NASCAR プレイオフ 第8戦 ホームステッド

NASCAR Cup Series
Straight Talk Wireless 400
Homestead-Miami Speedway 1.5miles×267Laps(80/85/102)=400.5miles
winner:Tyler Reddick(23XI Racing/The Beast Killer Sunrise Toyota Camry XSE)


 シーズン大詰めのNASCAR、プレイオフ・ラウンドオブ8の第2戦はホームステッド。1マイル超のトラックはこれが今シーズン最後です。大会スポンサーはストレート トーク ワイアレスという先払い型の従量課金制携帯電話サービスのブランドみたいですが、公式サイトを見ようとしても海外からのアクセスは弾かれるのか調べられませんでした。
 ホームステッドは最終戦として開催されていたころはフォード 400やフォード エコブースト 400などのイベント名で長く開催され、2020年からはディクシー ウォッカ、そして昨年はケビン ハービックの引退にちなんでモービル1が支援していましたが、今年はまた新しいスポンサーが付きました。
 そんなホームステッド、1.5マイルトラックとしては珍しいペーパー クリップ型なのが最大の特徴で、一般的なDシェイプと比較するとターンの旋回半径はきつく、直線は長くなります。ターンの入り口で踏むブレーキの量が多くなり、旋回時間も長いのでタイヤへの負担がかなり大きくなります。そこに加えて、ターンの上の方がバンク角が高いプログレッシブになっているため大外ラインが有利、内側はがら空きで入るのは自由なんですが、ターンの出口では失速してしまうのでかなりの速度差が無いとなかなか追い抜きができません。

 抜きにくいトラックではあるんですが、タイヤの摩耗が激しいのでレースでの強さの方が比重が大きいと思われ、スタート順位と優勝者の関係性で言うと過去25回の開催でポールシッターの優勝は3回だけ、2位からも4勝でわりと万遍なく色んな予選順位から優勝者が出ています。最終戦だったころは夕方~夜のレースでアジャスト能力がより重要だった影響もありそうです。
 出場選手で最も平均順位が高いのは昨年の優勝者・ベルで10.0。これにチェイス、トゥルーエックス、ハムリン、レディックと続き、5番目に位置するレディックも平均11.0と大きな差はありません。と言ってもベルとレディックは出場回数が4回だけ、レディックは2022年にクラッシュした以外は4位、2位、3位と全て好成績で下手したら平均順位1桁になりそうな内容で、大外ライン大好きな彼のスタイルとホームステッドの相性の良さが伺えます。
 前戦でクラッシュしてポイントでのチャンピオンシップ進出はかなりハードルが高くなってしまったレディックとすると、この相性の良いトラックは絶対に獲りたい一戦。しかしハムリンは現役最多の通算3勝、ラーソンも大外ラインなら得意で、ポイントでかなり優位な立場にいるベルも昨年の勝者ですからそう簡単に勝たせてはもらえないでしょう。ブレイニーは昨年のこのレースで2位でしたがそれ以前にはあまり結果が出ておらず平均順位が16ほどとあまりよろしくありません。

・Craftsman Truck Series Baptist Health 200

 ポールシッターのコリー ハイムがステージ1を制して好調な出足に見えましたが、ステージ2に入ると9位スタートのグラント エンフィンガーが躍進しました。ところが最終ステージ開始早々、エンフィンガーはクリスチャン エッケスと接触してタイヤとフェンダーを傷めてしまい緊急ピットのため周回遅れ。エンフィンガーは既に前戦タラデガで優勝してチャンピオンシップ進出を決めているので慌てる必要はないわけですが、76周目に発生したクラッシュでコーションとなると思わぬ展開になりました。
 フリーパスを得たエンフィンガーは当然ながらここでピットに入りますが、上位勢はレースがまだ50周ほど残っていたのでステイアウトを選択。すると、燃費とタイヤを温存したエンフィンガーは100周目以降にピットに入って行った上位勢をかわすと、そのままノーピットで最後まできちんと管理して20位以下のリスタートから鮮やかに優勝を手にしました。タラデガからの2連勝で、このレースでは誰もチャンピオンシップ進出を決めることができませんでした。

 なお、76周目のクラッシュはコナー ジョーンズがマット ミルズに対して報復行為として行った接触が原因でしたが、ミルズの車から火が出て彼は煙を吸ってしまい病院に搬送される事態となりました。思ったよりえらいことになってしまったのでジョーンズは謝罪文を発表するに至りました。幸いミルズはその後に退院して次戦への出場が認められたようです。

・Xfinity Series Credit One NASCAR Amex Credit Card 300

 予選4位のコール カスターと同16位のオースティン ヒルが速さを見せるレースとなりました。ステージ1、2ともヒルが獲ると最終ステージも両者の争いが続きましたが、残り12周でヒルが再びカスターをかわすとその後は独走。最後はなぜか思いっきり内側を走ってホコリを巻き上げながらチェッカーを受け、第24戦アトランタ以来となる今季4勝目でチャンピオンシップ進出を決めました。ヒルはこれ以前の3勝が全てドラフティング トラックだったので、普通のトラックでの勝利となると昨年の第19戦ポコノー以来でした。

・カップシリーズ
 予選

 来ましたミニ四駆祭り。ブッシュライトポールはレディックが獲り、2位は0.077秒差でラーソンでした。2列目にベルとハムリンが並びチェイスが7位でした。先週のクラッシュの際にちょっと体調を崩したというブレイニーは10列目、バイロンとロガーノは13列目と予選ではあまり振るわず、ロガーノに関してはパワステの不具合があったので交換により最後尾スタートとなりました。今回の予選で予想外の活躍だったのは10位に入ったヘイリーでしょうか、制度上予選は10位ですがラウンド2のタイムとしては7番手タイムでした。
 

・ステージ1

 スタートでラーソンが少し出遅れてしまいベルが2位に浮上しましたが、少し後方ではイケイケで走ったヘイリーがやりすぎてターン3で自分からリッキー ステンハウス ジュニアに接触、スピンして早くも最初のコーションが発生します。よもやまたスポッターとの連携ミスではないと思いますが、せっかくの予選順位を半周で捨ててしまいました。幸いだったのは後続が見事に全員ヘイリーを避けたことでしょう。
 6周目のリスタートではレディックが出遅れてベルに一時先行され、ラーソンにも懐に飛び込まれそうになりましたがここは鬼ブロックでしのいで、かなりタイヤを使わされた気もしますがベルも抜き返してリードを取り返します。
 その後はレディック、ラーソン、チェイスのトップ3でレースが少し落ち着き、32周目あたりからピットサイクルとなりました。レディックとチェイスは33周目に先に動き、ラーソンが翌周にピットへ。チェイスは作業後にスアレスと交錯してブレーキを踏んだので少し損しましたが、レディック陣営もピット作業がそんなに早くなかった上にうまくトラクションがかからなくて加速せず、ピット出口で2人の順位が入れ替わりました。レディックは2つの躓きが響いてラーソンにもオーバーカットされ実質3位に後退です。
 ピットサイクルが一巡するとチェイス、ラーソン、レディック、ハムリンの並びとなり、5位にノンコンテンダーのバッバ ウォーレスを挟んで6位にバイロン、7位にブレイニーと中団スタートの2人が早くも上位へ。2人とも予選一発の速さは無かったものの決勝の速さには自信を持っているという情報で、ここからのペースが注目点。
 ところが47周目、コマーシャル中にラーソンが壁に接触してしまい、右後輪をパンクしてコーションとなりました。いや、映像を見直すと正しくは先にタイヤがパンクした結果ふらついて壁に接触しているようでした。でも先にパンクしたのなら交換から15周もしていないタイヤがなぜいきなり壊れたのか、それはそれでラーソンとすると怖い話です。
 
 多くのリードラップ車両はピットに入ってタイヤ交換し、4人だけステイアウトして54周目にリスタート、3列目からリスタートしたチェイスはステイアウトしたオースティン シンドリック、トッド ギリランドに立て続けに引っかかってしまいました。これで先ほどのピットを2番目に出たウォーレスがリード、レディックが続きます。レディックはチェイスの真後ろからリスタートしたんですけどラインを変えたから詰まらずに上手いこと抜け出しました。
 レディックは56周目にチームメイトのウォーレスをかわしてリーダーになりました。ウォーレスはちゃんと空気を読んでいた様子で、この後チェイスの前に立ちはだかってレディックを強力に援護してくれます。ウォーレスウォールは完全にチェイスをはじき返すことに成功し、そのままステージ1はレディックが4秒近い大差を付けて制しました。ウォーレス、チェイス、ブレイニーと続き5位にはなんとホースバー。先週は出オチだったルーキーが異様な速さを見せてその後ろにベル、ハムリン、バイロンが続きました。

ステージ2

 ステージ間コーションでリードラップ車両がピットへ。ここまで2回のピットではいずれも発進時にもたついて順位を下げているレディック、今回は回転数をもう少し下げて立ち上がるように言われましたが、ここではそれ以前の問題として作業が遅くてまさかの順位爆下げ、7位になってしまいます。最初にピットを出たのはブレイニーで、こっちはピットで3つも順位を上げました。
 ラーソンはステージ1で24位とあまり順位を戻せませんでしたが、ここでもまた不運。ピット内でステンハウスと接触したクリス ブッシャーがスピンしてしまい、ブッシャーはラーソンのお隣さんだったので邪魔になってしまいました。またリードラップのほぼ最後尾から出直しです。

 88周目のリスタートはブレイニーとウォーレスの1列目、しかしここは2列目リスタートのチェイスが内側に飛び込む積極的な動きを見せてリードを奪い取りました。ブレイニーはタイヤが減っても落ち幅が少ない方向性の車ですが、ひょっとするとリスタート直後はやや不得意な車かもしれません。
 ここから15周ほど経過するとチェイス、ハムリン、ブレイニー、レディック、ホースバーの順となります。ウォーレスはステージ1での力強さから一転、徐々に順位を下げる展開。この中でブレイニーが112周目に壁に擦ってしまい、順位を下げたしタイヤを傷めたかもしれないので、ちょっと早いですが113周目にピットに入りました。
 相手が動いたら自分も動かないわけにいかないので116周目にリーダーのチェイスもピットへ、しかしブレイニーにはアンダーカットされた形になりました。ということは他のドライバーがこれから入ってもおそらくはブレイニーの後ろで、とりあえずものすごいアンダーカットで順位を得ることになりそうです。逆から言えば急いでピットに入ったところで順位を守れないので、ハムリンとレディックは暫し反応せずにステイアウトを継続しました。結局ハムリンはほぼ均等割りの123周目にピットへ、翌周にレディックも入り、この2人は実質5位と7位あたりでステージ後半に入りました。

 リーダーのブレイニーはタイヤが古いので128周目にチェイスにかわされて陥落。でもチェイス自身もややタイヤが古いドライバーに該当するわけで、この後ハムリンが順位を上げて着実にチェイスとの差を詰めていきました。
 ステージ残り15周、ハムリンはとうとチェイスを捕まえますが、そのころスポッターたちがいる高台ではなんと大量のハチが飛んでいるようでむちゃくちゃ気になります。チェイスのスポッター・トレイ プールも無線で「すんげえデカいハチの問題に直面してるんだけど。」と無線でぼやきます。クルー チーフのアラン ガスタフソンは「刺されないように気を付けて。」

 でも1匹や2匹飛んでいるレベルならまだしも、もやは養蜂場レベルにハチが飛んでるのでプールは「この群がっている状況じゃ、"魚に濡れるなと言っているようなもの"だろ。ここはひどい状況だ。」上手いこと言いますねえ、マジ大丈夫だったんでしょうかここの皆さん。

 スポッターがハチに悩まされているチェイスですが、前方に複数の周回遅れが現れてクリーンエアーで走れなくなってしまい、ステージ残り9周でついにハムリンに並びかけられました。約3周に渡ってホームステッドらしいサイド バイ サイドの争いを見せましたが、最後は力負けするようにハムリンにかわされました。ステージ2はそのままハムリンが制し、チェイスは古いタイヤでも2位を死守。ベル、レディック、ブレイニー、バイロンと続きました。

・ファイナル ステージ

 ステージ間コーションで全車ピットへ、ハムリンは2つ順位を下げ、レディックのところはどうもクルーの動きに少し硬さがあるような印象でこちらも1つ順位を下げました。最終ステージはチェイスとベルの1列目で173周目にリスタート。残りは95周、コーションが出なければピットサイクルは215周目あたりからでしょうか。
 チェイスはリスタート直後はベルと、続いてブレイニーと激しい争いになり、なんとかリードは守ったもののブレイニーを退けるのに5周ほど費やしました。この間、ラーソンがとうとうトップ10圏内に戻ってきてミニ四駆走法が再び炸裂しています。やっぱりラーソンの大外ラインは他の人と一味違う気がするなあ、タイヤ半分~1本分ぐらいラーソンは外を走ってるように見える。
 ここからタイヤが減って行く中でのレース展開が面白くなりそうだと思ったんですが、187周目にヘイリーがスピンしてコーション発生、ギブスに追突を食らっていました。この前のリスタートでギアが壊れていて4速が無くなったというギブス、減速に失敗したのか単純ミスか。これでリードラップ車両がピットに入ると、ブレイニーがチェイスを逆転しました。なおギブス君はこの後コリー ラジョーイとも接触し、結局6周遅れの36位でレースを終えました。ヘイリーも2度のスピンで予選順位を全く活かせず34位に終わっています。

 192周目にリスタート、気づいたらロガーノ以外のプレイオフ選手7人が上位に集結する展開となる中でブレイニーがリードを守ります。さっきのリスタートでもけっこう攻めた走りをしていたブレイニー、走り出しから攻められるように上手いこと車をアジャストしてきたのかもしれません。
 解説のスティーブ レターテの予想では、2秒差の相手に先にピットに入られるとアンダーカットされる可能性が高く、ブレイニーはステージ1も2も早めにピットに入る作戦だったことからここもリーダーだけど早めに動くのではないか、という話。ただステージ2は均等割りしたハムリンが最終的に速かったので、あまりに早く動きすぎると足を掬われる恐れもあり悩みどころです。

 と言っていたら中団は218周目あたりからアンダーカットを狙ってピットに入りはじめました。220周目には2位のチェイス、3位のラーソンも同時にピットに入り、当然これを見て翌周にブレイニーもピットに入りました。ただピット前にブレイニーとチェイスの差は1.5秒ほどしかなかったので、レターテの見立~て通りにここでチェイスがアンダーカットに成功。ラーソンはブレイニーをかわせずちょうど2人の間にブレイニーが入りました。

 うん、やっぱ普通のドライバーは『外ライン』で、ラーソンが本物の『大外ライン』だな、何回見てもこの人だけ壁との距離が全然違う。
 
 この3人はピットを経てバトルが続いていますが、レディックとハムリンはステージ2と同様に均等割りを考えてステイアウトしています。事実上のリーダー争いは225周目にブレイニーがチェイスをかわして順位を取り返しました。チェイスはタイヤの内圧が上がり切るまでの間、ちょっとターンの真ん中あたりで車の動きが神経質でスロットルを戻す場面があるように見えます。
 229周目、ここで見た目上2位のハムリンがピットに入り、ブレイニーの約14秒後方で合流。そしてレディックはさらに引っ張りまくっており、どうやらこちらは均等割りで理論上の最速を目指しているというより、ピットに入る前にコーションが出てくれる一発逆転を狙っている雰囲気です。

 残り25周、ラーソンがチェイスをかわして実質2位となりブレイニーに接近。そしてまだ実質6位ではありますが、ハムリンはもうブレイニーから見て6.5秒差にまで追いついてきました。ラーソンが実質的なリードを奪うのが先か、ハムリンが追いつくのが先か、コーションが出るのが先か。
 とりあえずこのうち3つ目の可能性は残念ながら消えました。残り15周、ここでとうとうレディックがピットに入り大勝負は失敗。ピット後に見た目上周回遅れになったので、大急ぎで自力ラップ バックしました。これでリーダーはブレイニーとなりラーソンがすぐ後ろにいます。ハムリンは間にいた人を全員抜いて3位になりましたが、壁に擦ったり乱気流の影響を受けたりするのでブレイニーとは6秒差とほぼ変わらず。
 すると残り13周、ブレイニーが周回遅れのオースティン ディロンに引っかかったのを見たラーソンは勝負に出ます。ターン3でブレイニーとディロンの間にある狭い隙間に飛び込んで一発でカタを付けようかという動きでしたが、

 元々けっこう無茶なライン取りだった上に、ブレイニーが外へ少し膨らんで軽く接触したこともあってラーソンは姿勢が乱れました。徐々に内側に巻き込み始め、ゆーーーくりと巻き込み続けて残念ながら耐えられずに回りました。これでコーション発生ですが、エイプロンで立て直したラーソンはハムリンに抜かれて1つ順位を下げただけで済んでしまいます。
 これでリードラップ車両がピットへ、ブレイニーのクルーは彼を先頭で送り出すことに成功しましたが、ラーソン陣営は作業に12秒もかかって順位が下がりました。どうしたのかと思ったら、さっきスピンした際に右側のルーフ フラップが開いた=線で繋がっているディフューザーのフラップが下方に出て引っ込んでいなかったので、これを押し込んで元に戻したためでした。クルーチーフが発進直前のラーソンを急いで呼び止め、クルーが倒れ込みながら瞬時に対処、むしろラーソン陣営の好プレーと言える対応でした。

 普通、ルーフフラップが開くようなスピンを喫したら、車を壊しているか少なくとも順位が下がっているのでピットではゆっくりと作業しながら車両の確認を行うもの。そのため開いたディフューザーフラップを戻す、なんて作業がこのピット競争の中にぶち込まれることはまずありません。今回ラーソンはたまたま3位のままピット競争に参加していたので珍しい光景になったわけですね。

 そしてこのコーションで唯一ステイアウトしたのは、ついさっきピットに入ったレディックでした。必死で自力ラップバックし、他に誰もステイアウトしていないので一気にリーダーに浮上、タイヤは全力で2周ほど使い込んだタイヤです。261周目/残り7周、レディックとブレイニーの1列目でリスタート。実質たった2周の履歴差とはいえ、新品タイヤと比べるとやはりグリップ力では劣る様子のレディックはハムリン、ブレイニー、チェイスの3人にあっさり先行されてしまいました。やっぱり無理か・・・
 ところが2周ほどすると徐々に風向きが変わります。完全な新品と、たとえ2周でも一度全力で使い込んだタイヤには使い始めの段階ではかなりの性能差がありますが、互いに数周が経過すると2周の履歴差はそれほど大きなものではなくなってくるようで、レディックはチェイスをかわして3位を確保。そして前方ではハムリンとブレイニーの争いが激しくなってきました。前で争ってくれればまだ可能性あるかも?
 残り2周、外を走るハムリンに対してブレイニーは内側を攻めると、なかなかの旋回速度を維持してターン2を立ち上がることに成功。ここまでできればブレイニーが優位で、サイド ドラフトをかけてバックストレッチでハムリンを引きずり下ろし、ターン3~4でハムリンを完全に抜き去りました。ブレイニーがリードを奪っていよいよ最後の1周へ。
 ブレイニーはターンで真ん中を走り、ハムリンは大外からもう一度逆転を狙いますが、なんとレディックが一番内側を通ってハムリンをかわし、ターン2でブレイニーの背後にピタリ。「ハムリン、もうここまで来たらレディック押して助けたれ!」と画面の前で勝手なことを言う私。でもさすがにそんなことは起きずにターン3へ。ブレイニーはまたもや真ん中を走ってターン3へ進入しましたが、その瞬間に全てが決まりました。

 大外ラインでブレイニーより遥かに奥まで突っ込んでターン3に飛び込んだレディック。壁に突っ込むことを恐れない一か八かと言えるミニ四駆走法、マジか?曲がるんか?嘘やろ?

 曲がったー!すげえええええええ!!!!!!すいません、夜11時に大声出して拍手しました。タイラー ジョージ レディック、得意のホームステッドで崖っぷちから最後は最強の武器で大勝負に勝ち、チャンピオンシップ進出を決めました。今回も観戦に訪れているマイケル ジョーダンも大興奮。


 素晴らしくクリーンで、ホームステッドにおけるレースの全てが詰まったような最後の7周でした。レディックの走りは本当にしびれましたし、私の中では今年のレースで最高の決着の瞬間かもしれません。記録によるとレディックはターン3に入った後にかなり強烈なカウンターステアを1回入れているようで、マジでギリギリの走りだったようです。ブレイニーはあのターン3からの場面が何度も夢に出てくるんじゃないかと思うぐらい悔しすぎる2位でしたが、激戦が終わって冷静になると

 突きつけられたのはプレイオフ当落線から38点差、もう次戦マーティンズビルで勝つしかないという現実です。13位に終わったラーソンもまさかのランキング5位、でもパンクとスピンで2回も順位を落としておいてこの状況は不幸中の幸いとも言えます。ハムリンはこのレース3位+ステージポイントで合計48点を稼ぎましたが、他のプレイオフ選手もみんな同等に稼いだので全然差が縮まらず18点差でアレっぷち、いや崖っぷちです。これ、バイロンまで脱落してヘンドリック全滅という可能性も現実味が出てきましたね。。。
 プレイオフ選手以外に目を向けると、8位にアルメンディンガー、9位ホースバー、10位にライアン プリース、とあまりお目にかかれない3人が揃ってトップ10入り。アルメンディンガーはホームステッドで3年連続8位以内、ホームステッド通算13回の出場で6度目のトップ10、平均順位で見ても1.5マイルのトラックで最も得意にしており、今回も期待に応える結果だったと言えます。
 ホースバーは今季6度目のトップ10フィニッシュで、スパイアー モータースポーツの選手としてシーズンでこれほどの回数トップ10フィニッシュした選手は初めてのこと。これまでの最多はラジョーイが昨年記録した3回で、ラジョーイは今年も3回記録していましたがその倍の数字。チームメイトのゼイン スミスも4度のトップ10ですがそりゃあスミスがかすむわけです。平均順位18.1はプレイオフに進出したチェイス ブリスコーを上回っており、ドライバー選手権ではカイル ブッシュとマイケル マクダウルの間に割って入る21位。走るごとに評価はうなぎのぼりでしょう。


 最後の場面、ブレイニーが真ん中を通ったライン取りは正解だったのか?とそこそこオーバルのレースを見ている人だと疑問に思った方も多いと思います。実際公式サイトのNASCAR Inside the Raceでも話題に上がっていました。
 実は私も最初に見た感想としては「ブレイニー何で内側降りちゃったんだ~、ビビったか。」と思いました。ブレイニーが外ラインを選んでレディックに乱気流を浴びせれば、ミニ四駆走りは封印されて抜けないと思ったからです。でも後から振り返ると、そう単純な話ではないことが分かりました。
 レディックはターン1~2で一番内側のラインを通りながら、ハムリンをかわしてなおかつブレイニーとの間合いを詰めました。狭い旋回半径と低いバンク角でも真ん中を走ったブレイニーを凌ぐ速さだった、ということは前を行くブレイニーも当然察知します。
 そしてターン3、もしブレイニーが私の考えとシンクロして大外へ行ったら、レディックは逆を突いてまた内側に飛び込んでくる可能性が高くなります。レディックはそこそこ曲がる車だったわけですから一旦は先行することが確実、そうしたらそこから外へせり上がって行って、ターンの途中でブレイニーの目の前に滑り込む"スライド ジョブ"を繰り出した可能性があります。これをやられたらブレイニーは詰まって抜き返せないか、急な乱気流で自分が壁にぶつける恐れがありますし、最悪レディックがやりすぎると壁に挟まれて2人で散る恐れもあります。内側を開けてしまうのは怖いんです。
 当然内側をガチガチに固めたらレディックの思う壺なので、ブレイニーがどれを選んでおくのが最善か、と言われたらどちらでもない真ん中の勝負となるのは仕方ない話だったと考えられます。ただ想定外だったのは、真ん中から相手の動きに合わせて柔軟に対応する余地を残したはずが、あまりにレディックの旋回速度が高くて気づいた時にはもう相手が壁にぶつけることを期待する以外に手が無かったことでした。
 見方を変えると、レディックはターン1~2でインベタに走って抜く、という1つ目の大勝負に勝利した時点で半分は道が開けていたことになります。もちろん最後のターン3~4の決死のミニ四駆走りこそが勝利を決定づける最高の走りでしたが、実際はその半周前の動きが勝利を引き寄せる最高の走りだったのかもしれません。
 最後の勝負が2~3周の争いであれば新品タイヤではないレディックにほとんど勝ち目は無かったでしょうから、7周という新品タイヤの美味しいところが無くなる絶妙な周回数であったことも運命を分けたと思います。それにしても、前ラウンドでプレイオフ脱落の危機に瀕したレディックと、本来なら脱落していたはずだったロガーノがこのラウンドでいち早く勝ち上がりとは、2024年のシーズンは一体どれだけドラマチックで予測不可能なんでしょうか。
 次戦はいよいよラウンドオブ8最後のレース・マーティンズビル。ブレイニーは昨年ホームステッドで2位となった後マーティンズビルで優勝し、そして最終戦の2位でチャンピオンを決めています。何が起きても、私は驚きませんよ。そう、壁走りを超える超絶テクニックを披露するやつでも出て来ない限りねw

コメント

首跡 さんの投稿…
最後のリスタートからフィニッシュまで、ずっとドキドキしていました。やったぜ、レディック!
ラーソンのスピンによるコーションはありましたが、巡ってきたチャンスをモノにしたのは確かでしょう。

それはさておき、ファイナル4の残り2枠は誰が入るのか…
次のマーティンズビルも非常に楽しみです。
SCfromLA さんの投稿…
>首跡さん

 私もリスタートからずっと「どういう展開ならレディックにチャンスがあるか」という視点で見ていたら想像を上回る結末だったのでむっちゃテンション上がりました!そして残る2人は「プレイオフ下位勢逆転の流れ」に従ってブレイニーとベルと予想、ヘンドリックは全滅で^^;
日日不穏日記 さんの投稿…
レーススポンサーは僕も検索していましたが、ウィキを使ったら、リンク先はベライゾンでした。それ以上は気にせず、観戦記を書いていましたが。レディックを<推し>にするとは前に書きましたが、1.5マイルでフューエルウィンドウが一番長いのが、おそらくハイバンクのアトランタで70周くらい。どう考えても走り切れないと思ってました。ピットインの際、やっぱりダメか、と思いましたがその直後にラーソンのスピン。ポジションはそれほど落ちませんでしたが、結果は13位。レディックはラッキーでしたが、凄いオーバーテイクでした。結果的には、カットライン下の4人がトップ争いをしたわけで、誰もが勝ちたかった。総選挙が終わったばかりだからじゃないですが、「2位じゃダメなんですか?」がレース後思い浮かびました。ダメなんですよ、プレーオフでは!ブレイニーとハムリンのインタヴューがありましたが、2人ともテンション低め。特にハムリンは気の毒なくらいでした。結果的には、レディックのポール・トゥ・ウィンでしたが、NASCARでは、ロード、ストリードでなくては殆ど意味がないワードです。F1では、ポール・トゥ・ウィン、全周回リード、ファステストラップの4つでグランドスラムという言葉がありますが、過去最多は、クラークの8回、上位に草創期のアスカリが出てきます。時代は違いますが、典型的な先行逃げ切りタイプだったようです。上位にシューマッハ、ハミルトン、フェルスタッペンが出てきますが、一時代を築いた最強チームのドライバーです。
NASCARで検索すると、デイトナ500、コカ・コーラ600、サザン500をクラウンジュエルと呼び、ウィンストンカップ時代には、それにウィンストン500(タラデガ)を加えた4レース中3レースを優勝したドライバーに100万ドルを出すウィンストンミリオンというのがあったようで。グランドスラムの意味が、F1とは全く違うみたいで、テニスなどに近いようです。ちなみにウィキの記述が変わっていて、1960年のチャンピオンレックス・ホワイトは5フィート4インチ(163cm)で、レディックは5フィート5インチ(165cm)でレディックが戴冠しても、史上最も小柄なチャンピオンにはなりません。以前のコメントですが、訂正させて下さい。レディックが小柄なのは間違いありませんが。長文失礼しました。
SCfromLA さんの投稿…
>日日不穏日記さん

 なんかストレートトークワイアレスはベライゾンが傘下に収めて1ブランド、みたいな位置づけっぽいんですけど一次情報にたどり着けないからちゃんと調べきれませんでしたよ(苦笑)意外と『海外からのアクセスお断り』みたいな感じで公式を見れないことが多いんですよね。
 さすがにここまで来るとプレイオフ順位が下位とは言っても誰もが勝てる可能性のある選手だ、とは理屈では分かっててもやっぱり不利な立場じゃないかと思ってしまうだけにホームステッドはどの選手のファンも熱かっただろうし、そこであと一歩届かなかったドライバーの燃え尽き感は相当なものだと思います。ハムリンはそもそもエンジン規則違反による罰点という自分にはどうしようもない要素がいくらか影響してますしね…
アールグレイ さんの投稿…
今回のバトルはNASCAR史にも残るのではないでしょうか。
レディックも前戦のクラッシュからの巻き返しを最高の形で見せましたね。

ホースバーはほぼ新人王確定にしましたね。
チーム的にはベリーの方が有力かなと思いましたが、ホースバーはナッシュビルでの危険走行による25点減点があってもベリーに110点も引き離したのは大きいです。

23XIは訴訟問題も、現場レベルではなんのそのという感じで一安心です。
ハムリンもドライバーよりオーナーとして先に「アレ」を達成してしまうのかと思うとちょっと複雑です。
MJの方も多忙に見えてもトラックに来ていることが多いので、元々二輪のチームを持っていた事も考えればモータースポーツにも熱意を持って取り組んでいるんだなと感じられます。

レディックはジョーダンブランド、マクドナルド、モンスターと日本でもお馴染みのスキームで勝つ時が多いですね。
ただ今回のモンスターのスキームが調べると日本未発売のアルコール6%入りのドリンクなので
もし日本で売られたら社会問題になりそうだなと感じましたw

次のマーティンズビルはまだチャンピオンシップ4進出を決めていないドライバーが全員1度は勝っているトラックとはいえ、その中で最多の5勝を挙げているハムリンに期待したいですが、最後の勝利が2015年なのが気になります。
SCfromLA さんの投稿…
>アールグレイさん

 おお、アールグレイさんも名バトルだと思いましたか!なんか3ワイドフィニッシュとかとはまた違うオーバルの神髄みたいな感じがして、変な表現ですけど私の中でめちゃくちゃお気に入りの戦いでした。
 あのモンスターの商品は調べてなかったんですけどアルコール飲料だったんですね、エネジードリンクとアルコールで依存したらダブルで危ないヤツw
カイル・プッシュ さんのコメント…
最後の数周は、手に汗握る!って感じでしたよね!
画面に釘付けになってました!
最後のあの延びは、神様が後押ししたみたいでした!
レディックが勝ったのは嬉しかったのですが、チャンピオンになって欲しいと思っているハムリンが窮地に、、、
得意なマーティンズビルで勝って、残って欲しいです!
SCfromLA さんの投稿…
>カイル・プッシュさん

 神様が後押しってなかなか良いですね、たしかにあの時レディックの背後には大外ラインの神様がいたのかもしれません。ハムリンは、もう最悪「俺は無理だったけど俺のチームが行けた」という結末を期待するしかないですが、まあとにかくまずはマーティンズビルです。(今から見ます)