SUPER GT 第3戦 鈴鹿

2024 AUTOBACS SUPER GT Round3 SUZUKA GT 3Hours RACE
鈴鹿サーキット 5.807km 3hours
GT500 class winner:Deloitte TOM'S GR Supra 笹原 右京/Giuliano Alesi
(TOYOTA GR Supra GT500/TGR Team Deloitte TOM'S)
GT300 class winner:D'station Vantage GT3 藤井 誠暢/Charlie Fagg
(Aston Martin Vantage GT3 EVO/D'station Racing)


 だいたい1か月に1回やってくるオートバックス スーパー GT、第3戦は鈴鹿での3時間レース。私事ですが先週撮り鉄旅行で岡山に急遽出かけてきました、予定を立てないといけないのと、どうせGTは次戦まで2か月ぐらい空くので放置しておりましたw
 鈴鹿では2022年からは450kmのレースが行われていますが、3時間=普通に行ったら500kmを超えるようなレース距離となると2006年から2017年まで開催されていた1000kmレース以来となります。でもこの1000kmレース、期中にいわゆるリーマン危機や東北地方太平洋沖地震が発生したために複数回距離が短縮されており2011年には500kmというのがありました。
 この週末はそこそこ暑い週末ではありますが、日曜日は雨が降りそうな予報もあるので不確定要素がやや多めです。でも私はそんなことより、旅行に行く日に雨が降らないかどうかばかり気にしていました。結果1日目はガッツリ雨になってしまったわけですが・・・

・GT300のサクセスウエイト制度変更

 このレースを終えると、次戦からGT300クラスのサクセスウエイト上限が引き下げることが発表されました。今年のGT300は速度抑制のために、元々存在するBoP重量以外に別途追加重量が加算されています。そのため初期段階で車が昨年までと比べて数十kg重く、ここに獲得ポイントに応じたサクセスウエイトが上乗せされてさらに重くなります。
 昨年までのサクセスウエイト上限100kgではあまりに重すぎるので、今季は上限が80kgに引き下げられていました。しかしこれでも上限まで行くと、例えばNSX GT3だと最初から加算重量が51kg載っているので最大で『ウエイト131kg』になります。重いのは車体を劣化させたり、タイヤに過剰な負担をかけて壊れてしまう危険性があるとチーム側から懸念の声が上がっていたようです。安全性を理由に車を遅くするために積んだ重りが危険を生んだら本末転倒ですね。
昨年換算で既にウエイト59kg状態のアップガレージNSX GT3


 グループGT3車両は世界基準の車両ですが、こんなに重たい車で走らせることは想定していないはずですので、正直車両を作っているメーカーさんとしてもなんというかメーカー保証できません状態かもしれないし、タイヤ屋さんも「そんなに重い車を想定してタイヤ作ってないです」と言いたくなるかもしれません。というわけで、追加重量とサクセスウエイトを合計したときに、昨年基準で言えば100kgウエイトぐらいになるように上限を50kgにまで引き下げました。これなら昨年までに経験している範囲の重さです。

 ただ、こうすると有力チームは早い段階で上限に届いてしまい、以降はいくら加点しても第6戦まではウエイトが増えません(第7戦はポイント×1kgなので現時点では断言できず)。現時点で既にmuta Racing GR86は54kg、JLOC Lamborghini GT3は52kgで『上限超え』。一人勝ちしないように戦力差を縮めるのがサクセスウエイト制度の目的ですが、上限が低いと大きな差が生まれないのでシーズン中盤になっても有力チームが競争力を維持し続ける可能性があって、今度はこの制度の趣旨が揺らいでしまいます。
 あちらを立てればこちらが立たず、というやつですが、正直SUPER GTは今の枠組みで続けるのは限界に来ていると思います。次世代は思い切って全体の速度を1クラス分落とし、GT500を今のGTA-GT300ぐらいの速さに、GT300は今のGT4ぐらいに下げて15年ぐらい前の速さにした方が、速度抑制策が減るし追い抜きも増えるように思います。今は実際にはGT650とGT600ぐらいになってますが、どんどん速くすれば良い時代ではもう無いと思うんですよね。これ、結果的にF1モナコの記事でスイカ男さんに書いていただいたコメントと重なる部分があります。

 
・予選

 抽選によりランキング偶数=B組から始まったGT300の予選Q1はいきなり波乱。前戦優勝のJLOCウラカン・小暮 卓史が130Rでスピンしてまともなタイムを記録できずこの組最下位となり、このスピンで黄旗に引っかかったリアライズ日産メカニックチャレンジGT-R(32kg)・ジョアン パオロ デ オリベイラも同様にドベ2でした。ウラカンはタイヤを壊しているのでQ2を走らずピットからのスタートを選択、リアライズGT-Rもタイム差がありすぎるのでQ2は最小限のタイムしか出しに行きませんでした。

 走行後のオリベイラを捉えた映像では、黄旗が振られてたから減速したけど砂が撒き上がっているだけで車はいなかった、何でいつまでも黄旗だったのか、とちょっと不満そうにしていました。でも、視界が完全に開けていないということは実はもう1台いるのを見落としているかもしれない、安全が確認できていない、ということになりますからこれは運用上致し方ないと思います。

 ちなみにリアライズGT-Rですが、前戦富士でレース後の最低地上高違反の嫌疑がかけられていたことが明らかになっています。数値上は『アウト』の計測結果が出ており、コンドー レーシングに聞き取りを行ったところ他者との接触が原因との返答。総合的に勘案して違反とはしなかった、とのこと。
 こうした審査は主催団体であるGTアソシエイションではなくJAFなどから派遣された人員で構成するレース審査委員会が判断しており、言わば外部の目によって裁かれているんですが、GTA会長・坂東 正明はこの件に関して審査委員会の判断を尊重するとしながらも

「解釈の相違であれば、それは話をしていいと思いますが、個人的には車検の数値に対して、未満であればOKという考えであり、それに対して何を言おうがあり得ないというのが自分の考えです。」

 あくまで車検で遵守すべきは数値であり、事情を考慮してアウトセーフを決めるようなことは好ましくないとする、ちょっと踏み込んだ発言をしました。今後、シリーズの規則側でより明確にしていく方向性であるともしたようです。


 予選に話を戻しましょう、ポール ポジションを獲ったのはD'station Vantage GT3。Q1の段階で藤井 誠暢が明らかに速くて0.5秒ほどの貯金を稼ぎ、Q2のチャーリー ファグもQ2の2番手タイムでほとんど取り崩しませんでした。合算で2位に0.653秒の圧倒的な差でポール ポジション獲得です。ヴァンテージは今年新型車両となっており、特にフロントのサスペンションを見直して扱いやすさと速さを向上させたと言われています。前戦でもQ1ではみ出してなければたぶんポールを争っていたので、車の素性という面では最上位でしょうね。
130Rでグランツーリスモ並に縁石乗った^^;


 そういえば以前に解説の光貞 秀俊が『素性』を『そせい』と読んでいたと記憶してるんですが、ミツさん間違って覚えてる?とか思ってふと調べたら『そせい』と読むこともできるみたいですね。weblio辞書によると

「素性」の読み方は「すじょう」である。ただし言語学の用語などとしては「素性」と書いて「そせい」と読む場合がある。
素性(すじょう)は「血筋・家柄・生まれ・経歴」という意味で用いられる。また、「素性」を「そせい」と読む場合、「物の由緒や由来」「本来の性質」という意味で用いられるのが特徴。このように「素性」は読み方によって意味が異なるのできちんと覚えておくことが大事だといえる。
「素性」は「すじょう」とも「そせい」とも読むが、「すじょう」と読むほうが一般的である。辞書によっては、「そせい」という読み方は載っていない。また、広辞苑には「そせい」という読み方も載っているが、「本来の性質。すじょう。」と記載されている。

 とあるので、決して『そせい』が言語学的に誤っているわけではないみたいです。光貞さんが分かってて使ってるのか、単に間違えて覚えたのか分かりませんが勉強になりましたw

 おっとまたまた話が脱線してしまいました、2位はSUBARU BRZ R&D SPORT(2kg)・井口 卓人/山内 英輝、3位は最も車が重いはずのムータGR86・平良 響/堤 優以でした。ようやくちゃんと走ったGAINER TANAX Zが10位に入りました。

 一方のGT500クラス、Q1でDeloitte TOM'S GR Supra(8kg)・笹原 右京がスプーン出口の白線ギリギリで最速を記録すると、Q2では相棒のジュリアーノ アレジも再現映像のように白線ギリギリで通過して、合算で2位に0.336秒差を付けてポールを獲得しました。トムスの37番はなかなか結果が出ずに苦しんでいたので、優勝したぐらいの感動と歓喜です。アレジはデロイトを連れてきたペイドライバーみたいに言われてますもんねえ。


 2位はARTA MUGEN CIVIC TYPE R-GT #16(4kg)・大津 弘樹/佐藤 蓮、3位にENEOS X PRIME GR Supra(6kg)・大嶋 和也/福住 仁嶺が続きました。選手権で2位につけるNiterra MOTUL Z(37kg/-1)が6位と健闘、選手権1位のau TOM'S GR Supra(45kg/-1)は11位ですが、やっぱり不気味です(←毎回言ってるw)余談ですが、佐藤選手は絵も上手いらしくアニメ・ハイスピードエトワール 第11話のエンドカードイラストを担当していました。目が点になりましたね。20年前なら考えられない出来事だなあと思いました。


 Q2ではAstemo NSX CIVIC TYPE R-GT(28kg)・塚越 広大がスピンして107%ルールを守れませんでした。同じ場所ではModulo CIVIC TYPE R-GT(2kg)・伊沢 拓也も回りかけており、この時はS字で追い風になる鈴鹿では一番難しい風向きだったと思われます。これに足をすくわれたのかなと思いました。グランツーリスモですら鈴鹿は追い風と向かい風で全然タイムも難しさも違います。

 本来Q2で107%未達の車両はピット レーンからのスタートになるはずですが、結果的には15番グリッドが与えられました。第2戦を前に規則の小変更が行われた際、未達車両のスタート位置について審査委員会の裁定でグリッドを与えることができるようになったっぽいので、たぶんこれでトラック上でのスタートが許可されたものと思われますが、競技規則の原文が有料会員限定特典となっていて読めないのと、裁定に関する情報も見当たらないので真相が不明のままです。この辺をもうちょっとオープンにするのも大事だと思うんですけど、こんなのオタクしか気にしないから良いんでしょうかねえ。せめて情報サイトでは理由ぐらい記事にしてほしかったけど。

・決勝

 決勝前に雨が降ったもののその後に晴れたので気温24℃、路面温度31℃。一旦下がった温度が上がる途中段階でしょうから、しばらくは上昇基調になりそうです。パレード周回の段階で既に路面が乾いているので、どっかでズラ踏みそうで怖い!みたいなこともなく走る方にとっては安心材料。
 GT500のスタートではポールシッターの笹原よりも2位の大津の方が速そうでしたが抜けるほどではなく、1周半ほどしたら笹原のタイヤにも熱が入ったようで安定しました。GT500の1周目はすべて予選順位通り通過、というか相変わらずみんなすごい車間距離開けてスタートしますね。GT300の方は藤井、山内、平良の上位3人だけ予選順位通りで、以降は小さい変動が複数発生しています。でもGT500よりも不確定要素が多いクラスなので、あんまり気にしないことにしますw


 GT500は5周目に福住が大津を抜いて2位となり笹原を追いかけながらGT300との1回目の遭遇。笹原は1回目のサイクルを通過しましたが、どうも空が曇ってきて手元で雨雲レーダーを確認すると西からちょっと大きめの雨雲が来ている様子です、降ってきたら大騒ぎ。抜かれた大津に対してはチームメイトのARTA MUGEN CIVIC TYPE R-GT #8(6kg)・松下 信治が接近して身内対決となっており、ARTAは毎戦何かと起こってしまうだけにピット側は心配そうです。

 GT300は藤井が15周で後続を8秒以上引き離して #今日のGT400 な感じ。続く2位争いは15周目に平良が山内を抜いて2位が入れ替わりました。4位はスタート直後に1つ順位を上げたUNI-ROBO BLUEGRASS FERRARI(2kg)・片山 義章ですが、3秒ほど間が空いています。あ、ちなみにスポンサーのユニロボはアスカという会社が展開するロボットシステム事業のブランド名で、アスカ社は岡山国際サーキットの現在の所有者。片山選手のお父さんの会社ですね。アスカの本業は自動車部品会社、名古屋証券取引所へ上場しており時価総額は85億円ほどです。

 20周目、まだ続いていたARTA対決はシケインで松下が内側に飛び込み、仕掛けられたことで立ち上がりの鈍った大津に対してターン1で外からもう一度狙いました。これはさすがに抜いた!と思ったら内側の大津が滑ってしまい、軽く接触して2台ともはみ出してしまいます。順位は変わらなかったものの身内の争いで時間を使ってタイヤも汚してしまい、車が当たって心配も当たってしまいました。^^;
あっ・・・

 この間雨雲はというと鈴鹿山脈で力を使い果たしたり、ちょっと逸れたりしてまとまったものはまだ訪れず。何も無ければこのレースは96周程度、航続距離は36周前後と想定されるので22周目あたりから1回目のピットサイクルとなりました。上位勢ではARTA16号車が24周目に最初にピットに入り大津から佐藤絵師へ交代。近くで争っていた8号車は動かないので、、、とりあえず同士討ちから遠ざける作戦?w
 
 早めに宿題を終わらせるのは少数派だったようで、2位のエネオス ルーキー、3位のARTA8号車はちょうどレース開始から1時間が経過した32周目にピットに入りました。それぞれ大嶋と野尻 智紀に交代して交代義務完了。ここで交代すれば、このまま最後まで乗り続けても2/3規則を満たせるので次のピットの時期は多少自由度があります。
 これを見て33周目にトムスも37号車をピットに呼びました。こちらはアレジはまだ使わず笹原を継続。とにかく前を維持することが最優先なので抜かれない範囲で給油時間も調整しているんじゃないかと思いますが実質1位を維持しました。選んだタイヤはスタートと同じ仕様なのかやっぱり発熱に少し時間を要している様子ですが、熱が入るまで抜かれずに順位を守りました。


 一方GT300は2位に16秒以上の差を付けたDステーションが30周目にピットに入り藤井からファグへ交代。後続との差を考えると第2スティントも1位独走かと思われましたが、7位スタートからコース上で2位まで順位を上げていたapr LC500h GT(24kg)・小高 一斗が34周目までピットを引っ張るとタイヤ無交換作戦。これでいきなりピット後はファグの前に出て1位となりました。飛び道具炸裂!


 40周目、MOTUL AUTECH Z(44kg)・千代 勝正がシケインでKeepPer CERUMO GR Supra(28kg)・大湯 都史樹に追突しつつコース外へ。本当は眼の前にいる野尻を抜きたかったものが、ブレーキで突っ込みすぎて2台前方にいた大湯を撃墜してしまいました。コース外に避けようとしたものの間に合わずに角が接触、後ろがだいぶ壊れたのでセルモはガレージ送り、これとは関係なく野尻も数周後に駆動系の故障でガレージに入りました。ARTA、今日もまず1台脱落。ちょうどこの追突は千代選手の車載映像が映っている時に起こったので、見ていて「うあ~!!!!!」と私が叫んでしまったのは言うまでもありません。
 これででっかい破片がストレートの真ん中に落っこちたので回収のため42周目にFCY導入。ついでにレース序盤に発生して放置されていたシケイン脇の破片も回収して2分40秒ほどでFCYは解除されました。リーダーの笹原とすると寝起きの悪いタイヤにFCYはあまり有り難くないもので、まだ大嶋が真後ろにいるので苦労が増えます。ここもなんとか耐えますが一瞬も気が抜けません。

 その後、GT300ではさすがにタイヤの古い小高をファグがかわし、GT500では引き続き笹原と大嶋の接近戦が続いていましたが、52周目にGT300で3位を走っていたBRZが駆動系っぽい不具合によりヘアピンの先で車を止めてしまいました。排除作業のため本日2度目のFCYとなりますが、接近していたGT500の2人は笹原の方が先にブレーキを踏んだため、大嶋が慌てて急ブレーキ。
おっと危ねえ抜くところだったぜ

 ちょっと大嶋選手のタイヤが心配でしたが3分50秒のFCY解除後も攻撃は続き、そうこうしているうちにレースは残り1時間が見えてきました。デロイトトムスは必ず残り1時間より手前でピットに入る必要があるので、エネオスルーキーの狙い所はその翌周のピットによるオーバーカットです。てことはタイヤ傷めてるとするとちょっと痛いぞ。

 笹原は60周目、もう次の周だと間に合わない残り1時間1分でピットへ、アレジが乗り込みました。3位のARTA16号車も同じく60周目に入り、こちらスタート担当の大津選手が1時間未満しかまだ走っていないので、佐藤絵師から引き継いで2度目の登場。
 前が開けた大嶋はここから2周でタイヤを使い切って飛ばしまくり62周目にピットへ。こちらドライバー交代は義務ではないですが、フレッシュなタイヤとフレッシュな福住を投入してまずはアレジの前でコースへ戻りました。ただ、ピット ボックスを出るときに走行レーンを走っていた車両を阻害するように発進したのが少し気になります。いわゆるアンセーフ リリースですね、NASCARでは一切関係ないやつですw
 両者の作業時間はほぼ互角だったので優劣はコース上での速さで付く形。選んだタイヤの傾向か、アレジの腕なのか、福住のタイヤに熱が入った段階で両者は7秒差、これで優勝に片手をかけたのはエネオスGRスープラ、のはずでした。しかし68周目、残念ながらエネオスにはやはり『ピットエリア遵守事項違反』としてドライブスルーのペナルティー。SUPER GTはそこまで厳しく取らないかなあとも思ってたんですがこれはアウトなんですね。すぐに消化に向かい、これでアレジが先頭に戻って福住は4位。タラレバですが、あそこであと2秒待ったって余裕で1位だったので悔やまれます。


 これでアレジは2位の大津と約10秒差の安全圏、そして3位はというと、今日もコツコツ走ってきたauトムス・山下 健太がいました。さすがに最大ハンデの人に蓋されては困るので福住は72周目にヤマケンをかわし、78周目には大津も抜いて2位を取り返しアレジまで12秒差。残り25分なのであと13周ぐらい、諦めずに追いかけます。1周1秒速ければ追いつきますね()

 一方GT300は2回目のピットを終えても当然ファグが快走、ピット前に2位だったaprは中村 仁に交代して4輪交換を行いました。一方ムータレーシングは引っ張りまくってレース残り33分まで伸ばして2回目のピット、そしてここまで引っ張ったからにはタイヤは無交換とし、LC500を逆転して2位となりました。

 レースは92周目に入ったところで時間が無くなり最終周、さすがに福住は毎周1秒もアレジを追い上げて行くことはできず、デロイトトムスGRスープラが今季初勝利を挙げました。笹原、アレジともSUPER GT初優勝、『トムスの37号車』としては2022年の第4戦富士でKeePer TOM'S GR Supra・サッシャ フェネストラズ/宮田 莉朋が優勝して以来です。笹原/アレジ組は昨年の最高位が6位、年間15得点で選手権15位と下から数えて2番目でしたから、本当に欲しかった結果でしょう。

 2位に10秒差でエネオスGRスープラ、3位はそこからさらに14秒離れてARTA16号車。MARELLI IMPUL Z(10kg)・平峰 一貴/ベルトラン バゲットがZでは最上位の4位となり、auトムスが5位でさらに点数を伸ばしました。前戦優勝のNiterra MOTUL Z(54kg)・高星 明誠/三宅 淳詞もしぶとく8位、富士ではタイヤの状況が悲惨すぎたリアライズコーポレーション ADVAN Z・松田 次夫/名取 鉄平も今回はそれなりにまとめて9位でした。

 GT300クラスはDステーションヴァンテージが結局2位に38秒の大差を付けて優勝。チームはGT300初優勝、今年から参戦するファグも初優勝で、藤井はというと2016年の第7戦(中止となったレースの代替だったため大会名称としては第3戦)もてぎで、Hitotsutama Audi R8 LMSで優勝して以来の通算9勝目でした。当時の相棒はリチャード ライアンでした。


 2位はムータレーシング、そして3位にユニロボフェラーリ・片山/ロベルト メリーが入りました。昨年もR8で3回3位になっているこのコンビですが、296GT3でも競争力は引き続きそれなりに高いようです。チーム片山さん家・侮れません。一時ラップ リードも記録したLC500hは4位、中村選手がGT500の処理など経験値の面でまだ課題があった、とチームのレース後の情報には書かれていました。5位はGreen Brave GR Supra GT(38kg)・吉田 広樹/野中 誠太、6位スタートから1つ順位を上げただけで今回はそこまで目立ちませんでしたかね。でもこれでトップ5にGTA-GT300×ブリヂストン車が3台です。
 また、ゲイナーZは細かい隙間をくぐり抜けてゴミがラジエーターの部品を壊す問題に見舞われリタイア、脱毛ケーズフロンティアGO&FUN猫猫GT-Rは3周遅れの22位でした。結局雨は一瞬ちょびっと通ったぐらいでレースに影響を及ぼすことなく終わりましたね。


・速く走らせるのは簡単ではない


 今回37号車が覚醒した要因として、チームメイトの36号車のセッティングを参考にすることができた、というのがあるそうです。これだけ聞くと何だそんなことか、という話ですがドライバーによって好みが違い、しかも2人で同じ車に乗るレースで、さらに言えばサクセスウエイトが違うと同じ車ではなくなっているので、100%コピーしたって同じ速さには絶対になりません。
 37号車でチーフ エンジニアを担当する大立 健太によると、昨年ももちろん36号車を参考にしたセットを試してみたもののあまりしっくり来ず、独自のやり方を模索する方向性となった模様。大立エンジニアはスーパーフォーミュラでも笹原選手と組んでおり、こっちもやっぱり苦労していて意思疎通がうまく行っていない部分があったようですが、先日のレースでようやく笹原選手が持ち帰ってくる感覚と、それに対してどう車をいじるかという連係に方向性が見えたようで、それを踏まえた上で言わば36号車のセットを土台としたアレンジに『再挑戦』することができたそうです。そしてそれが見事にハマったわけですね。

 スーパーフォーミュラは特にそうなんですが、同一の車両でとにかく最大限にダウンフォースを稼ぐ、というのが基本的な目標点で、ダウンフォースを出すには車高を下げたい、下げた状態で路面との隙間を維持したいから足を固めたい、でもそうすると低速で上手く行かない、跳ねる、タイヤが減る、扱いにくい、じゃあ何をどう妥協するか、という作業の無限ループです。
 解析技術でもたらされるある程度の最適解はありますが、実際に走らせるのが人間である以上はそこから足し算引き算で選手が乗りやすい、速く走れるものにしていく必要があり、一連の作業にとにかくエンジニア力が問われます。同じ車のはずのスーパーフォーミュラで何で同じ人ばっかり勝つの?何であんなに差が出るの?というとエンジニア面の影響が大きいと言われています。これはNASCARも同じですね。
 走行時間が限られているので、いわゆる持ち込みセットの段階で最低限の合格ラインに入っていないとほとんど勝負になりませんし、走ってみてドライバーから例えば「曲がりにくい」と言われた時に、何が原因で曲がらないのか、どこをいじるのか、そもそも曲がりにくいという感想を受け入れて曲げる方向にするのが正しいのか、などを素早く判断して調整しないと時間切れになります。
 エンジニアが間違えないように、ドライバー側も「具体的にどの箇所でどう曲がりにくいのか」「車のどの部分に起因して曲がりにくさが出ているのか」「そもそも本当に曲がりにくいのか」といった情報を考えて的確に発信するのも当然重要で、笹原選手と大立エンジニアはこの部分で少し躓いていたのが、ここ最近で一気に解消されたということになります。逆から言えばこの2年間、36号車はこの面でほとんど外すことがない上にドライバーも完璧に近いからこそこれだけの結果を出してきていると思われます。

 GT300で優勝したDステーション レーシングも今回は完璧に揃っていたと言えます。富士は速かったけどどのみち持ち込んだタイヤが壊れまくってダメでしたから、今回はそれを踏まえて速い上にちゃんとタイヤが耐えてくれる必要があったわけですが、それを成立させました。車が圧倒的に速かったんでしょ、BoPが緩いんでしょ、と後から言うのは簡単ですが車高をちょっと間違えたら途端に走らなくなることもありますから、条件が整っている時にちゃんと良い車にして走り切って帰ってくるのは言うほど簡単ではないと思います。正直私も『今日は有利な日だったからでしょ』と思いながらGTを見ていることも多かったので、書きながら自省しています^^;
 ちなみに今年からDステーションでチーフエンジニアを担当しているのが荒 重憲というエンジニアさん。荒さんは最初からモータースポーツ一筋というわけではなく、チューニング部品メーカーでの仕事から始まって、

エンジン コンピューターの輸入販売に関わる→コンピューターのチューニングに関わる→エンドレスからスーパー耐久でのエンジンコンピューター担当として声をかけられる→色んなデータ解析に範囲を広げる→全日本ラリーでヘイキ コバライネンを担当する→TGR チーム サードから声がかかる

というなんかすごい流れでサードに入り、2021年から2年間はチーフエンジニアを担当。車両エンジニア歴のわりにいきなりGT500を担当することになったというたぶんやや変わった経歴の人だそうです。経験値という点ではまだまだ少ないんだとは思いますが、メーカー系チームでGT500の車両を2年見たら他所ではできない経験をたくさん手にしているはずなので、今回の優勝にもたぶん貢献したと思います。


・3時間レースと今後の課題

 さて、これで富士、鈴鹿と2つの3時間レースが終わって今年残っているのはオートポリスの3時間だけになりました。去年以前の長距離戦の感じから、3時間にしたらGT500は2ストップではタイヤがもたずに諦める、あるいは最初からもう開き直って3ストップで突っ込むところもあるんじゃないかと思ってたんですが、去年と変わらないペースで長い距離を走って普通に2ストップで終わってるので、彼らの力をちょっと甘く見てましたね(笑)
 そんな中で個人的にはちょっと課題も見えてきたようには感じました。タイム合算予選は見慣れればなんとかなるとは思うんですが、やはり決勝を見据えたタイヤで、しかもQ1の人はQ2のことも考えて、となるとタイム差がバラつく傾向にあり、昨年までの「0.5秒以内に何台入るんすか」という感じからするとだいぶそれぞれの順位ごとのタイム差は広がっているように思います。
 そして、予選で速いから決勝はひょっとしてタイヤが落ちるのも早いかも?という話とは真逆で、どちらかというと『決勝に自信があるから予選からかなり攻め込んでる』という様子も感じられます。特にGT300クラスだと、あんまり名指しするのもアレですが速くて長持ちするブリヂストン勢は予選からどんどん行った上でタイヤ無交換までできてしまう状態で、なんというか『持つ者と持たざる者の格差』みたいなものが色濃くなっている印象です。
 運営が考える、より長持ちするものを作ることでレース現場が社会に資するものであってほしい、ついでに速度も抑制してほしい、という目的から言うとこれが正しくて、その能力に長けたところが強いのは当たり前の結果なんですが、エンタメとして考えた時にはコンテンツ力がいくぶん弱まっているのも感じます。特にこれが3時間レースになりますと、各陣営の持っている力通りに時間とともにただ差が開いていくだけになってしまって、どっかでSCでも入らないと盛り上がりに欠けてしまう状況はこの2戦で感じました。

 高いお金を払って来場したお客さんを短時間で帰らせるわけにはいかないし、GTはセミ耐久なのでどうせなら長いレースを、という意図はすごく分かる一方で、中身が伴わないと時間とお金をかけてきてもらえる人、お金を払ってテレビを見てくれる人が減ってしまって本末転倒の可能性もあります。
 3時間というレース時間と今の車両の航続距離、そして最大運転時間2/3ルールの具合から、特にGT500では作戦の幅が狭くなっているというのも、変な作戦の入り乱れが無くて分かりやすい一方で変動も起こりにくい仕組みを作っていると思われます。どの内容も『何を大事にするか』という話ではあるんですけど、個人的には「うーん、3時間はちょっとうまく行ってないかも?」とうっすら感じてしまうものでした。

 冒頭のサクセスウエイトと根本的な車両の速さに関する話と繋がる部分でもありますが、開発競争をする場である、その開発は企業にも世の中にも多少なりとも貢献できるものでないといけない、良いものを作った人が勝つのは当然のこと、という話と、エンタメとして面白いものでないといけない、お客さんのためのレースでないと、という話。そこに、安全が最優先でないと、という話を放り込んだ時に最適解がどこにあるのか。しかもこのレース、そもそもはハンデ制で1年間に色んな人に勝つ機会があることをウリにして発展してきたシリーズです。
 特にGT500では車の空力依存が進んで前の車に近寄れないという問題もありますし、小手先の変更では解決は多くの面で難しくなっていると思います。今すぐの事柄はもちろん小手先しか使えませんが、数年先に対しては結構ゼロに近いところまでリセットして考えておかんとあかんのちゃうかなあ、とか思いつつ、特に良いアイデアも無く次戦は7月が無くて8月の富士スピードウェイです。

コメント

SCfromLA さんの投稿…
>アールグレイさん

 佐藤選手はスタンレー撃墜事件からの翌年不在で、当然見ている人は「ホンダを怒らせたな」と思ったでしょうが何より本人が相当落ち込んだのは想像に難くないので、正直よくこの舞台まで戻って来られたなと思いますし、戻って来れたゆえの力を発揮出来たらなお素晴らしいことだなと思います。トゥルーエックスみたいに所属チームが潰れたりなんやかんやして30代後半で開花した例もあるわけですしねw
 Dステーションは同じ車で複数のカテゴリーに出ていることと、ルマンがLMGT3になったのでメーカー側もどちらかというとGTEに力を入れていたものが、必然的にGT3車両に力を入れることになって気合の入った新車だったこと、そこに新しいエンジニアさんも加わって欲しい要素が複数手に入った感じでしょうかね。GT500参戦計画あったんですね( ゚Д゚)