フォーミュラE 第7戦 ミザノ

ABB FIA Formula E World Championship
2024 Misano E-Prix
Misano World Circuit Marco Simoncelli 3.381km×26Laps=87.906km
Race energy:38.5kWh
winner:Pascal Wehrlein(TAG Heuer Porsche Formula E Team/Porsche 99X Electric)

 フォーミュラEミザノ・パート2、昨日は予選と決勝で失格が各1名、レースは選手権のトップ2が事故、節約度合いが強すぎて追い抜きの安売りセールになり、予選順位に欠片も意味がないというわけのわからんレースで、一体何を見ていたんだろうという結末になりました。今日は昨日より2周短いレースなので、そこまで変なレースにはならない、はずです。

・新人テスト

 このイベントではレース1の前日に新人テストも併催されました。各チームから新人さんが1人ずつ出走しての走行が行われ、最速はマクラーレンに乗ったテイラー バーナード、2位はDSペンスキーに乗ったロバート シュワーツマンでした。WECとの重複によりベルリンで代役を起用することになるエンビジョンは、元メルセデスの育成ドライバーで20歳のエストニア人・ポール アーロンを起用して8位、同様にニック デ フリースの代役として出場が見込まれるジョーダン キングがマヒンドラに乗って7位でした。

・グループ予選

 A組は最後のアタックが始まろうかというタイミングで国際映像が謎の全チーム代表を順番に映す演出があって、緊張感を表現したかったのかもしれませんが私は逆に笑ってしまいました。予選の大事な場面で数十秒おっさんの顔が次々映るってなかなか見たこと無いですよw
 このA組は最後に一発アタックで行ったキャシディーが最速。2位はロビン フラインス、3位にミュラー、そして4位は昨日のここで最速だったベルニュでした。ローランドは最後のアタックの際にシケインで止まれず失敗し5位、ダコスタも最終コーナーで完全にコース外に出てしまって記録抹消、まさかのグループ最下位でした、昨日の失格を引きずっているのでは。。。
 B組では昨日に続いてヒューズが最後にとんでもないタイムを出してグループ1位を獲得、チームメイトのバードも3位に入りました。間に挟まって2位にベアライン、4位がストフェル バンドーン。ブレーキのエラー表示が出ている、と言っていたデニスが5位で脱落、昨日のポールシッター・エバンスも9位で落ちました。デニスは昨日の予選でも縁石で跳ねた拍子になんかBBWの制御がおかしくなったそうで、ずっとブレーキで問題を抱えているようです。

・デュエルス

 俗に流れが悪いとはこういうものなのか、準々決勝でキャシディーはトラックリミット違反により敗退。そもそもセクター1をうまくまとめられずに遅れてしまったのでちょっと最終コーナーがギャンブル的だったとは思いますが、これでタイムなしなので予選8位が確定。本人もちょっとどう言えば良いものか、と言葉を選ぼうにも出てこない感じ、数か月前のあの無双状態どこいった。。。
 これで対戦相手のベルニュは準決勝へ。ミュラーとの対戦となると、アタック前に「ダッシュが固まった、何にも動かん。」とちょっとした不具合に見舞われつつここも突破。不具合で350kWに切り替わらなかったら確実に負けるので、深刻な問題ではなくてよかったですね。一方のB組は実力通りにヒューズが勝ち上がってベルニュvsヒューズの対戦に。
 決勝はピットを出る前に先攻のベルニュが後ろにいるヒューズに対してハング ルース、いわゆるアロハポーズを出して挨拶し、これにヒューズも手を上げて答えるというちょっと和む光景が見られます。しかし走りは一切和む暇の無い走りをお互いに見せ、ベルニュが先に出したタイムはここまでのデュエルスで最速となるタイムでしたが、ヒューズがこれを0.245秒も上回る圧倒的な差を付けて、ジュリアスベアポールを獲得しました。今日はちゃんと消火器動きます。

 スタート順位はヒューズ、ベルニュ、ベアライン、ミュラー、バード、バンドーン、フラインス、キャシディー。ローランドは10位、エバンスは15位、ダコスタは最後尾からのスタートです。なんか記録だけ見たら前日の失格でペナルティー受けて最下位スタートになったっぽく見えますね^^;

・決勝

 気温25℃、路面温度は40℃に達したので岡山国際サーキットとだいたい似たような走行条件。スタートからのターン1では1列目の2人がお互いに「おい前に出るのかい、出ないのかい」という雰囲気になりつつもヒューズが先頭を維持。今日もキャシディーが積極的で2周目にはもう3位に浮上します。一方チームメイトのエバンスは19位まで下げていて考え方が違う模様。後方待機作戦でしょうか。
 ヒューズとベルニュは3周目にアタック2分へ。ヒューズは1位で入って1位のまま戻りましたが、節約したいのでその後に自分から順位を下げ、逆にベルニュは自ら前に出たものの、結局またヒューズの後ろに回ることを選択、今日もまだ読みづらい部分が多いですがさすがに全体でずっと2列になるような異様な状態ではなくなります。

 積極姿勢のキャシディーはダブルアタックに出て早々に2回のアタックを消化、すると7周目にフラインスが周囲の車に挟まれるような形で接触して右前のサスペンションが折れた模様。曲がれず砂場に埋まってしまいSCが導入されました。キャシディーはこれでアタックの多くをSC下で消化することになりますが、どうせ捨てるためのアタックなので余分な力がいらなくてラッキーです。
 重機を使えばすぐ排除できるので9周目にはリスタート、ここで多くの人がアタックを取りに行き、エナジー的には少し助かったので全体にペースが上がり1分22秒台。こうしてレースに動きが出たことが影響したのか、11周目になんとダコスタがウイングを壊して緊急ピット。前方に多くの車がいる中でターン1で追突しており、単純に相手の動きを見誤った感じです。ああ、マジでクビになる・・・

 13周目にはターン2でもやはり前方の減速に対応しきれずナトーがこれまた追突事故、当てられたバンドーンもピットに入ることになり今日もサバイバルになってしまいます。レースはスピードが出ない方が危ない(;・∀・)
 
 17周目・残り10周、リーダーはごちゃついているレースを今日もうまいことすり抜けてローランド。背後にはベアラインがいて残量が2%程度多いので、ローランドからすると相手がダコスタからベアラインになっただけでほぼ昨日と同じ展開です。18周目、けっこう頑張ったけどベアラインが前に出ました。
 ローランドはそれでもベアラインに食い下がっていくと、21周目に再び前へ。相変わらず残量ではローランドのほうが2%少ないままなので『ローランドだけ1周少なくないか?』と感じてしまいますが、時間制レースではないし延長するほどSCも入っていません。同じく残量がある3位のデニスもそこまで近づいてこないので、なんかこのパターンってサンパウロと同様に残量ではなく発熱の問題もありそうです。

 そのままレースは進み、ローランドは1分19秒台中盤のペースでベアラインを引き離し、とうとう最終周に来ました。ローランドがぶっちぎりで連勝、日産パワートレイン暑さに強いな、
やはり俺たちのエナジー管理は間違っている

と思った私はアホでした。ローランド、電欠(。∀゜)ベアラインがリードを奪い返し、2位のデニスとはけっこう差が開いていたのでそのまま2秒差でチェッカーを受けました。デニス、ミュラー、キャシディーの3人は最後まで2位~4位をハゲしく争い、結局2位はデニス、3位は0.05秒差でキャシディーがチェッカー目前にミュラーを逆転しました。アプトの表彰台ならず。

 タラレバですが、昨日ダコスタが優勝して車検してGen2バネについての違反を見つけられていなければ、ここでベアラインの車両によって初めて発見されてこっちが失格になっていたかもしれません。そもそも開幕戦でベアラインが優勝した際にもほぼ確実に使用していたのはGen2バネなので、なぜその時は発見されず昨日は指摘されたのか、とか、ダコスタは疑心暗鬼を深めて「これは機関による妨害工作だっっ・・・!!!」と感じているかもしれません。エル・プサイ・コングルゥ。
 5位でチェッカーを受けたのはポールシッターのヒューズでしたが、途中シケインを真っ直ぐ進んでグンターの前に出たことでコース外走行によって利益を得たと判定され5秒加算、これで正式結果は8位となりました。彼自身もレース中盤には押し出されて順位を下げる不運があったんですが、まあ何にせよまとまらないレースでした。代わって5位に日産のサッシャ フェネストラズ、6位は昨日すごくもったいなかったセッテカマラが入り、ERTは2戦連続での入賞です。ダルバラが9位に入ってフォーミュラE初入賞を記録しました。

 ドライバー選手権ではベアラインとデニスがこのレースを終えたらともに89点で同点、3位は9点差でローランド。キャシディーは13点差の4位となっています。一方チーム選手権ではジャガーTCSレーシングが首位、16点差でアンドレッティー フォーミュラ E チームが続き、タグ ホイヤー ポルシェフォーミュラ E チームは19点差の3位。今年もやはりこの人たちの争いですね。マヒンドラだけは未だに1点も獲れていません。

・ローランドの運命は予め決まっていた

 最終周に入ってセクター1あたりで早々に電欠してしまったローランド、実はこれも機関によってあらかじめ結果が操作されていました、というのは9割冗談、1割本気で、なんと日産はレース前のエナジー管理目標設定時に設定を誤ってしまい、これによって簡単に言えばローランドはスタートの段階から1周少ない目標に向かって走らされていたようです。
 スタート前にソフトウェアにちょっとした不具合が見つかり、日産のクルーは仕方なく手動でリセット。この普段ならやらない手順に作業の手間と時間を取られてしまい、その後の準備がバタバタとしていて誤った数値を設定し、それに気づかないままスタートしてしまった、という流れだったようです。

 レース途中に国際映像に表示されたエナジー残量からは彼らの残量が少ないことが見えており、放送席でも「どこかで節約しないと、2~3%負けていてほぼ1周分ですよ」と解説されています。しかし日産陣営は私と同様に「ポルシェは熱で苦しんでいるんだろう」というような感覚で、自分たちの設定が間違えているとは本当に気づかないまま電欠した模様。そもそも目標設定は間違えていても自分たちの消費量は分かるんだから、単純計算で減りすぎてない?とどこかで疑問を抱くこともできたと思うんですが、それもありませんでした。
 逆に対戦相手だったベアラインは、残量の少ないはずのローランドが抜きに来て、チームからは守るように指示されたものの全然無理なので前に出し、その後もペースを上げるローランドに少なからず動揺したようです。まさかローランドが暴走状態とはポルシェの面々もすぐには気づきませんから、本当に自分たちは合っているのか?日産速すぎないか?と疑心暗鬼になるところでした。

 適切な設定だったらローランドはさすがに1位ではなかったでしょうが、じゅうぶんな順位は得られたはずなので、あまりにももったいない人為的ミスだったと思います。

 もう1つ、ポールを獲ったけど結果に繋がらなかったヒューズですが、これまでも予選に対して決勝で順位を下げる場面が目立ちます。もちろん去年は日産パワートレイン自体の効率も影響していたと思いますし、本人の運転にも効率性で足りてない部分があるんだろうと思いますが、今回見ているとなんとなくマクラーレンは彼に完璧を求めすぎているようにも感じました。
 もちろん勝てれば最高ですが、自分たちの道具の効率やちょっとした展開で勝てないパターンってこのレースでは結構多いので、現実的な目標を見極めながら走り、常に状況に合わせて目標や考えを変更する柔軟性がいると思います。しかしどうもヒューズに関しては『常に理想とする順位にいなければならない』という考えで1位を死守したり、逆に順位の上げ下げを繰り返したり、まだ結果を出していない選手に多くを求めすぎているように感じます。
 本人も勝ちたいのかもしれませんが、なんか予選であんだけのびのび走ってるのにレースはいつも窮屈そうにして順位を下げているように見えるので、ちょっと違う発想でレースを組み立てることを試した方が結果に繋がるんじゃないかな、と傍から素人が見ていると思います。せっかく速いドライバーなのになんかもったいないんですよね。

 次戦は2週間後のモナコ、最新の情報ではこの場を使って来シーズンから使用するGen3Evoの車両がお披露目される予定だそうです。四輪駆動になってるんでしょうかね、いやその前にアタックチャージをw

コメント

スイカ男 さんのコメント…
NASCARでないので匿名でw(きっとバレてますがネタです)

チャンプカー中継で育った私にはツーワイドレースは見てて最高に面白かったです。
スピードを追い求めるのも良いですが、遅くても追い抜きが多い方が「ライト層」を掴むには重要かと思います。
市街地よりものびのび走れて通せんぼも難しいので個人的には好きなレースでした。
(レース1はやりすぎかどうかは置いておいて)

そして、アタックモードもSC中はタイマー停止とかすればいいのに。
運要素がここまで強いとF1と同じ世界選手権としてはどうかなぁとも思います。
SCに限らずせっかくのパワーも節約で使わないで消費も本来の意図ではないですし..。
アタックチャージもホントに導入されるのかなぁ...。
ピットがあれば何か見える物はあるかもしれませんので早期導入希望!
そもそも使えるバッテリー容量をコンピュータで制御してるんだから0%になっても物理上電欠にならないのにチャージって...

いっそMotoGPのロングラップペナルティを参考に完全なコース外のそこを通過したら使えるエネルギーが2%増えます!
(通過は義務でなく任意で1レース2回までとか制限は必要ですが)
とかにした方が捨てるアタックモードより100倍マシです。

FEをシーズン1開幕から見てるスイカ男のボヤキでした。
SCfromLA さんの投稿…
>スイカ男さん

 いつも匿名で貴重なご意見ありがとうございます。マジで目から鱗です。将来的な技術として路面に埋めたコイルを使って非接触充電し、ゲームのF-ZEROみたいに『遠回りしてパワーを回復する』みたいなのはたぶん運営も考えてると思いますが、確かに電子的に使用可能電力を封印・制御してるんだから、どこかを通過すると容量が解放されて速く走れる、いわば疑似充電というのは制度設計をきちんとやったら今のアタックよりも面白いかもしれませんね。高価な充電装置いらずw