フォーミュラE 第10戦 ベルリン

ABB FIA Formula E World Championship
2024 SUN MINIMEAL Berlin E-Prix
Tempelhof Airport Street Circuit 2.343km×38Laps=89.034km
Race Energy:38.5kWh
winner:António Félix da Costa(TAG Heuer Porsche Formula E Team/Porsche 99X Electric Gen3)

 フォーミュラEベルリン2連戦の2戦目です。昨日の40周のレースではペロトンスタイルというほど極端に遅いレースではない中で目まぐるしく順位が変動するレースになりました。今日はそこから2周少ない設定で、アタックモードは2回/4分の設定です。アタックが4分の場合、1分+3分の選択なら使ったアタックは1周し終わるころにちょうど終わるのでダブルアタックであっという間に義務を終わらせてしまうことができますね。


・新人テスト

 時系列が前後しますが、第10戦の翌日もチームはテンペルホーフに居残って今季2度目の新人テストが開催されました。11チーム・22人の中には既にこれまでのテストでも見た選手の他に、ERTからは昨年のF1アカデミー(女性によるシングル シーターの選手権)チャンピオンのマルタ ガルシア、エンビジョンからは開発/シミュレーションを担当しているアリス パウエルという2名の女性選手も参加しました。
 2回のセッションがあったこのテスト、最速は唯一の1分1秒台を記録したDSペンスキーのロバート シュワーツマン、フェラーリの育成ドライバーでミザノのテストでも総合2位でしたね。2位はアンドレッティーに乗ったジャック クロフォード、こちらは19歳のアメリカ人ドライバーでFIA F2を戦っている選手です。そして3位はジャガーに乗ったシェルドン ファン デル リンデでした。彼はBMWからGTレースに出ているイメージが強いですね、ちょうど今週はお兄さんが代走でレースに出ていたので兄弟揃ってベルリンにいたことになります。



・グループ予選

 慣れと多少の路面側でのグリップ向上は見込まれるものの、タイヤの方は中古ばっかりなのでタイムがどうなるのか気になるグループ予選。元々溝つきの硬いタイヤだからあんまり路面にゴムは付かないですが、ここはコンクリート舗装なのでなおさら周回を重ねても上げ幅が小さいです。
 A組にはジャガーの2人と、昨日のグループ予選で各組の最速だった2人が全部入ってなんか惜しい感じですが、最速はキャシディーで前日のグループ予選最速より僅かに早い1分2秒544を記録。2位がグンター、そして3位エバンス、4位モルターラと続きました。エバンスとモルターラはなんと同タイムでした。ダコスタは最後にモルターラに蹴飛ばされて5位で脱落、ディグラッシが6位、昨日のレースで猛烈に追い上げたローランドは今日も予選イマイチで8位。
 B組、スパでの仕事を終えたエンビジョンのレギュラー2名・ブエミとフラインスがガレージ内で見学している様子が映し出される中、代走のエリクソンが1回目のアタック終了時点で4位と健闘。
 続く2回目のアタックではなかなか自己ベストを更新できない人が続き、エリクソンが4位で踏みとどまるか、と思ったらなんと昨日の予選でビリだったデニスが最速を記録、しかもキャシディーよりも速い1分2秒518です。続けてナトーが2位タイムを記録してアンドレッティーがまさかのワンツー。3位にバンドーン、4位がベアラインでした。ベルニュは4位から0.009秒差の5位で脱落、エリクソンも4位から0.069秒差の6位で脱落しました。

 前日からグループ予選は基本的にアウト→準備→アタック→アタック、の4周構成で、しかも速いのはだいたい2回目でした。たぶんブレーキを踏む場所はあってもステアリングをこじる場所が少ないので前輪にあまり熱が入らず、3周かけたらようやく曲がるようになるけど、そのころには後ろがちょっとオーバーヒートしてきて最終コーナーあたりでズルズルになってしまい、この折り合いをどうやって付けるのかが大きな課題だったと思われます。普段乗ってないのでエリクソンはこのあたりが難しくて詰め切れなかったのかな、という印象を受けました。

・デュエルス

 準決勝がいずれも同門対決という珍しい形になり、ジャガー対決のA組は2画面車載映像。ほぼ同タイムから2人とも同じ場所でミスったので、一瞬『あれ、実は同じ映像を左右で流してる?』とか疑ってしまいましたが、エバンスがセクター2でまとまらなかったのでキャシディーの勝ち。B組のアンドレッティー対決は前半がうまくまとまらなかったデニスが後半はまとめて0.022秒差で辛うじてナトーを退け、グループ予選最速の2人がそのままポールを争うことに。
 そしてデュエルス決勝、お互い滑りそうな滑ら無さそうなギリギリのところをまとめてほぼ同タイムで来ていましたが、キャシディーがターン9で完全に失敗。デニスが1分1秒819を記録したのに対し、キャシディーは0.2秒以上離されました。前日の予選ビリから一転、デニスがジュリアスベアポールです、オーマイゴッド。

 デュエルス準々決勝で敗退したバンドーン、敗者では最も速かったので予選5位のはずでしたが、『グループ予選後の重量検査では規定内だったが、後ほどデュエルスの後に計測したら重量規定以下だった』という謎の問題発生によりデュエルスの記録だけが抹消されました。これによりスタート順位はデニス、キャシディー、ナトー、エバンス、とジャガーとアンドレッティーが綺麗に左右に並ぶ形になり、グンター、ベアライン、モルターラ、バンドーンとなりました。

・決勝

 スタートでデニスは本気で加速せず、あっさりとキャシディーが前に出ました。無線で「キャシディーの影で行くぞ」と指示されていたようです。上位勢ではベアラインが積極的に前に出ようとしますが、ターン2でデニスにラインを消されて失速すると、ターン7ではナトーに寄せられて壁に挟まれました。車が壊れていないか心配だと思ったら、なんと挟まれた後に2台抜きして2位になります。デニス、キャシディーの影作戦が早くも崩壊。

 3周目にキャシディーは1回目のアタックを捨ててお先どうぞ作戦。この周に上位勢でアタックを使ったのはキャシディーだけでしたが、後方ではなんと12人が一斉に1回目のアタックを使うという非常に珍しい形になりました。
 翌周にはベアラインもアタックに入りますが順位はそのままの1位、しかしダブルアタックで翌周に2回目をさっさと終わらせてしまい4位で戻りました。キャシディーも風よけにはなりたくないので6周目に2回目のアタック、ベアラインの後ろで合流しました。お互いに『アタックを終えて相手の真後ろにいたい』という意図がものすごく感じられます。全体のペースはというと、1分6秒台なので・・・あれ、昨日より2周少ないのに同じペースだw

 この後多くの選手が2回のアタックを使い終える中で、サイクルがズレていたのがダコスタとエバンス。このうちダコスタは前に出て差を広げてアタックを使います。節約度合いの大きいレースでこれをやるとしんどくなるので、ベアラインの風よけという意図を感じる作戦で、実際2位のベアラインがターン2でかなり早いコーストとブロックを組み合わせ、ダコスタを前に置こうとしたように見えます。この援護射撃によってダコスタは1位で戻ることができましたが、減速が早いせいで後続が詰まって今日も追突事故が起きました。
 グンターが追突でウイングを落っことし壁に接触、手の傷みも訴えてそのまま動きませんでした。ウイングをタイヤの下に挟んでいてハンドルが切れないようなので自力ではどうにもできずSC導入です。この前の周にはモルターラもターン6〜7で追突してウイングが傾いており、昨日と全く変わらない光景が繰り広げられています、修理代高くつくなあ。この後マーシャルにウイングだけどけてもらってグンターは動いたものの、既に周回遅れだし壊れてるし手は痛いのでリタイアとなります。


 15周目にリスタート、するとポルシェはどっちが先行するでもなく2台でほぼ1周並走し続けました。新手の通せんぼ作戦かなとか思いましたが、キャシディーがこの2台をすり抜けるように先頭へ。結局何でわざわざ並走していたのか謎w
 この後もお互いの戦略が絡み合って小競り合いが続き、20周目にはターン7でベアラインが今度はデニスによって壁に挟まれると、続くターン8でバンドーンが完全にミサイルブレーキになってしまいます。まともに突っ込まれたサッシャ フェネストラズは右にもベルニュがいたので金ピカ2台に挟まれ、一瞬片輪走行になって地面に叩きつけられました。「これで車が壊れてなかったら奇跡だろ」と無線でぼやくフェネストラズですが奇跡的に壊れてませんでした。バンドーンだけが脱落。

 ところが生き残ったフェネストラズはその後に不運。ナトーとの元チームメイト対決となって24周目に一旦前に出ていましたが、翌周のターン3でナトーが強引に内側に突っ込んできてクラッシュ。フェネストラズはナトーに対して拍手して「ハイハイ素晴らしいドライビングですね~」的な挑発をしており激怒している様子です。サッシャさん自走不能につき2度目のSC導入。
 フェネストラズが最初にナトーに仕掛けたのは多少強引な飛び込みから始まっているのでちょっと熱くなったかなというところですが、ナトーの飛び込みは無理があったように見えます。ちなみにナトーのヘルメット搭載カメラを見る限り、彼はぶつかった後にフェネストラズの方を見て、その視野内に拍手ポーズのフェネストラズがいましたのでたぶんしっかり見てますね。後にナトーには10秒ペナルティー、フェネストラズはリタイア。

 29周目にリスタート、ダコスタ、ローランド、キャシディー、エバンス、デニス、ベアラインの順位。エバンスは昨日はアタック取り損ね、今日はサイクルズレが原因でまたもや2回目のアタックが残ったままになっています。それを把握しているキャシディーは「エバンスに前に行くよう言って!」と伝えます。友人の薦めですからエバンスは前を取りに行き、31周目にダコスタをかわしました。その後ろ、5位争いではデニスとベアラインが何回も小競り合いで接触しており、デニスはもうウイングが半分ぐらいありません、供給契約を延長したばかりなのに仲悪い(っ ◠‿:;...,
エバンスのウイングもたいがい壊れている

 先頭に話を戻すと、引き離してアタックを使いたいエバンスと、そうはさせたくないので安全な距離まで逃がさないよう追いかけるダコスタと、そのダコスタにちょっかいを出してエバンスのための空間を作ろうとするキャシディー、節約して最大限効率的に走るはずの作戦がなんか全員非効率になって本末転倒な感じも出てくる中、34周目にエバンスがブロックに失敗してダコスタに抜かれ、しかもミスったエバンスにキャシディーが詰まるようになってチームメイトも順位を下げてしまいました。この間にペースは1分5秒台から4秒台へ徐々に切り上がっていきます。

 36周目、レースは3周の延長と発表されて合計が41周へ、ここでエバンスはやや追い込まれ気味にようやくアタックに入り、結局混んだ場所に戻った末にキャシディーの前で落ち着きました。公開された無線によると、どうもエバンスは一度アタックに入るタイミングがあったもののエンジニアとの連携が不十分でアタックに入らず通過。でもキャシディーには「ミッチがアタック行くぞ」と伝えられていたので「行ってへんやん!」となってかなり混乱していたようです。


 残り3周、1位はダコスタ、2位はウイングが傾いてるローランド、ジャガーが順番を入れ替えて3位キャシディー、4位エバンスとなります。キャシディーは翌周にローランドをかわして2位となりますが、エバンスは逆にターン6のブレーキで完全にミスって6位に後退、さっきもここでブロックに失敗してるので、ちょっとタイヤの状態が良くないとかブレーキの温度が適正じゃないとか問題を抱えているかもしれません。
 ダコスタは後ろがごたごたしたので非常に有利になり、そのまま1分4秒0~3を綺麗に並べて比較的余裕をもって逃げ切りました。キャシディーが1分3秒台で鬼の追い上げを見せるも残り2周で1.9秒差はさすがに無理でした。ダコスタが"今季2度目"のトップチェッカー、あとはレース後の車検にさえ引っかからなければ今季初勝利です。


「安心したまえダコスタ君、車検はきっちり通ったぞ」(CV:置鮎 龍太郎)
とフローリアン モドリンガーが言っては絶対いないと思いますが、今回は無事に車検も通過しました。昨年のケープタウン以来となる通算9勝目、シーズン5から6年連続で優勝を記録しています。

 2位はキャシディーでファステストの1点も追加で獲得、16位スタートのローランドが今日も表彰台となる3位に入り、これで今季6度目の表彰台です。開幕からの2戦は無得点だったので、これらはいずれもここ8戦で記録されており驚異的なトップ3確率と言えます。NASCAR並に側面同士を当てながら争った4位争いはベアラインが制しデニスが5位。ブレーキで失敗したのが悔やまれるエバンスが6位。新人のダルバラが最終コーナーでバーナードを抜いて自身2度目の入賞・自己最高の7位。公式素材用の写真が無いバーナードは最後に抜かれたものの8位で、9位は代走エリクソンが入りました。エンビジョンは代走ウイークエンドを無得点で終えることを辛うじて避けられました。

 ドライバー選手権では、モナコ終了時点でベアラインを7点差で追っていたキャシディーがベルリン2戦で45点も獲得。ベアラインは22点しか獲れなかったので一気に逆転して選手権1位に戻ってきました。連続3位のローランドが選手権でも3位、天国と地獄を行ったり来たりしていたデニスは結局ベルリンで13点しか稼げず連覇に黄信号です。

 それにしても奇妙なレースでした。本来ダコスタはどちらかというとベアラインの援護役だったはずが、ベアラインとデニスがやたらとやり合って消耗戦になっていたので気づいたら一番有利な場所に立っていました。ジャガーも連携が今一つな上に、そもそもアタックのサイクルがズレたエバンスが残ってしまった時点で作戦的にもちょっと失敗していて、本当ならもっと獲れたレースだったのではないかと思います。
 ベアラインとデニスはお互いに争って選手権でキャシディーに美味しいところを持って行かれ、去年に続いてワークスとカスタマーの競争がちょっとハゲしすぎるわけですが、The Raceによると実はアンドレッティーが前日から一転して速くなったのはポルシェ側からのデータ提供のおかげだったそうです。ワークスとしては苦戦するお客さんに当然の行為をしたまでですよ、ということだと思いますがそんなに効果あるんですね、というかやっぱり基本的に何か間違ってたんですね^^;
 ワークスとしての使命はちゃんと守るけど、しかしワークスだからカスタマーは多少配慮しろよ、というポルシェの態度と、カスタマーは有り難く情報を使わせていただきますが、コース上ではそんなの関係ないので容赦しないし配慮とかしませんよ、という感じのアンドレッティー、これが少なくともあと2シーズン見られるなんてなんと素晴らしいことでしょうw
 冗談はさておき、会社の上層部の人からしたら困ったものかもしれませんが、競争者の心構えとしてはある種非常に健全なことだなと思います。ところで、そもそもダコスタ君には来年のシートが危うい、という話がミザノの前からあったわけですが、実質2勝して風向きが変わるかというとそう簡単でもないらしく、彼は今後も活躍を続けるしかないみたいです。シビアな判断をするのもまた競争者としては健全な証でしょうか(っ ◠‿:;...,

 次戦は上海での2連戦、どうやら上海国際サーキットをコース序盤はF1と同じ要領で走り、あの草が燃えることでお馴染み高速S字を抜けたらショートカットしてピット入り口の方へと繋ぐ約3kmのコースみたいですね。漢字の『上』には全くなりませんw

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