SUPER GT 第6戦 オートポリス

2024 AUTOBACS SUPER GT Round7 AUTOPOLIS GT 3Hours RACE
オートポリス 4.674km 3hours
GT500 class winner:DENSO KOBELCO SARD GR Supra 関口 雄飛/中山 雄一
(TOYOTA GR Supra GT500/TGR TEAM SARD)
GT300 class winner:VENTENY Lamborghini GT3 小暮 卓史/元嶋 佑弥
(LAMBORGHINI HURACAN GT3 EVO2/JLOC)

 オートバックス スーパー GT、第6戦(公式表記としては第7戦)はオートポリスでの3時間レース、今年初めて導入された3時間レース方式はこれが3戦目で今年最後となります。本来ならこのレースは7戦目のレースなのでサクセスウエイトはいわゆるハーフハンデで訪れるはずでしたが、鈴鹿の中止が影響して最もウエイトが重い6戦目として巡ってきました。タイヤにかなり厳しいオートポリス、しかも3時間レースだし、日本は未だに暑いし、と参加者でもないのに見ている側がついつい愚痴を言いたくなるぐらい苦労が多そうなレースです。
 今回も長距離レースなので2回の給油を伴ったピット作業が義務付けられており、もちろんこれとは別にドライバーの最大運転時間がレースの 2/3 を超えてはいけないという規則もあります。この3分の2ルール、GT300では距離制レースと時間制レースで結構大きな違いがあります。距離制だと『総レース距離の2/3』なので99周設定のレースだとGT300は実際は周回遅れにされて90周しかしなくても既定の上限は『66周』。つまり自分たちの尺度としては1人のドライバーで最大70%超の距離を託すことも可能です。
 しかし時間制レースの場合は基準が『総レース時間の 2/3』で、時間は周回遅れであっても平等に流れるので3時間レースでは最大2時間しか乗れず本当に 2/3 ルールになります。変な話、現行の規則だと普段の300kmレースでも、これを『100分レース』と言い換えた瞬間にGT300だけ戦略の立て方が全然異なるわけですね。まあそんなことやらないでしょうけど。
  
・レース前の話題

 延期となった最終戦・鈴鹿の開催概要が発表され、元々は350kmで予定されていたレースでしたが日没時間も早いし寒いので300kmで実施されることになりました。タイヤ屋さんから希望があったウォーマーの使用は禁止となり、開催時間はとにかくできるだけ暖かそうな時間帯。予選はタイヤの温まりにくい条件を考慮して普段より5分長くし、発熱に時間のかかるGT500を多少なりとも暖かい環境で走らせるため普段と違ってGT500から実施することも発表されています。

 前週、10月13日に開催された全日本スーパーフォーミュラ選手権・第7戦、不具合で加速できなかった阪口 晴南の車両に後続の山本 尚貴が避けられず接触、阪口車の右後輪に山本車の左前輪が完全に乗り上げて飛び上がってしまう事故が起きました。ターン1の立ち上がりだったので高速で車がすっ飛んで壁に突っ込む、というような悲惨な事故では無かったものの接触時と着地時の2回大きな衝撃を受けた山本選手。すぐに車から降りて来ず、昨年もGTで事故に見舞われて首を傷めただけに心配されましたが、精密検査も受けた上で大丈夫だということで無事オートポリスにやってきました。

[悲報]土曜日、一切走れず
・・・・・(っ ◠‿:;...,

 前戦SUGOでは雨により予選が行えず、土砂降りの練習走行で出した記録が決勝のスタート順位を決めることになりました。まあそんなことはそうそう起こらんだろう、と思ったら運悪く今度は朝から雨。悪天候で練習走行も予選も、併催するFIA F4も全く何も走行できずに土曜日は終了しました。予選は日曜日の朝8時から、各クラスとも30分間の走行で行うことになりましたがもちろんそれ以前の練習走行無し。
 30分の予選で2人のドライバーを両方乗せることはまず無いので、予選の人は予選しながら練習、走らなかった人は決勝前のウォームアップしか走行機会が無いほぼぶっつけレースと、なかなか対応力が求められる条件になってしまいました。当然セッティングも持ち込みが予選にそのまま、予選の状況から推理して決勝に向け微調整するぐらいしかできないですね。

・予選
見えない(´・ω・`)

 ということで眠い目をこすって日曜日朝の予選、ターン1のカメラだけ見たら「これちゃんとフラッグポスト見えてドクターヘリ飛べます?」と思うぐらい霧が濃い中でGT300クラスから始まりました。雨は降っていないものの寒いし霧が出てるし日差しもないし、ということで路面上に水があるためLEON PYRAMID AMG・蒲生 尚弥だけがスリック、他はみんなウエットを選んで走行開始。
 ウエットでも持ち込んだ中でどのスペックが合うのか、そもそも今日の車両状態はどんなものなのか探りつつ、蒲生選手だけが30分先を見て一生懸命タイヤを温めて行きました。とにかく開始直後は無茶苦茶遅い、けど焦ってすっ飛んだら全く意味が無い。でもいくら自分たちが上手く運んだつもりでも、どっかで他車起因や天候で赤旗になったら台無し、わりと怖い戦略です。
 開始から15分ほどで、とりあえずウエットで記録を出しておいた人たちがスリックに挑戦してみますが、急にコース外に飛び出す人が増えてきてやはり難しい状況。それでも残りが7分を切ってくるころにはいよいよスリックがウエットを凌ぐ気配が見えてきましたが、そんな時にグッドスマイル 初音ミク AMG(50kg)・片岡 龍也がクラッシュしてレッド フラッグ。ようやく自分たちのターンが来たと思った蒲生選手、セッション中断で文字通り冷や水を浴びせられました。

 再開後はもうあまり時間が無いですが、それでも最終的には中断前にスリックを履いてそこそこ温まっていた面々が上位に来る形となった様子。ポール ポジションはUNI-ROBO BLUEGRASS FERRARI・ロベルト メリー ムンタンが獲得しました。チームルマンはGT300クラスに来てからは初めてのポールですかね。ちなみにJ SPORTSの放送席ではゲスト解説の本山 哲が「チームルマンのアウディー」って言い間違えてる場面ありましたけど、やっぱり自分が乗ってたイメージがまだ残ってるんでしょうかね、あ、あんまり詮索するのはやめましょう()


 予選直後の暫定結果や公式サイトに当初掲載されていた予選順位には、後から記録の取り消しがあったのかこっそりと修正が入ったようで、最終的な予選順位とは5~13位に変更があったようです。私は修正前に手元資料として印刷していたので(観戦時のスタート担当選手・ピット履歴メモのためにたいてい印刷した紙を置いている)、決勝前のグリッド紹介で「あれ?違う!?ここも違う!?あれ?全然合わへん!」ってなりました。上位勢と最大の50kgハンデ勢の順位は

1 UNI-ROBO BLUEGRASS FERRARI(28kg) 片山 義章/ロベルト メリー ムンタン
2 リアライズ日産メカニックチャレンジ GT-R(50kg) 佐々木 大樹/ジョアン パオロ デ オリベイラ
3 D'station Vantage GT3(50kg) 藤井 誠暢/チャーリー ファグ
4 K-tunes RC F GT3(14kg) 新田 守男/高木 真一
5 シェイドレーシング GR86 GT(0kg) 平中克之/清水英志郎

7 LEON PYRAMID AMG(50kg) 蒲生 尚弥/篠原 拓郎/黒沢 治樹
11 apr LC500h GT(50kg) 小高一斗/中村 仁/根本 悠生
14 muta Racing GR86 GT(50kg) 堤 優威/平良 響
15 VENTENY Lamborghini GT3(50kg) 小暮 卓史/元嶋 佑弥
20 GreenBrave GR Supra GT(50kg) 吉田 広樹/野中 誠太
22 Studie BMW M4(50kg) 荒 聖治/ニクラス クルッテン/ブルーノ スペングラー

 レオンは最初からずっとスリックで頑張った甲斐があったと言うべきなのか、運が悪かったというべきなのか微妙ですが7位。ドライバー選手権で1位の彼らとすると、同2位のムータレーシングが下にいる一方で、選手権3位のヴァンテージが3位スタートになったのは気になる部分でしょうか。なお初音ミクAMGは赤旗を出した原因なので最速記録抹消、予選24位です。

 続いて、実はGT300の残り時間が0になった瞬間からセッションが始まっているGT500、こちらはSTANLEY CIVIC TYPE R-GT・牧野 任祐だけがスリック、他はウエットを選択しての走行となりましたが、GT300の開始時点と比べると路面状況がかなり改善しているので牧野は10分もするとウエットを凌駕、比較的早い段階でスリック優位の構図が見えます。あとはどの手持ちタイヤで何回アタックし、最も路面状況が良い最後のタイミングから逆算してそれをいつから走らせるのか、という戦略も重要となりました。F1だと1周ですぐアタックに入れるけどGTはタイヤの発動までに時間がかかり、しかも今回はそれがいつなのか試してないので分からない状態です。
 実際はそうなかなか上手くは合わないので残り5分あたりでピークに到達して記録を出すドライバーが多く、その中で残り3分30秒ほどで戻ってきたリアライズコーポレーション ADVAN Z・名取 鉄平がそれまでの暫定1位タイムを0.6秒も上回る突然のビックリラップを記録。次の周もさらにセクター1・2で記録を塗り替えた後にセクター3で失敗したようですが、名取の記録を誰も上回ることができませんでした。

1 リアライズコーポレーション ADVAN Z(4kg) 松田次夫/名取鉄平
2 MOTUL AUTECH Z(46kg) 千代 勝正/ロニー クインタレッリ
3 ENEOS X PRIME GR Supra(41kg/-1) 大嶋和也/福住仁嶺
4 Astemo CIVIC TYPE R-GT(35kg/-1) 塚越 広大/太田 格之進
5 Niterra MOTUL Z(36kg/-2) 高星 明誠/三宅 淳詞

7 STANLEY CIVIC TYPE R-GT(36kg/-3) 山本 尚貴/牧野 任祐
9 au TOM'S GR Supra(48kg/-3) 坪井 翔/山下 健太
14 Deloitte TOM'S GR Supra(46kg/-3) 笹原右京/ジュリアーノ アレジ

 結果としては最大燃料流量を絞られていない2台が前に来ました。サクセスウエイトを考えるとポールから0.768秒遅れだったNDDP二テラZは非常に速いなという印象。果敢に攻めた作戦だったことも含め、ウエイトが厳しい中でスタンレーチーム国光は素晴らしい結果だったと思います。さすがに3段階も流量を下げられると直線で相当キツイので埋まりたくないし、埋まったら無理に目先の順位を追わない頭の切り替えも重要でしょうね。

・競技長、訓戒を出される

 GT300の予選結果がこっそり修正されていたことを書きましたが、UPGARAGE NSX GT3(8kg)は当初6位となっていたものが正式結果で13位。同じくMETALIVE S Lamborghini GT3(36kg)も5位→9位となっており、これがごっそり順位が変わった主因でした。白線を超えたのか黄旗でも出てたのか、と思ったら、決勝レース後の正式結果のところにこんな一文を発見

◆競技長 - 訓戒 (SpR 30-5「正式予選結果発表後の誤記訂正に伴い、規定時間内にグリッドを発表できなかった」)

 『予選終了時間の誤認』というのが要因だそうで、本来ならもう計測を終えているはずの車両の計測記録を有効として取り扱ってしまった、ということになります。せめて放送でも『運営からの謝罪と説明』という立場できちんとそのぐらい説明してほしかったなと思いますが、アップガレージの小林 崇志、と思われる人のXアカウントでは

 と、小林選手は運営を批判していました。厳密に言えば最初に出たのは『暫定結果』ではなくれっきとした『正式結果』で、その後に出たのは『本当の正式結果』的ものだったということになります。何が起きたのか、映像で確認するとアップガレージNSXとメタライブウラカンはテレビ中継画面上でちょうどチェッカー表示が出た約1秒後に計測ラインを通過し、そしてその翌周にそれぞれ5位と6位になる記録を出していました。中継映像が合っているのなら確かにこの記録は無効です。
 でも普通なら、チェッカーが出たら以降の記録は採用されないし、チェッカー後も攻めて走り続けていたら悪いのはチーム側のはず。終了時刻の誤認とはどういうことなのか、ちゃんとした説明がされていないようなので詳細は不明なんですが、Xを探っていたら1件だけ

『GT300の予選が始まった時、残り時間が"1時間"なことに気づいて、ちゃんと結果が出るのか?と話していた』

 という旨の投稿が目に入りました。先ほど書いた通り今回の予選はGT300の終了とGT500の開始が同時になっています。この投稿の内容が事実であれば、おそらくシステム上はセッションは大きな1時間の枠として構成され、正式なチェッカー フラッグはGT500の終了時点1回だけしか出ていなかった可能性があるようです。結果、本来なら弾かれるはずの無効な記録が採用され、しかもチェッカーの僅か1秒後の通過、急ごしらえの予選・決勝同日開催でとっ散らかった運営がきちんと処理できなかった、という話のようです。
 ただ一点、小林選手(と思われる人)の投稿について確認すると、明らかに間違えている内容が『一旦正式に採用されたから』という理由で意地でも変えてはいけない、というのが競技として妥当であるかと言われたらそれもまた違うと思いますし、逆説的にそれもまた『何でもアリ』になってしまいます。正式を変更した『正式の正式』なんてものがあっちゃいけないのは間違いないですが、問題は確認体制ができていない、間違えたものを出してしまう、出した挙げ句それをきちんと説明もしない、という運営実態の方であって『正式結果を変更すること』そのものではないと思います。
 もちろん小林選手は現場の人間、かつこの問題の当事者ですし文字数にも限りがあるので、1週間経って全体の状況を色々調べてから無制限の文字数で書ける一般人と全く立場は違いますから、小林選手の意図としても言いたいのは私と同じだったかもしれません。ただ文章としては『一度決めた正式結果を変えるのはおかしい』という意図に読み取れ、もしそうなら微妙に批判対象が合っているようでズレていると感じました。
 小林選手とアップガレージは去年のSUGOで車高規定違反でレース後に優勝が失格と覆る事案があり、他方で今年の富士では車高違反が認められたリアライズGT-Rについて総合的に勘案して『お咎めなし』で順位が認められた、なんてこともあるので、GTのレース運営に関してちょっと不満が溜まってる経緯があった上でのことかなあとも思ったりします。そうした透明性に疑問がある運営を批判することを意図したのなら私と同じ内容になりますかね。

・スタート担当選手

 GT500クラスの上位は松田、千代、福住、塚越、高星がスタートを担当。このうち松田だけは予選を担当していないぶっつけレース組です。元々ヨコハマのタイヤは作動温度領域が高くて最初の数周でしんどいことが多く、レース前にも「もうちょっと気温が上がってくれれば」といった話をしていたのでタイヤの発熱に苦労しそうな予感。
 一方GT300は片山、オリベイラ、藤井、高木、清水のトップ5で、こちらもポールシッターの片山が予選を走っていないドライバー。せっかくポールだしメリーでスタートしてまずは決勝での競争力だったりタイヤの具合だったり、ある程度足場を固めてから片山に繋ぐものだと思ってたのでちょっと意外でした。

・決勝

 普段NASCARを見てると「何でGT、というか日本のレースの開会宣言ってこんな堅苦しいんだろうなあ」とか思ってしまう決勝。オートバックスの役員さんももっとリラックスして「昨日は走れませんでしたが大変お待たせいたしました。ちょっと寒いですけど盛り上がっていきましょう!スーパーGT第7戦オートポリス3時間、開会を宣言します、スタートユアエンジーンズ!」みたいなノリでもいいんじゃないかと思うんですけどw
 そんなこと書きつつ去年の自分の記事を見たら、去年もオートポリスで開会宣言をいじっていたことを発見、1年経ってまた同じイベントでいじってしまいましたが別にオートバックスセブンの九州地区に何か恨みがあるわけではありません^^;

 フォーメーション周回で次夫選手が必死にタイヤを温めている姿が見えましたが、その甲斐あってかGT500はリアライズZがリードを守って帰ってきました。むしろ2位の千代がスタートで少し出遅れて福住が2位となりますが、2周目にタイヤが目覚めたら抜き返しました。でも3時間のレースだからこんな序盤では何もわからんw
 GT300は片山が少し出遅れる形になり、混戦の末に3位スタートの藤井がリーダーになりました。オリベイラ、高木、そして片山と続きます。後でダイジェスト映像で出てきますが、ピットでこれを見ていたメリーは何かしら吠えていたようで、抜かれたのかもどかしかったのか、他の車に動きになにか気に入らないところがあったのか。そしてムータレーシングは接触で平良がぶっちぎりのビリになってしまいました。

 6周目あたりからGT500は最初のGT300トラフィックパラダイスをなんとか通過、この間に松田と千代の2人だけが3位以下を大きく引き離すことになり、しかも千代が追いついています。12周目、スイッチャーさんかフロアディレクターさんあたりがちょっと油断したのかもしれませんが、映像が目を離した隙に第2ヘアピンで千代が内側に飛び込んで前に出ました。少し離れた3位に塚越、福住はあまり速くは走れない様子で4位に落ちてさらに追われ気味です。

 同じ頃GT300でも1位争いが接近、高木のRC Fが藤井のヴァンテージを追い詰め、ちょうどGT500のリードチェンジ発生直後、GT300で言うと11周目にリードチェンジとなりました。なんかRC Fはやたら直線が速い様子です。去年はチームメイトの新田がアップガレージNSXにミスって追突する事故がありましたが、ベテランコンビ今年はまとめられるのか。


 レース開始約38分・23周目、WedsSports ADVAN GR Supra(12kg)・国本 雄資が第1ヘアピンでコース外に飛び出してなかなか動けないのでFCYとなりました。この段階で両クラスとも1位と2位に20秒以上の差が付いていたので、もしSCになっちゃうと大変残念なわけですがウエッズ君はサスペンションが壊れてしまってとても自力では戻れず。手助けしてすぐ安全な場所へも取り出せなかったので残念ながらSCになってしまいました。
 ある意味ぶっつけ予選でのスタート順位が、40分の肩慣らしレースを経て今日速い人の順番に整理されてやり直すような感じですが、GT300クラスでは燃費とタイヤ摩耗に自信のあるお馴染みの面々、グリーンブレイブやマッハ車検 エアバスター MC86 マッハ号(0kg)、ムータレーシングが既に1回目のピット義務を終えていてこれで有利になります。
 SC時点でGT500の順位は千代、松田、塚越のトップ3に、4位にはDENSO KOBELCO SARD GR Supra(38kg)・関口 雄飛が10位スタートからかなり追い上げてきました。GT300は高木に続く2位にapr LC500h・小高が上がっています。この車も直線が速い1台で去年もここでは上位争いしてましたから相性が良いと思われる車ですね。

 29周目/残り約2時間6分でリスタート、ちょうどレースの 1/3 を終えようかという1回目のピット サイクルの時間帯だったのでGT500は中団で数台がピットに飛び込み、GT300は3位のDステーションが動いてここで藤井からファグへと交代しました。ここからレース開始1時間を挟んで両クラスとも1回目のピット サイクルとなります。ただその中で30周目、GT300の"事実上の1位"争いをしていたグリーンブレイブ・野中がターン4で突如コース外に飛び出し失速。前の周にムータGR86・平良と軽ーく接触してパンクした模様。幸い野中は止まらずゆっくりピットへ戻れたので再度のFCYは避けられたものの、グリーンブレイブはこのレース18位でした。

 極端な作戦がないのでまだ分かりやすいGT500、ピットを終えてリーダーは33周目にピットに入ったモチュールZ、2位はSC開けに真っ先に入ったニテラZ、いずれもドライバー交替しておらず千代と高星のままです。3位もやはりSC開けに飛び込んだMARELLI IMPUL Z(43kg/-1)・ベルトラン バゲットとなって日産のトップ3独占になります。いずれも1回目のピット作業はドライバー交替無し、給油時間もやや短くしてトラック ポジションを重視した方針とみられ、2回目のピットは必ず残り1時間より前に行ってドライバー交替しないと最大運転時間規定に引っかかってしまいます。
 サイクル一巡後、戦略で微妙に前後した位置関係からまた各所で争いが起こっていましたが、38周目にエネオス・大嶋が100Rの入口で外側にいたアステモシビック・太田と接触して弾き飛ばす事故が発生。太田は全く対処する術もなくそのままタイヤバリアにぶつかり即座にSC導入となりました。日本のレースとしては比較的珍しいですが、車を降りた太田が翌周現場を通過した大嶋に対して怒りの反応を見せました。彼の場合『自分に対する怒り』というのもあるわけですが、何でも荒くれりゃあいいってもんじゃないけどこのぐらいは表に出して良いと思いますね。だから開会宣言も(ry


 これで大嶋にはドライブスルーのペナルティー。事後情報によると、大嶋選手は第2ヘアピンを前で立ち上がって100Rまでに並走状態でなければ、まあ後ろの人は並ぶ意味が無いから引くだろう、でも一応1台分の場所は残しておこう、という感じで走ったところ実際はそこに太田選手がいたし、しかも1台分残し損ねていて当たった、という流れだったようです。太田選手からすると単に寄せてきて当てられた、というだけでしょう。
 大嶋選手は「僕だったら、あそこに頭はねじ込まないという感覚です。」と話したそうですが、100Rの進入ラインを縛って相手の車速を鈍らせ第2ヘアピンへかけて勝負する、というのもあると思うのでそこはちょっと違うんじゃないかなと私は思いました。あの位置関係で太田選手が斜め後ろから100Rに外から並びかけようとして、ターンの途中や出口で押し出されたのなら並んだ方の選択ミスになる思うんですけど入り口ですからね。大嶋選手は「でも、ペナルティーはペナルティーなので。次回はそこも想定しながらバトルしなければいけないのかなと思っています。」とのことで、エネオス号はこのレース9位で終えました。

 手元のメモを見返すと9周のグリーン フラッグ ランで途絶えたなあと思うわけですが、これでGT300の勢力図がまた変わりました。宿題を先に終わらせて実質1回分のピット時間をまるまる得していた人たちは、ほぼ全車が1回目を終えた後のSCなので順位としては前にいますがピット1回分の利益はなくなり、自分たちは燃料もタイヤも厳しいし戦略の幅もほぼない状況で走ることになります。

 43周目/残り約1時間36分でリスタート、GT300はムータレーシング・平良、マッハ号・藤波のスプラッシュ組に続いて33周目にピットに入ったapr LC500h・小高が3位。以降にも普通の作戦組が数珠つなぎになっており、当然リスタートから藤波が猛攻に晒されました。とりあえず2人に抜かれた藤波選手ですが、ここからさらに崩れる前にピットへ。ちょうど残り時間が1時間半と折り返し地点だったのでこれを最後のピットとして3回目のSCを願いたいところでしたが、残念ながらこの後車両の不具合によりリタイアとなってしまいました。さすがにMC86も基礎設計が古い影響出てきたでしょうか・・・
ごちゃごちゃ

 その頃優勝争いはというと、なんと両クラスとも1位が2位に12秒も差を付ける圧倒的速さ。ムータレーシングは次の給油時間がむっちゃ長いはずなのでこのぐらい差があっても条件としたら五分五分ぐらいかなと思いますが、GT500のニスモ2台は前を行くモチュール・千代のほうが5周新しいタイヤで、たぶん燃料搭載量も似たようなもんでしょうから見た目通りの戦闘力の差です。二テラ・高星の方がウエイトが重いので当然とも言えますけど。え?ムータにSC手順違反の疑い!?聞かなかったことにしよう、これ以上ややこしくしたくないw

 再スタート手順違反検証中というのはまだ続いているそうですが48周目、残り1時間20分でムータは2回目のピットへ、ここで平良から堤へと交代して4輪交換します。すると49周目、実質2位を走っていて普通の2ストップ作戦に見えていたaprがムータの作戦に合わせるようにピットへ。33周目→49周目という変則作戦でルーキー・中村に交代してここから70分以上の戦いがああああああ!カメラの画角の外側で1コーナー飛び出した!?
 中村選手、冷えたタイヤで飛び出して、砂場にハマったら終わりなので一旦大外の舗装された部分まで遠回りして帰って来たことが事後情報で分かるんですが、なぜか中継映像はこのタイミングでターン1の固定カメラから全く切り替えなくほぼフリーズ状態。ひょっとしたらスタッフさんも交代時間だったのかもしれませんけど、この飛び出しは全くリプレイでも拾ってもらえませんでした。
 中村はタイヤが温まったころには、暫定で1位となったSUBARU BRZ R&D SPORT(18kg)・山内 英輝に抜かれてしまって周回遅れとなりました。この2人はピット前にはコース上で暫定1位(実質2位)を争っていた関係だったので、飛び出したことで軽く20秒は失ったと思われます。当然2回目のサイクルが終わったら自分は後ろだろうし、万一この瞬間にSCが出たらほぼ詰みます。
 
 ここからレースはちょっと落ち着いて残りは1時間ちょっと、60周目を終えるとリーダーの千代がピットに入りクインタレッリに交代。さらに見た目上3位のマレリインパル、5位のチーム国光スタンレーも同時にピットへ。ニスモは1回目の給油が短かったのでここはドライバー交替しつつ約30秒の給油、インパルも同じく平峰 一貴への交替を伴う26秒ほどの給油でしたが、チーム国光は既にドライバー交替を終えていて1回目は多めに給油、そしてそもそも流量が絞られて燃費が良いのでここは15秒ぐらいの給油で終わりました。おかげで山本は平峰を逆転し、一気にクインタレッリの真後ろ・実質2位でコースに戻りました。

 続く61周目にはNDDPニテラとデンソーサードがピットに入り、ここも先ほどと同じで高星から三宅の交代を含む長い給油となったNDDPを、既にドライバー交替を終えているサードが逆転しそうな雰囲気。すると2台がピットに入った直後、コース上でModulo CIVIC TYPE R-GT(14kg)・伊沢 拓也が単独クラッシュし即座にSC導入、これで作業を終えたデンソーサード・中山 雄一がコースに戻ったらさっきまで独走だったモチュールニスモ・クインタレッリの遥か前方でした。ビンゴ!

 残り1時間を目前にしたSCはこれからピットに入ろうと予定していた多くの陣営を絶望に陥れるもので、両クラスとも2回目のピット義務を終えていない車両が大量に取り残されてしまいました。GT500は上位5台がドライバー交代未了、実質の順位は1位デンソー・中山、2位モチュール・クインタレッリ、3位スタンレーシビック・山本、4位マレリインパル・平峰。
 一方GT300は見た目上で上位にいる大半がまだ2回目を済ませておらず、実質の1位にいたのはムータレーシング・堤。ところが彼らにはさっきの伊沢のクラッシュ直前にSC手順違反によるドライブスルーのペナルティーが発効されたばかり、SCがすぐに出たので消化することが物理的に不可能でした。違反内容はSC中に前走者との間隔を5車身以上空けて走った、というわりと単純なやつでした。
 SC前にペナルティーを消化できなかったことは彼らにとって幸運とも不運とも言え、不運はもちろんリスタート後の消化で30秒ほど損すること、幸運は大量のピット義務未完了勢がいるので、下がる順位がほぼ無いことです。SCがペナ消化後に出た世界線と比較すると今の世界線は大損なんですが、SCが出ずにレースが進んだ世界線では自分たちはもっと順位が下がったはずなので、そこと比較するとお釣りが来るぐらいに得もしています。


 残り48分/68周目にリスタート。GT300車両の多くが再開直後にピットに入ることを余儀なくされましたが、これが影響してGT500の上位勢はリスタート2周目になるとピット直後のGT300が大量の周回遅れとして立ちはだかりました。しかもタイヤが冷えてるから速度差も大きい。なかなか『冷えたタイヤのGT300集団に遭遇』って普通では起こり得ないので事故が起きないか心配でしたが、無事に通過しました。山本がリスタートから積極的にクインタレッリを狙ったもののいかんせん出力が出てないので抜けず、この争いのおかげで中山がまず大きく抜け出します。
 一方GT300はムータのペナルティー消化により真の1位はベンテニーウラカン・小暮。続くのはポールシッターでスタート直後に順位を下げたユニロボ296・メリー。堤はペナルティーを消化しても3位を維持、1位から20秒離されてますが4位とも40秒差があるのでほぼ3位以内は確定させました。
 ここから2位のメリーはタイヤが駄目になったのか周囲より1周2秒以上遅いペースでしか走れず、75周目/残り27分あたりで堤にいとも簡単に抜かれてしまいました。堤はあと1台抜けばペナルティー帳消しですが、小暮さんは20秒前方で同じぐらいの速さで走っているのでさすがに追いつかなさそう。一方メリーはこの後さらに苦戦してピットに入ってタイヤを換えることになり、レース後の話ではでっかいタイヤカスが付いたらもう剥がれなくて最悪な状況で耐えられなかったようです。

 GT500の方は中山がリスタートからの差をさらに広げ、クインタレッリもやがて独りぼっち。山本と三宅が3位を争い、そこに平峰が追いついたりまた離れたりしている状況で膠着しました。三宅は山本の後ろでひたすら機会を伺っており、隙が生まれるのと乱気流のせいで自分のタイヤが駄目になるの、どちらが早いかところでしたが、85周目の最終コーナーでとうとう絶好の機会が到来。脱毛GT-Rに引っかかって理想的なラインで脱出できなかった山本を捉え、86周目のターン1で前に出ました。
 するとその直後、第2ヘアピンでBRZ・井口 卓人が大クラッシュ。ブレーキが全く効いていないような動きで止まりきれずに直進し、ガードレール付近に置いてある作業用車両に右前をぶつけながら止まるというかなり怖い事故でFCYとなりその後SCに切り替わりました。事故が起きた時点で残り約16分、再開するには時間が足りずそのままレースはSC先導でチェッカーを受けました。
 結果的に4回もSCが導入されてレース結果に大きく影響することになりましたが、GT500クラスはDENSO KOBELCO SARD GR Supra・関口 雄飛/中山 雄一が優勝。サードは2020年第5戦・富士以来4年ぶりの優勝でした。当時は中山とヘイキ コバライネンのコンビで、最後はガス欠して加速しなくなった状態でのけっこうギリギリな優勝でした^^;

 GT300はVENTENY Lamborghini GT3・小暮 卓史/元嶋 佑弥が今季2勝目。予選15位からのスタートで2回目のSCが出た時点でも実質の10位だったのが気づいたら上位にいて「え、どっから来たんすか?」な状態でした。見直すとマッハ号を先頭にした大渋滞が起きていたので、その間に何台か抜いてしまったことがかなり大きかったようです。車自体は元々速くて予選は良い空間が無くて沈んだようなので、SC頻発でうまく帳消しにして速さだけ取り出せました。2回目のピットがSC前で良かった。

 ちなみに前戦からこの車のスポンサーになったベンテニーですが、日本人起業家がインドネシアで設立した企業従業員向け福利厚生と金融事業を手掛ける新興企業です。東南アジア市場の大きさを見込んで立ち上げられたようで、2022年にインドネシア証券取引所に上場、今年の5月には市場をザックリと日本で例えるとグロースからプライムに変更することが承認されました。JLOCってなんかよく分からんスポンサー連れてきて1年ですぐ消えていきますけど今回は結果も出てるしどうでしょうかね?


・GT500振り返り

 昔はよく、ひょっとしたら今もかもしれませんが『SUPER GTはプロレス』なんて言われました。今はひょっとしたら『運ゲー』とか言われてるかもしれませんね。GT500は2回目のSCまでは大丈夫でしたが、3回目のSCのタイミングで見事に明暗が分かれました。ただサードの優勝が運だけかというとそうでもないと思います。
 コース上で確実に追い上げて2回目のピット前の時点で4位を走行。この時6位を走っていたスタンレーがピット作業時間の短さ(ニスモの作業時間の長さ)によって一気に追いついていましたが、デンソーはスタンレーよりも前を走っていて、かつおそらく映像検証ではこちらも作業時間は29秒ほどで非常に短いものでした。中継映像に全然タイム差も作業時間も出ないのでかなり大まかな推定ですが、相対位置で考えると彼らはピット作業を終えたらかなりニスモに近い良い位置にはなっていたと考えられます。
 その後、中山がクインタレッリを大きく引き離して走ったことを考えると、仮にSCが出ず2位の状態でもこの2人はかなり良い勝負をしたのではないかと考えられ、3回目のSCなしでもサードが優勝する可能性はそれなりにあったと思います。SCのおかげで全く争う必要なく前に出てしまいましたが、速くも無いのに運で勝ったわけではないということはしっかり記憶に刻んでおきたいと思います。後年「ああ、あのSC運で勝ったレースね」と記憶してしまいそうなのでw
 ポールシッターのコンドーレーシングはやはり寝起きの悪いタイヤとSC連発の相性が悪く、そこに最後は車両の故障という問題が降りかかって完走扱いの12位で終了。普通に3時間走ったらどういう速さだったのか見たかったので、知らず知らず競争から落ちていったのはなんか残念でしたね。
 選手権を争うトムスの2台はウエイト重すぎ問題を抱え、SC運が無くて順位を上げる機会も失ってしまいましたが、それでもauトムスが7位、デロイトトムスが8位ときちんと結果を残すことに成功。スタンレーと二テラの3位争いは結果も1つの順位がかなり大きな違いを生んだように思えます。レースを終えてのドライバー選手権は

 山本/牧野組は3位だったら選手権1位に一気に出てたんですが惜しい内容。でも普通に考えてこのウエイトで4位は上出来を超えて120点ぐらいの結果だと思うので、『抜かれて失った』と思うより出した結果を自信にしたいところですかね。なお51点以上持っている車両は次戦もてぎで燃料流量が1段階下がります。46kgと34kg/-1のどっちがマシなのかちょっと興味あり。
 

・GT300振り返り

 ウラカンもSC運はもちろんありましたが、オーソドックスな2ストップ作戦を採用した中ではBRZと先頭を争っている状態でしたからとにかく速かったのが第1です。この車は一昨年が予選・決勝とも4位、去年も予選6位/決勝7位でオートポリスはそれなりに走れる車だと思うんですが、GTA-GT300車両が速いのもあって『中の上』ぐらいの感じでした。今年はそこからの上乗せとSCと、そしてGT300車両がなんか少しずつ落ちていったのもありましたかね。
 本来ならこの車と優勝争いしていたのはLC500hだったと思うんですが、中継に映らないひっそりとしたコースオフが致命的でした。中村選手もXでちょっとしょんぼりしている様子が見てとれましたが、新人だからそりゃあ色々ありますし学びを得たというところでしょうか。というか、私はあのピット直後のコースオフがレース結果を大きく分ける分岐点だったと思うんですが、公式ダイジェストでも映ってなくて「何かペースが上がらない」的編集になってるので何でかなあと思っています。私のレースの解釈が間違ってるんだろうか^^;

 ムータはスタート直後のビリからのスプラッシュからのリードからのSCで優位性消滅からのペナルティーからのSCからの追い上げで2位になりましたが、道中の様々な経緯はどうあれSC無しのレースだと1周目の時点で表彰台確率ほぼ0だったので、最も運に恵まれたのは彼らだった気がします。続く3位はレースの序盤にリードも奪っていたK-tunesで、たぶん何も起きずにレースが進んだらこの人たちの勝ちだったと思います。新田/高木組の表彰台はガライヤに乗っていた2010年以来ということで、勝てれば最高だったんでしょうけど運が無い中では最高の結果になって良かったですね。
 大量のSC取り残され組の中でも選手権上位勢はちゃんとレースをまとめ、スタディーM4が4位、Dステーションヴァンテージが5位、レオンAMGが6位と50kgハンデ組が見事に並んでいたのは、映像では何をどう戦ってたか分かりませんが感心しました。3ピットになったチームルマンは、新しいタイヤで追い上げようとしたらSCが出てしまって8位。彼らに限らずヨコハマはいわゆるピックアップが取れない症状に悩まされたようで、ヨコハマ使用者で入賞できたのは優勝したウラカンとこの296だけでした。リアライズGT-Rは2位スタートから転がり落ちて12位です。

 選手権では、富士でFCY運を引き寄せてぶっちぎった蒲生/篠原組が、今回はSC運を拾われて堤/平良組に追い上げられた、と乱暴に表現するとこんな感じでしょうか。50点以上ある3台は次戦もまたサクセスウエイトが50kgですが、中途半端に変動するよりセッティングしやすいかもしれません。もてぎはウラカンの得意分野だと思うのでJLOCはデッカイのを狙ってくるでしょう。

・作業車はなぜあそこにいたのか

 しかしレース内容を全部すっ飛ばして、やはり最後のBRZの事故が最大の注目点になったというのは否定できない事実です。井口選手はブレーキが床までスカっと抜けてしまって瞬時にヤバいと気づき、前に作業車がいたのでなんとかここにだけはぶつかるまいと必死に操作した結果、スピン状態で右前だけ作業車、他はガードレールにぶつかって止まりました。幸い大きな怪我はありませんでした。

 作業車との接触、というと2014年のF1日本GPでジュール ビアンキがコース外に飛び出して重機と衝突し、これが原因で翌年に死亡した事故は忘れることができません。世界的にあの事故を受けて『車両と作業車の接触は絶対に避けるべき』ということが再確認され、事故処理作業の際によりレースを確実に止めることなど安全対策は強化されてきました。それは何も人間むき出しのオープン ホイールに限ったことではなく、GTカーであっても同じはずなんですが、今回本当に僅かの差で直撃だけは免れた事故となりました。
 特にコーナーの外側、車両が何かの拍子に突っ込んでくる可能性がある場所に危険物を置かないのは鉄則でしたが、実際にはここにいました。GTアソシエイションのレース ディレクター・服部 尚貴はこの件に関してオートスポーツwebに対し

「ショートカット側なので、あそこに車両が来ることはない前提で置いてあったのですが、ブレーキトラブルでどうにかしようとコントロールすると、車両が“来て”しまうことが分かりました。オートポリスとしてもこのケースは初めてのことで、レースが終わってからオートポリスとも位置について話し合いました。」
「現実としてアクシデントがあったので、もちろんスーパーGTだけでなく、全てのレースであの位置は変わることになります。今まで問題がないと思っていた場所だったのが、やはりダメだとなった。今後に向けて運営側にも問題点を出したアクシデントだったと思います。」

 と話しました。要するに「今まで大丈夫だったから大丈夫だと思って変えていなかった。」というやつで、GTAもサーキット側も危険個所と認識していなかったことになります。オートポリスは傾斜地に作られており、作業車両を数か所に配置していく都合上でおそらくこの位置が使い勝手と安全性のバランスから適地だと考えていたのでしょう。私も長年レースを見ていて、あそこに作業車がいるという認識に乏しかったので批判する権利はあまり無いですが、試しに過去の映像を見てみたところ
2011年

2015年

2019年

2023年

 昔は作業者が緑だったものがオレンジ、黄色に代替わりしてるのかなあと思いますが、アップされている映像を順番に見ていったところ年ごとに多少違いはありますが、基本的に昔はもう少しやや左奥にあり、少しずつ右に寄って配置されているように見えます。他方で、年によっては右側の壁沿いに何かしらの運営が使う乗用車がこっちのカメラに見える場所に配置されている場合がありますが、これは現在はターンの向こう側に引っ込んでいます。あくまで今回に対する結果論ですが、2015年の位置に作業車があったらBRZが作業車は当たってないでしょうね。

 Google Mapで改めて確認しますが、ここは第2ヘアピンの外であり、同時にターン18の内側でもあります。第2ヘアピンを左に曲がらず右に小さく曲がるとホームストレートへ戻ることができるショートカットになっていて、見方を変えると第2ヘアピンで全く止まれない車両が絶妙に隙間を抜けてショートカットから最終コーナー側へ逆走して飛び出す可能性もゼロではない構造になってるんですよね。
 第2ヘアピンとターン18の間にはガードレールで挟まれて隔離された空間があるので、そこに重機置いたらいいんじゃね?と思いますが、残念ながらそこも傾斜地。全く何も考えずに置いた、というわけではなく、平地でできるだけ走路から離れていて、という場所を近隣で探したら完全にターンの内側で適地を見つけられずここになり、今まで問題が起きなかったからそのままだった、という経緯かなあと想像しました。でもお金をかけてでもちゃんとした置き場所を用意しないといけないでしょう。これはオートポリス以外の全ての開催地でももちろん点検すべき問題です。

 BRZに関しては、ブレーキの問題ならそれがなぜ起きたのかを特定する必要があり、もしできないならドライバーを乗せるわけにはいかないので欠場の可能性もあるとのこと。それ以前に、作業車と当たった右前部はサスペンションがバキッと折れた以上に中まで壊れている可能性もあると思うので、仮に原因が分かっても直せない可能性はあるのかなと感じました。何にせよ今回は人的被害が何も無かったのが本当に救いでした。

 次戦は11月2日・3日にモビリティリゾートもてぎでのレース、週間天気予報によると、、、今のところ天気があまりよくない(;・∀・)

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