ラジョーイ、今季限りでスパイアー離脱

 現在オリンピック休み中のNASCARですが、全世界のファンに衝撃を与える出来事(?)が起こりました。スパイアー モータースポーツのコリー ラジョーイが今季限りでチームを離脱することが発表されました。昨年の夏に複数年で契約を延長したと報じられていましたが、早期解除条項でもあったのか、元々1年+オプションだったのか、予想外の離脱となりました。
 スパイアーには来シーズンからクルー チーフとしてロドニー チルダースが加入して、ラジョーイの乗るカー ナンバー7を担当することが先日発表されたばかり。ラジョーイは複数年契約だと以前に報じられていますので、当然ラジョーイ/チルダースの組み合わせで2025年に挑むものだと思っていたら、チームの考えは違ったようです。
 発表されたのは第22戦インディアナポリスのレースが終わった4日後のことで、実際にはその前日にチームがラジョーイに対して通達を行い、これをジ アスレティックの記者に話したことで明らかになったようです。
発表前、いつも通りにポッドキャストで語るラジョーイ

「コリー ラジョーイは2021年からスパイアーモータースポーツの要であり、彼がこの組織にとってどれほどの意味を持っていたか、そして私がこの決定にどれほど苦悩したかを言い尽くすことはできません。」

とスパイアーの共同オーナーであるジェフ ディッカーソン。

「コリーはこのチームに心血を注いでくれました。私たちがレース ショップや工具箱、自分たちの車さえも持たないうちから、彼は袖をまくって仕事に取り組みました。振り返ってみると、あの頃は今の私たちの旅よりもずっとシンプルでした。あの頃はただレーストラックに行きたかっただけです。今日、私たちは安定したトップ10フィニッシュを目指して常に戦い、近い将来に勝利を争うことに夢中になっています。」
2022年、NASCAR公式動画で車両を解説

とラジョーイのこれまでの働きに敬意を表しました。一方でその後に続くのは

「レースには常に変動要素がありますが、全員が理解しているように、これはパフォーマンスに基づくビジネスであり、いくつかの理由によりそれが実現されていないということです。このような重大な決定を下す際には、これらすべての理由が考慮に入れられます。ライアン (スパークス) が幹部に昇格し、ロドニーが来シーズンに加入することから、スパイアーモータースポーツにとって最善なのは、2025年にNo.7を白紙の状態から計画することです。」
「コリーも別の組織から新鮮な目で見られるべきです。私たちは、彼がカップ ガレージでもう一度チャンスを得られるようできる限りのことをします。私はコリーと、このスポーツで成功する彼の能力を信じています。彼がこれをモチベーションにして、疑念を抱く人たちが間違っていることを証明してくれるのを楽しみにしています。」

と、要するに成績が不足していたからクビになったというような内容でした。確かに、ラジョーイは新加入のカーソン ホースバーに対して成績で水を明けられており、ホースバーが選手権24位なのに対してラジョーイは28位。新人のゼイン スミスにはさすがに勝っていますが『オリンピック休みまでに選手権25位以内』とか何かしら早期契約解除条項に引っかかったのかもしれません。
 後任についてはまだ発表されていませんが、これを考えるにはスパイアーの来年のチーム体制について見ておく必要があります。今の段階で決まっている(はず)のは、ホースバーは複数年契約中、マイケル マクダウルが来年加入することまで発表されています。

 ややこしいのはここからで、まずスミスはスパイアーではなくトラックハウス レーシングとドライバー契約を結んでおり、レンタルという形で参戦しています。現在トラックハウスは2台体制で空きがありませんが、2025年に3つ目のチャーターを取得して3台体制となり、ここでスミスが3人目のドライバーとしてフル参戦する、というのが昨年の段階で明かされている内容でした。

 一方で、トラックハウスにはもう1人・シェイン バン ギスバーゲンも抱えており、こちらはエクスフィニティー シリーズにフル参戦して勉強中。トラックハウスがエクスフィニティーにチームを持っていないのでコウリッグ レーシングに貸し出しての参戦です。ロード コースで3勝してけっこう頑張っており、こちらを起用したい意向もあります。優勝するとラグビーボールにサインを書いて観客へ向かって蹴り込むのも人気で定着してきた感じがありますね。

 元々トラックハウスが3つ目のチャーターをスパイアーからスミスごと引き取って取得するつもりだったのか、スパイアーのチャーターには手を付けずに別途調達する予定だったのかは分かりませんが、スチュワート-ハース レーシングの消滅に伴って市場にちょうどチャーターが出て来たので、トラックハウスはこのうちの1つを購入できるとみられています。
 そしてもう1つ別の要素として、2025年以降のチャーター制度について新規に保有できるチャーターを現在の最大4つから3つへと削減するという噂があります(既に4つ持っているチームは適用外)。トラックハウスは4が上限なら全部自分の手元に置くこともできますが、もしこれが現実になると手元に4人のドライバーを抱えていながらチャーターが3つしか無く、どうやっても枠が足りなくなってしまいます。

 スミスは今すぐ勝てるドライバーではない一方で、ギスバーゲンは今年も貰い事故がなければシカゴ市街地のレースで優勝していた可能性がありロードコースでなら優勝できる力を持っていると考えられます。こうした状況を総合すると、来年トラックハウスの3台目に乗るのはギスバーゲンで、スミスはスパイアーにそのまま残留するのでは?というのが1つの説です。

 一方で、ギスバーゲンはエクスフィニティーだけでなく今季のカップ シリーズにもやはりコウリッグからスポット参戦しています。当初の発表ではカップシリーズのスポット参戦に関してはトラックハウスからの出場と発表されていたものが、開幕前にこちらもコウリッグからの参戦と変更された経緯があります。
 両チームは特に表立って協業しているとは発表していませんが、かなり手を結んで活動し始めていることは明らか、合併するんじゃないかという噂も出るぐらいです。コウリッグは資金面でけっこう苦しんでいると見られ、ある程度のスポンサーを持っているギスバーゲンをレンタルで借り受けて走る形にすることにはそれなりに利点もあるとみられます。ということは、トラックハウスの3台目でフル参戦するのは予定通りスミスで、ギスバーゲンはコウリッグにレンタルしてフル参戦、という形になることも考えられます。

 ギスバーゲンのカップフル参戦が規定事項だとすると、スミスが移籍するのか残るのかで他のチームも含めて体制にけっこう影響することになり、この話の鍵を握っているのはトラックハウスの意向ということになります。スミスがトラックハウスに予定通り引き取られた場合、スパイアーは新たなドライバーと契約する必要が出てきます。
 現地メディアが伝えたところでは、後任として若手を起用するのであればエクスフィニティーに参戦しているサム メイヤーが候補になるとのこと。JRモータースポーツからフル参戦3年目の21歳、昨年の第20戦ロード アメリカで初勝利を挙げるとあれよあれよと4勝を挙げました。今季も2勝を挙げており、特にロードコースで強くて今季はギスバーゲンとガシガシやり合っています。
 ただ、メイヤーに関してはこれまたコウリッグのドライバー候補になっているとも伝えられており、フロント ロウ モータースポーツも狙っているようです。メイヤーがコウリッグに入るならギスバーゲンがトラックハウス、スミスがスパイアー残留のパターンになるでしょうか、って3チームの間で大人の事情で所属選手が入れ替わってるだけじゃないかw

 スパイアーはクラフツマン トラック シリーズにもチームを持っており、ちょうどカイル ブッシュ モータースポーツを買収して体制を拡大させたのでこちらで抱えている選手もいますが、フル参戦ドライバーのラジャ カルース、チェイス パーディーの2名はカップにいきなり来るにはちょっとまだ力が足りない印象です。
 最近カイル ブッシュが絶不調であることと、カイルはチームを売却したもののスパイアーから引き続きトラックシリーズにスポット参戦していて繋がりがあることから、カイルがラジョーイの後継として加入するのではないか、という噂も出たようですが、カイルとリチャード チルドレス レーシングの契約期間は来年まであるため、さすがにこれは噂止まりと考えられているようです。

 ラジョーイに来年の仕事があるのかについては、これまた移籍先候補の1つにコウリッグが上がっているようで、コウリッグのシートの1つは他チームの動向等によって極めて流動的な存在になっているようです。またリック ウェアー レーシングの名前も挙がっており、ジャスティン ヘイリーとラジョーイのコンビになるなら、どっちも元スパイアーの選手ということになります。あ、でもヘイリーがラジョーイの後釜という説もあるようなので、その場合交換トレードですねw
 
 トラックハウスの意思決定には2025年以降のNASCARとチーム側のチャーター契約合意が大前提になりますが、まずここが全然決着しないのですぐに全てのピースは埋まらなそうです。

コメント

アールグレイ さんの投稿…
ラジョーイはスーパースピードウェイで上位に顔を出してくることや、フェイスカーは勿論、ダーリントンでは父親コーリーのエクスフィニティーのチャンピオン時代のスキームや同じNo.7のカルウィッキーの復刻、トランプの大統領選キャンペーンスキームなどでいろいろ楽しませてくれたドライバーだと思います。
BKやトライスター、FASなど自分が所属したチームが消滅する事が多かったですし、スパイアーで4年間ほぼフル参戦出来たことはとても大きかったでしょうね。

今年の成績はチームメイトのホースバーに押されている感じはありますが、去年の全戦での完走やキャリアベストのランキング25位はチーム力を中位に押し上げた証拠でしょう。
ホースバーもベリーと新人王を争えるほどになりましたし、スミスもナッシュビルでの2位からは中位でのフィニッシュも増えてきたので、3台とも中位にいることも珍しく無くなりつつあるのは凄いです。

そしてこれでマクドウェルの期待は更に大きい物になるでしょうね。
カップ戦での実績は歴代スパイアーのドライバーの中ではダントツですし、安定感だけでは無く今シーズンの3ポールなど速さも見せつつあるので、来年が待ち遠しいです。
ただNo.71にマクドウェルが乗ることが発表されているので、No.7はスミスが移るか他のドライバーを迎えるかという所もややこしく感じます。

ラジョーイは今年からハービックの会社にマネジメントして貰っているそうですが、ハービックもエクスフィニティーやトラックのチームを持っていた頃もありましたし、色んなことをやっているんですね。
その力も借りて、何とかカップ戦のシートを掴んで欲しいと思いますw
前にG+の解説の誰かが(石見さんか天野さんだだったと思います)20位から25位を安定して走れるドライバーは結構求められていると当時FRMのレーガンに向けて言っていたのも思い出したので、それに相応しいドライバーなんじゃないかと。
まっさ さんのコメント…
トラックハウスはスイカにタコスにラグビーボールに何か投げることって契約あるのかな??????
(スイカ男がパッとしないので久々登場w)
日日不穏日記 さんの投稿…
正直、中堅から下位チームの状況は、よく分かりませんが、ラジョイは、そこそこやってきたドライバーだと思います。このままカップから消え去るのは、惜しいな・・・と言う気はします。奇抜なペイントスキーム好きだったし(違)、スパイアーには、あまり書きませんでしたが、推しのマクダゥエルが加入します。まぁ、カイル、ケセロウスキーと併せ、推しが40前後のオジサンばかりなのは、どうかとは思いますがw。
チルダースとラジョイが組むと既成事実のように実況で流れていたので、正直ビックリしました。そこそこヘイリーも頑張ってるし、所属できるチームがあれば、そこそこ活躍出来ると信じているので、ラジョイの動向に注目したいと思います、
SCfromLA さんの投稿…
>アールグレイさん

 フェイスカーが無ければここまで中位~下位のドライバーが名前を覚えてもらえることもまずなかったと思いますから、あの一発の存在感と風貌の力は大きいし、それをうまくその後の活動につなげて、ちゃんと結果も出したなかなか面白いケースのドライバーですよね。
 スパイアー的には『本気で勝ちたいと思っている』という意思を内外に示す意図もあったでしょうし、正直出て来たころは実態もよく分からん存在のチームだと思っていたのでけっこうやるなと思いました。コナー ジリッシュも次世代の若手候補として手元に置いてるっぽいですね。
 そして仰る通りラジョーイ自身も安定した中団での完走を継続すれば仕事は見つかる可能性はあるので(ハースファクトリーのエクスフィニティーにまだ空きがありますがw)、中団チームのドライバー大移動は楽しみです。来年覚えるのが大変そうですけど。
SCfromLA さんの投稿…
>まっささん

 たしかに(笑)1-2-3フィニッシュしたらコラボして、スイカにサインしてタコスで挟んで蹴る、みたいなことを、、、やったら絶対怒られるな^^;
SCfromLA さんの投稿…
>日日不穏日記さん

 カーナンバー7の横にペイントスキームとして77を足して777にするとか、チームもラジョーイ=奇抜、という存在感を存分に生かして宣伝効果を高めていたように思うので、それが無くなる来年からはちゃんと結果で広告効果を出さないといけないでしょうね、もしくは誰かにその役を負わせるw
 推しが若手ではなくオジサンにかたよるのは長年観戦しているとありがちなやつでしょうね~、私も未だにエクスフィニティーでオールガイアー応援してるものw
Cherry さんのコメント…
スパイアがなんか知らんうちにトラックハウスの抱える若手を乗せるジュニアチームのようになりそうな方向がありそうなのは気のせいでしょうか…w(ビジネス的にはあり)
コールウィットとかが乗ってた72が現存した頃から名前も見た目も目立つ顔だったのでこのまましれっとフェードアウトしないでカップシリーズない続けて欲しいです!
SCfromLA さんの投稿…
>Cherryさん

 まさにトラックハウスとスパイアーのお互いにとって有益な関係というところでしょうね。トラックハウスはドライバーを囲い込んだ上で走行機会を幅広く与えられる、スパイアーは(たぶん)自分でドライバーに給料を払うことなく有望なドライバーを起用する機会が手に入る。単に毎週ビリを走るだけの泡沫組織にならずに上を目指せる上手いやり方を見つけたなと思いますね。