ABB FIA Formula E World Championship
いや、キャシディーの言っていることは正解でした。2台後ろまで来ていたダコスタ、ターン15で全然止まれないミサイルブレーキ。キャシディーに思いっきり突っ込んで、これでパンクしたキャシディーは順位を下げ、そして旋回速度が遅いので予想していなかったグンターに押されたようです。ダコスタ、これはやったらあかんやつやで・・・
3位フィニッシュのエバンスはここ3年で2度目の選手権2位、私が推してるから呪われたんだろうか・・・アタックを空振りしていなくても、その後にエナジー残量にゆとりが少ない状況でローランドを抜く必要がありましたからチャンピオンを獲れたかどうかは分かりませんが、少なくとも唯一の道を自分で閉ざしたのは間違いありません。キャシディーは気の毒すぎましたが、そもそもポートランドで自滅さえしていなければこんなことにはなっていない、というのもまた事実です。
2024 Hankook London E-Prix
ExCel London Circuit 2.08km×34Laps(-0.11km)=70.61km
※規定により37周に延長
Race Energy:27kWh
winner:Oliver Rowland(Nissan Formula E Team/Nissan e-4ORCE04)
いよいよフォーミュラEシーズン10、2024年の最後のレースです。昨日のレースを終えて選手権1位はベアラインとなり、3点差でエバンス、7点差でキャシディー、この3人にチャンピオン争いは絞られました。決勝の周回数が昨日よりも少ないのでさらに予選順位が重要、そして最後のレースなので昨日以上に無茶する人も増えるでしょうから中団にいたら危険極まりないと思われます。いや、昨日の段階で既にデニスはヤバかったw
少なくとも上海を終えた時点ではチャンピオンに片手が届いていたはずのキャシディー、最終戦を前にしてまさかの3位転落ですがまだ7点差ですから自力で今日チャンピオンを決めることもできます。ただ、彼は完全に運から見放されたのか今日もいきなりの試練。FP3を走ろうとしたらブレーキの異常を示す情報が発生し、ピットを出る→直らない→戻る→ピットを出る→直らない→戻る、でセッション終了。全然原因が掴めなくてセッション中に直すことができませんでした。ああ、もう終わった・・・
・グループ予選
順位が奇数なのでA組に割り当てられるキャシディー、なんとかギリギリで作業を終えて無事に出走しますがほぼぶっつけ状態。しかしそもそもがちゃんと走れさえすれば速い人なので、キャシディーはこの状況で1分10秒323と昨日のデュエルス最速並の記録を叩き出して1位通過しました。ベアラインもこれに続く2位できっちりとデュエルスへ。バード、フラインスもデュエルスに進みました。
B組ではグンターが最速。2セット目のタイヤでの最初のアタックは全体ベスト、からのターン15大失敗で暫定最下位でしたが、2周後にやり直した2回目で1分10秒395と挽回しました。エバンスは2位、バンドーンとベルニュが続き、ベアライン支援のためにも上位にいたかったダコスタは5位でデュエルスに進めませんでした。
・デュエルス
準々決勝はチャンピオン候補者3人+グンターが順当に勝利、全員が1分10秒2を記録しました。そして準決勝のA組ではベアラインとキャシディーが直接対決になりますが、ここはベアラインが1分10秒4とやや遅れを取ってしまいキャシディーの勝利。B組はエバンスがグンターに0.046秒で敗北してここでポールの可能性がなくなり、ベアラインと並んでの2列目スタートです。
キャシディーの先攻となったデュエルス決勝、先に戻ってきた彼が記録したのはなんと1分9秒871、まさかの9秒台で見ていて目が点になりました。10秒を切った人は練習走行で一人もいない圧倒的なこの週末最速です。グンターも1分10秒040とむっちゃ速かったんですが、キャシディーがジュリアスベアポールの貴重な3点を獲得しました。これで決勝はベアラインからキャシディーまでたった4点差、勝てば全員が自力でチャンピオン、それ以外だと下手すると同点やファステストの1点が絡む史上最激戦となります。
スタート順位はキャシディー、グンター、エバンス、ベアライン、フラインス、ベルニュ、バンドーン、バード。チャンピオンを争う4人の中に混ざっているグンターの存在が非常に大きいですね。
・決勝
テーマ曲を生演奏していよいよスタートの時。バーンナウトの白煙が消えてからスタート、のはずがあんまり待ってない気が。ちょっと視界が白い中でスタートし、グンターがやや遠慮気味なのかエバンスがターン1で外からかわしてジャガーのワンツーとなります。ただ同士討ちが怖いぞ。
1周して戻ってきたらまだ室内が白いのでやっぱりスタートが早すぎた気がしますが、2周目のターン2〜3でデニスとモルターラが絡んで2台でまっすぐ壁に突っ込み、道の何割かを塞いでしまったので本日もSC導入。デニス~。
5周目にリスタートすると、ターン15ではゆったりペースで内側を抑えて走るキャシディーの心のすきを突いてエバンスが大外刈りを仕掛けに行きました。抜けなかったものの緊張感が一気に高まります。そしてベアラインもまたグンターを狙っており、6周目のターン19〜20でグンターをかわしました。
すると7周目、下り坂を降りたターン5でバードがまた真っすぐ刺さっており早くも2度目のSC。混戦であっちこっち行く手を阻まれたバードが最後はジェハン ダルバラの車に突っ込みながら事故り、道を塞がれた後続もつまりました。バード、イギリスは母国レースなんですがロンドンではなんか事故に遭う印象ですね。。。
ここでエナジー残量が表示されますが、昨日と同様3位のベアラインが節約できていて少し残量に余裕があります。ジャガーはワンツー体制なのは良いですが、さすがにここで順位を維持する指示を出すわけにもいかないし、かといって自由にやらせた結果ベアラインに持っていかれたら全く意味がありません。アタック2回をうまく使う必要もありますから相当上手くやらないといけません。
10周目にリスタート、するとここでエバンスがターン14から15にかけてベアラインを抑え込んで空間を作り、1位のキャシディーがタダでアタックを獲得。ただエバンス的にはここでとりあえず1回は前に出られるもんだと思ったので、抑え役をやらされたことに不満そうです。
13周目、キャシディーは2度目のアタックでさっきと同じやり方になるはずでしたが、今度はエバンスの蓋がやや甘めだったので差がじゅうぶんではありませんでした。キャシディーはエバンスだけではなくベアラインに抜かれて3位となり、今度はキャシディーが不満そうです。危惧した通りの展開になってきました。エバンスは1回目の件で不満そうだったので、今回はちょっと反抗してあんまり抑え込まなかったのでは?と見ていて邪推。
これでひとまずはエバンス、ベアライン、キャシディーの順位となって前の2人はアタック未使用。ベアラインは同条件のエバンスをコース上で抜くことが重要なのでかなり揺さぶりをかけています。キャシディーからするとその逆を突いて抜いてしまいたいでしょうから、ベアラインも本当の勝負は一発で決めないと墓穴を掘りかねません。
徐々にそれぞれの事情で3人とも熱くなってきたようで、20周目にはとうとうベアラインがターン1でエバンスの内側に鼻先を入れていきました。エバンスはブレーキングしつつ左にゆるーっと進路を変えているのでこの後注意を受けますが、ベアラインの方もちょっと距離が遠かったとは思います。いずれにしても接触寸前でかなり際どい場面でした。
この2人が決して効率的とは言えない走りを続ける中で気づいたら4位には2回のアタックを終えたローランドが来ており、いわば昨日のグンターの立ち位置。後続が付いてくると前の2人はますますアタックに入りにくくなります。ベアラインは前に出てしまえばエナジーに余裕があるので引き離してアタックに行けそうですが、エバンスにはその余力がありません。
エバンスはタイヤもしんどくなってきたのか23周目からさらにベアラインの攻撃を受け始め、キャシディーからするとペースが遅すぎて自分が抜かれる危険性もあるのでもうちょっとはよ走れと苦言。エバンスはベアラインに抜かれても詰みますし、自分からアタックに入って道を開けても詰むので絶対動けません。ベアラインも今入って集団に埋まったら詰むのでエバンスを抜くまではアタックに行けず、お互いに完全に拘束された状態です。このままなら結果的にキャシディーが有利。
ただ、エバンスはブレーキング中の進路変更で黒白旗まで食らってしまい、エナジー残量でも劣勢度合いが強まってちょっと限界が近づいています。キャシディーはこのまま膠着し続けてくれていればいずれは勝てますが、後ろからはこの状況を救おうとしてかダコスタがじわじわと順位を上げてきて気になります。すると28周目、信じられない自体が発生。
キャシディーが急にローランドに抜かれて順位を下げており、さらに最終コーナーで後ろからグンターに押されてスピン。パンクしているようでそのままピットに入り「ダコスタに右後部をやられた。突っ込んで来やがった。」いや、押してきたのはグンターだったと思いますよ、グンター自分のウイング踏んでジャンプしてるし^^;
いや、キャシディーの言っていることは正解でした。2台後ろまで来ていたダコスタ、ターン15で全然止まれないミサイルブレーキ。キャシディーに思いっきり突っ込んで、これでパンクしたキャシディーは順位を下げ、そして旋回速度が遅いので予想していなかったグンターに押されたようです。ダコスタ、これはやったらあかんやつやで・・・
騒然としますがレースは続いており、29周目にエバンスとベアラインが同時にアタックへ。というのも、もうレースが残り少ないのでもしSCが出てしまうとアタック6分を消化しきれない可能性があるためです。順位を失うとかなんとかいう以前の問題なので、もう今すぐ入るしかありません。
まさに2人が検知点を通過しようかというところでSCが出てしまい、2人とも間に合いませんでした。もしSCが長引いたら2人とも未消化でペナルティー対象。ということは入賞圏外で点が入らないので、入らなかったらチャンピオンはベアラインです。そしてなりふり構わずアタックに向かった隙にローランドがしれっと1位になりました。もうアタックは使い終わっているので優勝確率急上昇。ベアラインとエバンスは3点差なので、エバンス2位・ベアライン3位の場合は同点。この場合優勝回数が多いベアラインがチャンピオンとなります。エバンスは勝つか、もしくはベアラインが落ちてくれないといけません。
31周目にリスタートすると、空気を読まない男・ローランドが再開と同時にかっ飛ばしはじめました、そしてエバンスとベアラインはとにかく急いでアタックへ。と、ここでさらにややこしい問題発生、さっきのSC時の失敗アタックの際にローランドが前に出ましたが、SCが出た瞬間に前にいたのはエバンスだった可能性があるようで、SC中に他車を抜いた嫌疑が発生しました。審議されそうなのでローランドは順位返上、エバンスに千載一遇のチャンス。そして33周目、エバンスとベアラインはもちろん連続で2回目のアタックへ。ブオン(←アタックを取った時の国際映像の効果音)
・・・(´・ω・`)・・・あれ?エバンス、なんとありえないことにアタックを空振り。翌周に入り直したもののベアラインに抜かれて3位に後退します。最後の希望に賭けて自力で抜き返したいエバンス、ですが残り3周ちょっとでアタック4分を使い切る必要があり、今のペースで走ると消化する前にチェッカーにたどり着いてしまいます。ということはアタックを使い切るためにはちょっとペースを落とさないといけません。ということは前を追えません、ということはチャンピオンを諦めることになります。ハイ、完全に詰みました。
レースは3周の追加となって合計37周、しかしもうレースの優勝争いもチャンピオン争いも事実上決着しており、さすがにこれ以上のサプライズもありませんでした。優勝はローランド、今季2勝目でドライバー選手権も4位を獲得です。そしてその1秒後方でチェッカーを受けたベアラインがABB FIA フォーミュラ E 世界選手権 シーズン10のドライバーズ チャンピオンを獲得しました。いや、レース後車検があるからまだ気は抜けないけどw
3位フィニッシュのエバンスはここ3年で2度目の選手権2位、私が推してるから呪われたんだろうか・・・アタックを空振りしていなくても、その後にエナジー残量にゆとりが少ない状況でローランドを抜く必要がありましたからチャンピオンを獲れたかどうかは分かりませんが、少なくとも唯一の道を自分で閉ざしたのは間違いありません。キャシディーは気の毒すぎましたが、そもそもポートランドで自滅さえしていなければこんなことにはなっていない、というのもまた事実です。
でもダコスタのあれはさすがに無いですね、わざとではないでしょうが、『契約してくれたチームのために役に立つんだい、えーい(^o^)/」という風に誰が見ても見えるミサイルです。グンターもローランドもチャンピオン争いの3人に対してそれなりに気を使って走り、レース界の不文律である『チャンピオン争いに手を出すな』をわきまえていましたが、ダコスタはチームとして当事者なのでもっと意識すべき立場でした。後味は悪いです。
ダコスタは年間3勝を含め表彰台は5回。ローランドが2勝を含む表彰台7回、エバンスも2勝を含む6回なので上位で終えたレースの数だけ見たら突出はしていませんが無得点だったのは僅か2戦、これはベルニュと並んで最小です。ベアラインは昨年も無得点だったのは僅かに1戦だけでしたが、開幕3戦2勝の圧倒的結果から失速し、入賞はしても1桁得点ばかりで5位以内で終えたのが僅かに5戦、とりわけ第5戦以降に限れば優勝した1回だけでした。今年は5位以内のレースなら11回もあり、安定して上位だったことが分かります。
DTM史上最年少チャンピオンであることからも彼の才能は元々明らかでしたが、特殊なフォーミュラEの車両でも早くから実力を見せてきた有力選手ですから、ようやく才能に見合った車に車の方が仕上がっての戴冠だったと思います。ほんのちょっとしためぐり合わせさえうまく行っていれば、F1で上位を争っていても不思議じゃない選手だと思うんですよね。
一方、悲惨だったジャガー。直接的な敗因はダコスタミサイルと、ひょっとしたらアタック空振りもそうですが、遠因がチームの指揮系統の混乱だったことは明らかです。The Raceの取材によれば、この2人は基本的に潰しあわない範囲である程度自由にそれぞれの勝利に向かって戦うことが許可され、もし一方を支援する状況になった際には明確に伝えられることになっていたようです。
しかし実際にはエバンスはキャシディーの1回目のアタックの段階で後続の抑え役を任せられ、混乱が始まってしまいました。モナコでは2人が協力して入れ替わりながら戦っていましたが、今回は3位以降の距離も近いので『1位と2位だけをアタックでうまく入れ替える』ということが現実的に難しく、それなら1位で入って1位で戻る方が良いと考えたんでしょうが、どう考えてもこれだとエバンスが不利です。2回目のアタックでエバンスが言うことを聞かなかったっぽいのは『そらそうやんか』という出来事でした。
ポルシェのチーム代表・フローリアン モドリンガーもレース後に
「我々にとって予想外の重要な動きは、キャシディーがアタックモードに入りパスカルの後ろについたことだ。」「これがレース全体の鍵だった。彼らがあんなプレーをするとは思っていなかったし、ジャガーが遅れをとることも予想していなかった。キャシディーがパスカルの後ろに落ちた瞬間、我々は争いに加わったんだ。」
と、あのアタックを巡る混乱が大きな転換点だったと語っています。ジャガーは完全に自分のゴールに向かってボールを蹴ってしまいました。
他方でキャシディーからしても、少なくとも2人である程度はレースを円滑に進めてベアラインに掠め取られることを避けるべきなのに、序盤からちょろちょろとエバンスが狙ってきて効率的に走れないことには不満があったようです。昨日エバンスとブエミがこちゃこちゃとやり合ってエナジーを消耗したのと同じことがチームメイト間でも起きてしまいました。
モナコで見せたようにチームとして最大の得点を獲るために協力し機能していたこのコンビではありましたが、チャンピオンを争うことになったらどうなるんだ、というのは以前にも書いたと思います。明確な序列を設けずに対等に扱っているチームはこういう場面で致命的に脆くなるというモータースポーツ界の歴史をそのまま歩んでしまいました。
おそらくレースの終盤に向けては、もうエバンスが状況的にほぼ詰んでいたことは分かっていましたが、キャシディーが3位にいたためにチームとしてできることがなくベアラインの結果頼みという状況に陥り、そして詰まったせいでミサイルを食らうという本人からすると信じられないほどつまらん結末になったわけで、こんなことならとっととエバンスをアタックに放り込んで自分とベアラインでサシで勝負させてくれれば、と思ったことでしょう。二兎を追う者は一兎も得ず、でした。せめてもの救いはチーム選手権だけは手元に残ったことでしょうか。
※7月28日追記
レース後にダコスタにペナルティーが課せられて入賞できなかったため、マニュファクチャラーズ選手権もジャガーが4点差で初代チャンピオンを獲得しました。確認不足でした、お詫びして植毛いたしますm(_ _)m
シーズン序盤、圧倒的にリードするキャシディーに対してチャンピオンを逃すフラグ的なこともボソッと書いたような気はしますが、本当にフォーミュラEは最後まで何が起きるか分かりませんね。Gen3Evoとなる来年も、色々と物議を醸しながら面白いシーズンになってくれることを期待します。
コメント
今回のジャガーを見ると、実力が互角であるドライバー2人をチームがいかに上手くマネジメントするか… その難しさを、ひしひしと感じました。
来年こそはキャシティーか、エバンスのどちらかにチャンピオンを獲ってほしいです(>ㅅ<)
ダコスタ、ミサイルにより5秒加算で13位に。
これにより.... なんとマニュファクチャラーランキングはジャギュアァァァが4点差で取り戻しました。
2冠とはいえやっぱりドライバーチャンピオンが最重要なはずなので気休め程度にしかならないのかなぁ...
キャシディ 来年こそ!!!
展開が劇的過ぎて頭が付いていくギリギリぐらいのレースでした。F1でもマクラーレンが同じような状況を抱えましたが、ジャガーは開幕前からなんとなくこうなる予感がしていたのでまたなんとも・・・^^;
ありがとうございます!普段見ている公式ドキュメントのページにマニュファクチャラーズ選手権だけ項目が無いので公式ページに確認しに行かずに中継映像止まりになっていたのが失敗でした、ただちに修正しますm(_ _)m
スタッフのミスにより緑と黒のシマシマで植毛しちゃいました(´>∀<`)ゝ
日産勝ちました。キャシディ残念。
これで大手メディアなどは追うの辞めたのかってぐらい情報スピードが遅くなりましたから致し方ないです。。
(アタックチャージ?名前も忘れましたがどこいったんだろ...)
インディカーはシーズン途中でハイブリッド導入!と正反対の対応で見ている身としては面白いですが。。。
オフシーズンのネタも楽しみにしてます!