NASCAR Cup Series
トラック内の安全性が高まった一方、トラック外では危険な雰囲気が漂ってきました。今年末で旧来の協定が失効するため、参戦チームが新たなに署名するNASCARとの2025年からのチャーター契約。15チーム中13チームはプレイオフ開始前に合意して契約した一方で、23XI レーシングとフロント ロウ モータースポーツは交渉過程や契約内容に不満があるとして署名せず抗戦を続ける構えを見せていました。
なお、16位でチェッカーを受けたサム メイヤーがレース後に車高の規定に違反していたため失格(最下位扱い)となり、これで1点しか獲得できなかったのでレース前のプレイオフ順位4位からこのレースを終えて11位へと一気に転落しました。
2位はシンドリック、2列目はトッド ギリランドと先週惜しいところまで行ったカイル。3列目がブレイニー/ロガーノ、4列目はオースティン ディロン/ハムリン、5列目はハリソン バートン/ヘムリックというやや見慣れない並び。チェイス/ラーソンは6列目からスタートします。なお、スアレスは予選後に車両のルーフ部分に調整を行ったため規定により決勝スタート後パススルーのペナルティーが課せられました。
この展開になってから先頭ではしゃいでいたのはチャステイン、多少予測不能な急なライン変更もあってなかなか厄介そうで、そこに気づけばペンスキー勢も後ろに付いたのでステージ1はこのまま行くだろう、と思ったら案外そうでもありませんでした。気づいたら先頭にいたのはブッシャーで、ステンハウス、バイロン、ラーソン、ベル、レディック、そして7位にチャステインでした。
今回はコーションが出ないまま進み83周目/ステージ残り37周、マクダウルを先頭にフォード勢の7人がアンダー グリーンでピットへ。FRM・RWR・RFK・SHRの4チーム全員で一斉に動くつもりだったと思いますが、ケゼロウスキーは減速が間に合わなくてピットに入るのを諦め、ギリランドも真後ろにいたせいかセットでミスった模様。これは入り損ねた側だけでなく、仲間が減ることで他のドライバーにとっても痛い失敗です。
残り4周、まだ特に何も起きていないのにえげつない台数が巻き込まれる多重事故発生。バックストレッチでシンドリックがケゼロウスキーからほんの少し斜め方向に押されて回ってしまいました。先頭車両が回ったら後ろの人はもう運任せですが、半数以上の人は運がありませんでした、というか避けろと言う方が無理な案件になりました。とてつもない多重事故でもちろんコーション、回数で言えば本日まだ4回目。
動けない車が多すぎてレッド フラッグ。NBCの計測では28台がこの事故に巻き込まれ、これはカップシリーズ史上最多だとのことです。確かに映像を見てると現場を無事に通過したのってシンドリックの僅かに前にいた人と、あとはほんの数台だけで両手で数えられそうでしたね。
誰も優勝での次ラウンド進出を決めていませんが、バイロンだけはポイント9位以下に落ちる可能性が消えたのでポイントでの進出が決まりました。ベル、ラーソンもほぼ決まりですね、最悪の相性のトラックでようやくレースをまとめることができました。バイロン陣営はファイナルステージの段階でルディー フューグルが
カンザスのレースでもベリーの車両がやはり自走不能となり、単純に高速でスピンしてタイヤが全部パンクしたから動けなくなっただけのように見えましたが、結局レッカーで運ばれてそのままリタイアの判断が下されました。この際にはクルー チーフ・ロドニー チルダースが抗議しましたが認められませんでした。
ブレイニーの件に関しては確かにアウトで争う余地は無かったんですが、そんな中でベリーの件が発生。どこまでがセーフでどこからがアウトなのか、というあたりが明確ではなく現場の作業員や運営の裁量によるところがあるため疑問の声が上がっていました。
Yellawood 500
Talladega Superspeedway 2.66miles×188Laps(60/60/68)=500.08miles
※NASCAR オーバータイムにより195周に延長
winner:Ricky Stenhouse Jr.(JTG-Daugherty Racing/Kroger Health/Palmolive Chevrolet Camaro ZL1)
NASCAR カップシリーズ、プレイオフで最もヤバいと何回も書いているタラデガにやってきました。ラウンドオブ12まで勝ち残ったプレイオフ選手全員にとって大きなチャンスであり大きなリスクです。前戦ではプレイオフ選手ではないチャステインが優勝したため、誰も次ラウンドへの進出を確定させずにこのレースに臨むことになりました。持っている点数によってリスクの背負い方は多少異なってくるでしょうが、自分が安全に走ってるつもりでも事故に遭わないとは限らないのがタラデガなので、結局はアクセルを踏んで後は神に祈るしかありません^^;
タラデガは先週のカンザスと同様に2004年のプレイオフ制度開始からずっとプレイオフでのレースが開催されており、2017年以降プレイオフの5戦目が続いています。昨年はブレイニーがこのレースで優勝してその後チャンピオンを獲得、プレイオフのタラデガで優勝した選手がその年のチャンピオンだったのはこれが初めてでした。逆に2021年のラーソンはこのレースで37位でしたがチャンピオンになっています。ラーソンはタラデガ通算19戦で平均順位 22.8と全トラック中最悪の成績で、リードラップで終えたことが10回しかありません。
一方タラデガで強いのはケゼロウスキーで通算6勝、続くのがブレイニーとロガーノの3勝で、チーム ペンスキーはタラデガで通算11勝を挙げています。2014年以降でタラデガで勝てなかったのは2022年の一度だけ、春のタラデガではレディックが勝ちましたが秋のタラデガはペンスキーの誰かしらになるでしょうか。またこれまでの19回のタラデガプレイオフでプレイオフ選手以外の優勝は6度あり、直近は2021年のバッバ ウォーレスでした。
・レース前の話題
車体の浮き上がる横転事故が多発したことからNASCARはタラデガに新たな部品を投入しました。屋根の上にあるルーフ レールが延長され、ルーフ フラップの右側には布地を追加してより高い抗力を生み出します。そしてサイド スカートも下部に少し延長されており、全体で浮き上がりを抑止する効果が期待されています。出番が無いのが一番ですけどね。
トラック内の安全性が高まった一方、トラック外では危険な雰囲気が漂ってきました。今年末で旧来の協定が失効するため、参戦チームが新たなに署名するNASCARとの2025年からのチャーター契約。15チーム中13チームはプレイオフ開始前に合意して契約した一方で、23XI レーシングとフロント ロウ モータースポーツは交渉過程や契約内容に不満があるとして署名せず抗戦を続ける構えを見せていました。
そしてなんと10月2日、この2チームはNASCARと、NASCARの最高経営責任者・ジム フランスを相手取っていわゆる独占禁止法に違反しているとし損害賠償を求める訴訟を起こしました。開催されている多くのレース トラックを運営自身が保有していることや、ARCAの買収によってストックカー競技の支配的地位を向上させていること、指定企業からの部品購入を強制されていること、カップシリーズ参戦チームのNASCAR以外のストックカーレースへの参戦が禁じられていることなど、支配的な立場を利用してチーム側の利益が阻害されていると主張しています。また、この訴訟の決着までは暫定的にNASCARが提示している2025年のチャーター契約に基づいて継続参戦するための仮処分申請も併せて求めました。
よもや法廷で争うことになろうとは想像していなかったのでちょっとこの行動には驚かされましたが、司法にお任せするしかないですね。素人目で見ると、単一サプライヤー供給なんかはワンメイクのレースならよくあることなので司法に認められるとは思えない一方で、プレイオフ開始前の署名を強要するような行動は優越的地位の濫用に該当する可能性があり、どの程度『NASCAR/フランス家の独占的地位が参加チームに不利益を与えているか』を論理的に証拠提示できるかで左右されるのではないかと思います。弁護士はスポーツの権利関係で実績のあるけっこう凄腕っぽいですね。
・Craftsman Truck Series Love’s RV Stop 225
トラックシリーズはラウンドオブ8の初戦。地元アラバマ州出身の39歳・グラント エンフィンガーが躍動しました。ステージ1で2位となると、ステージ2も周囲で起きる事故とは無縁でステージ勝利。そして残り9周からの最後の争いでも前を走ってレースを主導し、結局88周のうちこのレース最多の34周をリードして今季初勝利・通算11勝目を挙げ最終戦進出を決めました。エンフィンガーはプレイオフ選手とはいえ、今季未勝利でポイント的にやや劣勢だったので非常に大きな1勝、またタラデガでは2016年以来2度目の優勝で、自身唯一の複数勝利を挙げたトラックとなりました。メーカー育成系の若手だけじゃなくてトラックシリーズにはこういうシブいオジサマが必要不可欠だと思ってしまうのは私だけ?w
・Xfinity Series United Rentals 250
エクスフィニティーは残り3周で多重事故が発生、けっこうなプレイオフ選手がここまでに何かしら事故に遭遇してボロボロになりながらもオーバータイムへ。最後はサミー スミスとチャンドラー スミスの同姓対決になりましたが、サミーがライアン シーグに押してもらった一方でチャンドラーの後ろには誰もいなかったので、サミー スミスが優勝。昨年の第4戦フェニックス以来久しぶりの通算2勝目を挙げて次ラウンド進出を決めました。スミスもポイント下位から優勝での一発進出です。
なお、16位でチェッカーを受けたサム メイヤーがレース後に車高の規定に違反していたため失格(最下位扱い)となり、これで1点しか獲得できなかったのでレース前のプレイオフ順位4位からこのレースを終えて11位へと一気に転落しました。
・カップシリーズ 予選
ドラフティングトラックの予選は聞かなくても分かります、ブッシュライトポールはマイケル マクダウルです。ドラフティングトラックで5連続ポールという謎の偉業を達成しました。
2位はシンドリック、2列目はトッド ギリランドと先週惜しいところまで行ったカイル。3列目がブレイニー/ロガーノ、4列目はオースティン ディロン/ハムリン、5列目はハリソン バートン/ヘムリックというやや見慣れない並び。チェイス/ラーソンは6列目からスタートします。なお、スアレスは予選後に車両のルーフ部分に調整を行ったため規定により決勝スタート後パススルーのペナルティーが課せられました。
・ステージ1
最近は序盤に有力ドライバーに何か起きることが多いので最初からあまり油断しないように気を付けて観戦するステージ1。3周目にはもう3ワイドが完成しますが、私の嫌な予感(?)が的中しました。ペナルティーを消化したスアレスが12周目に早くも周回遅れになりますが、普通なら端っこに寄って譲った上で隊列後方のドラフトに入るのがセオリーのところを、スアレスは道のど真ん中を走行。これで真ん中のレーンを引っ張るギリランドが運悪く詰まりました。
スアレスとするとギリランドに押してもらって勢いを取り戻したかったでしょうが、ギリランドは詰まって失速したにもかかわらずなおスアレスを押さずに素通り。これで全員に無視され、下手したら隊列最後尾のドラフトすら失いかねない状況になったスアレス。速度差があるのに外レーンの空間に車を放り込もうと無理な動きをしてB.J.マクラウドと接触、というかほぼ体当たり。スアレス自身がスピンして1回目のコーションとなりました。本人の判断かスポッターの指示か分かりませんがいずれにせよ500%スアレスが悪い案件で、ラインを変えた瞬間に私は画面の前で思わず「バカ野郎」と言ってしまいました。なけなしのお金で出てきてるマクラウドが気の毒です。
これでリードラップ車両がピットへ、大半は給油のみを選択して上位勢は最初の1回だけ、中団の人はリスタート前まで給油を繰り返しました。まだステージが40周以上残っているので、走り切ろうとすると特に1回しか給油していない人はけっこうな燃費走行が必要になります。
17周目にリスタート、2周もすると3ワイド完成。燃料の都合があって先頭を走る人もそれなりにスロットルを戻して走っている状況で、後ろの人も無理に抜きたくは無いので延々と静かにレースが進みます。動きが出てきたのは37周目あたりからで、3ワイドで既におなかいっぱいのところを4列目を作ろうとする人が出て来たので急に動きが慌ただしくなってきました。
40周目になるとここまで温存していた人がスイッチを入れたように攻めた走りに転じ、ここまで30周以上リードを記録していたマクダウルが前を走り続ける展開にひとまず終止符。300km/h近い速度でこの展示会のようなびっちりと詰まった4ワイド、何回見ても神業です。
この展開になってから先頭ではしゃいでいたのはチャステイン、多少予測不能な急なライン変更もあってなかなか厄介そうで、そこに気づけばペンスキー勢も後ろに付いたのでステージ1はこのまま行くだろう、と思ったら案外そうでもありませんでした。気づいたら先頭にいたのはブッシャーで、ステンハウス、バイロン、ラーソン、ベル、レディック、そして7位にチャステインでした。
・ステージ2
ステージ間コーションは4輪交換+給油で一旦万全の状態に戻すターン。給油量が多いのでみんな13秒以上の長い作業時間となり、逆から言えばタイヤ交換はそんなに焦る必要がありません。そして何度も給油する人はもはや作業全体をそんなに急ぐ必要性がありません。とにかく1に燃料2に燃料、3、4も燃料、5も燃料。
67周目、ブッシャー/レディックの1列目でリスタート。ここも3周もすると綺麗な3ワイドとなりますが、さっき4ワイドで何周も延々と走っていたので「なんだ、まだ3ワイドか。」と思えてしまうとは現地コメンタリー、確かにw
この時間帯に前に出てきたのはラジョーイでした。まだ51=ラジョーイというのが記憶に定着しないですが、チームメイトのコディー ウェアーとワンツーを形成する場面もありなかなか貴重な映像になります。ひょっとしたら過去にもRWRで同じような場面があって同じようなことを書いたことがあるかもしれませんが、万一あったとしても覚えていないぐらいに貴重だということです(謎)ウェアーの車の色合いがなんかアルファロメオっぽいw
今回はコーションが出ないまま進み83周目/ステージ残り37周、マクダウルを先頭にフォード勢の7人がアンダー グリーンでピットへ。FRM・RWR・RFK・SHRの4チーム全員で一斉に動くつもりだったと思いますが、ケゼロウスキーは減速が間に合わなくてピットに入るのを諦め、ギリランドも真後ろにいたせいかセットでミスった模様。これは入り損ねた側だけでなく、仲間が減ることで他のドライバーにとっても痛い失敗です。
続いては94周目にトヨタ御一行様8名がピットに入りますが、今回はトゥルーエックスが入り口でスピン。接触は無くコーションもありませんでしたがこっちも仲間が1人減りました。残った人たちは99周目と100周目に分かれて給油を行いピットサイクルは一巡しました。一応ドライバーの名誉のために解説しておくと、ドラフティングトラックはほぼブレーキを踏んでいないので冷え切って効きが悪い上に、練習走行の機会も無いのでブレーキを踏む位置もほとんど経験と勘、非常に難しいんですね。
バラバラになった集団が5周ほどかけて再合流しリーダーは外レーンを走るシンドリック、後ろにチームメイトのブレイニーがいてドラフティングトラックでは"鉄板"のペンスキー連盟です。内側はチェイスが先頭でこれを押すのがシェイン バン ギスバーゲン。ギスバーゲンはピットサイクル前には先頭を走っておりなかなか積極的な走りを見せていますが、それゆえにコンテンダーからすると若干怖い存在にも見えます^^;
ステージ2は2列のまま最終周へ、ブレイニーが良い感じの距離感でターン4を立ち上がるとドラフトですぐ追いついてシンドリックを一押しし、すぐにチェイスに対してサイド ドラフトをかけて追加のアシストをしました。が、ちょっとステージ2の段階でやりすぎでした。
ブレイニーの後ろにいたカイルは順位を上げようと外へ動いたのでブレイニーは押してくれる人が抜け急失速。だいぶ速度差ができたところでボウマンがようやく押してくれましたが、ちょうどトライ オーバル部分だったせいもあってスポンとグリップが抜けてイン巻きし、反動で外へ流れて運悪くチャステインの車を直撃しました。
ステージ2は思わぬ決着でしたがシンドリックがステージ勝利。チェイス、カイル、ギスバーゲン、バイロン、ボウマン、ウォーレスと続き、ブレイニーは一応8位でステージ2を終えたので3点は手にしましたが車はどう見ても直せそうにない姿です。チャステインはステージ10位でしたが車両から出火したのですぐに急いで脱出、ここでリタイアです。スイカは焼いてもおいしくありません、無事でよかった。
・ファイナル ステージ
ステージ間コーションでみんな4輪交換と給油。マクダウルはさっきステージ2終了前に一度給油しておく変則的な作戦を採ってみましたが、ここで4輪交換するので大した時短に繋がらずリードラップの後方、何を狙ったのか今一つ分からず^^;
ブレイニーはステージ間コーション中にとうとう自走不能になってリタイア、そのブレイニーを結果的に回してしまったボウマンは連携ミスか給油缶をちゃんと抜く前に発進してしまい、缶をピット上に転がしたのでペナルティーとなります。ボウマンはプレイオフの全てのステージでポイントを獲得して安定した成績を残していますが、せっかくステージポイントを連続で稼いでも大事な場面でトラックポジションを一旦失ってしまいました。
128周目、残り61周でリスタート。距離とするとステージ1とほぼ同じです。ここから先はあまり呑気に様子見していると手遅れになって順位を上げられず詰む可能性があるので、3ワイドになるとコロコロとローダーが入れ替わって行きます、さっきの事故に巻き込まれてフロントが少し凹んでるロガーノも前に出てきました。ただ全体としてさっき1回やらかしてるのでどのドライバーも最後の最後まではちょっと自重しますかねえ。
自重したのかは分かりませんが、たま~に4列になりかけてまた3列に戻りつつレースは残り30周を切りました。ここはまだ誰もピットに入らずに走り続け、ようやく残り21周で最初の動き。内側のレーンをリードしていたA.J.アルメンディンガーがピットに入りチームメイトも一緒に動きますが、入ったのはたった4人で距離もやや離れていました。これはピット後のペースが遅くて困るでしょう。40周走ってAJの燃料がそろそろ危なかったのかもしれませんが作戦とするとやや厳しい部類。
この後3人だけの寂しいピットを挟んで残り17周でシボレー勢の多くがピットへ。台数が多いのは良いんですけどピットを出るタイミングが重なりすぎて出口でちょっと渋滞しましたw
そして残り16周、本命のフォード御一行様がピットに入り、JGR勢もここに相乗りしたので一番の大所帯になりました。そして先ほど入った人たちと互いの集団が合流していくと、結果的に内側にシンドリックを先頭にしたフォード勢、外側にはステンハウスを先頭にしたシボレー勢が綺麗に並ぶことになります。なおギリランドだけピット速度違反で撃沈。
ここからは先頭の人はいかにこの順位を守って逃げ切るかを、その後ろの数列の人はいかに前の人を利用して最後に裏切るかを、そして中団の人はいつどうやって3列目を作ってレースをひっくり返すかを考える時間帯、手順を1つ間違えるとたちまち権利が無くなるのでとにかく先の先の先の先の先ぐらいを読んで動かないといけません。私は見ていて外側の6列目にいるカイルが大きなうねりを作るんじゃないかと思って見ていたんですが、
押す方向が斜めになった遠因は、隊列が周回遅れのギリランドを抜くために一旦右へ動いてまたすぐ左へと戻ったことと、抜いたタイミングで少し開いた車間距離を詰めたので速度差のあるバンプになってしまったこと。つまりトッギリが速度違反さえしていなければこの事故は起きなかったのです(暴論)
動けない車が多すぎてレッド フラッグ。NBCの計測では28台がこの事故に巻き込まれ、これはカップシリーズ史上最多だとのことです。確かに映像を見てると現場を無事に通過したのってシンドリックの僅かに前にいた人と、あとはほんの数台だけで両手で数えられそうでしたね。
この事故処理で10分ほどの中断となり、残り周回数が少なかったのでレースはオーバータイムへ、これが今季13回目でこれまた史上最多の数字となりました。外レーンはステンハウス・バイロン・カイル、内レーンはケゼロウスキー・ラーソン・ベルの並び。ステンハウスの車両左側には他車が接触したタイヤ痕がくっきりと付いています。
一応多くの車がリスタートに参加していますがまともに競争できそうなのは20台もいないぐらい。まずは比較的落ち着いた隊列で1周して最終周へと入り、ここでカイルが外へ動いて3列目を作りましたがなんと!誰一人付いて来なくて撃沈します^^;
これで引き続きステンハウスとケゼロウスキーによる"押させ"の争いですが、ターン3で先行したのはケゼロウスキー。ステンハウスを完全にクリアにしました。ここでケゼロウスキーには大きく分けて
・外へ動いてステンハウスを鬼ブロック
・真っ直ぐ走ってラーソンにもう1回押してもらい、ステンハウスと並走で勝負
の2つの選択肢がありましたが、彼が選んだのは後者でした。ただターン4を出るとステンハウスをけっこうな勢いでバイロンが押したので、ケゼロウスキーはサイドドラフトをかけたものの予想外に前に行かれてしまった印象。しかしタラデガのスタート/フィニッシュはトライオーバルを通過した先、ラーソンに押してもらって逆転を目指し、さらに最後の最後にバイロンがステンハウスの横に飛び出した!
正式順位はステンハウス、ケゼロウスキー、バイロン、ラーソン、ジョーンズのトップ5でした、先週に続いてまたもやプレイオフ選手はトップ5に2人だけですね。他のプレイオフ選手はベルが6位、ハムリンが10位、ボウマンが16位、レディックは20位でここまでがリードラップでチェッカーを受けられた人。スアレス26位、チェイス29位、ブリスコーは30位でした。ロガーノ、シンドリック、ブレイニーのペンスキー3人衆は全員リタイアです。これを受けてプレイオフ順位は
誰も優勝での次ラウンド進出を決めていませんが、バイロンだけはポイント9位以下に落ちる可能性が消えたのでポイントでの進出が決まりました。ベル、ラーソンもほぼ決まりですね、最悪の相性のトラックでようやくレースをまとめることができました。バイロン陣営はファイナルステージの段階でルディー フューグルが
「仮に21位で終えても今日のレースで30点獲れるから、なんかヤバそうだと思ったら引いてくれても全然構わんからな。」
と伝えていてあくまでリスク回避の堅実なレースを心がけていたようですが、欲をかかないレースが良かったのか優勝に近い結果を手にすることができました。
そして優勝したステンハウス、昨年のデイトナ500以来の通算4勝目、タラデガでは2勝目でドラフティングトラックだけで優勝を積み重ねています。32位という予選順位からすると今日は単独で速い車というわけではなかったと思いま すが、 ファイナルステージの大事な場面でちゃんと前にいるあたり、 見ていてもわからない彼の中の勝負勘みたいなものがあるんだろう なと感じます。
そしてステンハウスは最後の場面でケゼロウスキーがブロックして こなかったことを「驚いた」と話しました。彼の中ではケゼロウスキーが抑えに来て、じゃあその後どうするかを考えながら走っていたので想定 と違う展開になったようです。ただステンハウスにとって大きかったのは多重事故でフォード勢が 軒並み消えていたことと、 後ろにいるのが速さがある上にプレイオフの損得勘定をしているか ら無茶はしないヘンドリックの2人だった点。 2人ともある程度はそのまま流れて無事に走りきれれば良いと思っ ているので同じシボレーのステンハウスには援護役と言えました。
逆にケゼロウスキーはそれを分かっているので下手に自分から動いて混乱するのを避けた様子。まあ結果論ではありますが、自分がシンドリックを回してペンスキーのプレイオフ選手をごっそり持って行ってしまったので、ヘンドリックのどっちかに優勝を取られるよりはプレイオフに関係ないステンハウスが勝った方がフォードとしてはダメージは僅かながらに小さくて済みます。ケゼロウスキーの意表を付いた『何もしない』という選択は、フィニッシュ時の多重事故というファンのお楽しみ(?)には繋がりませんでしたが、じっくり考えると味が出てくるベテランらしい走りだったなあと思いました。
・事故車両の処理で混乱も
今回、20台以上が一度の事故で巻き込まれて自走不能の車両が大量発生したために、その後の扱いを巡ってレース後も議論を呼ぶことになりました。
かつてはどんなにボロボロでもとにかく走り続けてたとえ何百周遅れであろうと少しでも順位を上げる、テレビに映ってスポンサーさんに貢献するのがNASCARでした。しかしダメージ ビークル ポリシー(DVP)が導入され、ピット ボックス内で決められた時間内に最低限まともに走る車に修理できなかった場合は強制リタイアとなる仕組みとなったのでこれも昔の話となりました。
そこに、Gen7車両が導入されて新しい18インチのタイヤとなったことで新たな問題が発生しました。薄型になったタイヤはパンクすると簡単に車が底付きしてしまい、2輪以上パンクするとほぼ自走ができなくなります。そこでNASCARとしては、パンクが原因で自走できない車両に関しては押したり吊ったりしてピットまで送り届け、あとはDVPに従って取り扱うことが基本方針となりました。
一方で、あくまで自走不能の原因が車両本体の損傷であるならば、DVPの原則である『レースできない車はリタイア』に従って続行が認められません。ワトキンスグレンのレースではブレイニーが1周目の多重事故でステアリング コラムを壊し、レッカーでピットまで送ってくれたものの修復~復帰が認められずブレイニーが怒る、という場面がありました。NASCAR側は『この車は損傷が原因で自走できない』と判断したためです。(ただしブレイニーはレース後には規則の認識不足だったことを認めています。)
カンザスのレースでもベリーの車両がやはり自走不能となり、単純に高速でスピンしてタイヤが全部パンクしたから動けなくなっただけのように見えましたが、結局レッカーで運ばれてそのままリタイアの判断が下されました。この際にはクルー チーフ・ロドニー チルダースが抗議しましたが認められませんでした。
ブレイニーの件に関しては確かにアウトで争う余地は無かったんですが、そんな中でベリーの件が発生。どこまでがセーフでどこからがアウトなのか、というあたりが明確ではなく現場の作業員や運営の裁量によるところがあるため疑問の声が上がっていました。
そして今回、運営はなんと一部のドライバーに関してピットまで牽引して、上記の判断基準で言えばパンク扱いでレース続行を許可することを決定。エリオットとブリスコーの2人のチェイスはこれでピットに戻してもらって修復し、それぞれリスタート後は最低速度を守ることができてチェッカーを受けることができました。一方で、同じように現場で停止していた車両でもそのままレースから退出させられた人もいました。
「先週のカンザスでのレースに続き、我々の目標は決して良い車をレースから排除することではなかったことはご存じでしょう。」
「先週私たちはそれを見て、理解し、別の判断を下すべきだったかもしれないと分かりました。ですのでタラデガに向かうとき、私たちはコンペティターに有利な判断を下すようにしたかったのです。25台以上の車がそこにいるとは予想していませんでした。ですので、2台をピットロードに牽引する決断をしたのです。」
と説明。2人ともプレイオフのコンテンダーですから、ソイヤーの話をザックリ意訳すると
「台数が多すぎて1台1台判断してられないので、プレイオフ選手だけ助けた。」
とも取れるような説明です。こうした一連の対応について、現役選手でありながらハムリンはいつものように自身のポッドキャストで批判的な論調。特に彼が問題視したのは、この運営側の判断基準の変更とも言える内容を参加者側には伝えていなかった点にあるようで、
「ルールを作ったのなら、そのルールに従わないと。今さらそれを変えることはできないよ。なぜなら、他の人のシーズンはこのルールによって決まっているからだ。プレイオフの途中でそれを変えることはできない。プレイオフの途中で考え方を変えることはできないんだ。」
と話しました。「参加者側に伝えていない」というのがそもそも誤解だったのなら話は違ってきますが、事実ならハムリンの指摘はもっともだと思います。決定された規則は絶対的に守られるべきでいかなる途中変更もすべきではない!とは言い切れないことも世の中にはもちろんあるわけですが、少なくともそれは説明しないといけません。運営とすると「判断の変更はしていない、元々そういうポリシーだ。」と言うかもしれませんが、言ってることとやってることの整合性は取れていません。
ソイヤーも自走不能車両の取り扱いについては今後の検討課題であると先ほどの発言の際に認めていますが、Gen7導入から3シーズン目が終わろうかというところで再燃した『自走できない問題』は運営も参加者も神経をとがらせる問題になりそうです。
さて、次戦はラウンドオブ12の最終戦・シャーロットのローバル。今年はトラックの形状が一部変更された新しい設定となっています。
コメント
序盤のスアレスは無茶でした。正気か!と思いましたが、結局、ビッグワンの前に周回遅れにされてポジションが落ち、7台もリタイアしたので、ようやくリードラップに戻れましたが、オーバータイム前に戻れてもどうしようもないです。大きなツケを払いましたね。
それにしても事故処理にここまで時間が掛かるとは思いませんでした。次Round浸出を決めたバイロンは勿論、ベルとラーソンは安泰でしょう。逆に13ポイントビハインドのロガーノ大丈夫か、と。プレーオフに強いロガーノですが、脱落した2016年は、ジョンソンが7度目のチャンピオンになってるので、ロガーノが消えれば、意外なドライバーがチャンピオンになりそうな気が。ローバルには、トップを走ったギスバーゲンや、ディフェンディングチャンピオンのアルメンディンガーもエントリーしてるので楽しみです。ノンコンテンダーの優勝は3人目。脱落ではなく、コンテンダーですらでないドライバーが優勝するのは、驚きです。今シーズンの優勝は18人?かな、その中にカイルがいないのは、悔しいです。
DVPに関しては最後のアレに巻き込まれてたラジョーイも激おこでしたね。個人的には「パンクを理由に動けない時はお迎えが来る」だと4輪パンクしてひしゃげてるから動けなそうっていうパターンでも実はタイヤ変えれば全然平気っていう隠れ軽傷者がいた場合がヤバいと思うので、とりあえず動けない人は無条件にピットに運ぶの方が良いのではと思ったりします。ピットでの修理時間の制限は元からあるわけですし。
ただこれをやると今回みたいな(多分普段より多めにレッカー車を用意してそうなのに足りてない)ビッグワンが起きた時にレース再開がゲロ時間かかるだりぃうわぁぁっていうのが現場にも視聴者にも起きえるので難しいですね…
言われてみればカイルが上手く流れに乗ると最後はステンハウスとの争いになってオールスターの遺恨が再燃する可能性あったわけですね、せっかく出入り禁止が解かれた父ステンハウスがまた暴れたら大変なので誰も付いて来なくて正解だったかもしれません(笑)
なんかローバルもスポット参戦組が力づくて奪い取ってこのラウンドでコンテンダーの勝者無し、なんて展開も現実味を帯びてきましたが、SVGの台頭で影が薄いAJにちょっとここは頑張ってもらいたいです。
大丈夫、仮に名前が無くても文面ですぐ分かりますw
レッカー移動で厄介なのが、4輪パンクの車だと引きずったらディフューザーがバリバリになって復帰する意味が無くなるから持ち上げてお返ししないといけない点で、かといってそれをやると仰る通り1台動かすだけで無茶苦茶時間がかかる点なんですよね。
実際、ちょっと前に練習走行でパンクしたチャステインを助けるためだけにすんごい時間がかかって現場は不満だったらしく、できれば車両側で自走可能にできる工夫があるのが一番良いんでしょうけど・・・
第3ステージの28台のクラッシュ、酷かったですね。NASCARのスクラップ工場みたいでした。
そして何より、カイル、みんなに嫌われてるんでしょうか、、、
1人くらいついてあげてもいいのに、、、
ロードコースでも好成績を残すようになったのを考えればローバルにも期待したいですが、SVGや去年の勝者アルメンディンガーも出てくるので、厳しそうな感じがあります。
マクドウェルに限らずフォード勢はドラフティングトラックの予選は良いのに、夏のデイトナと同じく決勝でビッグワンに巻き込まれて数チームが全滅する羽目になっていることが多いのが残念です。
ペンスキーもブレイニー(ちょっと怪しいか?)以外はもう危険信号になってしまったのも勿体無いです。
ステンハウスは年2回のデイトナ、タラデガのイベントでそれぞれ1勝ずつ挙げたことになるんですね。
地味に凄い記録だなと思うと同時に、ドラフティングトラックでの通算4勝はマイケルウォルトリップに並びましたが、こちらも勝利を挙げたのはデイトナとタラデガのみなので、運と実力両方備えないとこんなには勝てないんだなと感じました。
また、2000年代前半のDEIはマイケルウォルトリップとデイルジュニアによってドラフティングトラックでよく勝っていたイメージもあるので、それも思い出して懐かしくなりましたw
今年は僅差での決着が多いですが、トップ10が今年のレースだけで4つも入っているんですね。
殆どがデイトナやタラデガ、アトランタでの記録なのでクレーベンとカートの2003ダーリントン戦がより貴重に感じます。
クレーベンの勝利は、ポンティアック最後の勝利でもありましたし。
ステンハウスとマイク・ケリーはステージ3を燃費とトラックポジションのバランスをとる戦略で常に2〜3列目にいるようにし、ピットで給油量を減らして先頭にでる戦略とのことでしたが上手くいきましたね。デイトナ500以外はダメージ持ちで勝ってるので、ビッグワンのあの当たり方見たら意外これ流れがきてるのでは?と思ってました
結果デイトナタラデガの4レース全制覇を記録しましたが、達成者はR.ペティ、J.ゴードン、アーンハート、アーンハートJr.、マーリン、B.エリオット、ヤーボロー、ベイカー、ステンハウスJr.の9人。この名前の中に混じるのは凄いなと。どうせなので前人未到のアトランタも込にした6レース制覇を狙ってもらいたいです
さすがに誰も付いて来ないのは予想外でしたね(苦笑)まともな車が20台も無かったので、サードレーン作っても勢いが足りないだろうと後ろの人は考えたのかなあと思いました。
実は文章を締めに行く道中でステンハウスを「2代目マイケル ウォルトリップ」と書いてみようかと通勤中に考えていて、そんなに小さくまとまってほしくないなと思ったので脳内で僅差で否決しましたw
フォード勢は単独で速いので基本前にいる一方で、経験値が追いついてない人も一緒に前を走ってしまうからベテランの動きに若手が応えられずにどっかで崩れている印象がありますね。FRMはそこに加えてピット作業か作戦か立ち回りのどれか1つでミスってしまってどうしてもマクダウルが勝てず・・・何が起きるか分からない、誰にも勝てるチャンスがあるとは言いつつ、それを引き寄せるのはやっぱり実力だなとだいたいレースが終わると同じ感想にたどり着きます。
ステンハウス優勝おめでとうございます!前回は記事内でまっささんをいじったのに、今回あゆむさんをいじるのを忘れました()最後に給油量を減らして先頭に、と言うのは簡単でも、全員が同じことを考えてるわけですからそれを実際に実現できるのはやっぱり彼の中のちょっとした瞬時の判断の積み重ねなんだろうなと思います。
アトランタだけは単独でそこそこ速い車でないと勝ちに近づけない、という点でデイトナ・タラデガほどチームと彼にとって簡単ではないかもなと思いますが、マクダウルの5連続ポールを見てるとステンハウスもニッチな怪記録を見てみたいですね。いや、それよりまず普通の1.5マイルで勝ってほしいかw