Formula 1 Pirelli United States Grand Prix 2024
Circuit of the Americas 5.513km×56Laps=308.405km
Circuit of the Americas 5.513km×56Laps=308.405km
winner:Charles Leclerc(Scuderia Ferrari/Ferrari SF-24)
シンガポールを終えて約1か月の秋休みを挟み、フォーミュラ 1 世界選手権は勝負の6戦へ。第19戦はアメリカ、アメリカ国内で開催されるレースは全部で3戦ありますが『アメリカGP』を名乗れるのはこのオースティン・サーキット オブ ジ アメリカズです。毎年のように舗装の悪さが指摘されるCoTAですが、今年も一部は再舗装が行われました。でも高速S字区間はなんとそのままにしておきました、サーキットの味は大切にします(冗談で書いてみたら、本当にそういうサーキットの特徴としてあえて残ってることを肯定的に捉えてくれる選手もいたようでビックリw)
ドライバー選手権では選手権2位・ランド ノリスの自力チャンピオンの可能性が前戦の時点でとりあえず消え、マックス フェルスタッペンに優勝マジック 129が点灯(ズラスポーツ調べ)。F1では夏休みは規定で強制的に休みを取ることが義務付けられ各チームの向上は稼働停止になりますが、今回の秋休みは単に日程が空いただけなのでもちろん働き放題、働かせ放題。この間の開発がチャンピオンの行方を左右するかもしれません、守ろう、労働環境。
・レース前の話題
以前からほぼ事実として伝えられてはいましたが、アルピーヌ(ルノー)はパワー ユニットの製造を2025年限りで終了し、2026年からの新規則PUを自社では製造しないことを正式に発表しました。今のところF1チーム自体を解散するわけではなくどこかのPUを供給してもらう予定でメルセデスが有力とされていますが、最終的にはチームを別の投資家か誰かに売って退くことになるんですかねえ。
なお今週のアルピーヌ、スポンサーのマイクロソフトからの拡張連携広告ということになると思いますが、12月9日に発売される新作ゲーム『Indiana Jones and the Great Circle(インディ・ジョーンズ/大いなる円環)』をイメージした特別スキームでの走行となります。インディージョンズって私はトロッコしか思い浮かばないんですが、さてさてどんな車かな
マクラーレンやないかい!スプリント予選の時は本気で見間違えました、北海道日本ハムファイターズ 対 福岡ソフトバンクホークスの試合が、ファイターズが特別ユニフォームで黒にしたせいでどっちも黒いユニフォームになった、ってのがありましたけど、被るのはズラだけにしといてくれw
一方で新規参戦、とまではいきませんが世界の巨人がF1に久々に接触、トヨタ自動車がハースと協力関係を結ぶことを突然発表しました。技術や人材の交流と発表されており、将来トヨタがハースを買ってF1に再参入、というような先走った話では無いとは思いますが新たな展開です。当然ながらハースのPUはフェラーリ製ですが、ハースの車体にはトヨタ ガズー レーシングのロゴも記載されることになります。
トヨタはこれでF1の最先端の競争技術に触れる機会を、ハースは逆にWEC等で活躍するTGRの知見を手に入れる機会ができると考えられます。また、トヨタとしてF1とのつながりを持つことはトヨタ系の育成ドライバーにF1への道筋を与える役割もあることが明かされています。
単なる広告宣伝費という感じでモータースポーツを活用していた感じのあったトヨタですが、創業家の豊田 章男が社長として活動している間に『自動車メーカーとして良いものを作り、自動車を広めるための意義ある活動』という感じに位置づけが変わり、これを「それは単にあのお坊ちゃん社長がレース好きだから道楽で会社の金で遊んだだけでしょ」とは言わせないきちんとした組織として成り立たせていると感じます。
トヨタのこういう活動と会社としての好調さを考えると、トヨタとは違って「レースは研究開発です、不必要ならお金出しません!以上!」的活動だったホンダに対しても長い目で見れば多少影響がありそうですし(2026年からの再参入に向けてようやくホンダも少し変わってきた印象がありますけどね)、ちょっと大げさな言い方をすると日本のモータースポーツ界全体にも少なからず影響してくる決定かなと思います。もちろんまだ何も始まってませんけど。
チームだけでなくドライバーも3週間空いたら色々とあり、バルテリ ボッタスはUCIグラベル世界選手権というベルギーで開催された自転車の大会に参加し、247人中129位で完走し来年の契約をアピールしました(?)。また、角田 祐毅は台湾でレッド ブルのイベントに参加してレッドブルの車両でデモ走行しましたが、運悪く車両から出火してしまいました。角田、レッドブルから乗車を断られ尻に火が付く、という見出しが付きそうです(??)あ、今週から角田のチームメイトはリアム ローソンになっています。
・スプリント予選
しょうもないこと言ってる暇なんてなくこの週末は忙しいスプリント方式。スプリント予選ではSQ1でオスカー ピアストリがうっかりコース外に飛び出して記録抹消で脱落すると、SQ2でセルヒオ ペレスも脱落、この2チームは予選で片方やらかすパターンを頻繁に繰り出します。
そしてSQ3、最初にアタックしたジョージ ラッセルはターン1出口でかなり空転してるようなので失敗アタックだろう、と思ったらここで記録された1分32秒845を意外と後続は誰も超えられず。しかし最後にこれを0.012秒上回ってスプリントのポールを奪ったのはフェルスタッペンでした。スプリントとはいえ復調の兆しが見える走り、3位にはシャルル ルクレールが付けてノリスは4位にとどまりました。
ルイス ハミルトンはラッセルの後ろを走ってラッセルよりも速いペースでしたが、途中で前方に黄旗が出てしまった影響を受けて7位にとどまりました。でも映像を見ると黄旗があってスロットルを戻して、そのぶんコーナーで取り返そうとしてターン12でミスったっぽいのでもう少し上には行けたのかもしれません。さすがに長いことレースをテレビ観戦してるしグランツーリスモで多少車の動きも知識として知っているので、最近の私は小さいワイプ画面の車載映像でもミスったらすぐ気づくようになってきましたw
・スプリント
全員がミディアムを選んだ19周のスプリント。スタートでなんとビックリ、ノリスは内側を小さく回っていたら前の2人が外へ膨らんで自然と2位になってしまいました。オースティンのターン1は急な上り坂かつ鋭角なターンなので、意地を張り合った2人は外へ流れていって内側が空くことが結構あるんですねえ。これで序盤はフェルスタッペンを追いかけましたが、DRS圏から離されると付いて行けませんでした。
3位はスタート直後こそラッセルがノリスをつついていましたがこちらもやがてついて行けなくなると、ここから上げてきたのはフェラーリの2人。序盤は自分たちで何度も争いを繰り返して時間とタイヤを費やしていたものの、ここに一段落ついたらラッセルを追いかけ始めて9周目にカルロス サインツが、10周目にルクレールが相次いで抜いていきました。
この時点ではノリスから2.5秒ほど離されていたサインツですが、あれだけ自分たちで争っていたわりにタイヤが残っていて追い上げていき残り3周にはもう射程圏。そして最終周、ノリスがターン1でブロックの動きに出てタイヤをロックさせる痛恨の失敗でサインツが前へ。さらにルクレールも迫っていましたが、ターン15で内側をガチガチに固めるためにノリスがブレーキを早めに踏んだらルクレールが危うく追突しそうになり、結果としてはこれで撃退しました。
スプリントの優勝は最後にファステストを出せるぐらい余裕があったフェルスタッペンで、サインツ、ノリスのトップ3となりました。ルクレール、ラッセル、ハミルトンと続き、7位にケビン マグヌッセン、8位ニコ ヒュルケンベルグとハースが2人とも入賞。角田は9位スタートでしたが車の競争力不足か11位に終わりました。ペレス相手にかなり粘って防御してましたが、コンストラクターズ選手権だけを考えるとペレスをさっさと前に出してハースを抜いてもらった方が、という気がしなくもありませんでした。
マクラーレンは今回もまた新しい部品を持ち込みましたが、いつものように投入即的確な効果、とはならずに少し出遅れている様子。スプリントの週末は試す時間が少ないのですが、短時間でどこまで最適化できるのかが重要な点です。
・予選
このコースで19周のレースしてから午後に予選ってけっこうしんどくね?とか思ってると、お年寄りは疲れたのかハミルトンが今度は黄旗も出てないのにターン12でミスってまさかのQ1敗退・予選19位。PU交換するレース、アゼルバイジャンじゃなくてここにすればよかったですね()
Q2を終えた時点ではフェルスタッペンが異様に速いのでこれはポールも決まりかな、と思ったらQ3ではノリスが意地を見せました。1回目のアタックではターン19で危うくすっ飛びそうになる走りを見せながらの暫定1位、これに対してフェルスタッペンはターン19・ターン20といずれもほんの少しエイペックスに付けない小さい失敗があったように見え、僅か0.031秒届きません。
しかし2回目のアタック、セクター1で自己ベストを僅かに下回るノリスに対してフェルスタッペンはさっきよりさらに速く、これはもう逆転でフェルスタッペンだろう、と思ったらその矢先にターン19でラッセルがクラッシュ。これで思わぬ形で予選は事実上終わってしまい、ラッセルに助けられる形でノリスがピレリ ポール ポジションを獲得しました。フェルスタッペン、サインツ、ルクレール、ピアストリと続きました。ラッセルも1回目の記録で予選は6位、ただし車が直ったらの話です。
なお経済紙・ウォール ストリート ジャーナルの週末版にはF1に関する特集記事も組まれていたようなんですが、
Take an early look at the front page of The Wall Street Journal's weekend edition. https://t.co/1XPDMtIdI5 pic.twitter.com/xfcUS0G2ny
— The Wall Street Journal (@WSJ) October 19, 2024
マクラーレン レーシングのイギリス人ドライバー、ランド ノリスが今週末のテキサス州オースティンのサーキットオブジアメリカズで行われるアメリカF1グランプリを前に、金曜日の練習セッションでマシンを操る。マクラーレンは新CEOの指揮の下、今シーズン復活を遂げた。
12面に特集される記事の導入として1面にも写真とお題目が書かれていました。ってこれアルピーヌやないかい!w(12面の記事はちゃんとマクラーレンの写真です。)
・決勝
コース上では何件かコース外へ押し出した、コース外を使って抜いた、という類のペナルティーも発生。ノリスからしたら「俺もスタート直後にやられた」と言いたいところかもしれませんが、こういう争いが起きるよう狙ってコースの幅やコーナー半径を作ったサーキットですので、設計したヘルマン ティルケの思う壺です(謎)あ、でもこのコースは本来右回りとして設計されたというのは有名な話。
♪デデーン、ノリス、アウト~。コース外から抜いたということでノリスのは5秒加算のペナルティー。抜いて逃げ得になってたらそれはそれで揉めたでしょうが、現状ノリスはフェルスタッペンを5秒も引き離せてはいません。結局最後の最後までルクレールはほとんど実況解説で触れてもらえない感じになりましたが、今季3勝目・通算8勝目を挙げました。2位にはサインツが入り、フェラーリはアメリカで2006年以来のワンツー達成です。
ただ、エイペックス先行論というのは判定の一要素でしかありません。止まれないミサイルブレーキでも一瞬を切り取ったらその人はエイペックスでは前にいます。じゃあミサイルした人は優先権があって避けなかった人が悪いのかと言ったらもちろん違います。あからさまなミサイルではなかったとしても、単体で相手の進路を残すだけの車速と角度を満たせないような条件での進入であれば、エイペックス先行論が判定根拠とはならない場面は存在すると思います。ですのでここだけ見て「マックスの方が正しいよね」という解説になるのは正確ではないと私は考えます。
やはりラッセルは修理のために仕様変更するしかなくピット レーンからのスタートとなりました、新型の空力部品に予備が無いので旧型に戻しての走行です。ハミルトンは17位スタートということでレース前に無線で「むっちゃ遠いなあオイ。」
タイヤ選択は多くがミディアム、ノリスとフェルスタッペンはだいたい似たような蹴り出しでスタートし、すぐにノリスが内側を抑えに行きました。しかしフェルスタッペンはそれでも内側の1台分の隙間に思い切って入っていくと、2人でそのまま外へ膨らむお約束。昨日のデジャブのように空いた内側を抜けた4位スタートのルクレールが1位になりましたw
この混戦で順位はルクレール、フェルスタッペン、サインツ、ノリス、ピアストリとなると、サインツが積極的な走りでフェルスタッペンを攻撃。CoTAは色々とバトルできるんですけどラインの交差を連続させて争うことになるので、コーナー2つほど争っただけで猛烈に遅くなってしまいます。これでルクレールが逃げる機会にもなりました。
ところがこの流れに水を差したのが「すごい遠いなあ」と言っていた元王者でした。ハードを履いてスタートしながら12位まで上げていたハミルトン、2周目に予選のラッセルと同じようにターン19で飛び出して砂場に埋まり、自力で全く動けないのでSC導入となりました。SC走行の間、ノリスのエンジニア・ウィル ジョセフはターン1でのフェルスタッペンとの争いについて聞き取り中。しかし審議になることもありませんでした。
6周目にリスタート、ここからは上位4人が少し間隔を開けての走行で、タイヤを守るための意図的なものか、単に追いつけないのかしばらくは推移を見守る時間。その中でサインツは無線で「立ち上がりで出力がない。」「燃料の匂いがする。」となんか怖いことを言い始めますが、後にエンジニアから「ドライバーズ ディフォルト D16」を操作するよう指示されました。燃料の匂い対策としてたぶんアロマディフューザーが起動するんだろうw
14周目、フェルスタッペンとの差を5秒まで広げたルクレール。5秒ということはフェルスタッペンはタイヤのために下がっているのではなく単について行けないんだと思いますが、ルクレールに対してエンジニアのブライアン ボッツィーから「今の差を維持できるならプランAで行けるわ、でも今のところ基本は変わらずプランBやからな。」とお知らせ。でもルクレールの答えは「プランBかCがええんやけど。」選択肢多すぎるがなw
中団のチームは17周目辺りからピット サイクル、ミディアムからハードへ履き替えていきます。ピレリさんの想定では2ストップが良いとされているんですが、上位では21周目に3位のサインツがまずはピットに入りました。サインツはフェルスタッペンの約1.8秒後方にいたのでアンダーカットを狙う動きですが、フェルスタッペンは反応しません。けっこうタイヤが長持ちしているのでもうちょっと我慢して1ストップを狙っている様子なのと、フェルスタッペンが本当に意識すべきマクラーレンがどうするのか見えていないので安易にサインツの動きに釣られるわけにいかない感じですね。
25周目、ここでようやくフェルスタッペンがピットへ、あと30周ですから普通に考えたら1ストップでそのまま走り切るでしょう。サインツがアンダーカットした形で前に出ていますが、彼が2ストップなのか1ストップで行ってしまうのかが分かりません。フェラーリのタイヤが長持ちなのはスプリントで見えていますし、再舗装されたサーキットで思ったよりタイヤが長持ちして1ストップで行けてしまった、というレースが既に今年はベルギーとイタリアで起きています。そのイタリアで「え、そんな長距離走れるんすか。」という驚きで優勝を手にしたのがルクレールでしたね。
さてフェルスタッペンが動いたので、変なリスクを避けるために翌周にルクレールもピットへ、10秒も差がありましたのでアンダーカットされる危険性は皆無です。これで見た目上で1位になったノリスはとりあえずタイヤの履歴差を作るおなじみのやつでしょう、ジョセフからはこの状況が「ジャーマニー シチュエイション」だと伝えられています。
ジャーマニーシチュエイション=タイヤの履歴差を作って最後に追い上げるパターンを現す作戦コードというか隠語というか、そういう意味なんだと思いますが、調べてたら『2008年のドイツGPをイメージしてるんじゃないか』というポツリとした投稿が目に留まりました。2008年のドイツではマクラーレンのハミルトンがレースをリードしていましたが、レース後半に出たSCでハミルトンはステイ アウト。その後アンダー グリーンでピットに入って一時5位まで後退したものの、前の車を全部ぶち抜いて優勝した、というレースでした、全然覚えてないけどまあそういう感じのイメージなんでしょう。
コース上では何件かコース外へ押し出した、コース外を使って抜いた、という類のペナルティーも発生。ノリスからしたら「俺もスタート直後にやられた」と言いたいところかもしれませんが、こういう争いが起きるよう狙ってコースの幅やコーナー半径を作ったサーキットですので、設計したヘルマン ティルケの思う壺です(謎)あ、でもこのコースは本来右回りとして設計されたというのは有名な話。
ノリスは結局31周を終えるまでミディアムで引っ張ってハードへ交換。フェルスタッペンの6秒ほど後方で合流しタイヤの履歴差は6周。続く32周目にピアストリもタイヤを換えて上位勢のサイクルは一巡しました。上位で2ストップの可能性があるとすればサインツぐらいですが、なんとなくそのまま行きそうな気がします、昨日もあんだけ争ってタイヤがどうもなってなかったので今日はスーパーカルロスになってるかもしれませんし。
ここからノリスは最速を更新しながらフェルスタッペンに徐々に迫っていき、当然近づいてきたのが分かるフェルスタッペンは「このタイヤ全然ダメだ、止まらないし攻めれない。」と思い通りいかない様子。
42周目・残り15周でノリスはフェルスタッペンの1.5秒差までようやく追いつくと、45周目にはDRS圏内へ。あまり長時間乱流を浴びていたらタイヤが終わるので早めに仕留めたいノリスですが、さすがにこのぐらいの力量差の2台だとそう簡単に抜くことができません。あ、フェルスタッペンの前を行くサインツはタイヤが古いのにフェルスタッペンより速いですね、こりゃあやっぱりスーパーカルロスだ。
47周目、ノリスがこれまでで最も近い距離感でターン11を立ち上がったのでとうとうフェルスタッペンは防御ラインを取らされますが、抜かれないツボをきちんと抑えて前に出しません。尾灯がほとんどコース全域で点滅しまくってるので、たぶん直線で電気エナジーを放出するために他の場所は多少速度を犠牲にしてでも全部回生に注ぎ込んでる感じ、エナジー管理でも戦略を巡らせているように見えます。国際映像でも残量たっぷりであることを示す表示が出てますけど、長い直線以外は少々煽られるのを覚悟して貯めてるんじゃないかと思いますね。
それでもノリス優位の情勢は変わらずフェルスタッペンはひたすら煽られる日々。そして52周目、ふたたびノリスがDRSを使って接近し、内側を抑えたフェルスタッペンに対してターン12で外から仕掛けました。抜けるか!
お、押しだした?コース外から抜いた?どっち!?とりあえずノリスが前に出ましたがフェルスタッペンは当然「コース外から抜かれた。」と主張、でもノリスは「自分がエイペックスで前にいた(から突っ込んで押し出してきたフェルスタッペンが悪い)。」と主張は平行線。ジョセフもノリスに同調し、順位を返す必要なんてない、とそのまま3位を走行しました。この一件には審議対象に。また、ノリスはこれ以前に少なくとも2回白線を超えたことが認められており、この件は3回目か、ひょっとしたらもう4回目で追い越しと関係なく別件で5秒ペナルティーの可能性もあります。
ずっとこの2人の争いが映っていたので全然テレビに映りませんでしたが、ルクレールは全く危なげない走りで気付いたら最終周。最後ぐらいちゃんとテレビに映って注目を集めたいんですが、
♪デデーン、ノリス、アウト~。コース外から抜いたということでノリスのは5秒加算のペナルティー。抜いて逃げ得になってたらそれはそれで揉めたでしょうが、現状ノリスはフェルスタッペンを5秒も引き離せてはいません。結局最後の最後までルクレールはほとんど実況解説で触れてもらえない感じになりましたが、今季3勝目・通算8勝目を挙げました。2位にはサインツが入り、フェラーリはアメリカで2006年以来のワンツー達成です。
ノリスは3位でチェッカーを受けたものの、フェルスタッペンが約3.8秒後にやってきたので5秒加算で逆転。正式には3位フェルスタッペン、4位ノリス。これでスプリントも含めてフェルスタッペンの優勝マジックはこの週末で39減少して90となりました。5位にあんまり目立たなかったピアストリが続きました。驚いたことに6位にはピットからスタートしたラッセルが入り、7位にペレス、8位はヒュルケンベルグ。そして9位はPU部品ごっそり交換でビリからスタートしていたローソンで、10位には15位スタートのフランコ コラピントが入りました。
えらく決勝で挽回した人たちはハード→ミディアムの逆順作戦でしたがこれがハマった形。ミディアムでスタートした中団の人はスタート直後の混戦に加え、どうやら17周目に最初に動いたマグヌッセンに対抗するため早めに動いた人が失敗だったという事情もあったようです。その失敗した1人が角田で、後で振り返ったらマグヌッセンは2ストップ、他の人は1ストップで行こうとしていて「え、もう入るんすか!?」となったので持ってる作戦と行動がかみ合わなくなってしまった模様。
角田に関しては1ストップにしては距離は長いわ、前には詰まるわ、となったところにラッセル同様押し出しペナまで食らい、そしてなぜかローソンにオーバーカットされて自分の目の前でチームメイトがピットを出て来たので焦ってしまい、最後はスピンで自滅したような流れでした。ローソンが大きく評価を上げたことは想像に難くないので、角田はここで焦って失敗を重ねるか、冷静に取り返すか、3連戦なのですぐにその結果を問われることになります。
逆にハードでスタートした人たちはわりと早いこと道が空いてくれたので走りやすく、ミディアムで20周走るとどうなるかはスプリントで知っているのでわりと戦略が立てやすい環境、かつ路面温度が高かったこともあってハードで上手いことレースを組み立てられたようですね。ラッセルは車そのものは速いとはいえ、押し出しによる5秒加算を消化してなお6位ですからよく追い上げたものです。ハミルトンも事故ってなければハードスタートでしたから同じぐらいは期待できた、ということですね。
メルセデスは2人とも同じ場所でいきなり後ろのグリップが抜けて回って飛び出しましたが、元々この車は車高をベッタベタに下げてダウンフォースを無理やり捻りだしてる感じの設計だと思うので、高速で右から左へ大きく転舵するターン18~19の姿勢変化と風向きや一瞬の底打ちが影響してダウンフォースが消えちゃう魔の瞬間みたいなものがあったんじゃないかな、と素人目に感じました。
今回はペナルティーがかなり目立ちましたが、やはり気になるのは最後のノリスとフェルスタッペン、私は最初に見た瞬間は「またフェルスタッペン押し出しおった」と思ったんですが、リプレイの車載映像を見たら「うーんと、これコース外から抜いてるって言った方がいいな^^;」と感じ、実際そう判定されました。以下私なりの解釈です。
ノリスはブロックで内側に行ったフェルスタッペンを抜くために当然外から仕掛け、深いブレーキで外に並びかけて外外ラインの並走で前に出ようという動きでした。方やフェルスタッペンも深いブレーキで、ライン取りだけで言えば彼のラインは相手に1台分の場所を残していない、残さずに曲がることができないラインと車速になっていたと思います。え?じゃあやっぱり押し出してるやん、いやいやもう少し続きがあります。
ノリスの走り方も『フェルスタッペンがラインを残す気が無いから回避のため外へ出た』という感じではなく、『白線内にとどまったままで旋回できない速度』で進入していたように私には見えました。つまり、フェルスタッペンが当たり判定の無いゴーストで回避する必要性ゼロだったと仮定しても、ノリスはコース外に出ていたのではないか、と私は思いました。ひょっとしたらスチュワードもその点を重視したのかもしれません。
ノリス陣営はしきりに無線で『自分がエイペックスで前であった』ことを主張し、一方でフジテレビ解説陣は『エイペックスで前だったのはマックスだから間違えている』という話になっていました。
ただ、エイペックス先行論というのは判定の一要素でしかありません。止まれないミサイルブレーキでも一瞬を切り取ったらその人はエイペックスでは前にいます。じゃあミサイルした人は優先権があって避けなかった人が悪いのかと言ったらもちろん違います。あからさまなミサイルではなかったとしても、単体で相手の進路を残すだけの車速と角度を満たせないような条件での進入であれば、エイペックス先行論が判定根拠とはならない場面は存在すると思います。ですのでここだけ見て「マックスの方が正しいよね」という解説になるのは正確ではないと私は考えます。
とはいえ、さっき書いた通り今回のケースではノリス側もコース内で並走できる走り方ではなかったと私は考えました。それはつまり『コース内で留まれる走り方をすれば減速開始は手前になり、ターンのエイペックスにはフェルスタッペンが先に付いていたのでノリスには優先権が無かった(≒斜め後ろから入って自らコース外へ向けて車を置かない限り並走関係には持ち込めなかった)』ことになるので、エイペックス論はここまで遠回りして考えて有効、という結論になるのかなと思います。
そもそもターン12のような形状の場所で外側から減速を経て並走に持ち込むのはかなり難しく、ノリスはどちらかというと『フェルスタッペンがどうせ押し出してくるから、押し出されたような動きになって被害をアピールしつつ前に出られる』というような走り方を意図的に探してしまったのかな、と思いました。サッカーで反則行為を受けたフリをして倒れる演技をする『シミュレーション』と呼ばれる行為がありますが、これに近い印象を受けました。
・1周目セーフ論、やめませんか?
ノリスがこうした走り方に至った要因は明らかに1周目のターン1だったと思います。ここではノリスは内側に1台分だけの場所を残し、フェルスタッペンはその隙間に入って、なおかつ深く入ったのでノリスは単独であれば曲がれるはずのターンを曲がることができずコース外に押し出されたと言える動きだったと思います。
ただ、F1では数年前から『ドライバーにレースをさせろ』という声に応じて『とりわけスタート直後を含め1周目の争いで起きた問題に関しては厳しく判定しない』という方針があり、おそらくこれに従ってターン1の件も審議対象となっていないと思います。フェルスタッペンのこの押し出しは2021年にハミルトンと激しくやり合ったころにお互いに繰り出していたもので、むしろチャンピオンを争う2人がやってるからイチイチ水を差すことが嫌で、というか本音は水を差したと運営が批判されるのが嫌でドライバー任せがより強まってしまった印象があります。
しかし『1周目を厳しく取らない≠1周目は何をしても良い』ではないはずで、取るべきものはきちんと違反であると示すべきではないかと思います。本来1周目を厳しく見ないというのは、前の車を狙って突っ込んだけどV字ラインの別の人がいて当たっちゃいました、とか、並走しようと思ったんですけどタイヤが冷えてるからラインがタイヤ1本ズレて当たっちゃいました、とか、右から仕掛けようとして好スタートしてる右後方の人に気づかずコース外に押してしまいました、とか、混戦だしそりゃ仕方ないよね、というものを少し大目に見るものだと思います。
1位と2位が1コーナーでサシで勝負して、2位の人が全然止まれないラインで押し出して1位になりました、1周目だからいいですよね、というのはこれとは全然違います。ましてや世界最高峰のレースで現チャンピオンが平然とそれを繰り返すようでは、他の選手も、F2もF3もF4も、カートも、世界の若い人がみんなマネして「フェルスタッペンがやってるからいいでしょ」と言い出すことになりかねません。
『ドライバーにレースをさせろ』とは言っても、押し出しを厳しく判定したらレースできないんでしょうか?世界から集まった精鋭の20人がそんな程度でレースできないわけがなく、最低限守るべき部分はきっちりと締めないといけないと思いますし、逆にそれをやらないのなら1周目は舗装されてればコース外走行も自由にするぐらいしておかないと釣り合いが取れないのではないかと思います。そもそも、1周目は良いのでAさんの追い抜きは有効です、でも全く100%同じ動きですけど残り3周のBさんはダメです、って追い抜きに対する価値に差がありすぎる気がします。
ノリスは1周目や過去のフェルスタッペンの動きから「どうせ押し出すんでしょ」というのが先にあり、その対処法としてうまく交差させて釣り出すのではなく『最悪そのままコース外から行ってしまえ』というちょっとヤケになったような走り方を選んだしまったのかなと見え、これはやっぱり焦りや経験の少なさもあるだろうと思いました。オースティンはターン12をきっかけにその先もかなりラインの交差を繰り返す設計にわざわざしてありますし、自分の方が速い状況が続いていたわけですから、ターン12をきっかけにそこから先を勝負にする引き出しが必要だったろうと思います。
ただそれとは別に、1周目寛容方針を続けていると心理的に誰を問わず『ヤケクソオーバーテイク』をしようという発想に至りやすくなる気がしますし、それは競技としての質を全体に下げるものになります。シーズン途中にいきなり方針を変えると問題なので今季は仕方ないですが、さすがに来年はもう少し運用を考えていただきたいと改めて思いました。ってこれたぶん2021年からずっと言ってると思いますけどね。
さて次戦はメキシコ、決勝レースは日本時間で朝の5時です。私は録画でゆっくり観戦しますw
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