NASCAR 第18戦 ニューハンプシャー

NASCAR Cup Series
USA Today 301
New Hampshire Motor Speedway 1.058miles×301Laps(70/115/116)=318.458miles
winner:Christopher Bell(Joe Gibbs Racing/Rheem Toyota Camry XSE)

 今年のカップシリーズも早いものでシーズン全体から見ると折り返し地点にやってきました。第18戦はニューハンプシャー、ものすごく中途半端な1周の長さと周回数、そしてバンク角も2°~7°というまたなんとも言えない設定で速いラインも中途半端な場所にあるので、速く走るためのツボが分かっているかどうかで得手不得手が出やすいトラックです。
 現役ではハムリンとカイルがいずれも3勝で現役最多、ただこの2人が最後に勝ったのは2017年の夏と秋のレースです。昨年はトゥルーエックス、一昨年はベルが勝っており、ベルに関してはエクスフィニティーで2018年から3連勝、その前年の2017年はトラックシリーズで勝って個人で4年連続優勝したという実績もあります。近年のショートトラックというとベル、トゥルーエックスが強い印象ですが、JGRはニューハンプシャーで通算13勝、ハムリンとカイルももちろんJGRのドライバーとして勝っていますので、今回も期待値の高い存在です。
 1993年からカップ戦が合計52戦開催されていますが、ポールシッターが勝ったのはたったの6回、21位以下からスタートした選手が勝った例が10度もありこれは全開催地の中では3位タイの数字と、統計上はかなり色んなスタート順位から優勝者が出ているトラックです。また、2013年のGen6車両導入以降はシボレーの選手はなぜかあまり勝利に届かず、2016年のケビン ハービックによる1勝のみ、あのヘンドリックですら2012年のケイシー ケインを最後に優勝者が出ていません。

・レース前の話題

 ハースが規模を縮小した単独チームとしてNASCARへの関与を継続する話と、ベル君がうっかりお漏らしした話は別記事で書きましたが、この週末にはもう1つ小さいながらもシリーズ全体に関する規則変更の話題があり、このレースから予選結果を受けたスタート順位の決定方法に少しだけ変更が加えられることになりました。
 現在のNASCARの予選方式は、全体をAとBの2つのグループに分けた上で1台ずつの予選計測を行い、各組で上位5人のドライバーがラウンド2へ進出。ラウンド2で記録されたタイムに従って予選の1位~10位が決定する2ラウンド制です。11位以下のスタート順位については昨年までは絶対的なタイム順で並べられていましたが、これだと路面状況が変化した際に片方の組が損をするかもしれないので、今年からA組→偶数列、B組→奇数列 を割り当てる方式となっていました、フォーミュラEやSUPER GTと同じやつですね。

 しかしこの週末から1位から10位のスタート順位決定方式も変更され、ラウンド2で最速だった選手がブッシュ ライト ポールを獲得することに変わりはないものの、予選2位となるのは全体で2番目に速い選手ではなく、文字として説明すると『ポールを獲った人のラウンド1におけるグループと逆側のグループで最速の人』が割り当てられます、え?ちょっと何言ってるか分かんないですね。
 つまり、A組からラウンド2に進んできた人がポールを獲得した場合、2位は必ずB組からラウンド2に進んだ5人の中で最速だった人になります。仮に、ラウンド2の予選タイムで1位から5位まで全部A組出身の人が並び、B組で最速の選手が全体の6位タイムだったとしても、この人が1列目です。そして、2列目/3位以下の人のスタート順位も同様の考えで、A組出身者は偶数列に、B組出身者は奇数列に並びます。例えばラウンド2のタイムが

ロガーノ(A) 20.000
レディック(A) 20.032
ボウマン(A) 20.034
ラーソン(B) 20.081
ベル(A) 20.109
シンドリック(B) 20.153

という順位だった場合、ポールはロガーノ、そして2位はラーソンです。2列目に並ぶのはレディックとシンドリック、ボウマンはラウンド2で3番目のタイムだったのにスタートは3列目となって、全体6番手タイムのシンドリックよりも後ろになります。最悪の場合、『俺ラウンド2で5番手タイムなのに10位スタートなんですか!?』ということが理論上は起こります。何でこの変更を行ったのか分かりませんw


・Xfinity Series PsiAps 200

 雨の影響で当初予定より開始が30分繰り上げられ、ウエット ウエザー タイヤを履いてスタートしたエクスフィニティー、幸い路面はあっという間に乾いて大半はスリックのレースとなり、優勝を争ったのはカスターとベルでした。168周目以降にコーションが連発してオーバータイムとなったレースはカスターがリスタートを決めて逃げ切るかと思いきや、シェルドン クリードがターン4で軽くカスターを押してしまい、空いた内側からベルが抜いて逆転優勝。結果的にチームメイトのクリードと2人で攻略した形となりました。ベルはエクスフィニティーでのニューハンプシャーで4戦4勝となりました。


 なお、クリードはこれで通算86戦目にして10度目の2位となり、優勝経験の無いドライバーによる2位の回数としてはデイル ジャレット、ダニエル ヘムリックと並ぶシリーズ最多タイ記録となりました。出場回数ではこの2人を大きく下回る最速到達です。また、マット ディベネデトーは17位でチェッカーを受けましたがレース後の車検でホイール ナットが3本以上緩んでいたので規定により失格となりました。


・カップシリーズ
 予選

 雨により予選は実施されず指数予選となり、新しい方式の出番はお預け。これによりポールはチェイスが獲得。ブレイニー、バイロン、ベル、ボウマンと続き、6位にはロガーノ、7位にトゥルーエックスとなりました。練習走行も雨で数分しか実施できず、多い人でも7周しか走れなかったので過去のデータ重視のレースとなりそうです。さあ、ヘンドリック勢は優勝を手にできるか。

・ステージ1

 雨の予報があるためこちらも開始時間を30分繰り上げて開催。チェイスがたった5周で2位のベルに2秒差を付けていきなりテレビに映らなくなりました。3位スタートのバイロンはセッティングが合っていないらしく順位を下げてこの後トップ10圏外へ転がり落ちていきます。以前なら練習もまともにやってない状況だとコンペティション コーションが設定されることが多かったですけど、最近は夜に一雨通ってもコンプコーション無いことが増えましたね。逆から言うと持ち込みセットで外したら詰む危険性が増えています。
 
 全周リードで来ていたチェイスですがタイヤが落ちて来たのか、最大3.5秒ほどへ広げたベルとの差が急速に無くなっていき、42周目にあっさりとかわされました。チェイスとするとステージ1をせっかく単独で走れるので、とりあえず70周行けるだけ行ってみてタイヤの状況を確認するテストという面もあるかもしれません、どうやら攻めてたらルースになってきたみたいですね。なおこの間にカイルは既に周回遅れ、33位という悲惨な順位です・・・
 ベルはステージ終盤に"未来のチームメイト"・ブリスコーを捉えて周回遅れにしようとしましたが、けっこう手ごわくて10周以上粘った末に抜けないままステージ1が終了。来年のことを考えて抜かずに許してあげた、わけではないでしょうw
 ブリスコーはリードラップ最後尾の27位、ステージ優勝はベルで、2位は最終周にチェイスを抜いたロガーノが入りました。4位からブレイニー、ベリー、トゥルーエックス、ハムリン、チャステイン、レディック、ボウマンのトップ10。バイロンは15位まで落ちました。

・ステージ2

 エクスフィニティーではリーダーは外側を選んでいたのに、今回ベルは内側を選んだのが驚きだ、外の方がトラクションがかかるのに、と言われつつ始まったステージ2。ベルは綺麗に加速してリスタートを綺麗に決めました。一方2位だったロガーノはこの後ベリーとトゥルーエックスにかわされます。ショートトラックでのベリーは偶然ではなく確実に速いものがありますね。
 95周目にトゥルーエックスがベリーをかわしてJGRが1-2体制、ベルとMTJの差は2.5秒。気づけばシボレー最上位はチェイスの7位で、過去の統計通りというべきかトヨタvsフォードの争いになってきました。

 120周目、ステージが50周ほど経過したところで中団のドライバーはピットへ、124周目にはベルから2秒ほどの差につけていたトゥルーエックスがピットに入り、これを見てベルもすぐに反応しました。さすがに2秒差をアンダーカットはできませんが、ピット後の2人の差は1秒以下になりました。
 中継ではロガーノのクルーがニューハンプシャーのピットについて「滑りやすい」と話していてなるほどなと思いました。日欧のレースならクルーは前もって所定の位置で構えてドライバーが定位置に止めることが大事ですが、NASCARは規定で直前にみんなで飛び出していくので瞬発力が重要。道具を手に持ってジャンプして飛び出していきますし、走って移動しないといけませんから舗装の滑りやすさはすごく重要ですね。当たり前なようで意外と普段気にしていない話題を提供するNBC、グッジョブ。

 なんてことを感心していたら、137周目にトゥルーエックスが外側からベルを狙って一発で仕留めることに成功、この段階でまだギリランドがピットに入っていないので見た目上は2位ですが実質のリーダーとなりました。ところが、142周目にヘムリックが単独でスピンして本日2回目のコーション発生、ギリランドをはじめコーション待ち作戦をしていた数名にはありがたい休息となりました。ヘムリックは先週もピットサイクル途中の182周目にコーションの起因になってましたね。
 そしてこれと同時に、ボウマンの車は排気管から白煙をバリバリと吐き出しておりどう見てもエンジンがダメっぽい感じです。ボウマンはこれでリタイアして本日の最下位となる36位、ヘンドリックはニューハンプシャーの神様に嫌われることでもしたんでしょうか
(っ ◠‿:;...,
 
 リードラップ車両はギリランドたちだけでなく、一度ピットに入った人もけっこうな人数がピットに入りステイアウトしたのはハムリン、ロガーノ、ラジョーイ。この後ろに2輪交換したトゥルーエックスとベルが続きます。たくさんピットに入ってくれたので、ギリランドは4輪交換した上で8位と超ラッキーです。
 149周目/ステージ残り37周でリスタート、ちょっともたついたハムリンでしたがどうにかロガーノを退けてリードを守ります。この2人の争いに詰まったせいもありますが、2輪交換組のトゥルーエックスとベルは3位を争っていたのですぐには前に進めません。すると154周目、

 カイルが突っ込みすぎたのかターン1を曲がれ切れずグレッグソンを巻き添えにスピン。元々普通に走って2周遅れになるぐらいハンドリングが最悪なのでよほど変な挙動だったんでしょうけど、カイルは今日ホント何も良いことないですね。

 160周目にリスタート、今回はハムリンとロガーノの争いにトゥルーエックスが文字通り割り込んで行き、まずロガーノをかわしてあとはハムリンを、と思ったら案外ハムリンがそのまま順位を守ります。なんとそのままハムリンはトゥルーエックスを従えてステージ2を制しました。そういえばトゥルーエックスは今年でフル参戦を引退しますが、ハムリンが「トゥルーエックスが望むなら23XI レーシングで車を用意する」と話していてとりあえずデイトナに出る話になってるみたいですね。お礼に勝たせてあげた、わけではないでしょうw

 3位はロガーノ、4位にベルとこちらもステイアウトした人を2輪交換が抜けなかったわけで、トップ2はステイアウトが正解だったかもしれません。5位からブレイニー、ギリランド、ラーソン、ベリーと続きました。

・ファイナル ステージ

 ステージ間コーションで多くのリードラップ車両がピットに入りますがトゥルーエックスに悲劇。まだ右後輪のナットを締めきっていないのにお構いなしにジャッキが落とされてしまい、慌てて呼び戻したのに全然気づいてくれずものすごい時間を要してしまいました。ピットをぶっちぎりのビリで出て行ってリスタートは13列目あたりのようです。
 一方で雨雲がかなり近づいていることから早期終了を期待してステイアウトの賭けに出た人もちらほら、レディックとマクダウルがステイアウトし、2輪交換した人も5人。4輪交換したハムリンは4列目、ベルが5列目からのリスタートです。
 ところがリスタート早々、6列目から出たロガーノがターン1でなぜかロックして全然止まれず、外側にいたチェイスを巻き添えにクラッシュ。ロガーノはサスペンションを結構傷めたようです。何もしてないのにチェイスは貰い事故で大損、ヘンドリック、何かニューハンプシャーの神様に(ry

 こうやってる間に雨が降ってくれたら勝ちなのでレディックはもっとやれと思ってるでしょうが200周目にリスタート、翌周にラーソンに並ばれましたが、抜かれる前にラジョーイがスピンしてまたコーション発生。混戦で後ろをちょっと引っかけられてしまいました。そういえばラジョーイも去年1回だけヘンドリックから代走で出たな・・・w

 こうしている間にも雨雲は近づいてきます。ウエットタイヤを用意しているNASCARですが、これは雨上がりでこれから乾いていく条件下、少しでも早くレースを再開させるためのもので雨の中でレースをし続けるためのものではありません。なぜかと言うと簡単で、仮にすごい排水性能のタイヤがあっても水煙で何も見えなくなるからです。そもそもオーバルが雨で開催されないのはこれが原因ですからね。
 
 ちょっと駆け足気味で206周目にリスタート、またもや翌周からラーソンがレディックを狙うものの仕留めきれず、その間にハムリンが上がってきました。オーナー様の助け舟で一旦レディックは解放、ハムリンがドケオラ走法で2位となって今度はレディックを捕まえに行くところでしたが、

 もうダメだ、トゥルーエックスが今度は接触でスピン。21位あたりでそこらじゅう3ワイドの場所にいたのでどうしようもなく、ピット作業の失敗が招いた出来事と言えそうです。接触自体はレーシング インシデントでしょう。
 レディックとすると「いいぞもう1回ぐらいやってくれ」な状態で215周目にリスタート、2位争いに先週の勝者・ブレイニーが参戦してターンの出口で抜群の動きを見せますが、リーダー争いになる前にレディックが無線で「降ってきた降ってきた!」と訴えます。直後にコーションが出たのでマジで雨が降って来たのかと思ったら、混戦で後ろから引っかけられたカイルがスピンしていました(´・ω・`)そういえばカイルが最初にデビューしたのもヘンドリックからでしたね・・・w
 この後雨が本格的に降って来たのでとうとうレースはレッド フラッグとなりました。従来はピット内で一列に並んでいましたが、もしウエットタイヤでレースを再開するならタイヤ交換が必要なので、手順が変更されていて各自のピット ボックスで待機することになっています。


 2時間ちょっと待機した後、ウエットタイヤを履いて再びエンジン始動。レディックとすると勝ち逃げとはいきませんでしたが、タイヤ履歴が周囲と揃った状態で先頭リスタートですから実質80周弱の短距離戦をポールからスタートするようなもの。得したことには変わりありません。っておい、コーション中にカイルがクラッシュしてるぞ・・・

 ズタボロのカイル、とうとうこれでリタイアして35位。あまりにダメでヤケになって自爆したのかと思いましたが、この後ラジョーイも単独で回っており滑りやすいようです。ラジョーイのスピンに対してクルー チーフ(兼スパイアー モータースポーツのコンペティション ディレクター)・ライアン スパークスは

「Not Top10 だ。やったな!」

 ノットトップ10というのは、たぶんESPNの看板スポーツ番組・スポーツセンターで毎週末に放送されている、全スポーツから選りすぐった珍プレー10個を紹介するコーナーのことですね。毎日の放送で必ず『トップ10プレー』という、全競技から選りすぐりの好プレー10個を紹介するコーナーがあり、いわばこれのパロディーのコーナー。かつて日本でもスポーツセンターが見れたころ大好きなコーナーでした。ちなみに私のハンドルネームである SCfromLA はスポーツセンターに由来しています。

 229周目にリスタート、すると

 ・・・ここフェニックスでしたっけ?何人かが普段ではあり得ないエイプロンを走っています。セオリーが通用しない路面状況で各自自己流ラインを探っている模様で、なんかエイプロンが速いみたいです。そんなエイプロン走法を見せていたうちの1人、6位を走っていたチャステインでしたが235周目にスピンしてコーション発生。スピン前の客観映像が無いですが、ターンでちょっと失速したら後ろからヘイリーに押されたのではないかと想像。

 コーションになったらタイヤを冷やすため、みんなフロントストレッチの壁沿いにある水たまりへGO!なんかスーパーファミコンの F ZERO でこういうピットゾーンみたいなのがあった気がするw
 242周目にリスタート、なんか実況のリック アレンの声が変になってきたので気になります。さっきまではどちらかというと外を走っていたレディックがエイプロン走法を使ってみましたが、進入速度が速すぎたのかすぐに外へこぼれてしまい、がら空きの内側からベルが簡単に前に出ました。
 放送席では「ダート出身の選手はこういう条件で強いのでは?」という話題に。ダートは舗装路以上に毎周のように路面の状況が激変するため常に最適なラインを探し続けて適応する必要があるので、経験は活きるかもしれないようです。ベル、ブレイニー、ラーソン、レディックあたりはダート出身だったと思います。ブリスコーも上がってきているので説得力がありますね。
 
 残り44周、ラジョーイがエイプロン走法に完全に失敗して自滅し本日10回目のコーション。すぐさまみんな水を求めて壁際に集結しますが、もう左側のタイヤしか水を拾えてないですねえ。どちらかといえば右側のタイヤを冷やしたいんですけど、、、バックで走ったらどうでしょうw
 263周目/残り39周でリスタート、さっきまでとうってかわってベルとブレイニーのトップ2は通常のラインを走行、何人かは内側最強理論を続けますが、かなりラインが乾いてきてコーション前には35秒程度だったペースが33秒台まで跳ね上がり、どうやら内側最強の時間は終わりを迎えつつある模様。数周でみんな外側に移行していきました。
 しかし265周目、内側に飛び込んで抜いてやろうとしたのがグレッグソンで、これが見事に失敗して複数の車を巻き添えにクラッシュ。やられたバッバ ウォーレスはピット内でグレッグソンの車の近くにわざと停車して発進を妨害する怒りの反応。でもこういうのをやると罰則を受けて損するのは自分なので落ち着いた方が良いです。ウォーレスは車の損傷が激しくてリタイアしました。

 そろそろウエットタイヤは摩耗が酷くなってきており交換の頃合い。しかしピットの路面がまだ濡れているので、競争するとクルーが転倒して重大事故になる危険性があるためNASCARは非競争ピットを宣言しました。まだスリックの使用は許可されませんが各陣営は落ち着いて新しいウエットタイヤに交換、給油もできます。ベルはゆっくりと作業してピットを出ていきましたが、どうやら画面表示に黄色い三角印が出ていて電圧が下がっているとの情報。そういえばGen6では時々こういう話ありましたけどGen7になってからはあんまり聞いた記憶が無いですね。

 残り27周でリスタート、タイヤが新しくなったので内側から出た人はこぞってエイプロンに突っ込んで行きましたがそんなに速くはない模様、フェニックスと同様にエイプロン走法はリスタート直後の飛び道具という感じです。ベル、ブレイニー、ラーソンのトップ3でペースは32秒台まで向上。スリックで30秒台なのでそろそろ溝のあるタイヤではペース頭打ちという頃合いでしょうか。
 10周もしないうちにラーソンは「右リアが終わった」とタイヤが潰れてきている模様、マクダウルとベリーに抜かれて5位に後退しました。そして後方でホースバーがスピンしてこれまたコーション。ホースバーは接触されてスピンしかけたのをなんとか立て直したものの、たぶんこれで一気にタイヤの温度が上がって急激に摩耗したと思われ、以降走れば走るほどズルズルになって最終的に回ってしまいました。もうライン上がほぼ乾いたので負荷をかけたらタイヤが一瞬で潰れますね。

 もう冷やす水もほとんど無いのでヤケクソで芝生に突っ込む猛者まで現れますが、NASCARは再び非競争ピットによるウエット限定のタイヤ交換。まあ290周走ってきて、ここでスリックを急いで使ってガシャガシャになってもなあ、と考えて二の足踏むのは分からんでもないです。NASCAR側もまだ経験値が無いですからね。
 外ラインが有利っぽいのでベル、ブレイニーは連続して外を選択し、3位のマクダウルが1列目の内側を選んで残り9周でリスタート。とにかく勝ってプレイオフに進みたいマクダウル、気合の入ったリスタートだったと思いますが、

 ちょっと突っ込みすぎました。グリップの限界を超えてせり上がってしまいブレイニーを巻き添えにスピン。いや分かるんだけど完走しない限り勝てないんだよ・・・2位と3位が消えて、代わって2位にはベリーが浮上しました。続くリスタートのレーン選択でもトップ3は続けて外を選択、これで4人目の選手が内側の1列目を獲りますが、なんとそこにいたのはブリスコー、これで1列目はベルとブリスコーです、宿命でしょうかw
 とはいえ内側から前に出るのは至難の業で、残り4周のリスタートはベルが優勢、ブリスコーはただベリーの邪魔になっただけでした。これで決着かと思ったら、翌周にケゼロウスキーが単独スピン。回った瞬間にはコーションが出ず、NASCAR的にはすぐに走りだしてくれるならそのまま行ってしまう意図だったようですが、まあケゼロウスキーからしたらコーションが欲しいので動くわけがありません、残り2周でコーションとなりオーバータイムへw

 オーバータイム、また来年のチームメイトが1列目でリスタート。しかしベルは今回もリスタートを上手く決め、ベリーは一旦2位を確保しかけたものの結局ブリスコーとの現チームメイト争いになってしまいました。そのままベルが逃げ切ってシャーロット以来の今季3勝目。カップシリーズ史上初のウエットタイヤによるバーンナウトです。


 エクスフィニティーと連勝で週末をスイープ、ということでほうきを掲げました。この後ニューハンプシャーおなじみのロブスターも掲げますが、苦手な方もいらっしゃるかもしれないのでこっちを貼ってみましたw
 2位は結局ブリスコーが獲り、これは一昨年のフェニックスで衝撃の初優勝を飾って以降での最高順位。3位のベリーはダーリントン以来となる今季2度目でした。ラーソン、ブッシャー、レディック、そしてステンハウスが7位となって2戦連続のトップ10。8位はジョン ハンター ネメチェックでした。色々厄介な目に遭いましたがトゥルーエックスは9位、マクダウルは15位、ロガーノの突撃を食らったチェイスは18位、マクダウルの突撃を食らったブレイニーは25位でした。今週アメリカの市民権を取得したダニエル スアレスは21位、記念すべき週末でしたが結果は付いてきませんでした。


 カップシリーズの公式戦でウエットタイヤが登場するのは今年のリッチモンド以来2度目ですが、この時はスタートから路面が乾くまでの使用でした。今回は途中で雨が降って中断した後の投入で、NASCARの競技担当上級副社長・エルトン ソイヤーは、もしウエットタイヤがなければ「レースは残り82周で終わっていたはずだった。」と、スリックで走れる状況を待っていたら再開は不可能だったとしました。ニューハンプシャーは夜間照明設備が無いので日没時間になったらおしまい、今回のレースもかなり暗くなっていて時間的に限界が近い&チェッカー直後にまた雨が降っていたので、ウエットタイヤ無しなら再開は無理だったでしょう。
 ドライバーからの反応も概ね良好のようで、普段とは異なる難しい路面状況でのレースを楽しんだ人も多かった模様、雨が降る前は20位以下だったブリスコーは

「ここは一番苦手なレーストラックの一つだといつも冗談を言っていたから、正直言って2位になったのはちょっと意外だったよ。雨は間違いなく僕たちの助けになった。雨が降っていなかったらたぶん24位だっただろう。何度か良いリスタートができたし、僕らのチームは雨のバランスを理解するのに本当によくやってくれていた。」

と雨の恩恵を口にし、ラーソンは

「こういう状況のとき、ダートレーサーの多くが順位を上げるのを目にすることになるのさ。」

とダート出身選手の相性の良さにも触れました。また、今回トラック上を乾かすだけで精いっぱいでピットまでは手が回らず、結果としてピットが非競争になりましたがラーソンは

「今後は路面を乾かす時間を減らして、ピットロードを乾かす時間を増やすべきだと思う。そうすれば競争力のあるピットストップが可能になり、戦略性も増す。そうすればレースははるかに面白くなり、おそらく強豪チームだけでなく違う勝者が生まれるだろうね。」

とさらなる改善案も示しました。NASCARとしても初めての経験なのでこれから課題を洗い出していくことになるでしょう。今のところイメージとして8割がた乾くところまではいつも通りジェット ドライヤーとエアー タイタンで乾かし、そこから先をレースしながら乾かしている印象ですが、もう少し水があってもレースができるようならラーソンの言う通り先にピットの乾燥に労力を割いたり、より再開を早めることが可能となります。

 一方で、見ていて「スリックへの交換は日欧のレースと同様に自由に選ぶもので運営がいちいち決めることではないのでは?」と思う方も多い気がしますが、こっちはやや難題だと思います。今回のレースがもし自由に選べる条件なら、数周で溝が無くなるウエットを捨てて勝負に出たところもあったと思いますが、たぶんサイクルの途中で誰か自滅してコーションでしょう。ロード コースならミスって止まれずはみ出しても黄旗で済みますが、オーバルだと確実にコーションでレースが止まってしまいます。
 そうすると、自由選択が面白いように見えて結局は誰かが自滅するまでウエットで粘った方が得する可能性が高く、何よりも同一チームで作戦が分かれてこうした場面が起きると『スピンゲート』を疑われてしまいます。まあ雨は降らないとは思いますが、最終戦のフェニックスでこれが原因で誰か1人が得をしたら、わざとでなくても500%揉めますからそう簡単にはいかない話です。
 今回NASCARは良い仕事をしたと思いますし、ドライバーも臨機応変によく対応したと思います。そして、雨があろうとなかろうと速かったベルにはただただ脱帽ですw

 次戦はニューハンプシャーとはうってかわってヘンドリックとは相性が良いナッシュビルです。

コメント

日日不穏日記 さんの投稿…
レースのあった当日には、YouTubeのお勧めにNASCAR公式のハイライトと、インカーカメラの動画が紹介されます。ビクトリーレーンの動画が紹介されれば最悪ですがw。インカーの動画は、ディロン兄(今回は弟も出ていた)で、5時間44分。過去のレースが3時間前後なので、絶対雨絡みと確信しました。公式は3時間59分でしたが、コーションだらけで、コーション回数も、字幕を出して確認していました。最後のコーションはケセロウスキーが粘っていたせいですか。僕はウェザーマップが再三表示されてたので、レースコントロール?が、雨が降る前に、このままベルに勝たせてしまえ、と思って無視していたんじゃないかと、見てました。結果は同じでしたが、最後はベルではなく、ベリーとブリスコーの争いを観てました。ベリーは、ルーキー・オブ・ザ・イヤーも掛かってますし。そう言えば、主さんが、電車通勤の際に、ニューハンプシャーのレースで優勝ドライバーが、ロブスターに齧り付いたという字幕を観て、慌てて目を逸らしたって書いてましたね。あれから1年、早いもんです。
予断ですが、質問しようとした「ジェシー・パンチは今何してる?」と書こうと思ったんですが、自分で調べてみようと思って、フェイスブックのアカウントにアクセスしたら、NASCAR勤務で、アカウントの写真を、最近変えてましたね。ムチムチだった彼女が、大分スリムになってて、別人のようです。以降、僕のフェイスブックの画面には、ジェシーが、「友達かも」と頻繁に表示されてきますw。
首跡 さんの投稿…
カイル ブッシュがこれほど苦戦を強いられたレースは、2022年のマーティンズビル秋以来ですね…
RCRも執行副社長だったアンディ ピートリーが退任、ディロンの元クルーチーフだったキース ロッデンを暫定競技部門責任者に任命するなど組織体制の変更を行っていますが、復活までにはもう少し時間がかかりそうな気がします。
SCfromLA さんの投稿…
>日日不穏日記さん

 YouTubeのおススメ動画でレースのネタバレしそうになるのが毎週怖いですが、フェイスブックの「友達かも」機能もある意味こわいですね(笑)今回、途中まで見ていたレースの続きを見る前に野球の情報仕入れようとしてyahooを開いたら、なんか記事の最上位が「雨のNASCARでどうやら」という題名の記事が出ていたので視線を逸らしました。たぶん写真の1台はベルだったと思うんですけど、誰が勝ったかまでは理解する前に野球ページに移動したのでセーフでした。
 ちょうど私も最近「そういえばジェシーさんどうしてんねんやろ」と思ったところだったので、せっかくだから調べたらポッドキャストとかやってるみたいですね。YouTubeにもチャンネルあったけどポッドキャストについて宣伝するためのオマケみたいな感じでしたね~、お姿は見れましたけど。
 
SCfromLA さんの投稿…
>首跡さん

 RCRは何が悪くて何を変えなきゃいけないのかがそもそも自分たちで分からなくてぐちゃぐちゃになってる気がしますね。カイルの加入で競争力が上がった昨年序盤の姿からは全く想像できませんでした。チームとしては受け入れられない話ですが、片方のドライバーがずっとディロンなので速い人が来てチームとして力の相対比較ができるとか、若い人が新たに出てきて全然違うことを試して、とかいう変化があまり無いのも良くないのかなとは思います。もしカイルのモチベーションが下がったらドライバー側から立て直すきっかけが殆どなくなってしまうので、なんとしてもその最低ラインだけは維持し続けないといけないんですが、あのコーション中のクラッシュを見てるとちょっと気持ちが切れかけてる雰囲気をどうしても感じてしまい・・・
アールグレイ さんの投稿…
ベルは今週、トラック内でも外でも大活躍でしたねw
お漏らしに、2年ぶりのエクスフィニティー参戦で勝利、カップ戦も勝って、本当にいろんなことがありすぎて追いつきません。
ニューハンプシャーでは3大シリーズで11戦7勝とものすごい実績を挙げていますし、前にトラックを選ばないで活躍できるドライバーだと言う様なコメントを書きましたが、難しいトラックの感じがあるニューハンプシャーでこれほどの成績を残すのも尋常じゃないですね。
片方のチェイスはポールを獲り、もう片方のチェイスは2位ともうどっちがJGR行ってもおかしくないですねw

予選の連続実施記録が39戦で途切れたようですが、2000年以降では最長だったようですね。
1999年から2000年にかけて44戦の連続実施記録があったようですが、惜しかったですねw
悪天候でも指数予選でグリッドを決めるのが定着したので、オーナーズポイントや練習走行のタイムで決めていた頃よりは偏らなくなったと感じます。

ナイター照明が無いトラックですし、赤旗の時点で成立の周回には達しているので終わらせるのかなと思いましたが、最後までやったのは意外でした。
スタートを早めたのとウエットタイヤのおかげでしょうが、暗くなってからフィニッシュしたニューハンプシャーのレースを見たのは初めてかもしれません。

マクドウェルはタラデガといい、ソノマといい、惜しいレースが続きますね。
それでもポイントではチームメイトのギリランドよりも下回ってるので、もう勝つ事でしか実質プレーオフに行くことが難しい以上、持ち味だった安定性ではなく攻める事しか出来ないのが辛いですね。
ただマクドウェルにとってもFRMにとっても、もう勝利しても奇跡扱いされない部分まで来ている存在だと思うので、本当にスパイアー移籍後のマクドウェルと3台体制になる来年のFRMは楽しみでしかありません。

ケセロウスキーはカストロール、ミニオンズ(ソノマ戦)、レッドソックス(オーナー繋がり?)と日本でもおなじみの物のスキームが続きますね。
RFKもエクスフィニティー参戦末期はスポンサーが無い状態での参戦がありましたし、カップ戦でもフォードエコブーストやラウシュパフォーマンスなど、これスポンサーと言えるのか?と感じるスキームで走ってたのを考えれば、良く持ち直したな思います。
SCfromLA さんの投稿…
>アールグレイさん

 レースの最後はえらい薄暗くてあんまり見ない光景だなあと思ってましたけど、照明があるなら点灯するし、雨で押したのなら今までは打ち切ってるだろうからそもそも薄暗い状況でチェッカーを受ける機会って滅多に無いからですね。そんな中でベル君はドライビングが滑らかすぎて口も滑らかになった、ということにしておきましょうw
 若手だけでなく中堅~ベテラン勢でも役者がそれなりに揃っていて、RFKも引き続きいい感じに走ってスポンサーも付いてる(そしてヘイリーもかなり頑張っている)ので見所が多くて楽しいですが、それを思うほどにRCRどうした・・・となってしまう今日この頃です。
カイル・プッシュ さんのコメント…
推しをやめようかと思うくらい、カイルはダメダメでしたね。コーション中のクラッシュは、さすがにあり得へんでしょ、、

話は変わって、レインタイヤを準備するくらいなら、ワイパーもつけてウェットレースってゆうのは無理なんですかね?ショートトラックならできそうな気がするんですが、素人考えでしょうか。

SCfromLA さんの投稿…
>カイル・プッシュさん

 RCRも人事を変更したり必死にやってるますが、復調を少し長い目で見ないといけない感じですね。
 ウエットレースに関しては、やっぱりオーバルだと水煙が酷くて前が見えないし、それはお客さんも同じなのでレースにならないず降っている間は難しいと思われます。それに、仮に視界を無視するとしても水量の多い状況で走れるタイヤにすると、今度は今回みたいな路面で全くタイヤがもたないのでウエットとインターミディエイトの2種類が必要になってしまうと思うので(逆から言うと今のタイヤはたぶん水量が多いとハイドロプレーニング起こして走れない可能性が高い)費用面からも壁が高くなります。
マーティンズビルぐらい遅い場所なら多少の雨が行ける気がするんですが、とりあえずは今のような運用で少しずつ範囲を拡大する形になるでしょうね。