ABB FIA Formula E World Championship
2025 Hankook Mexico City E-Prix
Autódromo Hermanos Rodríguez 2.63km×36Laps(-0.188km)=94.562km
Reference Lap Time for FCY/SC=3:10
Race Energy=38.5kWh
winner:Oliver Rowland(Nissan Formula E Team/Nissan e-4ORCE 05)
フォーミュラE シーズン11 第2戦、 2025年の初レースはメキシコシティー。 F1でもお馴染みのアウトドローモ エルマノス ロドリゲスを短くしたレイアウトです。 いわゆる野球場区間もF1とはちょっと形が違うんですが、FEの方が好きな私はむしろF1のレイアウトを見ると違和感があったりします。F1で使っている部分は路面が綺麗な一方で、使っていない箇所は路面が多少荒れているので摩擦係数が低いし車も跳ねます。
メキシコシティーはGen3になった過去2シーズンで開幕戦でしたが、シーズン8以来3シーズンぶりに第2ラウンドでの開催。過去2シーズンではこのメ キシコシティー勝者が結局はその年のチャンピオンになっており、 このジンクスを「開幕戦勝者=チャンピオン」 と捉えたらエバンスがその対象、「メキシコシティー勝者= チャンピオン」 と捉えるならこのレースの優勝者が対象となります、答え合わせするのが楽しみですねえ。ちなみにシーズン8のチャンピオン・ストフェル バンドーンは開幕戦勝者でもメキシコシティー勝者でもありませんでした。
このサイクルで見た目上では一旦1位となったデニスですがアタックの時間がポルシェの2人より短いので抜かれるのは時間の問題。そもそも「 左フロントが終わった」とぼやいて先にタイヤがダメになったらしく、アタックが切れる前に段階でもうダコスタ、 ベアラインに抵抗できず3位に後退しました。このあたり、 固すぎて作動しない、タイヤ1セットで何レースもできる、なんて言われた昨年までのタイヤよりも取扱いが難しく なっている様子が伺えます。ここは最終コーナーで極端に左前に負担がかかりますしね。
決勝は昨年よりも1周多い36周の設定、 サンパウロは前年踏襲の設定でしたからこのレースは新車で前年よ りもうまくエナジー管理をしないといけない初めてのレースともな ります。サンパウロではアタック モードによる追い抜きが大量に見られましたが、よりエナジー管理が難しくなるこのレースでも追い抜きの武器になるのか、それとも義務消化になってしまうのかは今シーズンを占うと言っても決して大げさではないでしょう。
・レース前の話題
Gen3Evoの時代が始まったばかり、Gen4元年となるシーズン13のパワートレイン製造事業者の登録はたしか申請期限の締め切り間近だったと思いますが、その先の Gen4中間点に向けてヒョンデが新規参入を検討しているのでは ないか、とThe Raceが伝えています。 既存のカスタマー使用チームに声をかけて提携する形を検討してお り、 現在日産のカスタマーとなっているマクラーレンが候補になってい るのではないか、とのこと。
ヒョンデはWRCでティエリー ヌービルがドライバー選手権のチャンピオンを獲得しましたがWRC活動の将来はやや不透明とされています。他方でジェネシスのブランドでLMDh車両を制作してWECへ参戦する ことも検討されており、 比較的低コストで競争力を保つことができる世界選手権への参戦を 通じてブランド力を向上させたい意向を感じますね。ちなみに京都市内を歩いていると、それなりの台数でヒョンデの電気自動車・アイオニック5のタクシーを目にします。
・練習走行
金曜日のFP1は晴れていたものの、当日となる土曜日のFP2は珍しく走行前の時間帯に雨が降ってしまい、濡れた路面になってしまいました。おかげであっちこっちでみんなツルッツル、安全に走らせる練習にはなりましたがレースのデータを集めるにはあまり役に立ちませんでした。ただFP1の時点で既に昨年のFP2最速を2.5秒以上上回る1分10秒8が記録されており、4WD化とグリップ力の増したタイヤが明らかに効果を発揮していました。
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| ズラっ |
・グループ予選
幸い路面はある程度乾き日差しが出ているものの、気温17℃・路面温度21℃とメキシコシティーとしてはえらく肌寒い環境になりました。 走行ライン外や建物の影になっている部分にはまだ水が残っていて 難しい条件でA組が始まりました。
こういう時はとにかくコース上で走り続け、できるだけ最後の最後 にアタックするのがお約束。 でもみんなが同じことを考えると混雑するのもまたお約束で、 結果グループ最速はパスカル ベアラインの1分14秒610。オリバー ローランド、セバスチャン ブエミ、ミッチ エバンスの4人がデュエルスに進み、なんか結局は順当な結果になりました。
ところがせっかく2位だったブエミはソフトウェア関連の技術違反 により記録が取り消されてしまい、 これで順位が繰り上がってエドアルド モルターラがグループ4位でデュエルスへ滑り込みます。
B組の走行が始まるとさっきのベアラインの記録を悠々と上回って いるのでさらに路面条件が好転していることは明らか。 もちろん最後を狙った混雑が発生しますが、1周ズレたサイクルだったサ ム バードはみんなが距離を空けてゆっくり走っている中にアタックで突っ込む形になり、避けられるはずもなくアタックを邪魔されてしまいました。 こういう時はサイクルを合わせるのもエンジニアの仕事かなあとは 思いますが。
そんな中でグループ最速はマキシミリアン グンターで1分13秒352、ジェイク デニス、ニック キャシディー、アントニオ フェリックス ダ コスタの4人がデュエルスへ進みました。ところが今度はキャシディーに対して技術違反で記録抹消のお知らせ、これでジャン エリック ベルニュが繰り上がってデュエルスに進みました。 ブエミもキャシディーもジャガーのパワートレインなのが気になっ ていたら、 原因はメーカーが届け出た出力マップと実際の数字が一致しないト ルク マップ違反。やはりメーカー全体が抱えている問題と考えられ、 結局ロビン フラインスも同様に違反を取られました。
B組最速のグンターはA組最速のベアラインより1.3秒も速くなりましたから、 A組の人はさっきの条件からデュエルスに向けて2秒も3秒もいき なり速い別物と言える条件で走らないといけないため、 普段以上に対応力が求められそうです。デュエルス初年度のように『A組1位 vs B組4位』のたすき掛け対戦だったとしたらA組の人は不利だったかもしれないので、最初は同組で対戦させるというのは理にかなってるなあと今さら思いました。
・デュエルス
A組は1回戦でローランドが1分11秒058というぶっちぎりの記録を出しましたが、準決勝で対戦したベアラインは1回戦から0.6秒も記録を詰めて1分11秒040を記録。逆に1回戦より遅くなってしまったローランドを下しました。
一方のB組はグループ1位のグンターが、滑り込みの繰り上げ進出だったベルニュに1回戦負けを食らう波乱。ベルニュは準決勝で1分10秒923と10秒台に突入しましたが、対戦相手のダコスタはさらに上を行く1分10秒739を記録。これで決勝がベアラインとダコスタのポルシェ対決になりました。
デュエルス決勝、ベアラインはターン1でちょっと突っ込みすぎて0. 1秒以上失っていましたが、 ダコスタがターン9からのシケインで完全に失敗して0. 3秒近く失ったので勝負あり、ベアラインがジュリアス ベア ポール ポジションを獲得しました。2戦連続・通算8回目ですがそのうちメキシコシティーがこれで4回目、他にプエブラで1回、サンパウロで2回獲っており、モナコでの1回を除いて彼のポールは全て南北アメリカ大陸で記録されています。サンパウロでの横転事故が全く影響していないことを見せつけました。
敗れたダコスタは「 右リアが何か壊れた、異音がする、ポール獲れたのに!」 とお怒りでしたが本当に何かあったのかは謎、それはさておきスタート順位はベアライン、ダコスタ、ベルニュ、ローランド、 エバンス、グンター、デニス、モルターラのトップ8となりました。ローラ ヤマハ アプトのゼイン マローニーが9位からのスタートです。
・川崎さんのリポート解説の解説
時々J SPORTSが現地に派遣して取材をお願いしているデータ アナリスト・川崎 亮輔が前戦で日産に起きた出力超過違反について「2キロジュール」 の結構面白いリポートを入れていましたが、 ある程度仕組みを分かっていないと意味不明で番組の尺では掘り下げ切れなかったので、 たぶんこういう話だろう、というのを勝手に推測して補足します。
スタート時の4WDモードについて、 規定ではフロントMGUからの最大出力は50kW、 そして使用可能エナジー総量が250kJと定められています。 1kWの出力を1秒間使用した際に使用するエナジーが1kJとい う関係性なので、 250kJを50kWの最大出力で使用すると4秒間で使い切るこ とになり、 ここでシステムによってフロントMGUからの出力を止める必要が あります。
で、 川崎さんの話だと250kJの総量を超えた違反行為であるか判断 する際に、 運営側には僅かに誤差を認めるための余力が設けられており、 これが2kJだという話になります。0.8% の誤差を認めていることになりますね。
上記の通り50kW出力だと仮定して使用できるのは5秒。5秒の0.8%と計算するか、もしくは2kJ÷50kWで考えて0. 04秒、川崎さんの話から考えると5秒で打ち切らなければいけない4WD走行は5.04秒までなら許容されることになります。 実際は50kWが瞬時に0にはならず必ず途中過程の出力がありま すからもう少し大きな数字にはなるでしょうけど、それでも 微小な数字です。
本来こういう違反裁定に用いる誤差って、 口外すると誤差の最大値を実際の規則の上限と解釈して故意に違反 領域に片足を突っ込む行為が横行するので言わないものだと思うん ですが、 これだけ細い隙間だとさすがに狙わないので言っても良かったんで しょうかね。なかなか興味深い話でした。
・決勝
グランド スタンドも野球場もお客さんがけっこういっぱい。 スタートではポルシェ2人がわりと仲良く丁寧にスタートしベアラ イン、ダコスタの体制で1周目を終えました。 その後ろでは2周目のターン1でローランドがベルニュをかわして 3位へ、 昨年と同様にローランドはまず序盤に前に出ておく戦い方に見えますね。
序盤のペースはグループ予選から3〜4秒落ちの1分16秒0前後、 ベアラインが抑えめに走り、 ダコスタはローランドに狙われないようブロック ラインを選んで牽制している様子です。ポルシェが2人で道幅を占拠しているような状態で、追い抜きをするには絶妙に届かないペースなのでベアラインが完全 に隊列を支配。ダコスタは後ろに付いているぶんエナジーを節約できる反面、 常にローランドが内側に入ろうとしてくるので防御にも気を使う必要があるのでポルシェ内の2人の立場はどっちが有利か微妙なところ。基本は前の人に優先権があるはずなので、ダコスタはエナジー節約と引き換えに壁役をやらされてる感があります。
上位勢はほぼ膠着、誰もアタックを使わないままレース全体の 1/ 3 を経過しましたが、 13周目に5位のデニスが最初のアタック4分へ。この時ちょうど、中団からスタートしたチームメイト・ニコ ミュラーがアタックを使って上がってきていたので、ミュラーを壁にすることで順位を下げることなく隊列に戻るチーム戦を展開します、ようやくこれでレースが動きそう。
これを見て14周目にリーダーのベアラインがアタック2分に入り 、こちらもダコスタを利用して1位のままの合流を試みました。 ただポルシェの2人が並走してごちゃついたため、 ベアラインのリードは守られた一方でその隙を付いてローランド がダコスタをついにかわしました。ダコスタの後ろにはさらにアタック中のドライバーがいたので、次々と入られてしまって一気に5位へ 転落、無線で「どうにかしてくれ!」と叫びますがどうにもなりません。
デニスはベアラインより先にアタックに入りましたが4分を使ったので2分のベアラインよりも長い持続時間がありました。時間切れ寸前の16周目、 野球場区間の狭い場所ながら4WDを活かして加速でベアラインを一気に 仕留め、アタック前の5位から一気にリーダーとなりました。 この追い抜きは四輪駆動ならではの新しい光景で他のカテゴリーではなかなかお目にかかれない新鮮な姿でした。
この間に他のドライバーも順次1回目のアタックへ、 デニス同様にまずは4分を選んだダコスタが19周目 にデニスをかわしリーダーとなりますが、 チームメイトのベアラインやローランドは先に2分を使ったので次回が6分、逃げ切るためにはうまく展開を味方に付ける必要がありそうです。
すると20周目、3位にいたベアラインが上位では最初に2回目のアタックに入ります。先に使った以上はアタックの時間内にとりあえず1位まで戻すアンダーカットの形にしたいはずですが、アタック時に2つ順位を下げたことが影響。目の前のエバンスを抜くのに半周近く費やしてしまいました。これで、翌周のデニス、22周目のダコスタはアタックに入った上でいずれもベアラインの前で合流してアンダーカットに失敗、序盤のレースを支配していたはずのベアラインが気づいたら不利になってしまいダコスタが主導権を握ることになりました。
残り10周、ダコスタ、ベアライン、 デニスのトップ3に2.5秒ほど離れてローランドが続きますが、 まだアタック6分が残ったまま。 どこで使うのかがポイントだと思っていたら、 28周目のターン12でデイビッド ベックマンが停止。マローニーに思いっきりぶつけられており、 右前のサスペンションが折れて自走不能になりました。 これでSC導入となってしまいます。そういえばクープラ キロのスキーム、開幕戦では元々発表されていたキロ レースの黄色い車体にクープラのロゴを追加しただけでしたが、今回チョコレートみたいな茶色が追加されてますね、規則だと国際映像のグラフィック変更にお金を払わないといけなかったはずですがw
4位のローランドはちょうどこの直前にアタックに入っていたので 無駄になったとも言えるし、 追いつくためにエナジーを今から注ぎ込む予定だったのが、 エナジー不要でタイヤも酷使させずタダで追いつけたとも言えます 。さっきのデニスの話からするとタイヤの節約は決して小さい影響ではないかも。
なんて思ったらさっさとベックマンの車両は排除されて31周目にレース再開、再開が早かったので無駄撃ちと思われたローランドのアタックがまだ約1分残っていました。前の3人はもうアタック終了済、となると再開直後にローランドがほとんどチート状態になり、ターン12までに3人をあっという 間にぶち抜いてリードを奪いました。 そして抜き終わった直後、今度はエバンスがシケインでクラッシュしていたので、 ローランドが前に出た数秒後にまたSCが出ました。大急ぎで抜いたのが奏功しました( ゚Д゚)
エバンスの事故はシケインのターン10を立ち上がって加速したら、前のミュラーはあんまり加速しなくてまともに追突したものでした。なぜミュラーが加速しなかったのかは謎ですが、これで開幕戦で最後尾から優勝した幸運を相殺するかのようにエバンスはリタイア、車両はささっとコース外へどけられて33周目にリスタートしました。
ローランドは残量でやや劣っているものの、追加周回なしで2度のSCがありましたからほぼ全開レースとなっており、これは大きな問題にはなりませんでした。ダコスタが最後まで狙い続けましたが、ローランドは最小限の節約で防御して抑えきりました。オリバー エリック ローランドが今季初・通算4勝目を挙げて、エバンスとは逆にソフトウェアの不具合で壊滅的だった開幕戦の不運を相殺する勝利となりました。
2位からダコスタ、ベアライン、デニスと2位~4位がポルシェパワートレイン。ベルニュ、グンター、バンドーンが続いたので5位~7位はステランティス勢でした。8位にはニック デ フリースが入ってマヒンドラは幸先よく4点を獲得しました、一昨年は開幕戦でルーカス ディ グラッシが表彰台に乗りましたが、昨年は初得点までに9戦もかかりましたからねえ。
今回、レース終盤にSCが連続したことでアタックを温存していた人が使い切れない事態となり、ブエミとエドアルド モルターラは2回目のアタックを使い切らずにレースを終えたので10秒加算、ディグラッシは1回目すら使い切れず、2回目は起動すらしなかったので罪が重くなってドライブスルー換算の27秒加算ペナルティーが課せられています。ローランドも一歩間違えたら同じ目に遭っていましたので、28周目のあのタイミングで入っていたのはその後の無双モードを含めて神がかり的タイミングでした。
ローランドの優勝はもちろん強運を引いたことにもありますが、1周もかからずに前の3人をぶち抜くというのは言うほど簡単ではありません。最初のSCが出た時点でほぼ全開レースになっていましたからリフト&コーストの量は少ないので、きちんとコーナーに飛び込むまでに相手に並べる状況を作っておかないとブレーキだけで抜くことは不可能な条件でした。レース途中、ベアラインがエバンスを案外抜けなかったことからもちょっとしたことで抜くには少し届かない事態が起きるのは明らかだったので、運を結果に繋げたのはローランドの急ぎたい場面で的確な判断と操作をした実力の賜物だったと思います。
一方ベアラインからすると、うまくレースをまとめていたはずだったのに気づいたらダコスタにひっくり返されていたのであんまりおもしろくなかったでしょう。2回目のアタックですぐエバンスを抜いていたらアンダーカットできた可能性があるので、ローランドとは逆にほんのコーナー1つ、ワンプレーの差で急に勝者から敗者に立場が変わったのかな、と思いました。しいて言えば2回目に動くのがちょっと早かった印象はあります。
・いよいよGen3覚醒?
今回もSCの入る展開になりましたが、開幕戦に続いて2戦連続でアタックモードによる追い抜きが数多く見られ、アタックは『消化すべき義務』ではなく『レースを動かし、順位を上げるための武器』になっていました。解説の由良 拓也がレース後に「"これがフォーミュラEだ"というレースがやっと完成したんですね。」と話していましたが、まさに由良さんの言葉がしっくり来る展開だったと思います。
元々Gen2まではアタックモードと言えば『アンダーカット』『オーバーカット』という概念が多く、先に使えば抜ける、でもその時に順位を下げたら相手に追いつかないし、次に相手がアタックを使うとどのみち抜き返されて元に戻る。じゃあそうならないためにどうするのか、というのが戦略の核でした。2年間に数多くのペロトン スタイルのレースを見てきて感覚が麻痺しかけていましたが、元々できていたレースが戻ってきたとも言えます。
さて、次戦はサウジアラビアのジェッダ2連戦ですが、この2戦目にピットでの急速充電、どうやらピット ブーストという名称が付いたようですが、これが導入されるのではないかと言われています。ただ、既に新しいアタックモードでレースがじゅうぶんに戦略的で予測しにくく、なおかつ白熱したレース展開を生み出しただけに現場では『わざわざさらに別の要素を追加する必要があるのか?』という疑問も浮かんではいるようです。まあとりあえず1回見てみないと分かりませんね。くれぐれも事故の無いようご安全に。
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