F1 最終戦 アブダビ

Formula 1 Etihad Airways Abu Dhabi Grand Prix 2024
Yas Marina Circuit 5.281km×58Laps=306.183km
winner:Lando Norris(McLaren Formula 1 Team/McLaren MCL38-Mercedes-AMG)

 ようやく長かったF1も最終戦までやってきました。ラスベガス、カタールと移動してみんなヘロヘロの中で最終戦・アブダビです。過去に何度か歴史に残るチャンピオン決定劇を見守ってきたヤス マリーナ サーキット、コース序盤は長い全開区間、後半はクネクネした区間が続きます。2020年以前はストップ&ゴーだったので後輪の摩耗が激しいトラックでしたが、2021年の改修以降は逆に前輪の摩耗が激しくなりました。
 コース外が非常に広いのでSCは出にくいトラックですが、最終区間のほんの一部分だけは港に面した部分でコース外を広く取れないため、なぜか市街地コース的な形状でミスったら即効で壁にぶつかります。滅多に無いんですけどそれがレース中に起きたのが2021年の最終戦でしたね。予想外のSCには要注意。

・レース前の話題

 もう最終戦前に話題も何もないだろうと思ったら衝撃の発表、アルピーヌのオコンがなんと最終戦を前に離脱し、ジャック ドゥーハンが予定を前倒ししてこのレースでデビューすることになりました。報道によるとフラビオ ブリアトーレはオコンに対して『シーズン終了後のテストにハースから参加したければ今すぐ降りろ』とハースでのテスト参加を取引材料に使ったようです。オコンからするとそこで意地を張ってハースでの来年を不利にするわけにいかないので呑むことになりこの結果に至ったとのこと。ってこれ単純にハラスメントじゃない?だからブリアトーレのやり方は気に入らないんだ・・・

・予選

 Q1でペレスがせっかく好記録を出したと思ったらターン1ではみ出していて記録抹消。ただペレスは無線で「俺はそう思わない」と主張すると、映像検証を精査した結果左側のタイヤがほとんど目視では分からないレベルでかかっていたようでセーフ、『ペレスの1ミリ』で記録が復活しました。私もグランツーリスモでよくありますw
 これでペレスのQ1落ちは消えましたが、代わりに脱落の憂き目に遭ったのがハミルトン。みんなが制限時間ギリギリの最も路面状況が良いところを狙おうとして渋滞が発生し、その最後尾にいたので時間ギリギリでのアタック開始でタイヤの準備が不十分でした。さらにトラック上に落ちていたボラードを車体の下に挟み込んでしまう不運も重なってしまいまさかの18位。ボラードはマグヌッセンが後続車に道を譲るため、良かれと思ってコース外を走った結果うっかり蹴飛ばした物でした。さすがにチームも功労者の最後の予選がこんな形で終わったので予選後に謝罪、そもそもQ1でそこまで無理して時間ギリギリにする必要がありませんでした。

 続くQ2ではルクレールが最速の1分22秒980を記録した、と思ったらターン1ではみ出ており"1ミリ"も無くて記録取り消し。14位でQ2脱落となります。今回猛烈に応援したいボッタスはQ1での2位に続いてここも9位で通過しQ3進出、今季初入賞に向けて好調な走りを見せます。なおボッタスが記録を伸ばしたせいでQ2落ちとなったのは角田でした、でもいいんだ、私は角田よりボッタスを応援するんだから。

 Q3でも珍事は続き、フェルスタッペンが1回目のアタックの最終コーナー出口でズラを踏んでスピン寸前。それでいて1分22秒945と好記録を出して暫定1位となります。暫定2位は0.004秒差でノリス。これに続く0.04秒差の記録を出したピアストリはターン1ではみ出して記録が抹消されましたが、さっきのペレスとほぼ同じラインだなと思ったらまたギリギリセーフに判定が覆って3位タイムが返ってきました、どうなってんだこの予選w
 そしていよいよ2024年最後のアタック勝負となりますが2回目のアタックに向けて路面状況には伸びしろがあったようで、なんとヒュルケンベルグがフェルスタッペンを上回る記録を叩き出す衝撃。そんな中でノリスが1分22秒595と後続をぶっちぎる記録を出すと、フェルスタッペンの方は上手くいかなかったのか記録を更新できず終了。ノリスが今年最後のピレリポールを獲得しピアストリ、サインツ、ヒュルケンベルグ、フェルスタッペンとなりました。
 ただヒュルケンベルグはQ1でピット出口のトンネル内で前の車を追い抜いたのがこの週末の予選規則に反していたため3グリッド降格のペナルティーとなりました。現在の予選制度ではコース上での極端な低速走行を防ぐため指定された区間タイムより遅く走ることができず、車間距離はピット出口で調整するしかありません。結果として渋滞発生場所がコース上からピットに移ったわけですが、これをどう足掻いても醜い行為と取るか、コース上の最終コーナーで渋滞して大事故が起きることを思えば別にこれでいいと思うかは考え方次第でしょうかね。なおボッタスは9位、ドゥーハンはさすがに初戦なのでQ1落ちして20位です。

・決勝

 タイヤ選択はハミルトン以外の全員ミディアム。最終戦、そしてとりあえずこれで一旦F1からお別れということで、スタート前にはコラピントとボッタスの感謝の無線が放送されました。ある程度キャリアを重ねてやり切ったボッタスは分かるけど、シーズン途中に呼ばれて、来年に引き続き乗れる可能性が無いのに走っていたコラピントはなんかちょっと同情してしまいますね。最後の数戦で車を壊しまくったからちょっと印象悪いけど天然の速さがありそうですし、なんかもったいなく感じます。
 そしてたぶん周冠宇も何か無線で言ってるだろうと思うんですけど公式動画の無線ダイジェストにも乗ってないんですよね、というか彼の無線が放送されてることってほとんど無かったか。そういえばだーーーいぶ昔、誰かのコラムで『将来純中国メーカーのチームが中国人ドライバーを起用したら、無線の中国語を欧米チームは理解できないから事実上暗号になる』とかふざけて書いてる人いましたね。普通に考えたら他チームが中国語を話せるスタッフを1人雇えば済む話なので意味無いですけどw

 そして迎えた今年最後のスタート、4位スタートのフェルスタッペンが好発進ですぐにサインツを抜き、ターン1へピアストリも抜こうかという勢いで飛び込んでいきましたが進入角度がちょっと危うい、ぶつかる!と思ったらやっぱりピアストリと接触、2人ともスピンしました。ピアストリは後方に落ちますがマックスは王者のスーパーテクニックで360度回って中団の隊列にしれっと合流。ぶつけられたピアストリは無線で「あれが世界王者の動きさ。」と皮肉たっぷりの言葉。

 さらにターン6ではペレスがスピンするとけっこう壊れてしまってピットへ戻ることなくコース脇に車を停めてしまい、これで2周目の途中からVSCとなりました。どうやらボッタスに引っかけられたようで、これでボッタスもペナルティーを受けて入賞が絶望的に(T T)スタート直後の混乱により順位はノリス、サインツ、ガスリー、ラッセル、ヒュルケンベルグ、アロンソ、マグヌッセン、ルクレールというトップ8でフェルスタッペンは11位です。
 
 3周目の前半でVSCは解除、フェルスタッペンには最初の接触で10秒加算のペナルティーが与えられ、これを聞いたピアストリは無線で「いいね。」と返しますが、彼は彼でスピン後の挽回中にコラピントに追突しており10秒加算が発効されたので全然いいねではありませんでした。ところでさっきのピアストリの無線にあった「あれが世界王者の動きさ」、後日F1の公式ネタ動画で採用されそうな気がしますね、なんかフェルスタッペンが珍妙な動きをしているところに、道行く人が指さして「あれは世界王者の動きだ」とかやりそうな気がしますw

 ノリスはサインツとの差を少しずつ広げて単独走行、3位のガスリーはどう足掻いても車が速くないので後続の蓋、とはいえラッセルを抑え込んで大健闘しています。この中団争いは11周目あたりからピットサイクルとなってミディアムからハードへの交換が始まりました。アンダーカットされたらどうしようもないので3位のガスリーも14周目にタイヤ交換。
 一方で他の上位勢は確実に1ストップで走り切るためにミディアムでもう少し引っ張り、次に動いたのはルクレールで20周目でした。これでもまだ早い方で、続いて25周目にサインツ、26周目にリーダーのノリスと実質3位のラッセルがピットに入って概ねサイクルが一巡しました。1周先にタイヤを換えたのでピット後のノリスとサインツの差はピット前の4秒から一時的に1.5秒ほどに縮まりますが、ノリスのタイヤが作動したらまた差が開いていきます。今日のノリスは全然追いつかないパターン。
 
 31周目、気持ちが切れたわけではないでしょうがマグヌッセンに抜かれたボッタスがブレーキで完全にロックしてミサイルになり接触。これでボッタスはかなり車が壊れてリタイア。ひょっとしたらこれがF1最後の場面かもしれませんが、メルセデスのリザーブになれば何かあった時に帰ってくるかもしれないのでちょっとだけ期待して待っておきましょう、今までありがとうバルテリ。

 そんなボッタスの元チームメイト・唯一ハードでスタートして違うことをしていたハミルトンは34周を終えてタイヤ交換。ミディアムを履いてアロンソの僅かに前方・7位で合流しました。できればあと少し引っ張りたいけど、これ以上引っ張るとアロンソとフェルスタッペンの後ろに回ってしまうので損得勘定からここで見切った形です。
 ここからは1人だけミディアムなのでさらに順位を上げて行き、41周目にはガスリーを抜いて5位となると、13秒前方にいるラッセルを追撃。何せノリスが独走、3位になったルクレールはタイヤが古いから前には追いつかないので2位のサインツも独りぼっち状態で、ハミルトンの追い上げ以外にほとんど見る場所が無くなってしまったので頑張ってもらわないといけません()
 私の願いが通じたのかどうかは分かりませんがハミルトンはラッセルになんとか追いつきました、ただあと1周ちょっとしかありません。ラッセルはもうタイヤが無いのかハミルトンより1秒近く遅いので、いつも通り「気を付けて争うように」と忠告されたらちょっとできることも少なそう。しかも偉大な大先輩のこのチームで最後のレースですからさすがに無茶なブロックは心情的にできないでしょう。
 ハミルトンはDRSを使ってラッセルを捕まえる目前だったんですが、いかんせんノリスから35秒以上離れた場所で争っていましたので、いよいよ抜きにいくであろうタイミングでノリスがチェッカーを受けるタイミングになってしまいました。当然国際映像ではノリスが大写し、ハミルトンはちっさいワイプの車載映像。ノリスが第18戦シンガポール以来の今季4勝目を挙げ、この瞬間にマクラーレンがコンストラクターズ選手権のチャンピオンとなりました。そしていつも通り花火が盛大に打ち上げられるその脇、ワイプの中でハミルトンはラッセルを抜きました。メルセデス最後のオーバーテイクはイギリスの後輩から、レースの最終周での出来事となりました。ちなみに私はだいぶウトウトしていたので花火に目が行ってハミルトンが抜いた時にはワイプを見ていませんでしたw

 というわけで最終戦はノリスが優勝しサインツ、ルクレールの2人が表彰台へ、フェラーリはコンストラクターズ制覇まであと少し届きませんでしたね。ハミルトンが4位、ラッセルが5位、フェルスタッペン、ガスリー、ヒュルケンベルグと続きました。ピアストリは10位に入賞し、なんと2024年の全ての周回を走破した唯一のドライバーとなりました。1位のノリスから1分23秒遅れだったので、最後の最後で周回遅れになる寸前でした。ドゥーハンは1周遅れの15位で完走しました。

 引退するわけではないんだけどドーナツで締めたハミルトンでした。そんなハミルトンの古巣・マクラーレンが1998年以来のコンストラクターズチャンピオンを獲得、26年間のブランクはF1史上最長記録です。また、ノリスは今回ポール トゥー ウイン、かつ全周リードでしたが、アブダビではなんとこれで10戦連続でポールシッターが優勝。2001年~2010年のカタロニア サーキットでの記録に並びました。どおりで退屈なわけだw
 ガスリーはシーズン終盤に異様に点数を稼いだおかげでコンストラクターズ6位はアルピーヌ、7位にハース、8位がVCARBでした。ガスリー自身も最後の最後でヒュルケンベルグを1点差で逆転してドライバー選手権10位となっています。

 いやあそれにしてもレース序盤以外何も起きない最終戦でした、観戦しつつ書いている下書きはハミルトンがピットに入ったところで絶筆していましたw
 チャンピオン争いが持ち越されていたらもうちょっと盛り上がったのかもしれませんが、そうではなかったのでどちらかというとサヨナラ公演みたいな印象、今年限りでチームを去るサインツとハミルトンがいずれもチームメイトを上回る結果で終わった一方で、ひとまずF1から去ることになるボッタス、コラピント、マグヌッセンと、最後になったかもしれないペレスが全員接触事故でちゃんと走れなかったのはなんか気の毒でしたね。唯一、周冠宇だけが13位で完走、終わりになってようやくちょっと速くなったぞザウバー。
 来年のシーズンは今年色々と牽制し合ったグレーな部分の車体に関する規則などがきっちりと詰められる以外は大きな変更点がなく、現行PU規則最後の1年、言い換えれば2025年を戦いながらも2026年以降の次の時代で最初に主導権を得るための開発が並行して進むので軸足をどう置くか悩ましいシーズンとなります。今年の勢力図を持ち越すのならもうフェルスタッペン大逃げにはならないので、2022年から始まった現行規則の枠組み4年目となる集大成のシーズンが激戦となることをやんわりと期待しつつ2024年を終えようと思います。レッドブルはペレスかローソンか角田か、これを書いている時点ではまだ不明。
 とりあえず来年はレースディレクターやスチュワードが立て続けにクビになったりすることが無い安定したレース進行体制をちゃんと整えてほしいのと、年間24戦は多すぎるので19戦以下に減らしてほしいです^^;

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