F1 第4戦 日本

Formula 1 MSC Cruises Japanese Grand Prix 2024
Suzuka International Racing Course 5.807km×53Laps=307.471km
winner:Max Verstappen(Oracle Red Bull Racing/Red Bull Racing RB20-Honda RBPT)

 フォーミュラEからの連続FIA国際レース週間、F1第4戦は日本です。日本では1994年4月に岡山国際サーキットでパシフィック グランプリという名称のレースが開催された例がありますが、鈴鹿サーキットで春にF1が開催されるのは初めて。物流の関係でオーストラリア→日本→中国と辿ると多少なりとも効率的だ、という話ですが、結果としてシンガポールだけがポツンと他の場所に離れてアゼルバイジャンとの流れになっているので本当に効率が良くなったのかはよく分かりませんw
 かつては鈴鹿と言えばだいたいシーズンの最終戦かそれに近かったのでチャンピオンを決めるレースになることも多かった印象ですが、今はレースの数が増えすぎてよほどのぶっちぎりでない限り鈴鹿ではなかなかチャンピオンなんて決まらないし、猛暑だったり台風が来たりと気候の面では色々大変なので春開催というのは良いなと思いますね。もっとも、フォーミュラEと続けて開催されたことが影響してるのかスーパーフォーミュラは異様に開幕が早いし、SUPER GTはまだ始まらないので国内レースはそこそこ影響を受けている気もします^^;

・レース前の話題

 第2戦で発生した、コース外を使って相手の前に居座り、いくらタイム加算ペナルティーを受けても無敵君状態で後続を蓋できてしまう問題。さすがに規則をそのままにはできないので変更が検討されているようです。コース外を使用して不正に順位を得ていると判断された場合、通達を受けてから1周以内に順位を返せば処分を避けることができ、従わなかった場合にはドライブスルーのペナルティーが課せられる、というもので、たぶん誰でも思いつくし何で最初からそうしとかないんだと思われそうな内容とのこと。きちんと管理するために映像を確認する職員を増やすそうです。
 規則の変更が必要なのですぐに実行には移せないようですが、急いでまたザルな規則にだけはしないでいただきたいですね。

 そして第3戦ではアレクサンダー アルボンがFP1でクラッシュして車を大破させてしまい、予備の車体を持ち合わせていなかったウイリアムズはチームメイトのローガン サージェントの車をアルボンに与えてサージェントを欠場させる、という前代未聞の事態が発生しました。サージェントは自分では何も壊していない(FP2では自分も事故りかけはした)のにレースに出れない、という気の毒な週末でした。
 あれから2週間、壊したアルボン車は修復できたので2台体制のチームに戻りましたが、その修理車両を使うのはサージェント。アルボンは前戦で徴収したサージェント車をそのまま継続使用することになりました。どうも新しいウイングもアルボンだけが使えるみたいです。そもそもはオフ期間の作業の遅れから予備が無いウイリアムズ、今回修復作業に時間と人員を割いたので予備車両の納期はさらに延びてしまい、暫くは『壊す=出れない』という状態が続く見込みです。またアルボンが壊したら、さすがに今度は同じことしないですよねえ・・・w

・FP1


 とか言ってたらFP1でサージェントが早速事故ったでござる。出走できなくなるほどの壊し方でなかったのは幸いでしたが、これでチーム側はきっと『ほら、だからアルボンの方が良いって』と思ってしまいますね。気の毒なんだけど、事実としてはそうせざるを得ないのもまた分かる、悲しいけどこれ競争なのよね。
 そしてFP1でビザ キャッシュアップ RBが新人テスト枠としてダニエル リカードの車に岩佐 歩夢を起用。岩佐は2022年から2年間FIA F2に参戦し、シリーズでそれぞれ5位、4位となってスーパー ライセンスを取得する条件を満たしていました。今季はF2ではなく日本に戻ってスーパーフォーミュラに参戦しています。これで岩佐と角田 祐毅、束の間日本人コンビとなり、初めてのF1実戦走行となった岩佐は16位、角田は9位でした。

・予選

 今週は5強チーム/10人の中でランス ストロールが早々にQ1敗退、その他枠から1人がQ3に進めることになります。Q2でその1枠を争ったのは角田、ダニエル リカード、そしてQ1で異様に速かったバルテリ ボッタス。中古タイヤを使った1回目のアタックでは10位に食い込んだボッタスでしたが、2回目のアタックでは伸びを欠いて結果は13位でした。リカードが新品を使って暫定10位に入りますが、角田はこれを0.055秒上回り今回もQ3進出、リカードもここまでの3戦よりは遥かに良い予選でしたね。
 Q3ではマックス フェルスタッペンに対してセルヒオ ペレスが食らいつきました。昨年の予選ではS字の通過速度でペレスが全く付いて行けない、いやむしろこれが普通でフェルスタッペンだけ頭のネジが飛んでるんじゃねえの!?という差がありましたが、今年は改善させてきたのか最終結果では0.066秒差。フェルスタッペンがピレリ ポール ポジションであることに変わりはありませんでしたが、ペレスのこのタイムは正直ものすごく驚きました。

 3位にランド ノリス、4位は前戦の勝者・カルロス サインツ。フェルナンド アロンソが5位に食い込み、この予選の日が誕生日だったオスカー ピアストリが6位。FP2で急に何か掴んだらしいルイス ハミルトンが7位、なぜかサインツとのセクター1での差が埋められないシャルル ルクレールが8位となりました。ジョージ ラッセルが9位となり、角田はさすがに5強勢の壁が高すぎて10位です。なおボッタスは自転車でサーキットに来たのが妙にウケているそうです。

・決勝

 初夏を思わせる晴天で気温は22℃、なんと路面温度は40℃近くなった決勝。タイヤ選択は上位10人ではアロンソだけソフト、他はミディアムを選択。スタートで角田はすごく出遅れ、リカードも今ひとつとRB2台が後退。ターン1の手前ではリカードが前にいたのに角田がちょっと無理に内側に入ってリカードが譲るようにしたので、12位あたりがえらく渋滞してターン1に入りました。
 これがその先にも大きく影響し、ターン2を出たリカードがターン3に向けて外へ振ったら右にはアルボンがいたので接触、2台まとめてそのままコース外の壁へ。危ない場所な上に配置されたタイヤが倒れまくってコースの安全性も保てていないため、SC導入の手順すらなく素早くレッド フラッグになりました。

 ターン1の手前で角田に譲ったリカード、ターン2では左後方からストロールが狙ってきたのでこちらの動きを警戒していました。相手が左後方にいるけど並んではいないので、ターン3にある程度外から進入して被せれば抑えられるか相手が引くだろう、という考えだったと思いますが、実際はその間に既に右にはアルボンが車体の半分ぐらい並んでいました。アルボンからしたら空いた場所に入ったら急にリカードが寄ってきた状況で、ぶつかるしかありませんでした。
 レース後に行われた審議では、1周目スタート直後の争いであることと、リカードの左後方にストロールがいた位置関係からレーシング インシデントと判定されてペナルティーは出ませんでした。実際あの速度域であんだけしか幅の無いコースで全部一瞬で考えないといけないので罰則を課せられる状況ではないと思うんですが、まあでもできれば右も見ていてほしかった、という印象でした。
 アルボンが入って行ったのが楽観的だったという見方もおそらくあると思いますが、あの位置関係で「あ、これ見てもらえてないかも」と思うのも簡単ではないし、思ったとしてスロットルをあそこで戻したらそれはそれで後続が予測できずに別の危険を招く可能性があるので、入っちゃダメとはちょっと言いにくいかなあと私は思いました。アルボンの視点で見た場合には、ストロールはどちらかというと自分の左、リカードの斜め後ろに見えていると思うので、左を気にした進路変更があるともちょっと予測も難しいと思えました。

 いずれにせよ、結果が出なくて批判にさらされるリカードにとってはペナルティーの有無や経緯に関係なく0周リタイアしたという事実が重く、そしてアルボンは次戦で乗れる車があるのかかなり気になる状況です。ウイリアムズの財務部門の人は頭を抱えているのではないでしょうか・・・

 上位9人の順位は最初のスタートと変わらず、タイヤだけが人によっては交換されている状況で3周目にグリッドからのリスタートとなりました。ハードを2セット持っている人はここからハード→ハードの実質1ストップでも行けなくもない、という中でハミルトンとラッセルがハードを選択しました。12位に落ちてしまった角田は逆張りで中古のソフトを選択。
 いざリスタートしてみると、10番グリッドは誰かズラでも配置してるのか今度はニコ ヒュルケンベルグがスタート大失敗。ハードを履いたメルセデスも遅いので、上位6人は引き続き変動なし、7位にルクレール、8位ハミルトン。角田は9位に戻しましたが、5周目にすぐラッセルに抜き返されて10位へ。
♪春風にゆらゆら揺ら~れ~、今行ったり来~たり行ったり来~たり~


※TTREは土屋 礼央によるソロ活動の名称。礼央さんは数年前に久しぶりにF1を見てハマってしまい、現地観戦も行うほどです。そして埼玉西武ライオンズとFC東京を熱烈に応援しています。

 マクラーレンはややタイヤが不安なようで2人とも後ろからつつかれる展開、4位のノリスが上位で最初に11周目にタイヤ交換に動きました。翌周にピアストリ、続いてアロンソもピットへ。彼らはやや交換が前のめりな2ストップ組で、その他の上位勢はもう少し引っ張ってタイヤの寿命を考慮した標準的な2ストップとなりました。
 この後概ねピットサイクルが一巡するも、ルクレールだけはなかなかピットに入らなかったので別のことを考えているらしく、17周目から20周目まで少しの間ラップ リードを記録しました。作戦がずれているルクレールをとりあえず脇に置いて、実質1位はフェルスタッペン、実質2位は早めに入ったことで順位を上げたノリス、これにペレス、サインツが続く形。メルセデスは遅い上にタイヤも厳しくて、もう既に2ストップ組にドバドバ抜かれてるので1ストップはダメっぽい感じです。

 23周目にはケビン マグヌッセンを先頭とする10位を争っている5人がなんと一斉にピットへ。ここで3番目に入った角田が最初にピットを出ることに成功し、しかもコース上を走っていたエステバン オコンのギリギリ前方でターン1に入って誰にも引っかからない夢のようなピット大成功を収めます。なかなかSC中以外であんなに一緒に入って一緒に出るのは見たことがないし、VCARBのあれほど会心のピット作業も珍しかったです。お互いにアンダーカットはされたくないけどあまり早くも動きたくない、という中で全員が同時を選んだという珍しいパターンですね。

 26周目、まだタイヤを換えずに2位で頑張っていたルクレールでしたがデグナー2個目で飛び出してしまい、その間にペレスは安全に2位を獲得。落っこちたルクレールはもうレースの半分なのでピットへ。そしてミスったルクレールが目の前に落ちてきたノリスも同時にピットに入りました。ノリスは前のめりな2ストップ作戦ですが、ここから先のタイヤ運用は1ストップのルクレールと同じですからそんなに楽ではないことが分かります。
 その他の2ストップ組は32周目あたりからがピットサイクルで、1位は当然フェルスタッペン。ピット直後は実質2位がルクレール、3位にノリスと先に入った人が前にいましたが、ペレスは早い段階で2人とも自力で抜いて見た目上もきっちり2位を取ります。

 このあとメルセデスは1ストップを諦めてスタートで使っていたミディアムを再利用。まあ普通に正面から戦うとちょっと分が悪いので違うことをした、というのは間違いではないと思いますね。事後情報によるとハミルトンはリスタート後にルクレールと軽く接触したことでダウンフォースが減ってしまった、という事情もあったようです。
 一方でこちら1ストップを成功させそうなルクレールと前のめり2ストップのノリス。この2人を10周もタイヤが新しい普通の2ストップ・サインツが追いかけて3人で3位を争う状況となります。1位・2位はもう固まったも同然なのでこの3位争いが注目ですが、そんな中42周目にサージェントがデグナーの2つ目で全く止まれず飛び出してしまいます。ウイリアムズまたやってもうた、そしてSC導入か、と思ったらなんとサージェントはぶつからず砂にも埋まらず、ちょっと怖いけど自力で後退ギアに入れて脱出。いやあ、次戦で使う車が無くなるところだった^^;

 サインツは44周目のターン1でノリスをかわすと、46周目にルクレールもすんなり抜いて表彰台を確保。レッドブルが速すぎることを考えると、今日もまたスーパーカルロスに近い状態ではあると思います。速さでは上回ってくるマクラーレンをレースの総合力で確実に仕留めたのはお見事。

 フェルスタッペンはもちろん今日も独走、と言っても2位のペレスは時々追い抜きを行いながらも13秒差だったので、予選と同様に非常に素晴らしい走りを見せたと思います。デグナー2個目で1回自爆しかけたのはありましたけど、高速サーキットでこの走りを安定してできれば他のドライバーを連れてくる必要性は薄くなりますね。



 サインツ、ルクレール、ノリスのトップ5でルクレールは個人的にドライバー オブ ザ デイだと思いました。ミディアムでよくあれだけもたせたし、ノリスに追われても動じずに、スタート順位から考えれば望みうる最高の順位だったと思います。逆にノリスとマクラーレンは前戦オーストラリアに続いてまたもフェラーリの戦い方に対して後手に回ったように思いました。でもこのチームはシーズン中に伸びることが多いチームなので、ヨーロッパに戻って改良部品を投入したらまだ全然分からないでしょうね、想像ですが。

 6位にアロンソ、そして1ストップを諦めたラッセルは鬼の追い上げでピアストリをかわして7位に滑り込みました。ラッセルは一度は50周目にシケインでピアストリの内側に飛び込んだものの、さすがに強引すぎて相手をコース外まで追いやってしまい追い抜き失敗。ただこれでピアストリはアロンソのDRS圏から外れる要因となったと思われ、さらに52周目のシケインで立ち上がりをミスったことで53周目のターン1でラッセルに抜かれました。タイヤの管理と細かいミスはまだまだ2年目の23歳ですね。
 そして9位にハミルトンを挟んで、10位に角田が入り母国レースでは初めて入賞となりました。あのピットでの脱出劇は勝利に間違いなく貢献し、その後は作戦違いのヒュルケンベルグを逆バンクで豪快に大外刈り。格上車両のストロールが後ろに来ても、ストロール曰く『別のカテゴリーみたい』に遅い最高速の影響か抜かれずに守り続け、結果ストロールはもう1回ピットに入ってソフトを履く、という変化球を投げることになりました。お、別のカテゴリーってことはF2エンジンですか?

 ハードで30周も走るのでけっこうタイヤはしんどい作戦でしたが、角田は終盤に自己ベストを記録していたので非常に上手く使いこなしたとみられます。最初のスタートでは大きく下がってしまい、あの事故が無く進んでいたら正直入賞圏に戻れなかったかもしれませんが、仕切り直したリスタート以降は抜群の走りを見せたと思いました。


 やっぱり鈴鹿の狭い場所での事故はちょっと怖いな、というのも改めて思いましたが、ほどほどに高い気温でタイヤ管理の巧緻や作戦の妙も見られ、豪快な追い抜きもあって、しかも映像にはところどころ桜が見える、という個人的にはすごく気持ちがよく面白い良いレースでした。次戦は2週間後、中国です。

コメント

レリックアース さんのコメント…
スーパーカルロス採用ありがとうございます!
メルボルンとはコース特性が変わる鈴鹿でもかなり調子良さげだったので、本格的になにかツボを見つけたのかなという気がします。
元々成績が悪くてのクビではなく、ハミルトンが来ることによる影響から消去法(生え抜きか外様かの違いが大きかったのかなと推測しています)で渋々リリースという形であり、今年の移籍市場の目玉かつトリガーになるドライバーなので、この好調が続くのであれば益々今後が楽しみになりますね。
(個人的にはハミルトンが抜けた後のメルセデスがお互いに取って現実的な選択肢になるのかなと現時点では予想しています)

角田とRBも前回に引き続き素晴らしいレースでした。実はアルファタウリ時代から成功時は2秒前半を叩き出していたりと決まった時のピットタイムは全体でも速い方だったのですが、安全にやって3秒で送り出せばアンダーカット成功って時に10秒ピットをブチかましたりと肝心なところでやらかすこのチームがあの大一番でバッチリ決めたのは感動しました!
赤旗明けにしっかりソフトでトラックポジションを取り返しに行ったりと戦略面でも昨年以前と比べると成長したな(去年のオランダのような勝ち目が全く無いギャンブルになってないギャンブルをしなくなった)と感じるので、徐々にですがチーム改革の成果は出ているのかなと思いました。
そうであって欲しいという願望も入っていますがw
SCfromLA さんの投稿…
>レリックアースさん

 スーパーカルロスの響きが気に入りましたw サインツって最初はフェルスタッペンのせいで速いのに陰に隠れ、マクラーレンからフェラーリに行ったらマクラーレンが速くなり、となんかめぐり合わせの悪い選手なので、そろそろ何か良い組み合わせにハマって欲しいなあと思いますね。
 角田は最初にボッタスにアンダーカットされた時には、ああこれはまた気づいたら埋もれて13位ぐらいで終わるパターンだ、と思っていたのでピットでひっくり返した上にその後非常に強力な走りだったことには驚かされました。ストロールもうちょっと頑張れよ、とも思いましたけど^^;
Cherry さんのコメント…
お久しぶりです!
実はこのレースの週の金曜日…大学の入学式が新宿にてありまして…()
渋谷のウィリアムズファンゾーン行ったんですよぉ〜そしたらウィリアムズ代表のトークライヴがあったようで抽選当選した人しか入れない時間で詰みまして…
で、諦めて付いて来てた母と解放される時間まで暇潰そうぜって散歩したりして、その開放時間の1時間前くらいにまた通り過ぎたらなんとサイン会に入れてもらえまして、なんとしれっと代表からサイン貰えました!!
地味にとんでもない入学祝いサプライズを経験しましたw
SCfromLA さんの投稿…
>Cherryさん

 入学おめでとうございます!それは思い出に残る出来事でしたね(*´▽`*)