫ってきたので防御に全力を注ぎ込むことになりました。30周目のターン1、ヒューズが外から狙いましたがバーナードに阻まれて抜けず、ここでアタックが終了しました。押し出された、と主張するには少しだけ弱い印象でペナルティーは出ませんでした。
2025 Jeddah E-Prix
Jeddah Corniche Circuit 3.001km×31Laps=93.031km
Race Energy:38.5kWh
Reference Lap Time for FCY/SC=3:10
winner:Oliver Rowland(Nissan Formula E Team/Nissan e-4ORCE 05)
フォーミュラE ジェッダ2連戦の2日目。前日は史上初のピットブースト導入で見ている側の頭の処理能力が追いつきませんでしたが、エナジー残量の差から残り数百メートルで逆転が起きるといういかにもフォーミュラEらしい結末のレースだったので終わりよければとりあえずヨシ!な感じでした。連戦で行われる第4戦はピットブースト無しのレースです。
2連戦でも充電の有無でかなり戦い方が変わるので、去年までのような『2日目が1周少ない』のような変化と比べると予測しにくい部分が多くてやる側にとってはやりがい、見る側にとっては面白さになるでしょうか。遠い将来、充電技術がさらに進んだら充電できる量やレース中のエナジー総量で設定を変えていくらでもネタを作れるので、今はとにかく開催実績を積み重ねることですかね。
・グループ予選
さてグループ予選、A組は昨日に続いてステランティスの調子が良いようで、最速はマセラティーのストフェル バンドーンが1分17秒020を記録、昨日の予選最速タイムより0.4秒ほど切り上がりました。ローランド、グンター、バードが続いたのでデュエルスに進んだのはステランティスと日産のパワートレインユーザーのみ。この組に入っていたジャガーとポルシェ勢は駆逐されてしまい、エバンスは8位、キャシディーも9位、デニスが10位でした。クープラ キロの2人が5位、6位なのでまたもや型落ちがカスタマーに勝利です。
B組は昨日のA組最速ドライバー・バーナードが残り4分の段階で1分16秒922と17秒を切ることに成功。どのドライバーも一旦タイヤを冷やしてからの2回目のアタックは更新が難しかったようでこれが最速としてそのまま残りました。ヒューズ、モルターラ、ダコスタが続きました。昨日頑張ったデフリースは0.088秒届かずグループ5位でした。昨日のレースで車が吹っ飛んだミュラーは11位、アンドレッティー大苦戦。
・デュエルス
A組は準決勝でローランドがバンドーンを撃破。一方B組はバーナードがやはり異様に速くて準々決勝では唯一の14秒台を記録、準決勝もヒューズを寄せ付けませんでした。これでデュエルス決勝は日産のワークスとカスタマーによるイギリス人対決、そしてなんとバーナードがまだ子供のころにバーナードはローランドからカートの指導を受けたことがある、という師弟対決でした。
先攻のローランドはターン8まではミスなくほぼ完璧に見えましたが、殺人シケインの出口となるターン9で角度と速度が合わなかった様子で縁石で飛んでしまい明らかに失敗。これに対してバーナードは今日一番のキレた走りを披露し、なんとこの週末最速の1分14秒804を記録して、フォーミュラE史上最年少・20歳259日でのジュリアスベアポールを獲得しました。バーナードは見てると壁際でのタイヤ1本のライン制御が他の選手と全然違う印象を受けました。せっかくなので車載映像をどうぞ。
・グループ予選
さてグループ予選、A組は昨日に続いてステランティスの調子が良いようで、最速はマセラティーのストフェル バンドーンが1分17秒020を記録、昨日の予選最速タイムより0.4秒ほど切り上がりました。ローランド、グンター、バードが続いたのでデュエルスに進んだのはステランティスと日産のパワートレインユーザーのみ。この組に入っていたジャガーとポルシェ勢は駆逐されてしまい、エバンスは8位、キャシディーも9位、デニスが10位でした。クープラ キロの2人が5位、6位なのでまたもや型落ちがカスタマーに勝利です。
B組は昨日のA組最速ドライバー・バーナードが残り4分の段階で1分16秒922と17秒を切ることに成功。どのドライバーも一旦タイヤを冷やしてからの2回目のアタックは更新が難しかったようでこれが最速としてそのまま残りました。ヒューズ、モルターラ、ダコスタが続きました。昨日頑張ったデフリースは0.088秒届かずグループ5位でした。昨日のレースで車が吹っ飛んだミュラーは11位、アンドレッティー大苦戦。
・デュエルス
A組は準決勝でローランドがバンドーンを撃破。一方B組はバーナードがやはり異様に速くて準々決勝では唯一の14秒台を記録、準決勝もヒューズを寄せ付けませんでした。これでデュエルス決勝は日産のワークスとカスタマーによるイギリス人対決、そしてなんとバーナードがまだ子供のころにバーナードはローランドからカートの指導を受けたことがある、という師弟対決でした。
先攻のローランドはターン8まではミスなくほぼ完璧に見えましたが、殺人シケインの出口となるターン9で角度と速度が合わなかった様子で縁石で飛んでしまい明らかに失敗。これに対してバーナードは今日一番のキレた走りを披露し、なんとこの週末最速の1分14秒804を記録して、フォーミュラE史上最年少・20歳259日でのジュリアスベアポールを獲得しました。バーナードは見てると壁際でのタイヤ1本のライン制御が他の選手と全然違う印象を受けました。せっかくなので車載映像をどうぞ。
スタート順位はバーナード、ローランド、ヒューズ、ダコスタ、モルターラ、グンター、バード、デフリースのトップ8。予選では3位だったバンドーンですが、車両が消火器をきちんと作動できる状態ではなかった、という安全規定の違反により失格。ドライバーには非が無いんですが残念ながら最後尾です。なんか前にも聞いた話だなあと思って自分のブログに『消火器』で検索をかけてみたらビンゴ、シーズン10の第6戦・ミザノで予選3位のヒューズが同じ理由で失格になっていました。
ちなみに・・・
ローランドのカートチームについて気になったので調べてみました。オリバー ローランド モータースポーツという名称で、F2に参戦しつつも「年齢的にそろそろ若いドライバーの育成を考えたい」と思ってコーチ業もやり始めていたローランドが2017年に設立したようです。元々は教え子の1人であったアービド リンブラッドという選手のお父さんから息子のこの先の活動について相談され、彼に才能を感じていたローランドは彼のために自分たちでチームを作ることにしました。
ちなみに・・・
ローランドのカートチームについて気になったので調べてみました。オリバー ローランド モータースポーツという名称で、F2に参戦しつつも「年齢的にそろそろ若いドライバーの育成を考えたい」と思ってコーチ業もやり始めていたローランドが2017年に設立したようです。元々は教え子の1人であったアービド リンブラッドという選手のお父さんから息子のこの先の活動について相談され、彼に才能を感じていたローランドは彼のために自分たちでチームを作ることにしました。
リンブラッドは早速多くのレースで結果を残し、2017年はイギリスで2位。これを見てさらにローランドの下にはドライバーが集まり、リンブラッド自身は2018年にはチャンピオンを獲得しました。その後は強豪チームに移籍してカートで世界王者となったリンブラッド、現在17歳ながらレッド ブルの育成ドライバーとして今年からFIA F2に参戦します、レッドブルが期待する若手の1人です。
で、リンブラッドと同じころにローランドの指導を受けていたのがバーナードだったようですが、彼の場合は実際にローランドのチームに所属してレースをしたわけではなく、実際のレース活動はニコ ロズベルグの設立したチームからでリンブラッドとはライバルの立場でした。ただ、2018年に設立されたばかりのロズベルグのチームにバーナードが加入する経緯においてローランドは支援を行ったそうです。
なお、フェイスブックによるとオリバー ローランド モータースポーツは2024年をもって活動を終了したそうです。参戦コストの増加など競技側の変化に加えて、おそらく日産の契約選手として本気で世界選手権を狙える立場に来たために、自身の活動に的を絞るためと思われます。元々彼がリンブラッドを助け始めた頃はローランド自身がF2に出ていたころ。F1へはどうやら繋がらないようだと感じ始めたことが後進の指導をする要因だったでしょうから、自分の立ち位置も7年で大きく変わりました。
・決勝
同じ日産同士、もし協力できるなら賢く共闘しようというような話になっているらしい師匠と弟子。緊張の高まる一瞬ですが、どうもルーカス ディ グラッシの車がちゃんと2列前に移動しないうちに止まってしまったようで、グリッドに変な空き地ができてスタート準備が整いませんでした。
無事ディグラッシが動いたのでそのまま手順を再開してスタート、偶数列はやや不利な様子で3位スタートのヒューズがローランドをかわして2位となります。そして酷かったのがターン3、グンターが完全に目測を誤ったようで全く止まれない速度でミサイルになり、運悪くそこにいたダコスタに命中。これで両者とも自走でピットへ戻ってリタイア、ダコスタは2日連続で後ろから正面衝突されました。
同じ日産同士、もし協力できるなら賢く共闘しようというような話になっているらしい師匠と弟子。緊張の高まる一瞬ですが、どうもルーカス ディ グラッシの車がちゃんと2列前に移動しないうちに止まってしまったようで、グリッドに変な空き地ができてスタート準備が整いませんでした。
無事ディグラッシが動いたのでそのまま手順を再開してスタート、偶数列はやや不利な様子で3位スタートのヒューズがローランドをかわして2位となります。そして酷かったのがターン3、グンターが完全に目測を誤ったようで全く止まれない速度でミサイルになり、運悪くそこにいたダコスタに命中。これで両者とも自走でピットへ戻ってリタイア、ダコスタは2日連続で後ろから正面衝突されました。
バーナードは序盤2周ほどのペースが1分26秒台、昨日グンターが最も抑えた時のタイムよりさらにより4秒ほど遅くなっており、グループ予選の9秒落ちですからむちゃくちゃ遅いです。ペロトンスタイルで特にアタックを使っていると抜き放題という状況ですが、7周目になるとローランドが前に出ました、今日はペース配分間違えないでね。
ローランド師匠は10周を終えた時点で残量が上位勢で最も多いので、ここまでは上手く戦っている模様。14周目に上位では最初にアタック2分を使って自分からどんどん動かしていきます。これを見て翌周に実質2位のバーナードがアタック4分、13位スタートから実質3位まで上がっていたベルニュがアタック2分を使用。一時的にバーナードが前に出る時間があったものの、アタックが終わるとまたローランドが前に出ました。最初にアタックを使ったロビン フラインスが一時的に先頭を走る場面もありましたが、なんというかマラソンでテレビに映るために必死に沿道を走ってすぐ消えるお客みたいに気づいたらいなくなりました^^;
ローランドは1分22秒5前後を綺麗に並べて先頭を維持し、後ろではとりあえず様子を見る人と思い切って自分からアンダーカットを仕掛ける人での争いになります。一番積極的に見えたのは19位スタートのデニスで、16周目に周囲よりは遅めのタイミングでアタック4分を使って順位を上げると、22周目に今度は周囲よりも早く2回目のアタックを矢継ぎ早に投入。とにかく他の人が使っていない時に使って抜いていく戦略で、あくまで見た目上の順位とは言え1回目のアタック開始時に18位だったものが、24周目にはなんとローランドを抜いて1位になりました( ゚Д゚)
ローランドはデニスに抜かれながら24周目に2回目のアタック、同時に実質3位のベルニュも6分を使用。翌周にバーナードが2回目のアタック4分を起動しますがベルニュがバーナードをアンダーカット、さらにアタック残り時間も40秒ほど長いので優位な状況を作ります。アタックを使ったアンダーカット、Gen2時代の戦略に戻りましたねえ。ローランドは26周目にデニスを抜いてすぐに1位に戻ります、今日こそは完璧に勝てそう。
一方でせっかくアンダーカットを成功させたベルニュには思わぬ壁が立ちはだかりました、アタックは終わっているのにデニスがけっこう粘ってくるので抜けずに詰まってしまい、これを利用してバーナードが反撃。27周目のターン14の飛び込みでデニスを間に挟んで2人が両側から抜いていくというすごい場面が訪れて内側にいたバーナードが先行しました。ただ中継映像が車載カメラを選んでいたのでこのすごい争いがイマイチ伝わりません、これ外から見たかったなあw
一方でせっかくアンダーカットを成功させたベルニュには思わぬ壁が立ちはだかりました、アタックは終わっているのにデニスがけっこう粘ってくるので抜けずに詰まってしまい、これを利用してバーナードが反撃。27周目のターン14の飛び込みでデニスを間に挟んで2人が両側から抜いていくというすごい場面が訪れて内側にいたバーナードが先行しました。ただ中継映像が車載カメラを選んでいたのでこのすごい争いがイマイチ伝わりません、これ外から見たかったなあw
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この後3ワイドになったはず |
優勝は前日の敗戦をすぐさま糧として戦ったローランド、今季2勝目・通算5勝目。そして2位はヒューズに追い回されたのを耐えて弟子のバーナードが耐えきり、師弟でワンツーフィニッシュとなりました。3位はバーナードにマクラーレンのシートを押し出され、コース上でもちょっと押し出されたヒューズ、昨年の第12戦上海以来となる自身2度目の表彰台でした。
4位は巧みな戦略とマネージメントと防御でスタートから15個も順位を上げたデニスで、キャシディー、バンドーン、ベルニュ、ベアライン、ティクタム、モルターラのトップ10でした。日産はノーマン ナトーが開幕から1点も獲れていませんが、ローランドの得点だけでチーム選手権1位、ドライバーでもローランドが1位となっています。そして驚くべきことにマヒンドラは4戦全て得点しており現在チーム選手権で6位、昨年は年間で47得点だったチームが既に41得点です。それもこれも、ジャガーがなかなか得点できていないせいだと思いますが・・・
予想通りのペロトンスタイルとなったジェッダ第2レースでしたが、ローランドの良さが出ました。後ろにとどまって節約する利益と混戦に巻き込まれる危険、天秤にかけた時に前者から後者へと考えを切り替えたタイミング、それまでのかなりの節約がいずれも完璧に機能したと思います。ほぼビリからやってきたデニスという変数を避けるには先頭走者の利点は大きかったので、むちゃくちゃ強力なアタックモードは昨年までの『ひたすら相手に1位を押し付けて、どっかで抜いて裏切れば良い』というだけのレースでは無くなったなと感じるレースでした。
そのデニスは人とアタックのタイミングをずらしてとにかく前に出る、という失うものが無い立場でのレースが見事にハマり、これは次戦以降に向けて他陣営も作戦パターンとして研究してくるんじゃないかと思います。何せ昨年までの2年間が『アタックは義務消化』『いかに損せず使い捨てるか』に主眼が置かれていましたので、まだどのチームも無難に動いて順位を下げないようにする意識の方が強いように思いますが、考え方をゼロから組み立て直さないといけないというのが見えた気がしました。ピットブースト無しでも戦略性はかなり高くなりましたね。
で、せっかく盛り上がって来たんですが3月はレースが無くて次戦は4月のマイアミとなっています。その代わりというべきか、各国の著名人がGen3 Evoに乗って走行するという特別企画が3月に公開される予定です。
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