NASCAR プレイオフ 第4戦 カンザス

NASCAR Cup Series
Hollywood Casino 400 Presented by ESPN Bet
Kansas Speedway 1.5miles×267Laps(80/85/102)400.5miles
winner:Ross Chastain(Trackhouse Racing/Kubota Chevrolet Camaro ZL1)

 NASCAR カップ シリーズのプレイオフは第2ラウンドとなるラウンド オブ 12になりました。カンザス、タラデガ、シャーロット-ローバルの3戦で12人のコンテンダーを上位8人に絞り込みます。前ラウンドでは今年でフル参戦を引退するマーティン トゥルーエックス ジュニアがあっけなく脱落し、チャンピオンの可能性が早くも潰えてファンの皆さんも肩を落としたと思います。チームメイトのタイ ギブスも脱落し、ジョー ギブス レーシングは4人中2人が消えました。
 で、このラウンドの初戦は1.5マイルのカンザス。2004年のプレイオフ制度開始以来必ずプレイオフのレースが開催されていますが、プレイオフの4戦目として開催されるのは2014年以来なので現行のプレイオフ方式では初めてとなります。5月に行われた第12戦のカンザスは雨による2時間半ほどの順延、からの燃費レース、からのオーバータイムにもつれて、最後はカイル ラーソンがクリス ブッシャーを0.001秒差で退けるというNASCAR史に残る決着でした。あまりに僅差だったのでトランスポンダー計測では誤差の範囲になってしまい、速報値では0.000秒差でブッシャーが勝利、という情報が出てぬか喜びだったのが印象的です。
 昨年のプレイオフで開催されたカンザスではタイラー レディックが優勝、2年前はバッバ ウォーレスが優勝で秋のカンザスは現在23XIレーシングが2連勝中。Gen7導入以降のカンザスでトヨタ車は5戦4勝、過去10戦でも7勝しておりトヨタユーザー以外で勝ったのはラーソンの2勝とジョーイ ロガーノの1勝のみです。大ベテランと最若手が脱落したJGRですが、まだエース級が23XIを含めて残ってますのでここは勝って確実に1人を次ラウンドへ送り込みたいところ。
 現役で最もカンザスの平均順位が良いのはチェイス エリオット、他のプレイオフ選手も軒並みカンザスの平均順位で上位に名を連ねており、標準的な1.5マイルのトラックですから有力選手が順当に結果を出していることが統計からも読み取れます。チェイスはカンザスでの優勝は1回だけで、現役最多はデニー ハムリンの4勝です。まあだいたいどこ行ってもハムリンは最多かそれに近い数字になりますわな。

・レース前の話題

 前回お伝えした通り、このレースからコリー ラジョーイはリック ウェアー レーシングへ、ジャスティン ヘイリーはスパイアー モータースポーツへと"トレード"されました。新天地での初戦には注目です。

 他にも契約の話題があり、コウリッグ レーシングはタイ ディロンが2025年にカップシリーズからフル参戦すると発表しました。カー ナンバーは現在使用している31を10に変更することも発表されています。元々コウリッグは10を使いたかったんですがスチュワート-ハース レーシングが使用しているので使えずにいました。来年SHRが無くなるので使用許可を得たようです。
 今季フル参戦していたダニエル ヘムリックはどうなるのかというと、エクスフィニティー シリーズへの降格ではなくチームを離脱すると発表。コウリッグのエクスフィニティーはダニエル ダイ、クリスチャン エッケス、ジョッシュ ウイリアムズの3人で既に固まっているとみられるため居場所がありませんでした。弟ディロンはスポンサーをそこそこ持っているのでコウリッグのドライバー候補となっている、というのは去年も噂に上がっていましたが、現地の記事を読んでいると1年経って結局ディロンになったのは少なからず驚きの起用だった様子です。ヘムリック、ちょっと気の毒かも。。。

 スポンサーと言えば、ハムリンのスポンサーとしてお馴染みの物流大手・フェデックス。一時は1年間ずっとハムリン=フェデックスだったところから、近年スポンサーを担当するレース数が激減しているのは車を見れば一目瞭然ですが、来年に向けてはさらなる削減、ないしは完全なスポンサー撤退の可能性が噂されています。JGRはスポンサー探しをしているようですが、長年の主要スポンサーが離れてお金が足りずベテランを雇い続けられない、というのはカイル ブッシュで経験済みなので二の舞を演じるのは避けたいところ。
 JGRとハムリンは昨年に複数年の契約延長で合意していておそらく来年で契約切れとみられます。ハムリンの場合23XIのオーナーとして"JGRに提携料を払うお客さん"の立場でもあるためより話が複雑ですが、2025年と見られる契約切れのタイミングではまた周辺が騒がしくなりそうです。

 あ、そうそう、オールスター戦で乱闘騒ぎに加担したために出入り禁止になっていたリッキー ステンハウス シニアは処分が解除されてNASCARの現場に入ることができるようになりました。リッキー ステンハウス ジュニアの父親です、念のため。

・ARCA Menards Series Reese’s 150

 ポール ポジションを獲ったのは19歳の女性ドライバー・イザベラ ロブスト。しかしスタートで出遅れると2周目に入るフロントストレッチで不注意っぽい動きで他車と交錯しクラッシュ、リタイアとなってしまいます。その後のレースはトラックシリーズが本職のタナー グレイが力の差を見せるように快走、100周のうち88周をリードして今季2勝目を挙げました。ただ、レースで目立っていたのは彼よりも

 見た目は完全にヘンドリックのエース、18歳のコリー デイでした。グレイとの1位争いではかなり粗削りな走りで完全なスピン状態に入ったかと思うと自力で立て直しに成功(オフィシャルは回ったと思ってコーションを出してしまった)、レースの最後も攻めすぎてアンディー ジャコウィアックと接触しこの通り。たぶん今後は下部シリーズで名前を見る機会が増える選手でしょうね。

・Craftsman Truck Series Kubota Tractor 200

 クラフツマン トラック シリーズは最終ステージ・76周目のコーションで最後の給油と考えてピットに入るか、ステイ アウトしてアンダー グリーンで給油するかが運命の分かれ道でした。前者を選んだタイ マジェスキーは残り1周強というところでガス欠、これでアンダーグリーンで給油をしたコリー ハイムが逆転し今季6勝目を挙げました。練習走行でクラッシュし予選不参加・33位スタートからの逆転でした。


 トラックシリーズはこれでプレイオフ最初のラウンドが終了、成績下位2名となったダイ、ベン ローズが脱落しました。ラウンド オブ 8はタラデガ、マイアミ、マーティンズビルの3戦で行われます。ちなみにARCAで暴れたデイはこのレースにも出場しましたが、76周目に貰い事故でリタイア。事故の要因となったのはARCAで優勝したタナーの弟・テイラー グレイのスピンでした。結果としてこの事故が作戦の分岐を呼び、ハイムの優勝に繋がりました。デイとダイ、書き間違いに気を付けないと・・・

・Xfinity Series Kansas Lottery 300

 エクスフィニティー シリーズはこれがプレイオフ初戦。先週は不運な事故をきっかけにレギュラー シーズン王者を逃したジャスティン オールガイアー、今日もシェルドン クリードと接触して派手に内側の壁にぶつかり結局リタイアを強いられて、悪い流れを断ち切れません。この2人は先週もわりと似たパターンで接触しています。
 レースの方はスポット参戦のエリック アルミローラがプレイオフの空気を読まずに残り3周でコール カスターを抜いて今季2勝目を挙げました(ただしオーナー選手権としてはカーナンバー20はプレイオフ車両)。アルミローラはステージ1で1位、ステージ2も3位でしたがステージ間コーションのたびにピット作業が遅くて順位を下げ、取り返そうとして124周目に壁に当ててしまいパンクで緊急ピット。しかしちょうど他のドライバーのピット サイクル途中にコーションが出て作戦のズレが無くなる幸運があり、最後はレギュラーシーズン王者を抜き去りました。


・カップシリーズ
 予選

 ここからはカップシリーズ、予選でブッシュ ライト ポール賞を獲得したのはクリストファー ベルでした。今季2度目、通算12度目でカンザスでは3戦連続のポールです。でもベルはまだカンザスで勝ったことが無いんですねえ、2位はチームメイトのギブス。
 2列目はカイル/レディック、3列目がロガーノ/ウイリアム バイロン、4列目はライアン ブレイニー/ハムリン、そして5列目がチェイス ブリスコー/ダニエル スアレス。6列目にラーソン/アレックス ボウマンが並んで、1位~12位でプレイオフ選手が10人です。オースティン シンドリックは17位、チェイスだけはエンジンの不具合で予選の記録が全く伸びず最下位、エンジン交換を行って最下位スタートとなりました。決勝で起きなくて良かった、と前向きにとらえたい。

 なお、トレードされた2人ですがヘイリーは23位、ラジョーイは27位でした。

・ステージ1

 いきなり後方がターン2で多重事故を起こしました。後方と言えばチェイスがいるので大丈夫か?と思ったら、大外をかっ飛ばして積極的に抜きに行ってたのでちょっと右側を壁に擦ったけど、巻き添えにはならずに済みました。安全に走ってたら逆に事故に突っ込んでたかもしれません^^;
 この事故でジョッシュ ベリーは0周リタイア、ハリソン バートン、ジミー ジョンソン、 弟ディロンが修復作業のため早くも周回遅れになりました。気を取り直して7周目にリスタートしベルがリード、ギブスは付いていくものの3位以下とはすぐに離れてけっこうな独走。しばらくは平和な時間だと思いましたが、

 マジかよ、19周目にラーソンの右後輪がパンクして壁に接触、早くも2回目のコーションです。前ラウンドでも初戦のアトランタで大クラッシュしたラーソン、これで2ラウンド連続。ただ今回は外側を走っていたため、パンクしてすぐ壁に当たったので致命的損傷を避けられたのが救いでした。破片を踏んでタイヤがパンクした可能性が高いようです、ってことは1周目のやつか?

 ステージが残り60周弱、満タンにすれば最後まで走れるのでリード ラップ車両はピットに向かい大多数が4輪交換と給油を行いますが、ベルは2輪交換でトラック ポジションを重視。でも給油終了後に連携ミスか2秒半ぐらいボーっと止まってて9秒かかったので、これなら4輪換えても同じでしたw
 25周目にリスタート、ロガーノがベルの懐に飛び込みましたが、ベルは冷静に対応してリードを守ります。この争いで2位にはバイロンが浮上し、20周でベルから約1.5秒離されたもののここから先は左側のタイヤの差なのかからじわじわと追い上げていきます。一方、ラーソンの方はやはり車が万全ではなく、カズ グラーラにもJ.J.イェリーにも抜かれてリードラップ最後尾へ落ちると、57周目に何の抵抗もなくベルに周回遅れにされました。パンクした瞬間にディフューザーを路面にかなり擦り付けたのでダウンフォースが出ていないかもしれません。
 ベルはペースが落ちて来たのかステージ終盤になると3位以下の人も段々追いついて接戦の雰囲気になると、なんとステージ残り8周でふらついて壁に接触。大きな損傷やパンクは無さそうですがバイロンにリードを明け渡し、自身は5位へ後退。そのままステージ1はバイロンが制し、ロガーノ、ブレイニー、ハムリン、ベルのトップ5でした。ギブス、シンドリック、トゥルーエックス、ボウマン、そして10位にカーソン ホースバー。段々この人が上位に顔を出す頻度が増えてる気がする( ゚Д゚)

・ステージ2

 全車ピットで4輪交換&給油、最初にピットを出たのはロガーノでしたが、リスタートしたら出足の悪いセッティングなのかあっさりとバイロンに抜かれました。2周ほどしたらペースが上がってきたようなので僅かなタイヤ内圧設定の差でしょうか。10周ほどして落ち着いたところでバイロン、ロガーノ、ギブス、ハムリン、ベルのトップ5。ここからどういう速さで走れるのかが見どころでしたが、98周目にエリック ジョーンズが単独スピン。


 ステージ1でも壁に軽くぶつけており既に周回遅れだったジョーンズ、穴掘りしてしまって車はボロボロです。今度はステージが残り60周強ですが、燃料で考えたら行ける距離なのでリードラップ車両がピットへ。ここでまたベルが2輪交換にして時短に出ましたが、同じ作戦でカイルの方が先にピットを出ました。ベルは今回も給油待ちで少し時間を要しましたが、むしろカイルはそんなに早くて燃料足りるんでしょうか、ピット前は10位だったのでかなり少ない給油量のはずです。そしてハムリンはピット作業失敗で7列目へ後退。

 105周目にカイル/ベルの1列目でリスタート、2輪交換で前を取れなかったのはベルにとって計算外だったと思いますが、翌周にカイルを抜いてなんとかクリーン エアーを確保。カイルの方はダーティー エアーになって苦戦し、10周もしないうちにターン2でふらついて失速。後ろにいたボウマンは詰まって軽く追突するとばっちりを受けましたが、大きな破損は無さそうです。
 リスタートから30周が経過してオーダーはベル、ロガーノ、ブレイニー、ボウマン、バイロン。ピットで躓いたハムリンは9位まで挽回しています。調子が良さそうなのはブレイニーで、137周目にロガーノをかわして2位浮上。さらに142周目にはベルをかわして本日初めてリードを奪いました。するとその2周後、ヘムリックがターン4出口で滑って壁にぶつけ、安全にエイプロンを走って1周しようとしてターン2で回ったのでコーションが出ました。このコーションでとうとうラーソンがフリー パスを得てリードラップ復帰。
 さっきのコーションから約40周走っているのでリードラップ車両がピットへ、先頭で出たのは2輪交換したゼイン スミスでこれに続いたのがベル。ブレイニーはほんの1秒ほど作業が遅かっただけで6位まで落ちてしまいました。しかし順位を下げるだけならまだマシなもので、ハムリンはナットがちゃんと締まっていない疑いがあったので事故を避けるため再ピット、ほぼ最後尾へ後退です。2回連続の作業失敗はちょっと辛い。

 149周目/ステージ残り17周でリスタートし、意外とスミスが頑張ったけどベルの方が先行。するとバックストレッチ、混戦となっている中団でヘイリーが隣にいたジョン ハンター ネメチェックに体当たりするようなクラッシュが発生。何が起きたのかと思ったら、新チーム=初めて組むスポッターだったので言い回しが今までと違い、スポッターのステファン パーソンズは3ワイドの真ん中にいると伝えたはずが、ヘイリーは内側に誰もいないと誤解。スポッター無線は短時間に多くの情報を詰め込むために各々が独自の言い回しをして必ずしもみんな同じ表現とは限りません。普通はドライバーと阿吽の呼吸でやり取りしますが、シーズン中のトレードという異例の事態に思わぬ落とし穴がありましたね。
 ちなみにこの事故の際、ヘイリーの後ろにはちょうどラーソンがいたので一歩間違えたらラーソンが体当たり食らってるところでした^^;

 ステージ残り12周でリスタートしますが、3周後にシンドリックがスピンして7回目のコーション、これも何か見切りを間違えて自分からカイルにぶつかりに行ってスピンしたみたいな変な動きでした。ここはピットとステイアウトで選択が分かれるコーションとなりベル、ボウマン、ブレイニーなどはステイアウト。ピット前に10位だったロガーノはせっかく入ったのにナットが締まって無くて再ピット、無線で激怒しました。ペンスキーに相次いで問題が襲い掛かりますね。
 ステージ残り4周でリスタート、ベルは外側を選びましたがターン1でわりとあっさりボウマンに先行されてしまい、さらにターン3~4で乱気流の影響を受けたらしく壁にぶつけてしまう痛恨の失敗。ステージ1のデジャブのような展開でベルは順位を下げていき、ステージ2の勝者はボウマンとなりました。ギブス、ブレイニー、バイロン、ブラッド ケゼロウスキーのトップ5、これにピット組のホースバーが続きました。ベルは今回16位まで落ちてしまいステージポイントを得られませんでした。

・ファイナル ステージ

 さっき作戦が分かれたのでここも当然バラバラ、ギブスがさっきのコーションに続いてここもステイアウトするトラックポジション最重視作戦でリーダーとなっており、続くのはホースバー。なんやかんや今日もスパイアー モータースポーツの3人があちこち話題に出てきます。172周目にリスタートし、7回目のコーションでタイヤを換えているホースバーがリードを奪いました。しかしホースバーのリードは短命で、同じタイヤ履歴のチャステインが5周後に前に出ました、旬の時期は過ぎた気がしますがようやくスイカ男に収穫時期の到来でしょうか。
 191周目、ここでブレイニーに残念なお知らせ。左後輪のナットが締まっていない疑いがあるとチームから伝えられ、クルー チーフ的にはまだ大丈夫なので様子見をするつもりでしたが、これにブレイニーが「もう既に順位下げてんだろ、何で対処しない!」と怒って翌周にピットに入りました。まだ75周ほど残っているので燃料的にもう1回ピットに入る必要があり、良いタイミングでコーションが出ないとかなり下位でレースを終えることになります。

 スイカの収穫を楽しみにするリーダー争いですが、そうはさせじとチャステインと同じ戦略のカイルが追いかけます。非常に勢いのあるカイルと、大外ラインでまるでラーソンのような走りを見せるチャステインは抜きつ抜かれつのバトルを展開。しかし最終的に205周目にカイルに外ラインを取られてしまって反撃の手を封じられチャステインも降参、カイルがリーダーとなりました。
 このあたりがレース残り60周ほどなので最後を予定するピット サイクルが始まります、中団のドライバーから徐々に動きを見せ始めました。なんか右側のタイヤのGOODYEARロゴが消えてる人が多いので、知らないところで壁に擦ってるっぽいですね。
 
 残り57周、カイルから1.7秒差の3位に付けていたトゥルーエックスがアンダーカットを狙ってピットへ、これを見てカイルとチャステインは翌周に同時にピットに向かいました。カイル陣営はピット作業も非常に素早く実質的なリードを維持して合流、チャステインもギリギリでトゥルーエックスの前に出ましたがブロックしに行ったので多少カイルから離されてしまいました。
 それでもチャステインはトゥルーエックスを引き離してカイルとの差を詰めていくと、226周目のターン4でカイルがミスって壁に擦ってしまい、あっさりとリード チェンジ。これがちょうど現地のコマーシャル中に発生したので中継が再開されるとまずこのリプレイから始まりましたが、なんとリプレイ中にチャステインが似たような場所でミスって抜き返され、スイカの収穫時期を逃してしまいました。CM中に順位が入れ替わり、リプレイ中にちっさいワイプ画面の方でまた順位が入れ替わり、なんかNBCがチグハグな状態に^^;

 自分のミスを相手のミスでチャラに出来たし今日のカイルは運もあってもう安泰、と思ったら信じられない落とし穴が待っていました。235周目、カイルに周回遅れにされそうだった26位のブリスコーが外側にちょうど1台分だけの隙間を空けて走りましたが、カイルはなんと内側ではなく大外を走ってその隙間に入って抜こうとしました。しかしこれは選択ミス、文字通り狭き門だったのでブリスコーの近くまで来たらダウンフォースが抜けて壁に擦ってしまい、しかも姿勢が乱れてそのまま単独でスピン。

 ブリスコーもカイルに意地悪をしたわけではなく、前にいたステンハウスからの乱気流を避けるためにラインを少し内側にずらしただけだと思いますが、カイルはさらに内側に行くと旋回速度が落ちてチャステインにやられる、という心理からあの狭い隙間へと誘い込まれた形。結果としては判断ミスで、勝てていない時間が長いと必要以上に不安を感じてしまってリスク管理がうまくいかなかったのかなと思いました。

 各車ともタイヤを換えてから30周前後走っているのでリードラップ車両がピットへ、このピット作業でトゥルーエックス陣営が速報値8.8秒の驚異的4輪交換を見せてチャステインを逆転しました。そしてピットのタイミングがずれていたブレイニーはこのコーションでズレが解消されて超ラッキー。緊急ピットした時点で19位まで落ちていましたが、結果としては『超絶アンダーカット』したようになってコーション時点で8位、ピットを6番目に出て上位戦線に戻り、ブレイニーの判断が奏功しています。

 残り26周でリスタート、リーダーは唯一のステイアウトを選択したケゼロウスキー。この状況でのステイアウトが個人的には謎すぎましたが、後ろにいたボウマンはリスタートで全くケゼロウスキーを押さずにターン1で内側にねじ込みました。これでケゼロウスキーは失速して動くシケイン状態となり一瞬で後退しリーダーはトゥルーエックスとなると、翌周にバックストレッチでホースバーが前に詰まって後ろから押される不運なスピン、本日10回目のコーションとなりました。
 もう上位勢は動くこと無く残り20周でリスタート。トゥルーエックス/チャステインの1列目でどちらが勝っても今季初優勝、2列目はボウマン/バイロンでどちらが勝ってもヘンドリックです(当たり前)。リスタートで前に出たのはチャステインで、トゥルーエックスはターン2出口で3ワイドの外側になって壁スレスレ、真ん中にいたボウマンはちょっと攻めすぎてせり上がってしまい、接触を避けるためにスロットルを戻したので失速。これで、特に何もしてないけどバイロンが2位となってチャステインを追うことになりました。(←失礼)
 しかし今日のチャステインはクリーンエアーでは抜群の速さ、バイロンは0.4秒差あたりまで詰め寄ったもののここから先へは全く踏み込むことができず、そのまま最終周へ。最後にもう一勝負賭けようかとライン取りを変えて揺さぶるバイロンでしたが、チャステインは全く気にすることなく自分のラインを貫いて寄せ付けませんでした。チャステインが昨年の最終戦以来ほぼ1年ぶりのカップシリーズ通算5勝目、クボタのスキームで優勝するのは初めてで、今回ちょうどトラックシリーズの冠スポンサーがクボタでしたから抜群の宣伝にもなりました。日本の会社なので日本からもお礼を言っておきます、チャステインありがとう!

嬉しそうにスイカを運ぶおじさん

SMAAAAAASH!!!
(良い子はマネしないでね)
そしてもちろん食べながら喋る
(良い子はマネしないでね)

 2位からバイロン、トゥルーエックス、ブレイニー、ギブスのトップ5。上位5人中プレイオフ選手は2人だけでした、しかも片方がナットが緩んで緊急ピットしてた人です( ゚Д゚)6位からボウマン、ベル、ハムリン、チェイス、そしてスミスと続きました。移籍初戦のラジョーイが15位、前戦までのヘイリーも15位以内だったレースは5回だけで、1.5マイルの最上位(アトランタを除く)は春のカンザスで記録した18位だったことを考えるとチームの期待以上の結果だったかもしれません。来季の契約へ明るい材料ですね。
 プレイオフ選手で苦しかったのはブリスコー、レディック、ラーソンの3人で24~26位に並びました。ブリスコーは速さが無く、ラーソンは壊れた車で上位勢より0.5秒以上遅い車だったせいですが、レディックは最後のリスタートを5列目から出ていたはずがケゼロウスキーの動くシケインに思いっきり詰まって信じられないぐらい順位が下がってしまいました。ちなみにラーソンはとにかくコーション中は修復のため複数回ピットに入ったため、レース中に合計13回もピットに入ったようです。

 今回はカイルか、チャステインか、というレースの終盤でしたがカイルの精神力が負けてしまったレースでした。9月に入って復調の兆しが出てきたカイルだけに自信を持って走ればよかったと見ている側は思うわけですが、カイルの中ではチャステインを抑え込んでリードを維持するのはかなり厳しい過程だったようで、攻め続けなければ負ける、と気負いすぎた様子です。壁に擦ってしまった場面も同様だったんでしょうね。
 チャステインの方は予選20位、決勝での速さの参考指標である練習走行の平均タイムでも特に目立った成績ではなかったので『一体どこからその速さを!?』という感じですが、1つの鍵はステージ2終了前に出た7回目のコーションでのタイヤ交換だったと思います。プレイオフ選手はステージポイントが欲しいのでどうしてもステイアウトを選んでしまうところ、彼はプレイオフに出ていないので逆を行って最終ステージを上位からリスタート。展開としてはここで上位にいることが重要なので、カイルもそうですが『プレイオフ選手ではない』ことが今回は1つ優勝へ向けたきっかけになりました。
 そこにリスタートでの上手さ、ちょっとやらかすぐらいの大胆な走りが久しぶりに噛み合ったわけですが、そういえばプレイオフ初戦・アトランタで私はこんなことを書いていたのを思い出しました。

 チャステインの支援次第ではスアレスにもチャンスがあったわけですが、1度ならず2度までも突っ込みすぎて曲がれずに失速するあたりがいかにも彼らしく、なんか元気のないままレギュラーシーズンが終わったことを考えると、ミスを咎めるよりは「久々に"らしい"姿だったからよかったぞ」とでも声をかけてあげたい感じです、スアレスからしたら「おい頼むぞ」でしょうけどw
 最後の多重事故もターン2でチャステインが失速し、前が詰まってるからとにかく速く走ってほしい後続が押しまくった結果チャステインが弾かれて始まったので、まあこのレースの裏の主役はチャステインでしょう、次点はウォルマート()

 私が前向きに声をかけたことが成功に繋がりましたねえ(大嘘)オーバルではないですがグレンでも優勝争いをずっとしていましたし、彼の中でようやくイメージ通りに車が走る感触が出てきたのかなと思います。乗ってくるとすごい人なので、残りのプレイオフでも空気を読まない走りを見せてくれるんじゃないかとちょっとハードルを上げてみますw
 全くの余談ですが、さっきも書いた通り今回のチャステインのスポンサーはクボタでした、言わずもがな農業用のトラクターなど農機具で世界シェア3位を誇る大企業です。で、カイルの行く手を阻むことになったブリスコーのスポンサーはマヒンドラ トラクター、世界シェアでは7位とされているこれまた農機具メーカーです。つまりカイルは2台のトラクターに挟まれてしまったわけですね、さすがのストックカーもトラクター2台には勝てません(´・ω・`)

 強引にトラクターで話を落としましたが、最後にこのレースを終えた段階でのプレイオフ順位を確認しましょう。

 バイロンは勝ち抜けこそできませんでしたがかなりの点差を生み出しました。ラーソンもリタイアして1点、とならなかったことでまだ気持ちに余裕ありですが、次戦はプレイオフで最もヤバいレース・タラデガ。何を隠そう、ラーソンは通算で5戦以上出場経験のあるトラックでタラデガ、デイトナ、アトランタの3つが平均順位ワースト3。Gen7導入以降にドラフティング トラックで1桁順位になったのは2022年のタラデガ1回だけでかなり悲惨な成績しか残っていません^^;
 レディックもまさかのケゼロウスキーシケインで当落線の下に落とされました。ブリストルでもそんなに調子が良くなかったですが、デイトナ以降の6戦で20位以下なのはこれが4度目とそれ以前の7戦連続で6位以内だったところから一転して苦戦中。去年もレギュラーシーズンでチャンピオンだったトゥルーエックスがプレイオフで急失速して脱落していますが、レディックもズルズル行かないかちょっと心配です。

 ではここからは、チャステインの超久しぶりの優勝でテンションが上がりまくりのまっささんの歓喜のコメントと、それを祝福する当ブログ常連の皆様方の声をどうぞ。マイクをお渡ししま~すw

コメント

まっさ さんのコメント…
マイクマイク🎤︎︎(´□`* )ノ
キタ━(゚∀゚)━!( っ'-')╮ =͟͟͞͞ 🍉ブォン

長かった長かった。スアレスに押され、話題をかっさらうバーゲンセールに隠れて....。グレンでも勝ちきれず(இωஇ`。)
ようやくです。プレーオフ残ってないからこそ勝てる。納得したくないけど勝てる時に勝たなきゃ!(去年の最終戦もそうだよね???)
2番手がハーヴィックだったらクラッシュ。FedExだったら乱闘だったぜ。カイルさんありがとう!(´▽`)
プレーオフがなんぼのもんじゃいスイカ男様のお通りだーい!
(スイカの清掃大変だろうなぁ)
首跡 さんの投稿…
見事な勝利でした。チャステインとまっささん、おめでとうございます!
彼がついに今季初勝利を掴むことができて本当に良かったです。
今年はしばらく勝利から遠ざかっていたドライバーが勝つパターンが多いので、カイルもそろそろ勝てるのではないかと予想しています。あのスピンは惜しかったですが、今回のレースで優勝を狙える位置にいたことは大きな収穫だと思いました。
日日不穏日記 さんの投稿…
カイルとチャステインのバトルは見応えがありました。結果的には、チャステインの<圧>にやられたのかな、と。心臓バクバクで観ていましたが、勝つのは難しい気はしていました。インタヴューでは、髭を剃って、随分雰囲気が変わったなぁ、と。チャステインは5勝目ですが、ディロン兄と同じなんですね。コカ・コーラ600とデイトナ500で勝ってるのにチャステインと比べると、影が薄い気がします。まぁ、チャステインはトラックハウス3年目だし、ディロンがコカ・コーラ600で優勝したのは、2017年。インディ500で優勝した佐藤琢磨とチャンピオンリングの2ショットがあったので覚えてます。それは余談として、チャステインのキャラがそれだけ濃いということでしょう。まっささん、おめでとうございます!。
更に余談ですが、スタート前にペースカーをドライブしていたのはエドワーズでした。少しウィキを調べてたら、曽祖父がアメリカ大統領だったそうで。なるほど、引退時に政界進出の噂があったのもうなずけます。FOXのリール動画では、2009年のデイトナでケセロウスキーに弾き飛ばされて、宙に舞ったものを何度も観ました。シボレー陣営に来てから、スーパースピードウェイでは良い走りを見せているカイルなので期待したいと思ってます。
カイル・プッシュ さんのコメント…
勝ってくれるのか??ラスト50周くらいからは、画面に釘付けになって見てました。悪い予感しかしなかったですが、、
やっぱりそうでしたよね。ブリスコーの後に来た時に、悪い予感がもっと強くなって、案の定、、、しばらく勝ってないことから来る焦りなのか、チャステインのプレッシャーなのか、あの場面では一旦引く余裕が欲しかったです。
あと、あのスイカはやっぱりもったいないですよね笑日本ならこれはできないな~って思ってたらいきなりかぶりついてたんで、落ちた物を食べるんかい!!ってつっこみたくなりました。
SCfromLA さんの投稿…
>まっささん

 たしかに相手がハービックなら何してきたか分かりませんね(笑)なんならこのままプレイオフのノンコンテンダー最多勝記録なんてニッチなものを樹立してもらいたいですね~
SCfromLA さんの投稿…
>首跡さん

 チャステインが勝った代わりにちょっとレディックが・・・なレースになってしまいましたけど次はカイルかトゥルーエックスか。例年以上にノンコンテンダーが強そうなだけにぜひかき回してもらいたいです。
SCfromLA さんの投稿…
>日日不穏日記さん

 そうそう、エドワーズが担当だというのは事前に見出しだけ見ました、YouTubeだとカットされてるから実際に見る時にはもう忘れてるんですよ(笑)
 ディロンは最近別の意味でキャラが濃くなってますけどいかんせん上位を走らないのでレアキャラ化してるのが難点でしょうね~、カイルも行けそう感は出てるので、サムネイルで事故ったのが分かる最悪の状態は脱してますから案外ラスベガスとか勝ったりするかもしれませんよ。
SCfromLA さんの投稿…
>カイル・プッシュさん

 叩きつけたスイカは自分で拾って食べるところまでが1セットです(笑)まあ本当にあのスピンは残念でしたけど、普段ならあの程度壁に擦ったぐらいなら回るところまで行かない気がするので、力が入りすぎてたのかなあと思いました。
 でもクリーンエアーで走ってぶっちぎれる状態まで持ってきたのは夏場を思えば雲泥の差ですから、残りのレースも期待できると思いますよ。
アールグレイ さんの投稿…

アルミローラは色々あって、今年出場予定のレースが減ってしまいましたが、それでも勝てるあたりまだまだ活躍していけそうで何よりです。

チャステインもプレーオフを逃したりなど最近影薄くなった感じがあって心配だったので、とりあえず今年1勝出来たのは大きいですね。
チームメイトの方が最近話題になることも多いですし、母国開催が決まってモチベーションも増していそうなスアレス、カップシリーズに昇格してくるSVG、この2人の勢いにそのまま飲まれてほしくはないです。

マヒンドラはかつてMotogpにも参戦していたことやフォーミュラEによってインドの財閥ということまでは知っていましたが、モータースポーツでも色んなカテゴリーで見るようになってきましたね。
インド人ドライバーは流石にNASCARにはいないだろうなと思ったら元F1ドライバーのカーティケヤンが2010年にトラックシリーズにスポット参戦していたのを知って驚きましたw

SCfromLA さんの投稿…
>アールグレイさん

 ナレインがトラックシリーズに出場していたのは全然知りませんでした!しかも調べたら9戦も出場した上になぜかファン投票で最も人気のあるドライバー賞にも選ばれて記録に名前残してるしw
 トラックハウスとしてはチャステインが沈んだままだと集まってきた大口スポンサーさんが契約切れで離れたら困るし、残る2人が未知のSVGとムラッ気のあるスアレスになってしまうのでマークスもちょっと安心したでしょうね。我々的にはいないと困るキャラなのであと3勝ぐらいしてほしいですw