2024 AUTOBACS SUPER GT Round6 SUGO GT 300km RACE
スポーツランドSUGO 3.586km×84Laps=301.224km
オートバックス スーパー GT、本来なら9月頭に鈴鹿サーキットで第5戦が開催されるはずでしたが台風10号(シャンシャン)の影響で12月に延期されました。そのためおよそ1ヶ月ぶりとなる菅生が第5戦となります。SUPER GTでは中止・延期の大会もそのまま従来通りの数字で『ラウンド◯』と表記するので、このレースは公式には『第6戦』、最終となる12月の鈴鹿が『第5戦』と表記されますが、当ブログではややこしいのと万一中止が増えてくるとワケが分からなくなるので開催順に表記します。公式サイトのポイント表も第5戦を空欄にして先に右端まで埋まって行くので、後年確認する際にややこしいと思うんですよねえ・・・
来ましたトムスワンツー。auトムスはさすがに4位まで下げてレースを終えたものの、厳しいサクセスウエイトを考えれば大成功と言える結果で坪井/山下組が1位を維持、笹原/アレジ組が1点差で続くのでもう点差は無いと言って良いでしょう。ただこれでオートポリスは両者とも最大燃料流量が大きく絞られて物理ウエイトもほぼ最大、普通に考えたら入賞すら厳しい条件です。
蒲生/篠原組が15点リード。muta Racing GR86 GT・堤 優威/平良 響はSCが出る前にピットに入ったこともあってリードラップに残れず、1周遅れの中で最上位の8位。3点しか追加できなかったので2連勝したレオンに一気にひっくり返されました。GT300はサクセスウエイトの上限が50kgになっているので、どれだけ点数を稼いでもレオンAMGを含む選手権上位8台のウエイトは次戦も50kgのまま、そして50点を既に超えているレオンAMGはハーフハンデのもてぎも50kgのままであることが確定です。シーズンはもう50kgと0kgの2パターンしかありませんw
スポーツランドSUGO 3.586km×84Laps=301.224km
GT500 class winner:Deloitte TOM'S GR Supra 笹原 右京/Giuliano Alesi
(TOYOTA GR Supra GT500/TGR Team Deloitte TOM'S)
GT300 class winner:LEON PYRAMID AMG 蒲生 尚弥/篠原 拓郎
(Mercedes AMG GT3/K2 R&D LEON RACING)
オートバックス スーパー GT、本来なら9月頭に鈴鹿サーキットで第5戦が開催されるはずでしたが台風10号(シャンシャン)の影響で12月に延期されました。そのためおよそ1ヶ月ぶりとなる菅生が第5戦となります。SUPER GTでは中止・延期の大会もそのまま従来通りの数字で『ラウンド◯』と表記するので、このレースは公式には『第6戦』、最終となる12月の鈴鹿が『第5戦』と表記されますが、当ブログではややこしいのと万一中止が増えてくるとワケが分からなくなるので開催順に表記します。公式サイトのポイント表も第5戦を空欄にして先に右端まで埋まって行くので、後年確認する際にややこしいと思うんですよねえ・・・
サクセスウエイトは『そのシーズンの何戦目か』が影響するので、最終戦に回った鈴鹿が全戦参戦車両ならハンデ無しの素体勝負となり、12月開催と相まって予選ですごいタイムが出る可能性があります。逆に本来ハンデ無しレースのはずだったもてぎには半分のウエイトが残るのでブレーキにより厳しくなり、そして一番キツイのは本来ハーフハンデだったオートポリスが『シーズンで最も重い』レースになったことでしょうか。各陣営ともある程度のシミュレートをしていたと思いますが、また考え直さないといけません。あとタイヤ屋さんは12月に使えるタイヤを作るという今まであんまりやってない仕事が待っています。
そんなわけでやってきたスポーツランドSUGO、お馴染みスゴウマモノさんが棲んでいるらしい高低差のあるサーキットですが、日本列島は9月とは思えない猛暑続き。9月20日には静岡市で最高気温39.2℃を観測するなど、全国143か所の観測地点で最高気温35℃以上の猛暑日を観測するという理解不能な状況です。たぶん各陣営とも菅生のレースとしても過去最も作動温度領域の高いタイヤを発注したと思われますが、結果としてそれどころではないレースの環境となってしまいました。
・予選制度変更
今年からタイム合算制度となった予選、やってみたら色々と問題点や現場・お客さんの反応が出てくるので手直ししつつ運用してきました。そしてこのレース、というか本来は鈴鹿からだったんですが、また制度変更が行われることになり、今年の目玉規則であった『予選のQ1から決勝のスタートまでを1セットのタイヤで走る』という仕組みが破棄されました。
タイム合算制度は維持されたものの予選でQ1、Q2それぞれに新品タイヤを投入することが可能となり、決勝のスタートで使うのは抽選でいずれかのタイヤに決定されます。つまりタイヤの運用方法自体は去年までと同じになりました。規則上では一応Q2まで同じタイヤで走ってしまうこともできるし、2輪だけ継続して2輪は新品というやり方も可能ではあります。1セットで走り切った上で決勝のスタートは使っていない側のタイヤが抽選で選ばれれば新品タイヤでスタートできますが、確率が半分で運任せな上に予選順位を確実に捨ててるので、やる価値があるのは『どうせ俺たちはどう足掻いても予選ビリ近辺だ』とわり切れる人だけ、事実上はいないでしょう。
またGT300クラスではQ1の組分け方式が廃止されて全車一斉走行に変更、グループ分けでのタイム合算方式は公平性の問題があるので公平性を担保しに行った形です。振り返ると、そもそも組分けは台数の多いGT300で全長の短いSUGOを走ったらあっちこっち渋滞だらけで不満が多かった、運の要素が絡んでしまい平等ではない、という考えから導入され、それが後に年間通じた制度として固定された経緯があります。
個人的には1周の長いコースにまでしれっと組分け制度が拡大されたのはあまり好みではなかったんですが、それはおいといて『公平性を求めた結果生まれた』組分け制度が、別の『公平性を理由に取りやめられる』というのも皮肉なもんだなと思いました。で、これで今回の予選が混みまくったら運営さんはどうするんでしょうね?
・練習走行
酷暑はどこへやら、東日本を中心に秋雨前線の停滞による大雨が各地で記録され、残念ながら菅生もかなりの雨模様。天気予報もよろしくなくてひょっとしたら予選は中止になるんじゃないか、という懸念があったので事前に『予選が中止の場合は練習走行の記録が決勝順位を決める可能性がある』ことが確認されていたようです。
というわけで悪条件にも関わらず2クラス混走でみんなとりあえず必死に走行、ただかなりの路面水量、しかも路面温度も低いのでまともに走ることすらかなり難しく、あっちこっちで色んな人がスピンしまくるわ雨脚が強まるわでレッド フラッグ計6回の赤旗大安売り。
中でもGreen Brave GR Supra GT(50kg)はコースに入って早々、吉田 広樹がSPコーナー出口でアクセルを踏んだ瞬間いきなり滑ってクラッシュ。あちこち壊してしまった上に、予備が無い後部のカウルが修理不能な壊れ方をしたためこの時点で決勝に出走不可能となることが発表されました。
・予選
とりあえずGT300クラスの予選開始前にまではこぎつけましたが、開始が10分遅れると発表されて運営車両が確認走行を行っている間にもどんどん雨脚が強まって状況が悪化。結局予選を開始することができないまま中止が発表され、決勝のスタート順位は事前の協議に従って練習走行の記録が採用されました。練習走行の中でも特に路面状況がマシだった時間帯に引っかからずに走らないといけなかったのでなかなか狭き門でしたが、GT500クラスは
そんなわけでやってきたスポーツランドSUGO、お馴染みスゴウマモノさんが棲んでいるらしい高低差のあるサーキットですが、日本列島は9月とは思えない猛暑続き。9月20日には静岡市で最高気温39.2℃を観測するなど、全国143か所の観測地点で最高気温35℃以上の猛暑日を観測するという理解不能な状況です。たぶん各陣営とも菅生のレースとしても過去最も作動温度領域の高いタイヤを発注したと思われますが、結果としてそれどころではないレースの環境となってしまいました。
・予選制度変更
今年からタイム合算制度となった予選、やってみたら色々と問題点や現場・お客さんの反応が出てくるので手直ししつつ運用してきました。そしてこのレース、というか本来は鈴鹿からだったんですが、また制度変更が行われることになり、今年の目玉規則であった『予選のQ1から決勝のスタートまでを1セットのタイヤで走る』という仕組みが破棄されました。
タイム合算制度は維持されたものの予選でQ1、Q2それぞれに新品タイヤを投入することが可能となり、決勝のスタートで使うのは抽選でいずれかのタイヤに決定されます。つまりタイヤの運用方法自体は去年までと同じになりました。規則上では一応Q2まで同じタイヤで走ってしまうこともできるし、2輪だけ継続して2輪は新品というやり方も可能ではあります。1セットで走り切った上で決勝のスタートは使っていない側のタイヤが抽選で選ばれれば新品タイヤでスタートできますが、確率が半分で運任せな上に予選順位を確実に捨ててるので、やる価値があるのは『どうせ俺たちはどう足掻いても予選ビリ近辺だ』とわり切れる人だけ、事実上はいないでしょう。
またGT300クラスではQ1の組分け方式が廃止されて全車一斉走行に変更、グループ分けでのタイム合算方式は公平性の問題があるので公平性を担保しに行った形です。振り返ると、そもそも組分けは台数の多いGT300で全長の短いSUGOを走ったらあっちこっち渋滞だらけで不満が多かった、運の要素が絡んでしまい平等ではない、という考えから導入され、それが後に年間通じた制度として固定された経緯があります。
個人的には1周の長いコースにまでしれっと組分け制度が拡大されたのはあまり好みではなかったんですが、それはおいといて『公平性を求めた結果生まれた』組分け制度が、別の『公平性を理由に取りやめられる』というのも皮肉なもんだなと思いました。で、これで今回の予選が混みまくったら運営さんはどうするんでしょうね?
・練習走行
酷暑はどこへやら、東日本を中心に秋雨前線の停滞による大雨が各地で記録され、残念ながら菅生もかなりの雨模様。天気予報もよろしくなくてひょっとしたら予選は中止になるんじゃないか、という懸念があったので事前に『予選が中止の場合は練習走行の記録が決勝順位を決める可能性がある』ことが確認されていたようです。
というわけで悪条件にも関わらず2クラス混走でみんなとりあえず必死に走行、ただかなりの路面水量、しかも路面温度も低いのでまともに走ることすらかなり難しく、あっちこっちで色んな人がスピンしまくるわ雨脚が強まるわでレッド フラッグ計6回の赤旗大安売り。
中でもGreen Brave GR Supra GT(50kg)はコースに入って早々、吉田 広樹がSPコーナー出口でアクセルを踏んだ瞬間いきなり滑ってクラッシュ。あちこち壊してしまった上に、予備が無い後部のカウルが修理不能な壊れ方をしたためこの時点で決勝に出走不可能となることが発表されました。
・予選
とりあえずGT300クラスの予選開始前にまではこぎつけましたが、開始が10分遅れると発表されて運営車両が確認走行を行っている間にもどんどん雨脚が強まって状況が悪化。結局予選を開始することができないまま中止が発表され、決勝のスタート順位は事前の協議に従って練習走行の記録が採用されました。練習走行の中でも特に路面状況がマシだった時間帯に引っかからずに走らないといけなかったのでなかなか狭き門でしたが、GT500クラスは
1位 KeePer CERUMO GRSupra(50kg) 石浦 弘明/大湯 都史樹
2位 ENEOS X PRIME GR Supra(37kg/-1) 大嶋 和也/福住 仁嶺
2位 ENEOS X PRIME GR Supra(37kg/-1) 大嶋 和也/福住 仁嶺
3位 WedsSport ADVAN GR Supra(6kg) 国本 雄資/坂口 晴南
4位 au TOM'S GR Supra(48kg/-2) 坪井 翔/山下 健太
5位 MARELLI IMPUL Z(38kg) 平峰 一貴/ベルトラン バゲット
6位 Modulo CIVIC TYPE R-GT(14kg) 伊沢 拓也/大草 りき
6位までに3メーカーが入りましたがトップ4はGRスープラ、そしてヨコハマとダンロップを装着した車両も入っており普段とは状況が異なります。また、路面が最もマシな時間帯に出した記録とはいえ、大湯が記録した1分24秒980は通常のドライ コンディションから比べると120%に近いタイム、記録を出した直後にGT300車両が相次いで飛び出して赤旗になっており、普通の尺度で考えたら無茶苦茶酷いコース状況でした。120%って言うともうレースができるギリギリぐらいなので、最もマシな条件がヘビー ウエット、それ以外はホントコースにいるだけで精いっぱいだったことが推測できます。実際、相棒の石浦が記録できたのは1分37秒201でした、本人も「あんまり仕事した感は無い」とかw
一方GT300クラスは
1位 シェイドレーシング GR86 GT(0kg) 平中 克之/清水 英志郎
2位 SUBAR BRZ R&D SPORT(6kg) 井口 卓人/山内 英輝
3位 D'station Vantage GT3(50kg) 藤井 誠暢/チャーリー ファグ
4位 Studie BMW M4(38kg) 荒 聖治/ニクラス クルッテン
5位 PONOS FERRARI 296(14kg) ケイ コッツォリーノ/リル ワドゥー
6位 Syntium LMcorsa GR Supra GT(2kg) 吉本 大樹/河野 駿佑
タイヤ屋さんで見ると1位からミシュラン、ダンロップ、ダンロップ、ミシュラン、ミシュラン、ダンロップ。7位以降もダンロップ、ブリヂストン、ブリヂストン、となって権藤権藤雨権藤な感じ。ヨコハマの最上位は10位のapr GR86 GT(0kg)まで出てきません。昨年まで存在したGT500クラスのミシュランは路面水量が多い場面を切り捨てたような大胆な溝の彫り方で知られ、実際路面がある程度乾き始めた時間帯で無類の強さを誇りましたが、GT300のミシュランは元々そんな尖ったものではなく雨の条件では万遍なく強い印象です。
なお平中が記録したのは1分29秒389、通常のSUGOならGT500とGT300は1周で7秒ほどタイム差があるんですが、今回は4.4秒の差。ドライから見た落ち幅も115%程度とGT500ほど酷くはありませんでした。どういう路面水量の時に走ったのかで記録が大きく左右されるので、平中の相棒・清水が出した記録はGT500の石浦先生より速いタイムでした。
雨が酷くなるとタイヤの幅が広いGT500は面圧が足りない上に、元々空力で垂直荷重をかけて上から潰して走る車なので速度が落ちると荷重が足りず、荷重が足りないと熱が入らず、熱が入らないとグリップせず、グリップしないと速度が上がらず、速度が上がらないとダウンフォースがかからず、ダウンフォースがかからないと・・・の無限ループになります。かつてBRZがコーナリング性能をさらに上げようとしてGT500と同じサイズのタイヤにしたら雨のレースでこの無限ループにハマったことがあったと記憶しています。
ここからは想像ですが、ウエット タイヤは規則で溝のパターンが各メーカーとも年間1種類とされているので、素材側の工夫によっていわゆるソフトやハードといった使い分けをし作動温度領域を変化させることで路面温度と路面水量に合わせていくことになります。猛暑のレースを予想すると、普通は雨が降ってもだいたい『湿気がちな雨が降り続いて、路面温度もそこそこだけどなかなか乾かない』『一時的に大降りになってすぐ乾く』といった状況の方が想定されると思います。
しかしこの週末は『気温が低い上に土砂降りを含んでほぼずっと雨』の状態なので、たとえハードとソフトの2種類を持ってきたとしても、ハードだと作動温度領域が高すぎて全然温まらない、ソフトは極端な大雨にはさすがに対応できないし、作動温度領域としては適正でもちょっと路面の水が減ってきたら表面がすぐ加熱して傷むので、下手すると『良い具合に使えるタイヤが無い』みたいなこともあるんじゃないかと思いました。
・決勝
幸い大きな雨雲は午後から東へと離れていく予報だったので、決勝は予定時刻を繰り下げて開催。当初13時30分開始だったものを1時間繰り下げ、それを天候を見て15分巻き戻し、しかし決勝前のウォームアップ走行で赤旗が出て時間が押したので7分繰り下げられ、結局52分遅れの14時22分に開始となりました。開始時点では雨は上がっています。このウォームアップではapr GR86がクラッシュしましたが、決勝までになんとか修理しました。
スタート担当選手はGT500の上位が石浦、大嶋、国本、坪井、バゲット、伊沢。GT300は清水、井口、藤井、クルッテン、コッツォリーノ、河野となりました。クルッテンコッツォリーノコウノ、ってなんか全部カ行で始まってリズム感も良いな、とかしょうもないこと思ったりw
GT300クラスでは16位のUPGARAGE NSX GT3(8kg)と18位のグッドスマイル 初音ミク AMG(50kg)の2台だけスリックを履いて出ましたが果たして・・・
まだ路面には水が多いのでSCスタート、3周の先導を経て4周目にリスタートされました。石浦はSPコーナー出口から加速を開始、すると2位の大嶋は全然タイヤが作動していないようでついていけず、いきなりターン1から立て続けに後続に抜かれてしまい数周で6位まで転落。逆に目覚めが早いらしいのは坪井で5周目には既に2位となりました。大嶋はほぼ間違いなくハードだろうなあ。
一方GT300は9周目には清水、コッツォリーノ、クルッテンとミシュランのトップ3が完成。スリック組は全くタイヤが作動せず既に周回遅れ、さらにまた強めの雨が降ってきてもう絶望的です、とりあえず事故らないようにだけお願いします。というか2周したぐらいの状況で諦めて損切りした方が良かったような気がします。
ポノス296・コッツォリーノはシェイドGR86・清水を追い上げ13周目の馬の背〜SPコーナーで見事に一発で追い越し完了、操縦安定性も高いという296 GT3が早々にリードを奪いました。雨の条件ならそもそもミッドシップの方がそれなりに強みがありそうです。
GT500は坪井のペースが非常に良くて石浦を追い上げ、16周目のシケインで石浦が少しGT300に引っかかった隙を見逃さずに坪井が懐に飛び込みました。選手権リーダーauトムス、容赦なくリードを奪いそのまま一気に差を広げます。この動きを見ていると坪井のタイヤはやや柔らかい方向性かなあと思いますが、同じブリヂストンスープラの中でそんなに何種類もあるとは思えないので、たぶん上位勢は同じタイヤと想像。それなら坪井選手のタイヤの使い方やチームの内圧設定・セッティングが一歩抜け出ていることになります。
しかしそのまま坪井無双、ともなりません。20周が経過するころにはおそらく各自のタイヤの状況がかなり変化してきているようで、ハードでスタートして最初は苦労していたんじゃないかと思われるエネオス・大嶋が2位まで順位を挽回。さらに10位スタートのAstemo CIVIC TYPE R-GT(44kg)・塚越 広大が3位、14位スタートのDeloitte TOM'S GR Supra(39kg/-1)・笹原 右京が4位と急伸。ハードを履いて序盤苦労した人が報われているっぽい流れです。
23周目、3位に落ちていたシェイドレーシングGR86に右後輪の脱輪という大問題が発生。最終コーナーを車輪が転がって横断しましたが、幸いにして二次災害は免れました。シェイドはピットに戻ったもののリタイア、ハブが壊れて脱輪したようです。この脱輪を見てHOPPY Schatz GR Supra GT(0kg)・佐藤 公哉がギャンブルでピットに入りスリックに交換しますが、結局FCYすら出なかったので完全に空振り。そしてこのホピ子がGT500の25周目にクラッシュしてしまい、ギャンブルを仕掛けた側がSCを呼んでしまいました。
隊列整理を終えて32周目にリスタート、一時増加した雨はほとんど止んでおり、ここならドライバー交代できる周回数ですがレースの終盤にスリックに繋ぐと予想するならそこまで我慢した方が良いので難しい状況となります。とりあえずリスタートのタイミングでGT500は2台がピットへ。主流はやはり様子をもう少し見ておいて2ストップになるのは絶対に避ける戦法の様子。
GT500は再開後すぐに大嶋が坪井を狙いますが、さっきタイヤを換えて出てきたDENSO KOBELCO SARD GR Supra(38kg)・中山 雄一がちょうど良い感じに2人の間に挟まって大嶋の邪魔になってしまい抜くことができません。35周目になってようやく中山のペースが上がり、自力ラップ バックする形でいなくなってバトル再開。
かなり追い込まれつつもうまーーいこと抑えている坪井、すると37周目に大嶋がちょっと距離を詰めすぎて追突しそうになり失速しました。その隙を笹原がついて2位となり、馬の背で坪井も抜いて、というかさすがにチームメイトなので譲った感じで1周で2台抜きに成功、笹原がリーダーとなります。坪井はこのあとすぐ4位まで後退、うまくタイヤを使ってきたけどさすがに落ちた感じでしょうか、路面が乾いてくると高回転域で燃料流量が下がっている影響も大きくなります。
GT300ではいくつかのチームがスリックへの交換を開始していきますが、38周目に入ったGAINER TANAX Z(2kg)・石川 京侍がレインボーコーナーで飛び出してクラッシュ。ガチンとガードレールに当たって跳ね返って芝生上で止まり、自力で出れそうにも見えるのでSCが出るのか出ないのか微妙な感じですが、出たら大変なので大半のGT500車両が一斉にピットへ、ここでドライバー交替とスリックへの交換を行います。狭いピットなので当然混雑。
Zは現場から動かないですがとりあえず運営の判断はFCY。FCY中もスリックでうなだれているGT300車両がいるので、急いで換えたGT500勢は現場の処理がすぐ終わってFCYが早期に解除されるとけっこう不安だったと思いますが、結局ゲイナーZは全く動かなかったのでFCYでは回収作業ができないと判断、SCに切り替わりました。FCYで終わってたらサバイバルになったかもなあ、とちょっと残念な気持ちも()
GT500はまだピットに入っていない2台が前に残っていて、3位にいるデロイトトムス・ジュリアーノ アレジが実質の1位。続く実質2位はエネオス・福住だったんですが、SC中に事故処理現場手前のレインボーコーナーではみ出してしまい、これは危険行為に該当するのでペナルティーを受けて後退することになります。チームがタイヤの内圧を下げすぎたために、まだ濡れている条件ではゆっくり走るだけでもかなり難しかったとのことでチームは福住の責任ではないとかばいました。また、アステモシビックもピットに入る際に置いていた車輪を撥ねてしまったのでペナルティーを受けました。映像を見直したら確かに跳ね飛ばしてますね^^;
GT300の方もけっこうなチームがゲイナーが止まったのを見てピットに入り、リーダーだったポノス296もちょうどこのタイミングでピットに入れたので速さに加えて幸運もゲット、ドライバー交代をしてなおポノス296・ワドゥーが見た目でも実質でも1位です。ただ、これに続く2位は15位スタートだったLEON PYRAMID AMG(50kg)・篠原 拓郎になっています。1回目のSCの段階で既に6位にいたレオンAMGですが、ポノス296から約10秒遅れてピットに入った直後にFCYが出る滑り込みでドライバー交替を済ませていました。
結果としてはこの2台だけはピット作業の間にコース上の車両に速度制限がかかったので『FCYの恩恵をほぼ目いっぱい受ける』ことができ、一方でそれ以前に飛び込んだ人たちはSC前に義務を消化はできたけどコース上の時間的な利益は得られませんでした。このSCのタイミングとピット サイクルとの兼ね合いでGT300では9位以下が周回遅れになってしまい、リード ラップ車両が8台しかいなくなっています。
特にGT300はこういうことが起こりやすいので、観戦の際には隊列整理を利用してどこまでがリードラップなのか判断したいんですが、最近のJ SPORTSの中継は隊列整理の時間をダイジェスト映像で埋めてしまうので、実は個人的には『それならリードラップ車両の整理して教えてくれ~』と思っていますw
50周目にリスタート、リスタート直後はさすがにまだウエットが少し速い条件だと思いますが、事実上の先頭を行くアレジはウエットを履いている中山を防御しつつ後続を引き離します。どうせウエット勢はまた雨が降らない限り勝負権が無いので先に行かせても良いのでは?と思っていましたが、先に行かせるまでもなくウエットは苦しくなって順位を下げていきました。急募・雨男。
一方GT300はワドゥーに対して篠原が猛攻撃、さっきまでの雨と違ってこういう雨上がりの路面になったらやはり強いのはブリヂストンとみられ、しかもワドゥーはこのサーキットは初めての走行ですから条件としてはやはりレオンが格上に見えます。果たして耐えられるか。
雨上がりのスリックで縁石は危ないから乗らない、というセオリーは気にせず数カ所でガンガン縁石に乗せて曲がるワドゥー、自信を持って走っているように見えます。追いかける篠原は常にワドゥーよりもタイヤ1本コースの内側を走って確実に安全について行っている様子。この走り方で付いて行けてるんだから、いずれどこかで機会は訪れるのを待てば危険を冒す必要は全くない、変にラインを外して抜きに行っても自滅する、という意識が走りから感じられます、まさに好対照。
延々と続くこの争い、映像を見ているとワドゥーは真後ろに付かれたときに低速コーナーではほんの僅かに加減速のタイミングをズラし、なんというか篠原のドライビングの軸を外しているようにも見えます。前に周回遅れが見えたら安易に詰まらないよう距離感も調節しており、正直ずっとGT300で優勝争いしている選手かと思うぐらい巧みに見えます。
しかしちょっと車がタイトなのか、最終コーナーでどうしても蒲生と比べて脱出速度で負け始めているのはカバーしきれず、GT500の72周目・残り13周あまりとなったところでとうとう陥落。最終コーナー出口で完全に内側に並ばれてしまい、ターン1でさっと引いて蒲生がリードを奪いました。この争いは今シーズンの中でも特に印象的なバトルだと思います。
その間もGT500はアレジが独走、雨のアレジに続くのはリスタート時点では実質4位(交代義務未消化、ウエット勢、ペナルティー勢を除いた数字)だったキーパーセルモ・大湯。しかし59周目に大湯が2位に上がった時点では9秒ほどの差だったものが17秒以上にまで開いているので、アレジはもう危険を冒すこともなく自分のリズムで走れば良いだけになっています。
結局アレジは大湯に20秒近い差を付けて圧勝、デロイトトムスGRスープラ・笹原/アレジ組が第3戦鈴鹿に続く今季2勝目を挙げてチャンピオン争いで一気に上位戦線に浮上しました。2位のキーパーセルモに続いて3位にはあんまり目立たなかったけどマレリインパルZ、これが今季初の表彰台でした。
GT300もリードを奪った後の篠原は安心して見られるレースで、レオンピラミッドAMG・蒲生/篠原組が前戦富士に続く2連勝を達成。ドライバー選手権ではぶっちぎりの1位に浮上しました。4秒差で2位にポノス296、Dステーションヴァンテージが20秒以上離れた3位で今季2度目の表彰台です。また、脱毛ケーズフロンティアGO&FUN猫猫GT-Rが15位に入り、これは富田 竜一郎がスポット参戦で登場した2021年開幕戦・岡山で12位になって以来の好成績でした。今回は井田 太陽/柴田 優作の組み合わせでしたが井田選手は自己最上位かも?
・GT500振り返り
雨上がりのレースですが、GT500は結局タイヤ選択がレースの結果に大きく影響するという良くも悪くも通常通りの感がありました。事後情報ではやはりスタートのタイヤでauトムス、キーパーセルモあたりはミディアム(ソフトではないらしい)、デロイトトムスなどはハードを選択し、その中でもセルモは発熱を早めるような内圧設定にしたので落ちが来るのが早く、トムスは長持ちさせられたようです。
下位スタートの人たちがハード側を選ぶのはある程度分かりますが、2位のエネオスルーキーがハードを選んだのはなかなかの英断でした、FCY中のスピンが非常にもったいなかったですが良いレースだったと思います。トムスは2台体制なので作戦を分けるという考え方も比較的しやすい立場ではあったかなと思いますが、後半のスリックでのアレジの走りを見てもこの想定外の寒い条件でしっかりと機能する車に仕上がっていましたから、エンジニアとドライバーの方向性がかみ合った鈴鹿からの好循環は偶然のものではなく続いているように見えます。ドライバー選手権は
来ましたトムスワンツー。auトムスはさすがに4位まで下げてレースを終えたものの、厳しいサクセスウエイトを考えれば大成功と言える結果で坪井/山下組が1位を維持、笹原/アレジ組が1点差で続くのでもう点差は無いと言って良いでしょう。ただこれでオートポリスは両者とも最大燃料流量が大きく絞られて物理ウエイトもほぼ最大、普通に考えたら入賞すら厳しい条件です。
追いかけるSTANLEY CIVIC TYPE R-GT・山本 尚貴/牧野 任祐は直近のライバルであるauトムスを捕まえられず5位でレースを終えて少しだけ点差が広がる結果に。しかも43点=ウエイト86kgはこれまた燃料流量3段階ダウンなのでトムスと同じ領域、この3車はオートポリスでなんとか1点を争う戦いになっていくと思われます。ただ悩ましいのは、特にトムスはこの持ち点を増やせないと上限近い物理ウエイトで、ちょっと加点して51点を超えると物理ウエイトは15kgほど減らす代わりに燃料流量が下がった状態でもてぎに向かうことになる点。ストップ&ゴーのもてぎでどっちがマシなのか、というのは多少考慮に入れる必要がありそうです。トムスのチームとしては願わくばこれも2台で分かれてくれると良いのかもしれませんが。
・GT300振り返り
練習走行の段階からタイヤメーカーの違いが戦力の決定的な差になっていた感じがありましたが、どの条件でも幅広くチームもタイヤもドライバーも経験があるレオンAMGの優勝はある意味順当かなという印象でした。篠原選手は経歴とすると『F3あたりまでは今のトップドライバーと互角にやりあってたけどちょっとした機会に恵まれなくてその場にいないだけです』みたいな華々しい経歴というよりは、カート、スーパーFJ、FIA-F4あたりのカテゴリーからTCR、GT3車両へと来たコツコツ型の選手だと思いますが、2022年に正ドライバーとなってから特に『あ~、まだまだ経験不足でこれからやな』と思うような場面もなく普通に走っていて、そしてそこから積み上げて堅実で速い選手になっている印象です。
派手にやらかしたエピソードとかが無いので逆に何がどう良くなったのかとかも正直分からないんですが()、メーカー育成選手で固められるGT500クラスとは違った経緯・顔ぶれの選手が活躍する様子を見られるというのも良いものだなと改めて思います。同様の経緯で将来のSUPER GT選手を目指している人たちにも励みになると思いますしね。
そしてその篠原選手を抑え続けたワドゥー選手、女性ドライバーが希少な存在のSUPER GTなので女性として史上初の表彰台!と思ったら過去にもあると放送中に紹介されてさすがに驚きました。全日本GT選手権 1995年開幕戦で、GT2クラス・ランティック スカイラインの岡野谷 純が2位という記録を残しており、これはGT史上唯一の女性による表彰台だったようです。このレースのGT2クラスは参加5台、予選でランティックスカイラインはクラス1位のWAKO'S M3から約13秒遅れの5位という記録でした。
ただ決勝はそのワコーズM3がリタイア、予選2位のタイサンBMW M3もトラブルでもあったのか後ろに回り、ランティックスカイラインは優勝した欧州車販売の外国屋スカイラインから4周遅れながら2位という結果でした、今の時代とは色々と違いますね。そんなわけで30年続くGT選手権史上では2度目の記録ですが、少なくともワドゥーは『"SUPER GT"史上初』であるのは間違いなさそうです。
岡野谷さんってどんな人?そんな初期のGTに出ていたぐらいだから当時としては突出した有名な女性ドライバー?とか思って調べてもあまり出て来ないんですが、『岡野谷 純』で検索すると『NPO法人 日本ファーストエイドソサェティ 代表理事』という肩書きの方がたくさん出てきます。いやいやまさか同姓同名の方でしょう、と思ったらご本人でした( ゚Д゚)
現在は防災・救急の分野で活躍されているようです在日本で女性ドライバーというとjujuこと野田 樹潤が最も話題に上がって有名だと思いますが、彼女の父・野田 英樹が運営するNODAレーシングアカデミーでもファーストエイド担当の講師として岡野谷さんの名前があり、ちゃんとレースの経歴も紹介されていました。
ちなみにこのランティックスカイライン、青色をしたR32型のスカイラインGT-Rなんですが、どうやら1990年の全日本ツーリングカー選手権で開幕から2連勝したカルソニック スカイラインの個体が何らかの流れでプライベーターのこのチームの手に渡って、ほぼJTC時代そのままの仕様で走っていた模様です。GT300で使用された後はニスモに戻されてカルソニック色/スポンサーロゴに塗り直されて展示車両になり、現在富士モータースポーツミュージアムに展示されているのがその個体だとか。鉄道車両でよく聞くような話です^^;
話を現在のレースに戻すと、ワドゥー選手は現在23歳ですが子供の頃はテニスをしていてカートを始めたのは14歳、そこから一気に頭角を現して2023年にはフェラーリのファクトリー ドライバーに選ばれたとWikipediaには書いてあります。そういう話と今回の雨上がり縁石ノリノリ走法を見ると、車の動きに対する反応などにかなり鋭い感覚を持っている選手なのかなと感じました。恐れを知らない感じの走り方で見ていて面白いです。相棒のコッツォリーノ選手もバカっぱやい速さを出すタイプの選手という印象なので、コンビとしてかなり面白いですね。
GT300を振り返らずに女性ドライバーの話ばっかり掘り下げてしまいましたが、GT300のドライバー選手権は
次戦は10月20日、オートポリスで初の3時間レース。最大ハンデ状態でもみんな2ストップで乗り切ってしまうのかどうか、楽しみに待ちたいと思います。
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