フォーミュラ E 第15戦 ロンドン

ABB FIA Formula E World Championship
2024 Hankook London E-Prix
ExCel London Circuit 2.08km×37Laps(-0.11km)=76.85km
※規定により39周に延長
Race Energy:27kWh
winner:Pascal Wehrlein(TAG Heuer Porsche Formula E Team/Porsche 99X Electric)

 世界一エキサイティング、30億人が熱狂するABB フォーミュラ E(大嘘)、シーズン10はいよいよ最後の2連戦・ロンドンです。今年も展示場施設・エクセル ロンドンの建物内部とそれに接続するスロープ&外周道を使った類を見ないコースでの決戦です。ここでの契約はThe Raceによれば来年までとなっており、高速化するGen4の時代へ向けてはシルバーストーンやブランズハッチといった開催地の名前が挙がっているようですが、フォーミュラEに合っているのかは謎ですね。

 とにかくせせこましいエクセルロンドンはエナジーを使う場所が無くて普段の38kWhとかでレースをやると最初から最後まで全力になってしまうので、昨年と同様に決勝で使用可能なエナジーは27kWh。レース距離は土曜日だけ昨年より1周多い37周です。それなりの節約は必要ですが、基本的に内側を走っていたら抜きような無いので防御しやすく、先頭を譲り合って1周で5個も10個も順位が変動するペロトン スタイルにはなりません。予選順位がレース結果に繋がりやすい"特殊"なコースと言えます。スタートからコーナー5つぐらいは接触事故の危険性も高く、後方からのスタートは絶対に避けないといけません。
 
 ドライバー選手権ではニック キャシディーが1位ではあるものの、前戦ポートランドで1点も取れず流れとしては最悪。12点差でミッチ エバンスとパスカル ベアラインが付けており、ちょっと離れてはいますがアントニオ フェリックス ダ コスタが33点差、ポートランドは体調不良で欠場したオリバー ローランドも上位の取りこぼしにより36点差で戦線にギリギリ生き残っています。

・レース前の話題

 最終戦ともなると来年の契約が気になりますが、ダコスタとポルシェが契約を延長したとみられることがわかりました。ダコスタは今季開幕から不調でポルシェ首脳陣からの評価は厳しいものとなり、シーズン中にニコ ミュラーをテストに呼んだことから決裂は必死とみられていました
 しかしその後ダコスタは調子を取り戻して立て続けに4勝、さらにチーム側の些細な車両規定違反がなければ本当はもう1勝していたわけで、成績としては文句の付けようが無くなりました。お互いに亀裂が入った関係を修復しもう1年の契約延長となったようです。でもダコスタ的には自分をクビにしかけたことに対して不満は消えないでしょうねえ。ミュラーはポルシェ入りが消えてしまいましたが引き続き市場の注目株ではあるようで、ノーマン ナトーと入れ替わってアンドレッティーに加入する可能性があるようです。ああ、ナトーがまた無職に・・・

 一方DSペンスキーのストフェル バンドーンは今季限りでチームを離れることが明らかになりました。メルセデスEQでシーズン8のチャンピオンを獲得し、チームの解散に伴って移籍してきたバンドーンでしたが、この2年間は表彰台が一度だけと苦戦。
 DS E-TENSE FE23は必ずしも強力な車とは言えませんでしたが、チームメイトのジャン エリック ベルニュと比較して今季も獲得ポイントが69点少なく、大きく負けていました。後任はマセラティーのマキシミリアン グンターがステランティス内での移動になりそうで、既に契約済みではないかとの情報です。バンドーンは来年もフォーミュラEに残るため移籍先を探しているところで、候補はエンビジョン、日産、マセラティーではないかとThe Raceは伝えています。マセラティーなら単に交換トレード状態ですねw
 日産はサッシャ フェネストラズに期待をかけているものの結果があまりに伴わないので、どうするかはちょっと悩んでいるとの情報。ナトーがはアンドレッティーからはじき出された場合には日産に出戻りする可能性もあるようです。

・グループ予選

 ベアラインとキャシディーの2人が名を連ねるA組。ちょうど予選が始まるころに雨が振り始めており、タイヤの熱入れとかなんとか言ってる暇もなくみんな大急ぎでアタック。幸い路面状況は悪化ではなく走っていれば改善方向だったので、みんなとにかく攻め続けてタイヤ無交換の勝負になりました。しかしこれはキャシディーに大きな災いを呼びます。
 最終的にタイム水準はほぼ練習走行の速さに戻りましたが、セッションの最後にちゃんとタイヤが残っていたかどうかが勝負の分かれ目となりました。最速は1分10秒927と唯一10秒台だったベアラインで、セバスチャン ブエミ、ローランド、ロビン フラインスのトップ4でした。
 キャシディー陣営はタイヤを冷やすタイミングを見誤ったようで、最後の2周は連続アタックの指示を受けたものの1周目の終盤時点で既に後ろのタイヤがズルズル。この状態でもう1周続けても良い記録が出るはずがなく、なんとグループ9位で後方スタートが確定しました。雨が強くなると見越したのか最初に力を注ぎすぎ、最も路面の良い最後の時間にはタイヤが終わっていたキャシディー、元々連続アタックには疑問を感じていたため無線でも、そして車を降りた後も怒りが収まりません。エンジニアのフィル イングラムもやっちまったなあという表情。

 続いてエバンスとダコスタがいるB組、国際映像に表示されているタイム差が普段の"1位との差"ではなく"1つ上の順位の人との差"になっているのでわかりにくいなあと思いつつ気づいたらセッションは終盤。
 雨の影響も無くなったのでみんな予定通り途中でタイヤ交換して最後の1周で勝負する形となりますが、最速は1セット目のタイヤで1分10秒878を記録していたエバンスでした。久々に爆発力を見せたミュラーが2位、ロンドンは比較的相性が良い(がその後契約を失うことが多い)ナトーが3位、ジャン エリック ベルニュが4位でした。ダコスタはわずかに届かず5位でデュエルスに進めませんでした。

・デュエルス

 350kWの出力になってもほとんど恩恵がないこのコース、準々決勝は勝ち上がった人でも1分10秒9近辺とグループ予選のエバンス相当の記録しか出ませんが、そのエバンスだけは1分10秒283という一人だけ異常な速さを見せます。そしてもうこの頃にははっきりと影ができるぐらい陽が差す時間すら出てきました、ロンドンウエザー。
 準決勝、A組はベアラインがブエミに敗北、B組はエバンスが順当に勝ち上がりはしましたが、今回は1分10秒835と平凡な記録。逆にブエミが1分10秒402とやたら速かったので決勝はブエミが後攻となります。これは予想が難しい・・・

 迎えたデュエルス決勝、先攻のエバンスはさっきシケインで縁石を使いすぎていた様子でしたが今回はもうちょっと手堅い感じで1分10秒622とそれなりの記録。後攻のブエミは前半で僅かにエバンスより速かったものの、シケインでその貯金がチャラになり、次のターン16で僅かに滑ってしまいました。
 これでブエミは0.069秒届かず、エバンスがジュリアス ベア ポール ポジションを獲得して3点追加、エバンスとキャシディーの点差は9点と1桁台になりました。ピットで観戦するキャシディーは複雑な雰囲気ですが親友でありチームメイトを無視もできないので一応拍手していました。予選段階でこんなに悲壮なポイントリーダーってあんまり見たことない気がしますが、もうこれは最終戦を追いかける側として迎える可能性がかなり高まりました。心理的にはもうこの既に追い詰められた印象ですね。



 スタート順位はエバンス、ブエミ、ベアライン、ナトー、ベルニュ、ミュラー、ローランド、フラインスのトップ8、ダコスタは9位、キャシディーは失意の17位です。


・決勝

 スタート直後の大混乱はなかったものの、9位争いをしていたデニスとフラインスがターン10のシケインを並走、しようとして失敗。デニスが勢いよく入りすぎて縁石で跳ねてしまい、外にいたフラインスと接触。フラインスはシケインを曲がれず高い縁石に当たってサスペンションが折れ、そのままサム バードを通せんぼしつつ止まってしまいました。道が半分ぐらい塞がれたのでSC導入となります。
※ぶつけたデニスは既に画面外へ逃亡

 5周目にリスタート、しかしここからタイトル争いをしている人に立て続けに問題発生、まずこの周にアタックを取りに行ったキャシディーが空振りして順位だけを失うと、翌周はターン15でベルニュとデニスが、さらに最終コーナーではダコスタとローランドが接触していずれもあわや多重事故。有力者が次々と消えていきます。
 そんな事故のリプレイを映している間にブエミがエバンスを抜いて先頭に立ちました。ブエミ、エバンス、ベアライン、ナトーのトップ4でしばらくレースは進みます。5位以下の人は次々とアタックを使用していきますが、この4人はにらみ合いになって誰も動かないまま膠着します。
 ブエミはペースをかなり抑えながら抜きどころでは徹底してブロックのラインを採って後続を抑え込む状況。エバンスは抜こうという動きを見せるものの当然抜ける場所がありません。すると16周目、エバンスがターン9でブエミに近寄りすぎて詰まったようで加速が鈍りました。これを見てだと思いますが、ようやくブエミが1回目のアタックに入り2位で合流。
 エバンスもこれに反応して翌周にアタックに入り、これまた1位で入って2位で合流。これでブエミが引き続き主導権を握っているかと思いきや、20周目にエバンスとベアラインの2人に抜かれて3位に後退、ややエナジー残量に不安があって1位を走り続けることができなくなったようです。

 これで流れが変わります、前にいるのが1人になったので、ここまで我慢してエナジー貯金をしていたベアラインが22周目にエバンスをかわし本日初のリード、そしてアタックを目指して一気にペースを上げます。23周目、ベアラインは狙い通りアタックを獲って1位のまま合流。

 飛ばしているベアラインをエバンスが追いかけた一方でブエミにはその力が無いので、2位と3位の間に空間ができました。24周目にエバンスは2回目のアタックを取り、なんとかベアラインにタダで2回目のアタックを使わせないように攻めます。しかし余力があるのはベアラインの方なので、27周目にベアラインも2回目のアタックを取って狙い通りギリギリ順位を守りました。ペロトンスタイルのレースだとアタックにいつ入って順位がどうなったかはほぼ無意味なので、こういう話を書いたのが久しぶりな気がするw
 するとここからエバンスには厳しい時間が待っていました。身の丈以上に飛ばしてベアラインを追いかけた代償としてエナジー残量が厳しく、別の戦略で淡々と走って25周目にはブエミを抜いて3位となっていたグンターが残量に余裕を持って追い上げてきました。エバンスはグンターより1秒遅い程度でしか走ることができず、30周目の鉄道と並んでいる短い直線でかわされて3位に後退です

 この後ターン1でフェネストラズとナトーの接触があり、もうコース上があちこち破片だらけなので32周目についにSC導入。これはエバンスにとってもありがたい話で、もうレースの延長には影響しないので残量不足の人たちにとっては単純に助かるやつです。
 破片回収のためのものなので作業は短時間、34周目にリスタート。ところがいきなりターン9の先でグンターの車が失速してコース上に止まってしまいました。ギアボックスが壊れたそうですが、SC前から車載映像で音に変な異音が混ざってたので気にはなっていました。異音の原因がこれならけっこう前から壊れていた気がします。レースは2周の追加と発表されますが、全くグンターの車が動かないので36周目にFCY導入でレースを延長させつつも実質は現在進行形で目減り中。

 37周目にリスタート、残りは3周。もう節約する必要がないぐらい余裕ができたので上位勢は1分11秒台でかっ飛ばし、ベアラインがそのまま今季3勝目を挙げました。勝ったのが第1戦、7戦、15戦、と飛び飛びですがこれで選手権で1位に返り咲き。2位でレースを終えたエバンスは選手権でも3点差の2位で翌日の最終戦に挑むことになりました。ブエミは開幕戦以来の表彰台となる3位、入賞自体がまだ今季5回目でした。

紙吹雪が多すぎる件w

 4位にはなんとビックリ、マヒンドラのニック デ フリース。14位スタートから混戦をくぐり抜けて6周目には既に6位にいて、そのまま落とすことなく帰ってきました。で、大変だったのはこれ以降で、5位でチェッカーを受けたのはデニスでしたが1周目のフラインスへの接触に加え、ベルニュとキャシディーにもぶつけて合計で20秒加算。6位のフェネストラズも接触で5秒加算を受けて降格となり、結果5位に入ったのはエドアルド モルターラでした。マヒンドラがなんと4位と5位です。調べたらマヒンドラが1戦で22点も獲得するのはシーズン7の第13戦・ロンドンでアレックス リンが優勝して以来、2人とも5位以内というのはたぶんシーズン3の最終戦・モントリオールでフェリックス ローゼンクビストが2位、ニック ハイドフェルドが5位になって以来です。
 キャシディーはというと、最悪の予選から始まって決勝ではデニスに突っ込まれて危うくサスペンションを壊しかけ、バンドーンにもぶつけられ、アタックの空振りも3回あって無茶苦茶なレースでしたが、普通に走っていたら速いのでなんとか7位で6点獲得。選手権1位の座は失ったものの7点差の3位なので自力でチャンピオンを決めることができる範囲でなんとか踏みとどまりました。アタックの失敗は、接触の衝撃でトランスポンダーの位置がズレてしまったのではないかと彼は疑っているようです。

 エバンスとジャガーはカスタマーであるエンビジョンのブエミが目の上のたんこぶになってしまい、大事なレースでライバルに大きな点数を与えてしまいました。エバンスとブエミが序盤にずっとこちゃこちゃとやり合っていたために、2人ともエナジー面では理想的な走りができず、後ろで見ていたベアラインにせっせと残量差を作られてしまいました。独立してそれぞれで競っていて露骨な味方ではないとはいえ、ジャガーからすると『もうちょっと助けてよ・・・』とは思ったかもしれません。
 ベアラインに前に出られた後も、ちょっと無理っぽい1位を狙いに行って追いかけたためにグンターに抜かれる原因を作ってしまい、結果として相手の車が壊れてくれたからよかったものの、それが無ければもっと点差は開いていたはずでした。まだもう1レースある中で、どの段階で何位を狙うレースなのかの目標設定もやや詰めが甘かった印象です。
 逆にベアラインは、今年はわりと序盤で前に出て自分たちの走りやすいリズムで走るやり方を狙うことが多く、今回は久々に待機パターンでハマった印象です。ペロトンスタイルではないので出たくても出れなかった、という方が正しいのかもしれませんが状況を考えたら理想的な走りでした。普段からこっちのレース戦略で良い気がするんですけど、やっぱり前に出るのは冷却の問題とか何か後ろにいたくない要因があるんでしょうかね?

 それと、これはフォーミュラEに限った話ではないですが、接触ペナルティーを繰り返し受けて20秒にもかさんでいる人はドライブスルーを与えるような仕組みを作るべきだと思いますね、今日のデニスはあまりに酷すぎました。黒白旗も振られて次にやったら失格ではありましたが、累計15秒になったらもうさすがにドライブスルーと同等と見做して変換するような仕組みは必要だと思います。

 いよいよ次戦が最終戦、土曜日よりも3周も少ない短距離戦でシーズン10のチャンピオンが決まります。この締めの文章を書いた段階では結果は知っていますが、途中の文章は概ね観戦しながらの下書きなので結果を知らない状態で書いていますから時空はやや歪んでいますw

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