NASCAR Cup Series
2位スタートから19位まで落ちたとはいえまだリードラップ最後尾で耐えていたホースバーがスピン、これがトラック上に起因する2回目のコーションでステージ間を含めた通算では4回目です。当然これでリードラップ車両が全員ピットに入りました。しかしここで大損したのはチャステイン、コーションの時にちょうどピットに入っていたため、運悪く周回遅れとしてコーション周回に入ってしまいました。せっかくタイヤ交換を早めて10位以下の状況を脱し9位に順位を上げていたのに、1周の我慢の差でウエイブ アラウンドを受けるしか無くなってリードラップ後方・19位あたりに落ちてしまいます。
ところが3周後、ターン2出口で15位を争っていたブッシャーとギリランドが交錯し、ギリランドがスピンして6回目のコーションとなります。ブッシャーはギリランドに壁側へ追いやられ、壁に当たった反動で今度は逆にブッシャーがギリランドに当たってうまいこと回してしまった感じです。幸いブッシャーに大きな損傷はありませんが「壁に挟まれたなっしー!」と無線で怒りを見せ、クルー チーフのスコット グレイブスも「ああ、全然驚かねえな、あいつ1年じゅう同じことやってるから。」と辛らつ。
3周後にギブスがベリーによって壁に挟まれてしまい、ここから後ろで多重事故発生、7回目のコーション。不運にもウォーレスはこの多重事故に突っ込んでフェンダーがバリバリになりました。レースはまたも仕切り直し、そしてここでも数名は逆転を狙ってタイヤ交換を行いました。その筆頭がカイルで、彼は5回目、6回目、そしてこの7回目と全てのコーションでタイヤを交換し、ついさっき3位まで順位を上げていたのにそれを捨ててのタイヤ交換でした。人と違うことをしないと勝てない!という発想はここ数戦徹底されています。
惜しくも2位で届かずプレイオフ進出を逃したカイルでしたが、レース後は無線で「フォードを祝福するよ、すごいね。」と素直に称え、レース後のインタビューでも勝てなかった苛立ちとは違う、ここ数戦明らかに改善している自身の状況に対する前向きな発言が見られました。先週のデイトナでも最後の場面について「自分にできることはバートンを全力で潰す以外に無かった。」と語り、逆から言えばそこまでの無謀な行為はしなかった(ちょっとディロンを皮肉った?)ことを口にしており、年長者として冷静な振る舞いに見えました。
カイルが正々堂々と勝負しようとしているのは車の動きから感じることができたので、私はチェッカーの瞬間、ブリスコーが想定外の勝利を手にしたことよりもカイルの熱意に感動してしまいウルっと来ました。オリンピック休みの間にチームとして何か見つけたものがあるのかもしれませんが、カイル自身の精神面でもひょっとしたら怪我と、休養と、あとディロンのやらかしを客観的に見て何か思うところがあったのかもしれません。来年、もう1回ゼロからチャンピオン目指しましょう、うちの常連カイル推しメンバーもそんな気持ちになれたのではないかと思います。
未勝利のトゥルーエックスとギブスはステージ優勝とレギュラーシーズン順位での僅かなプレイオフポイントしかなく最下位の2004点でスタート、1勝した以外にプレイオフポイントを得ていない3人が2005点で並んでいます。ラーソンはレギュラーシーズン王者を逃したものの、それでも最多の2040点を持ってプレイオフを開始、4勝とステージ勝利10回はデカいです。
Cook Out Southern 500
Darlington Raceway 1.366miles×367Laps(115/115/137)=501.322miles
winner:Chase Briscoe(Stewart-Haas Racing/HighPoint.com Ford Mustang Dark Horse)
NASCARカップシリーズ、レギュラーシーズンはついに最終戦です。既に13人は優勝によってプレイオフ進出を確定させており残る枠は3。とはいえ実質的には最後の1枠をブッシャー、ウォーレス、チャステインの3人で争うレースになることが予想されます。もちろん未勝利の選手が勝てば一発逆転となり、そうなればギブスも加えた現在15位の位置が当落線になりますから油断はできません。なんといってもダーリントンは500マイルの長い長いレースです。
また、ちょっとした栄誉とプレイオフ ポイントのボーナスが貰えるレギュラーシーズンのチャンピオン争いでは、レディックがラーソンに対して17点差を付けています。3位のチェイスもレディックから18点差、チャンピオンの権利があるのはこの3人だけです。
デイトナほどの博打要素や下剋上は起きないとはいえ、外側の狭い範囲だけバンク角が高いダーリントンはアクシデントの宝庫。最速ラインが大外なので内側はがら空きとなり、そのため抜きたいドライバーは時に無理をして内側に突っ込み、曲がれない分の旋回力は外へせり上がってからバンクになんとかしてもらうという『スライド ジョブ』などと呼ばれる追い抜きも繰り出します。失敗すると自分が壁に突っ込む、相手もろとも事故る、抜いたはいいけど相手の恨みを買って後でやり返される、など色んな危険要素を含みます。
展開次第ではレースの最終盤、無理なスライドジョブがドラマを生む、かもしれません。一応最後の手段として壁走りというのもあるにはあるんですが、よっぽど上手いこと偶発的な事故を装わないとレース後に罰せられるので一番リスクが高いですw
今年5月のダーリントンを制したのはケゼロウスキー、スロウバック スキームでなんと全日本GT選手権のカストロール トムス スープラを模したスキームだったのが印象的でした。本来ならブッシャーが優勝できそうな展開でしたが、レディックが目測を誤った無理なスライドジョブを仕掛けて共倒れしてしまいました。ブッシャーからすると4か月前を思い出して「そもそもレディックがバカなことしなければ俺はプレイオフ争いに巻き込まれていないんだ」と怒りが蘇ってきたことでしょうw
それ以前のダーリントンを遡ると優勝者は時期の近い順からラーソン、バイロン、ジョーンズ、ロガーノ、ハムリン、トゥルーエックス、とバラバラ。現役最多はハムリンの4勝で、2勝しているのがケゼロウスキー、ジョーンズ、トゥルーエックスです。統計的にはスタート順位が5位以内で勝率約60%ですが、ポールからの勝率自体は約17%に過ぎません。
ちなみに記録上ダーリントンで最も下位から優勝したのは43位スタート。ジョニー マンツという選手なんですが、それが記録されたのは1950年・ダーリントン最初のレースでした。43位ってことは最後尾スタート!?と思ったら大間違い、このサザン500には75人が出場していました。Wikipediaによるとマンツは一発の速さは無かったものの摩耗しにくいタイヤを使用してタイヤ交換を繰り返すライバル勢を出し抜き、最終的に2位のファイアーボール ロバーツに9周という大差を付けて優勝、これが彼にとってNASCAR唯一の勝利となっています。ということは第1回サザン500で本当に500マイル走ったのは彼一人だったわけですね、6時間38分40秒かかったそうです。昔の話を調べると色々ぶっ飛んでいて面白いぞNASCAR。
・レース前の話題
8月26日、リチャード チルドレス レーシングがオースティン ディロンに対して課せられたペナルティーを不服として起こしていた最終控訴について審理が行われ、RCR側の主張は退けられて結審しました。最終控訴の審理を担当したビル マリスは
「SMT および IDAS システムから提示されたデータによると、2024年8月11日のリッチモンド レースウェイで行われたレースの最終周で、RCRの3号車が規則違反を犯した可能性が高いことが示されています。」
とし、NASCARが下した"記録上の優勝は維持されるものの、プレイオフ進出要件としての優勝には含めない"などの罰則内容を支持しました。これでディロンがこのレースでの優勝をプレイオフ進出要件として認めてもらう手段が無くなり、彼がプレイオフに進出する方法はこのダーリントンのレースで勝つ以外に無くなりました。もし判定が覆ったら大変だった当落線上の人たちは一安心です。
そして下部カテゴリーから1つ。今年のトラックシリーズでレギュラーシーズンのチャンピオンとなり、現在はプレイオフを戦う伸び盛り・クリスチャン エッケスが来季はコウリッグ レーシングからエクスフィニティーにフル参戦することが発表されました。カップ戦へ昇格するアルメンディンガーの後任でNo.16のドライバーとなります。
・Xfinity Series Sport Clips VFW Help a Hero 200
カップシリーズはレギュラーシーズン最終戦ですが、エクスフィニティーはこれを含めてあと4戦あります。今回のスポンサーは散髪屋さんであるスポート クリップスが旗振り役をしている退役軍人の教育を支援するための奨学金制度みたいですね。
レースはスタート数秒でレツラフがシフト操作ミスから失速しピット上で立ち往生、12周目にはエクスフィニティーのオーバル戦に出たのは5年ぶりとなるロガーノがエンジン故障であっさりとリタイア。さらにライリー ハーブストも13周目に壁にぶつけてパンクし、リーダーだったサム メイヤーも38周目に壁にぶつけて自滅、ステージ1から色々起こりまくる展開になりました。
以後のレースはベルとシェルドン クリードの争い、タイヤがよれよれになったベルを138周目にクリードがかわして勝負あったかと思いましたが、142周目に貰い事故でパンクしたアルメンディンガーがちょっと先を急ぎすぎてド派手にクラッシュ。これでオーバータイムになってしまうとクリードはピット作業で大失敗して3位に転落します。
オーバータイム、バックストレッチでコール カスターがベルを狙おうとして交錯、危うく2台とも事故りかけましたがなんとかベルはこらえて逃げ切りました。冠スポンサーのスポートクリップスを背負ったベルがニューハンプシャー以来今季2度目の出場でまたしても優勝し、エクスフィニティーでは2戦2勝です。
・カップシリーズ
予選
ブッシュライトポールを獲ったのは逆転プレイオフ進出を狙うウォーレス、今季初・通算3度目。そしてウォーレスと並んで1列目に来たのはなんとカーソン ホースバーでした。2列目はチェイス ブリスコーとラーソンで、3列目はトゥルーエックスとレディック。ブッシャーは10位、チェイスは20位、チャステインは22位スタートとちょっと苦しい展開になりそうです。ちなみに予選タイムで言えばウォーレスに次ぐ2番手はラーソンで、ここから0.001秒差でホースバー、さらに0.001秒差でレディックでした。
始まって1分半も経たないうちにいきなりのアクシデント。3周目にバイロンを抜こうとしたトゥルーエックスがミスって姿勢を乱し、ふらついているところにブレイニーが直撃。ベテランらしからぬレース早々の判断ミスでいきなり2人が消えました。トゥルーエックスは1点しか獲れないことがほぼ確定、可能性としてはウォーレス他17位以下の人が優勝した上でブッシャーがそこそこの点数を稼いでしまうと、トゥルーエックスにも脱落の危険性が出てきました。ブッシャーはこの現場の脇をすり抜けていますね。危なかったなっしー!
10周目にリスタートするとレディックがラーソンをかわして2位となり23XIレーシングのワンツー体制。レディックがウォーレスの勝利を手助けしてくれるのかは不明ですが、見てるとそんな雰囲気ではなさそうでラインを変えてウォーレスに重圧をかけています。壁沿いを走ると乱気流を受けるので、クリーンエアーが得られるようにウォーレスの逆を行くライン取りを続けてますね。
タイヤの厳しいダーリントン、各ステージは少なくとも2ストップが必須で35周目にウォーレスとラーソンが同時にピットへ、他の人も一斉にピットに飛び込みました。ここでヘンドリックのクルーがラーソンを先にピットから送り出すことに成功、レディックは1周後からピットに入ったのでサイクル後のリーダーはラーソンとなり、2位がウォーレス、レディックは4位となりました。新品タイヤは中古より1周2秒ぐらい速いみたいですね。
ラーソンは前が開けたら一人旅になり、一時ウォーレスに4秒以上の大差を付けました。その後は周回遅れに詰まって3秒以下にまで縮小したものの70周目にはもう2回目のピットサイクルが到来。今回はウォーレスとレディックが先に動きラーソンは相手を見てからの対応、ピット入り口でダニエル スアレスに引っかかる不運もありましたが順位を失うほどの損にはなりませんでした。
そのままラーソンがステージ1を制し、2位にウォーレス。いずれもプレイオフ順位争いで上との差を詰めました。3位は非常に力強い速さを見せているブリスコー、4位にレディック。5位からベル、ハムリン、ギブス、バイロンと続きました。ブッシャーは10位で1点だけ獲得、チャステインはステージポイントを得られませんでした、最後カイルと接触して戯れてましたねえw
・ステージ2
レディックはどうやら体調がよろしくなくて、事後情報をまとめると子供がかかったウイルス性胃腸炎がうつって酷い下痢と嘔吐に見舞われていたとのこと。仕方なく空腹でレースに挑むも気分が悪く、ピットで薬を貰ったものの一部は上手く飲めずに床に落っことしたとか。果たして走り切れるのか、走りながら吐いてないか気になりますがステージ2が始まりました。ウォーレスのリスタートが今一つでブリスコーが2位となり、走りはじめたら関係ないのかレディックが3位で追走。
ブリスコーはそこそこ長い時間ラーソンを1秒以内で追っていましたが、距離を重ねるとどんどん離されて行ってラーソンが結局は独走、そして150周目・ステージ35周目あたりからステージ2最初のピットサイクルとなりました。ここもラーソンはきっちりとこなしリードを維持、クルーの皆さんも緊張のピット作業が頻繁にやってきて大変に違いありません。
すっかり外は暗くなって路面温度も下がっているであろう中、ラーソンは一時ブリスコーと3秒以上の差がありましたが周回遅れに苦労しているうちに1秒以内にまで追いつかれました。上位勢ではレディックとギブスが徐々に順位を下げている一方バイロンが順位を上げており、路面状況の微妙な変化とアジャストの成果が出ているようにも見えます。
185周目あたりから2回目のピットサイクル、ラーソンとブリスコーは186周目に同時にピットに入ることになり、作業時間とピット後の周回遅れの位置関係でまたえらく差が開いてしまいました。ラーソン陣営は良いところに車を送り出しましたね。
このピット後の位置関係、1.5秒ほど突き放したことがかなり効いたと思われ、結局ステージ2の残りはずっとラーソンとブリスコーが1.5秒前後の差でそのまま終了しました。ラーソン、ブリスコー、ハムリン、バイロン、ベル、ギブス、ベリー、レディック、ウォーレス、ケゼロウスキーのトップ10。
これでレギュラーシーズンチャンピオン争いではレディックとラーソンの差が7点となり、ラーソンが優勝した場合レディックは3位以内に入らないと逆転されることになります。ラーソンが優勝以外ならラーソンの順位+6ポジションまでがチャンピオン確保の条件です。
ウォーレスもせっかくステージ1でブッシャーとの差を詰めたのにここでは2点だけの獲得で詰め切れませんでした、まだ10点差です。そしてこの段階でトゥルーエックスは誰が優勝しても17位に落ちる可能性が消えてプレイオフ進出が確定しました、(´▽`) ホッ
・ファイナル ステージ
ピットでハムリンに抜かれて1つ順位を下げたブリスコー、1列目の内側からのリスタートでしたがラーソンに対してかなり際どいサイド ドラフトを仕掛けて並走に持ち込みました。しっかりと1台分のラインを残して堂々と仕掛けたブリスコーでしたが、あと一歩届かず翌周にはラーソンの後ろに戻ります。
3周目にトゥルーエックスがやらかした以外に何の事件も無いのでリードラップに残っているのは19人まで減ってしまい、25位以下は2周遅れ以上ともうレース中にリードラップまで戻ってくるのも遠い状況。ラーソンは周回遅れの悲鳴を聞きながら快走し、ブリスコーはリスタート時にタイヤを使ったせいか少しずつ離されます。むしろ後ろからハムリンとバイロンが接近中。
ステージ1・2より距離が長い最終ステージ、ざっくり言うと40周×3の2ストップか、30周×4の3ストップか、というところですが270周目あたりから中団がピットに入りはじめ、残り約100周なのでこれは3ストップで行く方向性、わざわざ違うことをする必要はないのでブリスコー、ラーソンも順にピットに入ります。コーション連発のレースならタイヤの在庫が気になりますが、今日は大半の人が各ステージで3セットずつ使っただけなのでかなり余っています。
このサイクルではハムリンとバイロンがタイヤ交換を遅らせ、履歴差を作って後半勝負の作戦を採用。ハムリンはステージ1でも同じ作戦でしたが、この時はあんまりうまく機能していませんでした。今回は上位勢より6~7周という履歴差がかなり効果的な様子、ピット後は11秒ほどあったラーソンとの差を確実に詰めて順位も上げて行き、301周目にはブリスコーをかわして2位となります。ラーソンとの差も4.5秒まで縮まりますが、これでようやくピット前の差に戻った形、ここからさらに追いついてこそ意味があります。
そのままレースは残りが60周を切っていきますが、さっきは前のめりにタイヤを換えていた人たちが今度はなかなか動きません。かといって2ストップに切り替えるのは距離が遠いように思うので、自分だけ入った直後にコーションが出て大損するのを避けるためお互いに誰かが動くのを待っているのかなという印象。ハムリンはラーソンとの差を3秒以内に詰めたのでピット前よりも追いついており、さらに我慢を続けるとかなり追いつきそうです。と思ったら314周目
2位スタートから19位まで落ちたとはいえまだリードラップ最後尾で耐えていたホースバーがスピン、これがトラック上に起因する2回目のコーションでステージ間を含めた通算では4回目です。当然これでリードラップ車両が全員ピットに入りました。しかしここで大損したのはチャステイン、コーションの時にちょうどピットに入っていたため、運悪く周回遅れとしてコーション周回に入ってしまいました。せっかくタイヤ交換を早めて10位以下の状況を脱し9位に順位を上げていたのに、1周の我慢の差でウエイブ アラウンドを受けるしか無くなってリードラップ後方・19位あたりに落ちてしまいます。
残り48周、ラーソン/ハムリンの1列目でリスタート。因縁も多いこの2人ですが、ハムリンがラインをきちんと残しつつ内側に飛び込んで、ラーソンも外ラインで堂々と受けて立ち、ここもラーソンが攻撃を退けました。ミニ四駆相手に内側からは抜けない!
ところが3周後、ターン2出口で15位を争っていたブッシャーとギリランドが交錯し、ギリランドがスピンして6回目のコーションとなります。ブッシャーはギリランドに壁側へ追いやられ、壁に当たった反動で今度は逆にブッシャーがギリランドに当たってうまいこと回してしまった感じです。幸いブッシャーに大きな損傷はありませんが「壁に挟まれたなっしー!」と無線で怒りを見せ、クルー チーフのスコット グレイブスも「ああ、全然驚かねえな、あいつ1年じゅう同じことやってるから。」と辛らつ。
ここは上位勢だけがステイアウト、ブッシャーもタイヤを傷めている可能性があるので当然ピットに入りますが、ウォーレスはステイアウトしました。ところが結果としてウォーレス以降がほぼみんなピットに入った形になってしまい貧乏くじ。ウォーレスは一転して苦しい立場に立たされます。ブッシャー、むしろ形勢をひっくり返す好機かも。
残り40周でリスタート、今回はハムリンはラーソンに仕掛けられず、逆に2列目のブリスコーとサイド バイ サイド。ブリスコーが外を走っているのでハムリンは対抗しきれず、ブリスコーが再び2位となります。ダーリントンでは2位の人が1列目の内側と2列目の外側のどちらを選んでリスタートするかが非常に難しく、内側からリスタートすればターン1~2で内側に飛び込んで仕掛けられる一方で、上手く行かないと2列目外側の人に並ばれてかなりの確率で3位に落ちてしまいます。
2位になったブリスコーはラーソンを追いかけまわし、とにかくマネージメントとかは後で良いから今勝負をしてやろうという雰囲気。ところが336周目/残り32周、今度はホースバーが壁にぶつけてしまって6回目のコーションとなり、ここは合計で10周以上タイヤを使ってしまったので交換しないと勝負になりません、再びのピット勝負となります。ラーソン陣営は鉄壁のクルーが今回も先頭で送り出しました。
しかしここでは5回目のコーションでタイヤを換えているチャステインが僅かな可能性に賭けてステイアウトを選択、彼は当然1列目の外側を選びますが、これに続くラーソン、ブリスコー、ハムリンの3人はいずれもタイヤが古いチャステインに詰まることを恐れて内側を選択しました。残り26周、そろそろ最後になりそうなリスタートです。
ヨーイドンで空転して終わるのではないか、と言われたチャステインでしたが非常に良い動き出し、しかも後ろのギブスから上手く押してもらえたので、ターン1に入る前に明確にラーソンの前に出ることに成功しました。こうなるとチャステインは大外の速いラインを走るよりも内側に下りてラーソンの頭を抑えに行き、ラーソンは新しいタイヤでさっさとチャステインを抜く思惑が外れてしまいます。
目論見が外れたラーソン、ダーリントンリスタートの法則でターン2を出たらギブスに並ばれてしまいバックストレッチを並走、するとその後ろに良い間合いで続いていたブリスコーがなんと2人の内側に飛び込むいわゆるエレベーター ムーブを披露。ターン3に深く突っ込んで2人を抜き去ると、新品タイヤを活かしてなんとターン4で一気にチャステインも抜き去りリードを奪いました。正直止まり切れずにチャステインを壁に挟むと思ったので、ちゃんと曲がった瞬間は非常に驚きました。
3周後にギブスがベリーによって壁に挟まれてしまい、ここから後ろで多重事故発生、7回目のコーション。不運にもウォーレスはこの多重事故に突っ込んでフェンダーがバリバリになりました。レースはまたも仕切り直し、そしてここでも数名は逆転を狙ってタイヤ交換を行いました。その筆頭がカイルで、彼は5回目、6回目、そしてこの7回目と全てのコーションでタイヤを交換し、ついさっき3位まで順位を上げていたのにそれを捨ててのタイヤ交換でした。人と違うことをしないと勝てない!という発想はここ数戦徹底されています。
残り17周でリスタート、わざとやったのか分かりませんが、リーダーのブリスコーは加速を遅らせて後ろのベルから追突レベルの支援を貰いラーソンを出し抜きました。ターン1でラーソンに全く手を出させずリードを守ります。そしてここからはカイル無双になりました、タイヤを換えても4列目リスタートとそんなに順位は下がっておらず、リスタートからがら空きの内側を通って1周で4位、2周で2位と一瞬で順位を取り返します。ブリスコーとカイル、なんとサザン500の最後の15周が未勝利ドライバー2人による最後の1枠の争奪戦になりました。もうなんかカイルの気迫に、内側に入られた人たちも「あ、カイルさん、いや、もうお好きにどうぞ(;・∀・)」ぐらい威圧感に押されていた雰囲気すら感じます。
カイルはさすがに新品タイヤの強さはもう使い切っているので、あとはブリスコーとのほんの僅かなタイムと精神力の削り合い。残り10周を切ってカイルが0.3秒差まで近づいてくると、さすがにブリスコーも大外だけではなくカイルに乱気流を当てるために少し内側に下りたりして揺さぶります。ただこのやり方、選択をミスると自分が遅くなった上に相手が大外で一気に追いついてくる危険性もあります。ダーリントンの終盤の接近戦はお互いのライン取りとその背景にあるドライバー心理を想像すると1.366倍ぐらい面白くなります。
両者は0.3秒ほどの差で膠着していましたが、残り2周・ターン4でカイルが思い切って内側に下りる動きを見せて牽制、一瞬気になったのかブリスコーはそこそこ壁に擦ってしまい一気に差が無くなって最終周に入りました。こんな時でも実況アナウンサーとしてちゃんとクレジットワンバンクのスポンサー名を呼び忘れないのがプロのお仕事。
ブリスコーにはスポッターのジョー キャンベルから「ダイブ ボムに警戒しろよ、勢いを保ってフィニッシュしよう。」と、カイルの突撃に対して厳重警戒。しかし2車身半以上離れたカイルにはターン3で悪あがきをする術はありませんでした。チェイス デイビッド ウェイン ブリスコー、2022年第4戦フェニックスで驚きの初優勝を挙げて以来およそ2年半ぶりのカップシリーズ2勝目でプレイオフ争いを最後の最後にひっくり返す大きな勝利を挙げました。
カイルが正々堂々と勝負しようとしているのは車の動きから感じることができたので、私はチェッカーの瞬間、ブリスコーが想定外の勝利を手にしたことよりもカイルの熱意に感動してしまいウルっと来ました。オリンピック休みの間にチームとして何か見つけたものがあるのかもしれませんが、カイル自身の精神面でもひょっとしたら怪我と、休養と、あとディロンのやらかしを客観的に見て何か思うところがあったのかもしれません。来年、もう1回ゼロからチャンピオン目指しましょう、うちの常連カイル推しメンバーもそんな気持ちになれたのではないかと思います。
これでプレイオフ進出メンバーは最後にブリスコーが滑り込み、結果的にウォーレスとブッシャーのポイント争いは2人とも圏外に追い出されて全く意味が無くなりました。1勝以上を挙げた14人と、ポイント枠でトゥルーエックス、ギブスの2人だけが進出です。
そしてレギュラーシーズンのチャンピオンですが、ラーソンは最終的に4位、トイレに駆け込みたいかもしれないレディックは10位でした。ラーソンの順位+6、つまりギリギリの1点差でチャンピオンはレディックが手にしました。ラーソンはインディアナポリス500に出るためにコカコーラ600を諦めたことがモロに影響しましたね、言い換えれば1戦休んで1点差なので本来ならチャンピオンはラーソンでした。レディックにはレギュラーシーズン王者のトロフィーとプレイオフポイント15点のボーナス。2位のラーソンはプレイオフポイント10点加算です。
これらを踏まえ、プレイオフ進出の16人とラウンド オブ 16開始時点での点差はこの通り。
未勝利のトゥルーエックスとギブスはステージ優勝とレギュラーシーズン順位での僅かなプレイオフポイントしかなく最下位の2004点でスタート、1勝した以外にプレイオフポイントを得ていない3人が2005点で並んでいます。ラーソンはレギュラーシーズン王者を逃したものの、それでも最多の2040点を持ってプレイオフを開始、4勝とステージ勝利10回はデカいです。
そしてプレイオフ最初のラウンドはアトランタ、ワトキンス グレン、ブリストルの3戦。アトランタは下手するとデイトナよりヤバい時があるドラフティングトラックなので要警戒、ロード コースのグレンも0.5マイルのブリストルも他責で多重事故にハマることがあるので、点差に関係なくわりとクレイジーな3戦です。とりあえず無事にアトランタを通過しておきたいですね、ここで勝ってしまうと楽なんですけど。
デイル アーンハート ジュニアは、今年の日程でデイトナがレギュラーシーズン最終戦でなかったことを残念に思っている旨を自身のポッドキャストで語ったとのこと。ダーリントンは非常に難しいトラックで、当落線の下にいる人が最後の望みをかけて戦いを挑むには壁が高く、デイトナの方が最後の大勝負と割り切って戦えるから、ということのようです。私も正直、デイトナが終わったらダーリントンは僅差でポイントを争う状況が当落線で起きていない限り消化試合だと思っていました。(じゃあ最後がガラガラポンのデイトナで良いのか?と言うと私は別にそうでもないのですが。)
実際は16位の争いが僅差だったので消化試合だとは認識せず見ていたんですが、17位以下から新たな勝者が生まれるなどとは欠片も想像しておらず、まだまだ自分も甘かったなと先週のハリソン君の優勝に続いてまたしても思わされました。いや、先週そんなことがあったから、もう2回もそんな奇跡的なことは起きないだろう、と思っていました。勝利を信じて戦ったスチュワートハースの従業員さんとブリスコーに敬意を表します。
今回SHRはベリーも速かったですし、ライアン プリースも30位スタートから12位でした。チームとして良いセッティングを見つけていて、それを低迷するチームの中ではエース級と言えるブリスコーがしっかりと引き出した形です。ダーリントンはいくらかダートの走り方が使えるトラックという印象もあり、それもまたブリスコーにとっては得意分野だったかもしれません。
2022年は第4戦・Gen7車両が導入されたばかりの中で唐突に優勝してプレイオフに進み、下馬評を覆してラウンド オブ 8まで勝ち残る粘り強さも見せたブリスコー、なんかわりとヘラヘラしてる印象ですけど、ここまでの26戦で走行周回では全体6位、走行距離なら全体5位と粘り強さは相変わらずなので案外侮れないかもしれません。あ、ちなみに現時点で走行周回数・走行距離ランキングの両部門で1位を獲っているミスター完走って誰だと思います?正解は記事の最後で。
逆に心配なのはトゥルーエックスで、体力が落ちて来たのか、オリンピック休みで気持ちが一旦切れて入らないのか、今回のクラッシュは凡ミス以外の何ものでもなく、エンジンが壊れたり貰い事故もあるとはいえ過去14戦中10戦で24位以下というのはさすがに偶然だけでは出ない厳しい結果です。プレイオフ開始時点の順位見たまんまでそのまま下位で落ちるというのも現実的に起こり得る状態ですので、なんとか立て直してもらいたいところですね。
残念ながらバートンが1回戦負けするのはアトランタでまた奇跡を起こさない限りほぼ固定、シンドリックもちょっと壁が高いかなと思いますが、残る2人はちょっと読みにくいですね。こんなこと書くとまたグレンでシンドリックが勝ったりとかするわけですけどw
というわけで次戦からプレイオフ、なんとなくお気づきかと思いますが今年からNASCAR記事は『登場1回目→フル ネーム、2回目以降→苗字のみ、ないしはあだ名』の自主ルールを2戦区切りにしてきました。プレイオフは3戦区切りのイベントなのでこれが3戦刻みになります。あ、どうでも良いですねw
クイズの答え:ダニエル ヘムリック
平均順位22.9という数字が示す通り速さが無いのでリードラップフィニッシュはたった13回ながら、チェッカーを受けられなかったのはたった2戦、それもレース終盤のクラッシュだったので結果として99%以上の周回消化率を誇る。でも見ている側には『レース終盤にぶつけてコーションを呼んでいる人』の印象が強い気がするw
コメント
来週から2025年シーズンです。(開き直り)
でもエキシビジョンの36戦フェニックスでまた勝ったりして。
悔しいなぁ....。
カイルもレース後、清々しい顔をしていたので、吹っ切れたな、と思い、素直にブリスコーを祝福出来ました。57ポイント獲得ですしね、文句ないです。ポジションはともかく、プレーオフバブルと、ピットストップがリアルタイムできちんと表示されていたのは助かりました。
さて、質問です。サザン500の優勝トロフィーは、歴代の優勝者の写真がはめ込まれています。インディ500は似顔絵ですが、これはドライバーが個人で受け取れるものでしょうか。別のものが渡されるんでしょうか?1950年の優勝は、確かに6時間38分ですが、林信次氏(F1全史の著者)が、F1バブル期に出した『激走!F1』(文春ビジュアル文庫)という本に、過去のレースに触れた記述があり、ファンジオがいた草創期は、ドライバー交代が認められていて、同氏が佐藤琢磨のインディ500優勝をしたのを記念した限定本『インディ500』にも同様の記述があります。サザン500も初期のインディ500並みに時間が掛かっていました。今年は、実現はしませんでしたが、コカ・コーラ600でのドライバー交代が認められていました。今のF1やインディ500ではドライバー交代は認められないと思いますが、NASCARの規定ではどうなっているんでしょうか。教えてください。
ルーキーシーズンのマシンクラッシャーだった時とは真逆になりやがって……()
去年の終盤~デイトナ500までの流れを見ていたら、まさかノースイカ割りでプレイオフに進めもしないとはちょっと想像できませんでしたね。もう失うものが無いのでこの先は走り方やセッティングの色んな模索をする10戦として有益に活用できればと思います。
レース後のカイルの吹っ切れた雰囲気はファンにとっても救いになるすごく良い姿だなと思いました。アンチカイルだった人でもちょっと応援したくなった人いるんじゃないかと思います。
サザン500のジョーニーマンツトロフィーですけど、おそらく毎年作成されて持って帰っていると思います。地元テレビ局が制作しているトロフィー屋さんを取材した動画があり、
https://youtu.be/LkYh1hdmUao?si=7XugXInMidCb_ohE
レーザー加工で台座に写真を仕上げている様子が見られます。
NASCARの場合ドライバーは『スタート時点で乗っていた人に選手権ポイントが付与される』ことになった上で交替は可能ですね。怪我、体調不良、遅刻等での交代が可能ですし、予選だけ別の人が乗ることも可能です。(ただしドライバー交替はエンジン交換と同様に最後尾スタート)
かつて私が拝見していたNASCARブログで見た表現だったと思いますが、NASCARの場合は何よりもまず車両オーナーがいて、オーナーが車両を走らせている、というのが根底にあってそこにドライバーが付いてくるという考え方だと書いていました。『チームポイント』ではなく『オーナーポイント』なのもそのためで、レース時間も長いので交代ルールが柔軟なんだと思います。
詳細規定が見れないので、レース中に2回以上交代しても良いのか、といった要素は分からないですけど^^;
私も車を壊しすぎて1年で降格させられた人がこんだけちゃんと走ってたことには驚きました(下位すぎて完走してるのかが見ていても分からないw)よく言えば前回から学んでまずはきちんと走ることを心がけてるのかもしれませんが、それをチームがどう評価してくれるかでしょうね~。
ネメチェック、アルミローラ、弟トゥレックス、ベルと誰が乗っても勝てるほどのチームという事もあるとは思いますが、アルミローラがウォーレスとのトラブルで出られなかった分、他のドライバーがきちんとカバーしているのも流石です。
SHRは体制変更前に勝てて良かったですね。
これでSHRも未勝利のシーズンは昨年だけになりましたし、SHRとしての16年間、最低1台はプレーオフ進出を決めた事も凄いです。
14番もトニーがAJフォイトに憧れてこのナンバーを選んだエピソードを考えると、最後の花道としてブリスコーはより頑張らないといけませんね。
ハースファクトリーはカスターが乗る予定の41番だけ残す様なので、来年は見られなくなる番号ですし。
そしてカイルは手の怪我がありながらも2戦連続2位は立派ですが、RCRにとっては5年ぶりにプレーオフを逃す形になったのは残念です。
30位ルールが無くなったとはいえ、ディロンは結局ポイント28位だった様なので、勝利が認められれば普通に進出できたと思うとバートンの大番狂わせはよりショックを大きくさせるでしょうね。
(その分ラストシーズンのトゥレックスが出られなくなってしまいますが)
チェイスが壁をこすった時は「勝った!」と思ったんですけどね~
プレイオフには進出できませんでしたが調子は完全に上向きなので、そろそろ勝ってもらいましょう!
最後にバートン、ブリスコーと想定外の勝者が増えたことを思うと、ディロンまで出てたら本当にえらい出来事だったなあと改めて思いましたよ。トゥルーエックスがこんな危険水域まで沈むなんて想像もしていませんでしたし。
SHRもようやく少しずつ好材料が見えてきたばかりなのでなんかもったいない気もしますけど、ブリスコーをさっさと一本釣りしたJGRはこの結果を見て満足してるでしょうね。そのブリスコーもスチュワートに憧れていて14番に思い入れがあるので、せっかくなら許可貰って19を14にリナンバーして走ってもいいんじゃないかとかちょっと思ってみたり。
勝ったと思える瞬間が出てきているだけでも、テレビに映らずサムネイルでクラッシュがネタバレしていた時期と雲泥の差ですよね~、空気読まずにプレイオフで3勝ぐらいしてくれるとなお面白いんですがw