Formula 1 Crypto.com Miami Grand Prix
Miami International Autodrome 5.412km×57Laps=308.826km
・レース前の話題
最終的に7.6秒離されて2位にフェルスタッペン、その僅か2.3秒後方に3位ルクレールとなりました。サインツは4位でチェッカーを受けたものの、ピアストリのウイングを踏んで壊した件で5秒加算となったので5位に1つ降格、4位はペレスとなりました。それにしてもペレスはミディアムに交換してもなおペースが上がらないままでしたね・・・角田はリスタート後にミディアムを履いたハミルトンには抜かれましたが、自分より古いハードを履いたラッセルに対しては安定して差を築き上げ7位でのチェッカー。ビザルビーはこの週末だけで12点も獲ることができました。
Miami International Autodrome 5.412km×57Laps=308.826km
winner:Lando Norris(McLaren Formula 1 Team/McLaren MCL38-Mercedes-AMG)
5月のF1はアメリカで年間に3回もあるレースの一発目・マイアミから。今年の裏番組となるNASCARはカンザスで、放送時間も完全に被っています。マイアミの市街地コースは前半が高速コーナーの連続する非 常にスカッとした区間、 後半はフォーミュラEかと思うぐらいこちゃこちゃとした低速のコ ーナーが詰まっています、けっこうここをまとめるのが大変。そしてこの週末は中国に続いて2戦連続のスプリント開催レースとなっているのでみなさん大忙しです。3年目となるマイアミですが初のスプリントですね。
2025年、 というよりもその先の2026年を見据えた選手の契約発表が少し ずつ見える形でも動いてきました。アストン マーティンがフェルナンド アロンソと契約を延長したのに続き、今度はザウバーがニコ ヒュルケンベルグと契約したと発表。
ザウバーは2026年からアウディーとなるわけで、 実質はアウディーによる2026年のドライバー契約と考えられます。アウディーは早期に結果を出すために即戦力を求めており、 フェラーリを離れるカルロス サインツも熱心に誘っているという噂、 サインツはお父さんが長いことラリー競技でフォルクスワーゲング ループのお世話にもなってますしね。
もしそうなるとザウバーの現行2名はいずれも来年の仕事がありま せん。バルテリ ボッタスに関しては古巣のウイリアムズが力量を評価して誘ってい るという噂もあり、 単に下位チームで表彰台経験すら無いベテランが1人動いただけ、 ではない色んな影響がありそうです。
ちなみにザウバーは今回ボッタスの担当レース エンジニアが新しい人に代わりましたが、 急な話でボッタスも知らなかったということなので、ボッタスからすると「ああ、もう俺いらない子だからこいつら来年のことを考えてて俺の成績とかどうでもいいんだな」と感じているかもしれませんね・・・
そしてもう1件、ひょっとすると運転手さん以上に2026年の大きなカギになるかもしれない点として、レッド ブルで長年にわたって空力デザインを主導してきたエイドリアン ニューエイがチームを離れることが発表されました。『空力の鬼才』として知られ、1980年代から先進的な設計を生み出し続け、65歳の今でもその存在感は圧倒的と言えます。そんなニューエイですが、即座にF1の開発陣から離れた上で、RB17という今年発売予定の超高性能市販車両の開発だけに専念、そして2025年には完全に退職することに。
要因の1つとしては、今年の2月にチーム代表であるクリスチャン ホーナーが女性従業員へのハラスメント行為で告発され、内部調査でホーナーにハラスメント行為はみられなかった、とする結論が出されたものの、ハラスメント行為そのものよりもレッドブル内部での『ホーナー派 vs 反ホーナー派』とでも言うべき組織内対立が浮き彫りに。ニューエイはけっこう真面目な人らしく、こういう問題や、そもそも誠実に告発者に対応していないように見えるレッドブル自体に嫌気がさしたのでは、ともされています。
実際はそれ以外にも、以前からホーナーがやや自分に対して敬意を欠いているように映っていることや、2026年以降のレッドブルがパワーユニットの面から競争力を持った体制を維持できるのか疑問があることなど複数が考えられるとの情報。当然ながらニューエイには他チームから熱烈な勧誘があるようです。ちなみにホーナーの説明では、ニューエイは燃え尽き症候群のような状態なので離れるんだそうです。まあ確かに、数年前にも1回F1離れるって言ってましたからね、結局戻ってきちゃいましたけど。
・FP1
唯一の練習機会、シャルル ルクレールがいきなりスピンして赤旗の原因を作り、どこにもぶつけはしませんでしたがたった2周しかできない というなかなかマズイ状況を作ってしまいました。 こりゃあスプリントを使って練習か?なお今週のフェラーリは青を多く取り入れて、スーツも青にした特別仕様です。いきなりスピンしてお偉いさんの表情もきっと真っ青。
・スプリント予選
ポール ポジションはマックス フェルスタッペン、2位はなんとほぼぶっつけのルクレール、 これを見た運営が「なんだ、FP1もいらねえじゃん」 と思って来年から「金曜日はスプリント予選とスプリント、土曜日は予選と予選レース、日曜は決勝にしよう、練習とかいらん」なんて言いださないことを祈ります。
路面温度が高いせいかちょっとタイヤの使い方が掴めないという中、 SQ2でメルセデスが2人共脱落した一方で、VCARBのダニエル リカードがなんと4位を獲得。チームメイトの角田 裕毅もかなり自信があったのでSQ2を一発アタックにしてみたと ころ、 ミスってはみ出しタイム無しの15位と高い代償を払ってしまいま した。
・スプリント
スタート直後のターン1、12位スタートのルイス ハミルトンが内側の隙間、 絶対ぶつかるラインに突っ込んでいったので多重事故になり、 大外にいたランド ノリスが貰い事故で脱落、SC導入となりました。マクラーレンは今回かなり大型のアップデートを持ち込んでいたんですが、部品を壊していないか心配です。
さらにランス ストロール、フェルナンド アロンソもまとめて車を壊しますが、うーんどうでしょう、 仮にハミルトンがいなかったとしてアロンソもちょっと突っ込みす ぎ、ストロールは車を内側に向けるのが少し早すぎ、という状況でその外にノリスがいたので、結局この3人でやっぱり接触は起こっていた気がしなくもありませんでした。
リスタート後は4位のリカードが後ろから来るカルロス サインツを必死に抑え込み、まあそのうち抜かれるだろう、というか早いこと譲って自分のペースで走った方が良いのでは、という私の予想を大きく裏切ってなんとそのまま4位でスプリントを走り切りました。
その後方ではハースのヒュルケンベルグが7位、ケビン マグヌッセンが8位と2台並んでいましたが、マグヌッセンは後ろにいるハミルトンを抑える中でサウジアラビアと似たパターンの無敵君ムーブを発動。散々蓋されてその間に角田に抜かれたハミルトン、最後は最終周に角田を抜いて8位でチェッカーを受けはしたものの、彼は彼でピットでの速度違反があったのでレース後に20秒加算され正式結果は16位、角田が8位となったのであの泥仕合は何だったんだ、というちょっと虚しい結末になりました。
スプリント勝者はマジでテレビに映らなかったフェルスタッペン、 2位は3.3秒差でルクレール、3位にセルヒオ ペレス、そしてリカード、サインツのトップ5。オスカー ピアストリ、ヒュルケンベルグ、角田と続きました。ビザルビーは2人そろってスプリントで点数を稼ぐという想定外の結果を持ち帰りましたね。
マグヌッセンは10秒ペナルティーを3件と5秒ペナルティーを1件貰って正式結果は18位。正直彼の運転は規則がどうとかチーム側の指示がどうと かいう以前の問題でF1どころか草レースレベルで競技者としての 資格が無いと思いました。レース後には『スポーツマン精神に反する行為』についても審議されこれは罰則の対象となりませんでしたが、『違反でなければ問題ない』を飛び越えて『実質結果に影響しないならペナルティーをいくら受けたって問題ない』と考えて走る人はそもそも参加資格を与えられるべきではないと私は思います。
・予選
暑い環境でソフトはタイヤが1周もたない様子、 慎重に熱を入れないとズルズルになる状況で、 Q2ではノリスがミディアムを投入するほどになりました。 アストンマーティンはスプリントで車を壊したから、 ではなく単純にこの状況と合わないみたいで2人揃ってQ2脱落。
Q3に入ってもタイヤの温度管理に各陣営が頭を悩ませ、 最後はメルセデスもミディアムを投入する特殊な状況に。 結局2回目のアタックでは上位勢が1回目から記録を伸ばせないと いうこれもまた珍しい事態になりますが、ピレリ ポール ポジションはやっぱりフェルスタッペン。これにルクレール、 サインツ、ペレスが続きました。8位のハミルトンはQ2から0.4秒以上遅くなっており、本当にこの車はちょっとしたことで感触が変わりすぎてる気がします。
ついさっきスプリントで頑張ったリカードはなんとQ1落ちして1 8位、 しかしそもそもグリッド降格ペナルティーを持っていたのであまり 関係ないといえば関係ない結果でした。 ビリスタートになるので誰かが突っ込んでくる心配はしなくてよさ そうです。
・決勝
上位7人を含む多くの人はミディアム、 8位のハミルトンがハードを選択。 週末のお客さんは27万5000人という発表です、去年は27万人だそうなのでだいたい同じですね。 カンザスは何人ぐらい入っているだろうか。
スタートでは2位のルクレールが明らかに失敗しましたが、 その内側から4位のペレスが飛び込もうとして昨日のハミルトン並に絶対止まれないミサイルブレーキ。 幸い誰にも当たりませんでしたが、 2位に上がれるはずだったサインツは事故回避でラインを外れ、これでスタートで失敗したルクレールは2位を守りました、ありがとうチェコ。前が混乱している隙間を抜けたピアストリがごっつぁんで3位になりま した。ペレスは順位どうこうよりあと少しでフェルスタッペンを吹っ飛ばすところでしたね^^;
ピアストリは4周目のターン17でルクレールの内側に入るそぶり を見せ、 まだちょっと距離があるので抑えられそうにも見えましたがルクレ ールが少し引く形で順位が入れ替わりました。 ここからサインツを含めた3人がしばらくは接近して走り続けるこ とになり、ペレス、ノリスが続いています。DRSがけっこう効くコースなので近くを走って抜けるなら抜きたい一方で、コース前半は高速コーナーの連続なのでタイヤを考えるとあまり近くを走り続けるのは得策ではない、というのがけっこう難しいコースです。理想はS字で手抜きしつつギリギリDRSだけ拾い続けることなんでしょうけどw
そしてノリスから遠く離れて7位にはスタートで順位を上げたヒュ ルケンベルグがいて、 ここにハミルトン以下の集団がつっかえてほぼ全員のDRSトレイ ン。ハミルトンはせっかく怖い思いをして1回ヒュルケンベルグを抜いたのに、 ターン17でミスって抜き返されてしまいがっくり。 結局改めて抜いたのは10周目になってからでした。マグヌッセンほど無茶苦茶してこない相手でよかったですが、もうハースは見たくないでしょうね。
後方集団は12周目辺りからピット サイクルとなってミディアムからハードへの交換が進みますが、 上位では17周目にペレスが最初にピットへ。 どうもペースが今ひとつでノリスに追われまくっていたので先に動 いた形です、作業時間1.9秒!
19周目には3位のルクレールがこれまた1.9秒ストップ。 フェルスタッペンから見てもルクレールは6秒ほどしか離れていない相手なのであんまり放っておけないところですが、 そのフェルスタッペンは21周目にターン15をミスってボラード を破壊。折ったボラードが一時ウイングに引っかかっていたのでひょっとしたらウイングを壊したかもしれない、 という話になります。結局大きな影響がなかったっぽいですが、 落ちたボラードを回収するために数十秒だけVSCが出て数名がピ ットに入りました。
VSC解除後の23周目にフェルスタッペンもピットに入りルクレ ールの3秒ほど前方で復帰。そして困ったことに、 ボラードをふっとばしたせいでハミルトンから「 シケインの縁石が見えない」とクレームが出ています、 これはフェルスタッペンの罠に他のドライバーも気をつけないとい けません。グランツーリスモでもいきなり看板が吹っ飛んでるとブレーキ位置ミスって別の事故起きたりしますよねえw
ミディアムが案外長持ちしたのでピアストリとサインツは2 7周目まで引っ張ってようやくピットへ、これでピアストリはルクレールの1. 5秒後方となってアンダーカットされましたが、 8周のタイヤ履歴差があります。でもハードの8周差ってそこまで決定的には思えないので、今日もピアストリはフェラーリに出し抜かれることになる気が。
と、ここで重大な転換点、29周目のターン3でローガン サージェントとマグヌッセンが絡んでクラッシュし、 サージェントが出られないのでSC導入となりました。 マグヌッセン、今日も10秒ペナルティーです。ラインが一本しかない部分でマグヌッセンが引かずにいたらタイヤ同士が当たったという接触、サージェントも相手を考えたら少し用心したラインを採っても・・・というところかもしれませんが、あそこで1台分も開けたらその先がグダグダになるし鼻先を入れたもん勝ちになってしまいます。見切りと判断の問題なので無敵君ムーブとは全然別の話ですが、マグヌッセンには引いてほしかったですね。
まだタイヤを換えていなかったドライバーはこれで全員ピットに入 り、上位でまだ動いていなかったノリスは1位で入って1位で復帰、 そして中団争いで他の動きを無視してミディアムで自分のレースを していた角田も恩恵を受けて7位で入って7位で戻りました。ペレスだけはハードがうまくいかないせいか、あえて2回目の交換でミディ アムへ戻しました。
33周目にリスタート、先頭でリスタートする機会がないせいか、ノリスはフェルスタッペ ンに完全にタイミングを合わせられていきなりターン1で狙われます。しかしここを防御するとターン12では逆に3位のルクレールがフェルスタッペンに 対して仕掛けたので、 対処に追われたフェルスタッペンはノリスのDRS圏から外れてし まいました。ターン8の出口でフェルスタッペンはちょっと曲がりにくくて踏み出しが遅れているように見えました。
一方4位争いではサインツがピアストリに対してターン12で外から仕掛けまし たが、 ピアストリも粘ったのでサインツがコース外へ押し出される形にな りました。 これにキレたサインツが無線で再三にわたって順位の返還を訴えま すが、残念ながら審判の判定は「必要なし」。
エンジニアのリカルド アダミからその情報を伝え聞くと「リッキー、ほっといてくれ」。 冷静さを失ったか異様にブレーキングで距離を詰めていくサインツ 、 39周目のターン17で強引に内側に飛び込んだらちょっと滑って ピアストリのウイングを踏んづけながら抜いていきました。これでサインツは4位になりますが、 ウイングを壊したピアストリは交換を強いられて最後尾に転落し、 たぶん今度はこっちが文句を言いたい状況。きっちり止めてさえいえばギリギリの追い抜きとして成立しそうだったんですが、ちょっと踏ん張りきれなかった印象です。
優勝争いは去年や一昨年ならフェルスタッペンがすぐ追いついて抜いてしまい、ノリス優勝は一瞬だけの夢になっていたでしょうが今日は違いました。「全然曲がらん、ひでえ」と無線で訴えるフェルスタッペンをノリスは少しずつ確実に引き離し、今日は本当にそのまま勝ちきれる展開になってきました。マクラーレンもこの機会を逃したくはありません、ウイングを壊したピアストリが後方でバトっていますが「ランドが1位走っとるからSC出すなよ」と釘を刺します、そうそう、今年NASCARでもそういうのあったからねえw
残り周回数が減ってくると見ているこっちに力が入って段々と貧乏ゆすりが始まってホーナー状態になってしまいましたが、ボラードの無くなった見にくいコーナーもノリスはミスることなく最後まで攻め続けました。ランド ノリス、24歳。F1通算110戦目、通算16度目の表彰台でとうとう初めての優勝を手にしました。この『16回目の表彰台が初優勝』という数字、過去にパトリック ドゥパイエ、ジャン アレジ、ミカ ハッキネンも同様で、なぜか未勝利表彰台記録は15で終わるという歴史をまた繰り返しました。塩原節を拝借すれば、マイアミにあったのは夢の国・ノリスランドだった、ということでしょうか。
ちなみに、レース後に確認したDHL最速ピット賞によれば、中継で同じ1.9秒表示だったペレスとルクレールのタイヤ交換はペレスが1.95秒、ルクレールが1.94秒でルクレールの勝ちだったみたいです。
こういうことが起こるから「どうせフェルスタッペンが勝つんでしょ」で安易に見るのやめちゃいかんなあと年に1回ぐらい思い出させられますね。今回マクラーレンのアップデートが非常に強力だった、というのがまず最初のきっかけだったと思います。そして2つ目に、前を行くペレスがピットに入った際にそこを無視して「ぺレスから順位を守るのではなく前を行くサインツを捕まえに行くぞ!」と前を見たレースをし、言われたノリスもしっかりタイヤを残していてここからコース上最速で前を追いかけられたのが大きかったです。タイヤを残していたからこそSCが出る時にまだタイヤを換えておらず恩恵を受けられました。
フェルスタッペンがピットに入るまでの間、2位を走るピアストリもまだフェルスタッペンから3.5秒差あたりで、いつものあっという間に5秒も10秒も離れるレースにはなっていませんでした。今日のフェルスタッペンは完全に車と条件が一致して異常に速い環境ではなく、速いのは速いけど見えるレベルだったと思います。事後に判明したこととしてボラード破壊の際にフロアを壊していたそうで、後続が遠く離れていたらあの失敗は起きなかったかもしれないので、ピアストリは陰ながら速く走って優勝に貢献したのかもしれません。
いずれは勝つ機会もあるだろうとは思っていたものの、ここでノリスが勝つとは思っていなかったのでかなり驚きましたが、とにかくノリスおめでとう!と同時にふと思うのは、ルクレールがちゃんとFP1を走ってもっと最適に車を仕上げられていたら、ひょっとしたら彼の方にも優勝する機会があったのではないか、ということ。あの失敗も実は1%ぐらいノリスの優勝に影響したかもしれません。
次戦は2週間後にイモラ、そして翌週のモナコへと続く2連戦です。1つ勝って呪縛が解けたノリスのこの先の走りにも期待ですし、今回は製造が間に合わずにアップデートを完全に適用されていない『MCL38.05』ぐらいで走ったピアストリが『MCL38.1』になってどう対抗するのかもちょっと楽しみなところです。
コメント
新たな勝者が出るというのはやっぱりいいもんですね~、次はNASCARの誰かに期待!