Formula 1 Heineken Dutch Grand Prix 2024
Cuircuit Zandvoort 4.259km×72Laps=306.587km
winner:Lando Norris(McLaren Formula 1 Team/McLaren MCL38-Mercedes-AMG)
最近は教室へのエアコン完備と授業時間不足で学校の夏休みも短くなっていますが、F1も短い夏休みが終わってここから後半の10戦へ。2週連続開催×2、3週連続開催×2と全て連戦になってシーズンが終わると気づいたら12月という日程です。まずはマックス フェルスタッペンの母国・オランダから。2021年に36年ぶりの復活を果たして今年で4年目、過去3回は全部フェルスタッペンが勝っており、このところ劣勢のフェルスタッペンが母国で蘇るのか、単に話題性ではなく残りのシーズンやチャンピオン争いを考える上でも結構大事です。
・レース前の話題
アルピーヌは来シーズンのドライバーとしてジャック ドゥーハンを起用すると発表しました。アルピーヌの育成選手である21歳のドゥーハン、昨年はFIA F2に参戦して3勝し選手権3位でしたが、今年はアルピーヌのリザーブ選手の役目に集中してシリーズ戦には参戦していません。2019年、2020年はF3アジアで2位、2021年はFIA F3でやっぱり2位とここまではチャンピオンにちょびっとだけ届かない結果を出しつつ階段を上がってきています。ちなみに2019年のF3アジアでチャンピオンになったのは笹原 右京でした。
これでアルピーヌはピエール ガスリーとドゥーハンの組み合わせですが、内紛でゴタゴタしているチームに入ってくる新入社員ってどんな気持ちなんだろうなあ、とか思ってみたり。とりあえず仲間内で揉め事起こさないでねw
ドゥーハンの契約で来年の契約者がまだ決まっていないのは10チーム・20枠のうち僅か3つになりました。次期アウディーとなるザウバー、VCARB、そしてメルセデスに1席ずつ未定となっている場所があります。ただレッド ブルのヘルムート マルコはリアム ローソンを来年自分たちのどれかしらで必ず走らせると明言したので、話を額面通り受け取るとローソンがVCARBの2人目になります。問題はセルヒオ ペレスが話を反故にされて解雇、ないしは降格させられたり、フェルスタッペンがどっか行っちゃう可能性が絶対ないとは言い切れないことでしょうか^^;
一方こちらはアルピーヌが2年前にうっかり契約し損ねたオスカー ピアストリの話題。マクラーレンとともにまさに今伸び盛りといったところですが、夏休み前にろっ骨を骨折していたことを明らかにしました。本人も正確にいつ折れたかは分からないようですが、どうもシートの形状が本人の体形に完全に合っていなかったために、高荷重のサーキットを走っていて折れてしまったとのこと。夏休みのおかげでもう大丈夫だそうですが、やっぱり平気で4Gとかの加速度を受けながら走るって異常なことだなと改めて思いました^^;
・フリー走行
久々のレースなのでできるだけ走りたいところでしたが金曜日のFP1は濡れた路面での走行で消化不良。続くFP2は晴れましたが、土曜日のFP3はまたもや雨。そして
開始14分ほどのところでローガン サージェントが滑って大クラッシュ。路面状況が悪いのに芝を踏んでしまってすっ飛びました。「いやあ老眼でよく見えなくて、ローガンだけにね。ハンバーーーグ!」とかしょうもないことを言う暇も無く、車両から出火したので大急ぎで脱出することに。結局この事故の後始末で残り時間の大半が費やされ、再開したのは残り僅か2分になってから。どうせ路面が濡れているので参考程度だったとはいえ最後の走行機会は収穫に乏しく、最も周回したのはピアストリの10周でした。サージェントは車両の修復が間に合わず予選不出走となりました。
・予選
幸い雨の影響は無かった予選。ただ路面にラバーが乗っていないので当然ながら走れば走るほどビックリするぐらい記録が伸びていくので、よっぽど最初に良い記録を出さない限りはセッション最後の計測できちんとまとめないといけません。そんな状況の中、Q2ではルイス ハミルトンとカルロス サインツが脱落。Q1からQ2にかけて1秒近く記録が伸びた人もいる中で、この2人はいずれも伸びが0.4秒ほどしかありませんでした。特にハミルトンはQ1で良い感じに見えただけにちょっと意外な脱落です。
そしてQ3ではランド ノリスが圧巻の走り。1分9秒673と唯一10秒を切ることに成功して2位のフェルスタッペンに0.356秒/約0.5%という大差を付けてピレリ ポール ポジションを獲得しました。3位にピアストリ、4位ジョージ ラッセル、とここ最近のレースの優勝者が並び、5位にペレス、6位シャルル ルクレールでした。
そういえばオランダGP前のフジテレビNEXT・F1GPニュースでは『前半戦で7人の優勝者が出ましたが8人目は誰になりますか?』という質問に解説陣3人が揃って「出ない」と回答。話の流れ的にとりあえず「ぺレス」と答えてほしい流れで誰も乗らず、挙げ句「期待を込めてアロンソ」とフェルナンド アロンソ推しで話が終わりました。ペレス、ここはちょっと頑張ってくれ・・・
・アルボン、予選失格
サージェントは車をぶっ壊してしまいましたが、今回複数の新型部品を持ち込んだウイリアムズはアレクサンダー アルボンがQ3に進出し予選8位、去年も難しい状況で予選4位だったのでこのコースが得意なのかもしれませんがチームとしても一定の手ごたえを得たはずでした。ところが予選後の車検で規定違反が見つかってまさかの失格。どうやらフロアの幅が規定を超えてしまっていた箇所があったようで、事後情報ではチームは何度も計測して問題ないとしていたはずだったので、計測そのものに何かしら問題が生じていたのではないかとして現在調査中だそうです。
これでアルボンは失格なので最後尾からのスタート、一方サージェントは車をぶっ壊して予選に出なかったけど、失格にはなっていないのでアルボンより前方から決勝をスタートすることになりました。同一フロアを同じ計測結果の下で製造していたのなら、さっき壊してなければサージェントも規定違反になっていた気がしますが、結果車を壊して走っていない人が少しだけ上位からスタートできるというある種の珍事でした。Xで検索かけてたら「サージェントは証拠隠滅した」という言い回しをしている人がいて吹きましたw
また、ハミルトンはQ1でペレスを妨害してしまったため3グリッド降格になって14位からのスタートと泣きっ面にハチです。
・決勝
ピアストリが一発でルクレールを抜くようだと、ひょっとしたらフェルスタッペンも油断できないかもしれない情勢だったのでかなり気になったと思いますが、ルクレールは非常に良い速さで走り続けてピアストリにこれ以上の接近を許さず、数周でDRS圏外へ追い出すことに成功、レッドブルも一安心です。ただルクレールが自分たちと同じタイムで走っているというのはよく考えたらレッドブル的に気になる状況です^^;
なぜか最終コーナーを5人が集団で駆け抜け、DRSを使って危うく5ワイドになりそうな状態からターン1に入っていった場面でした。ここだけ見たらオーバルのレースかと思うような、F1ではあんまりお目にかかれない映像でしたがけっこう怖かったですw
多くのドライバーはスタートのタイヤにミデイアムを選択、予選後にまた雨が降ったので路面の状態が一歩後退しているようです。作戦は基本的にミディアムからハードへ繋ぐ1ストップ。2ストップも速さで言えばアリなんでしょうが、抜けずに詰む可能性が高いと見られています。お、なんか最後尾で全車グリッド整列完了の合図旗を振っている方の立ち振る舞いがカッコいいぞ。
ポールから出ると3位に落ちるでお馴染みのノリスが1位を守れるのかが注目のスタート、今回は内側のフェルスタッペンに寄せることもなく真っすぐ立ち上がって・・・真っすぐ抜かれた!スタートでは回転がやや落ちすぎ、その先で今度は空転してだいぶ失敗した様子、フェルスタッペンがリーダーとなります。偶然かもしれませんが全体に偶数列の人が奇数列の人をスタートで抜いており、ひょっとしたらノリスが今ひとつだったから後ろが詰まったのもあるかもしれません。
フェルスタッペンとノリスの差は1.5秒ほどで推移、ジャンピエロ ランビアーズからフェルスタッペンへは「いい調子だぞ、左後輪を滑らせないようにだけ気をつけてくれ。」と久々にいつものような落ち着いたやり取り。
一方ウィル ジョセフからノリスへは「俺達は誰とレースしてると思う?」。フェルスタッペンを追いかけられそうな状況なのか、それとも無理そうだから後ろを見て2位堅持を狙うのか、というのを一応きちんと意思確認したんでしょうけど、ノリスの答えは「相手が誰であろうと前を狙ってレースしてるんだ。」そんなん前を追うに決まってるやん、と外から見てると思いますけど、やる気スイッチを入れるための独特の彼らの中での言い回しみたいなものがあるんでしょうかね。
13周目あたりからフェルスタッペンの方がやや落ちてきたのかノリスが1秒前後の差に接近、「ターン10で全く曲がらん。」とフェルスタッペン。ノリス陣営はプランAとBのどっちにするかの作戦会議もしつつ迫って来ており、当然相手の無線は聞いてるのでジャンピエロもなんか難しい顔をしています。
しかし作戦会議には結果的にそれほどの意味は無く、16周目の最終コーナーでとうとうノリスがDRSを使って近寄って来ると、続く17周目はさらに近い距離でDRSを使用。こうなるともうフェルスタッペンはお手上げ状態で、18周目のターン1ですんなりとノリスが前に出ました。その後2周でフェルスタッペンはDRS圏外へ追い出されてしまいます。
フェルスタッペンはその後もノリスに一方的に離されて25周目には5秒近い差に拡大。「これ以上早くは走れない、車が全然自分の思ったとおりに動かない。」と弱気発言。入力に対して機械の方がついてこない、というのはひょっとしたら操縦者の腕が機械の限界を大きく超えてしまっているせいかもしれませんね。確かテム レイという研究者が反応速度を飛躍的に向上させる優れた回路を(ry
この25周あたりはスタートのタイヤからハードに交換して1ストップで走りきれる時期にかかっておりピット サイクルとなります。上位勢はあまり早く入りすぎるとタイヤを換えていない集団にハマる恐れがあり、かといって抜けないこのコースではアンダーカットで順位を上げたいのでタイミングのせめぎあい。でもノリスは独走してアンダーカットの心配が無いので後ろが動くまで待つことができます。
27周目、6秒以上離された2位のフェルスタッペンが大歓声の中でピットへ、ミディアムからハードへ交換。当然ノリスもこの翌周に動いてフェルスタッペンの5秒前方に戻ります。あとは変なことが起きないように祈るだけ。
優勝争いはもうこの段階で普通に行ったら決着が付いてしまいましたが、3位争いの方はこのサイクルで大きく動きました。ピット前はラッセル、ピアストリ、ルクレールの3人が僅差で走っていましたが、このうちルクレールがまず24周目にピットへ。これを見て25周目にラッセルがピットに入りました。ルクレールが入る前の段階で2人の差は1.6秒ほどありましたが、ルクレールがかっ飛ばしたのとラッセル陣営の作業にやや失敗があったのとで、ルクレールがアンダーカットに成功しました。この差を見ると作業時間2秒でもけっこうギリギリか同じ結果だったのかもしれませんけど。
間に挟まっていたピアストリはルクレールに先に動かれた時点で手段が無く、仮に25周目に動いたところでラッセルとの位置は変わらず、ルクレールには500%アンダーカットされるのでどっちみち5位になることがもう決まっています。そこで消去法的にタイヤの履歴差を作る作戦となり、33周を終えてようやくハードに交換しました。対ラッセルで7周、対ルクレールなら8周新しいタイヤでどうにかするしかありません。
というわけでピットサイクルを終えてノリス、フェルスタッペン、ルクレール、ラッセル、ピアストリのトップ5。1位と2位の差は開く一方なのでここからの注目はやはり3位~5位の争い、特に骨折明けピアストリとなります。まず40周目にラッセルを一発であっさりと抜いてしまい、次は4秒前方にいるルクレールを追撃し、46周目にはもうルクレールのDRS圏に到達しました。
その後もノリスは一方的にフェルスタッペンを引き離して独走、フェルスタッペンはもう2位を持って帰るしかない状況です。もしVSC/SCが出て一発逆転のチャンスが出た場合の事を考えると、フェルスタッペンはノリスの10秒差あたりを維持して相手にフリー ストップを与えず、かつ自分は後ろを12秒以上離してフリーストップが得られる環境を作りたいはず。しかし全くそうもならずにノリスから15秒以上離され、ずっとルクレールが6秒前後の差にいるので、たぶん本当にこれ以上無理できないんだろうなと思いました。
結局ノリスはフェルスタッペンを20秒近く離して最終周に入ると、ハミルトンが62周目にソフトで出した最速記録・1分13秒878を最後の最後に0.061秒塗り替えてファステスト ラップの1点まで持って帰る完勝。既に世界の500人ぐらいが「いや選手が変わっただけで独走したら意味ないねん。」と文句を付けていそうなぐらいの圧勝でした。なんかもう5勝ぐらいしてる気がしましたが今季2勝目ですw
2位フェルスタッペン、そして3位はルクレール。ピアストリはルクレールを抜けないまま終わって4位となりちょっとチーム的にもなぜ3位になれなかったのか反省会をしないといけない感じになりました。5位は10位スタートから追い上げたサインツで、フェラーリは2人とも決勝、特に後半のハードでのスティントが非常に良かった印象を受けました。ペレスはスタートから順位を下げてしまって6位、後半にコース上でサインツに抜かれてそのまま離されてしまい、これをフェルスタッペンとルクレールが同じペースだった事案と重ねると今日のレッドブルは本当にフェラーリと同等ぐらいだったんだろうなと感じます。
フェラーリは特に行けそう感が無かったのに急に速くなって自分たちで驚いていたそうで、それは思わぬ誤算で有難いことではあるんですが、自分たちの車の特性を自身でも把握しきれていないことの裏返しだと思います。『なんかよく分からんけど今日は速かったなあ』みたいなことがあるうちは、本当に速い車はできないんでしょうね。次戦は地元イタリアということでさらに新しい道具を持ち込んで気合が入っているようですが、予想外に遅い車にならないことを願いたいですね。
ペレスと同様レースで厳しかったのはラッセルで、序盤は前2人に離されつつも3位だったのが結局消去法的に2ストップになってしまい7位。逆にハミルトンはソフトでスタートしてコース上で結構な台数を抜き、フリーストップできる空間があったので喜んで2ストップにして8位。ラッセルとの差は最初のピット前に17秒ほどあったのに最終的に5秒しか無かったことを考えると、特にラッセルのハードでの後半が今一つだった印象を受けました。メルセデスも良かったり悪かったりがちょっとしたことで変わってしまう状況が続いてますね。
休みが明けたらフェルスタッペンが母国からリセットしてまた勝ち始めるんじゃないの?なんて、あんまりマクラーレンに期待しすぎると裏切られた時に寂しいのでそれほど期待しないで見ていましたが、終わってみたら想像以上の圧勝でした。フェルスタッペン以外の選手が2位に10秒以上の差を付けて優勝するのは2022年のオーストラリアでルクレールが記録して以来だそうです。
フェルスタッペンは今回、抜かれる場面で変なことをせずにちゃんと2位で我慢したのでその部分だけはちゃんとチームとして修正してきたんだろうなと思いますが、競争力の優位性喪失という問題は修正できなかったようなので、まずコンストラクターズ選手権の1位堅持には既に危ない状況になってきたと感じます。ドライバーの方はそう毎回ノリスだけが勝つわけではないので一気に追いつきはしないと思いますが、近いうちに25点 vs 0点 が発生して一気に詰まると重圧がかかってくるので、とにかく0点を避けるのが必須。その点では今回はフェルスタッペンは必要な結果を残したと言えます。
盛者必衰、なんと使い古された表現がありますけど、まさかこうなるとはマイアミでノリスが勝った段階ではまだ欠片も想像できませんでしたよねえ。ちなみに私が今回一番印象に残ったのは
なぜか最終コーナーを5人が集団で駆け抜け、DRSを使って危うく5ワイドになりそうな状態からターン1に入っていった場面でした。ここだけ見たらオーバルのレースかと思うような、F1ではあんまりお目にかかれない映像でしたがけっこう怖かったですw
次戦はスピードの殿堂・モンツァのイタリアです。
コメント
過去にあんなに強かったロータスも、マルボロカラーだったころのマクラーレンも、ウイリアムズも衰退していったのですから。
おっさんファンとしては、マクラーレンが復活したのはとってもうれしいです。コンストラクターズはマクラーレンが次のレースででも逆転しそうな勢いですが、ドライバーがどうなるのか、面白くなってきましたね。
ダーリントンを見ながらコメントを書いていたので、、、
ややこしいことをしてすみません。
お気になさらず~、レッドブルはもうコンストラクターズは何割か諦めてるんじゃないかなと思いますが、シンガポールが終わったら少しまた秋休みみたいな時間があるので、その間にどれだけ最適化できるかに懸かってるでしょうね。その先のアメリカ・中東の6戦は空力効率が大事な、本来ならレッドブルとフェルスタッペンが得意な部類のコースが多いですから、ある程度軌道に乗ってさえくれたらフェルスタッペンは耐えられるでしょう。もし迷走したらあと8戦/3か月はかなり長い時間になると思いますが・・・現実にはフェラーリ、メルセデスにも頑張ってノリスを止めてもらうのがチャンピオンへの最短ルートでしょうねえ。