NASCAR 第4戦 フェニックス

NASCAR Cup Series
Shriners Children's 500
Phoenix Raceway 1mile×312Laps(60/125/127)=312miles
winner:Christopher Bell(Joe Gibbs Racing/Rheem Toyota Camry)




 NASCAR カップ シリーズ・第4戦は1マイルのフェニックス。このレースで今年使用するショート トラック/ロード コース用の低ダウンフォース仕様が初投入されます。元々は『上面でダウンフォースを稼ごうとすると乱気流が増えて追い抜きができなくなるから、大型のディフューザーを装備して乱気流が起きにくい床下でダウンフォースを稼ごう』というのがGen7車両の開発主眼でしたが、ショートトラックではまだまだダウンフォースが大きすぎて抜けなかったので2年続けて削減策が採られました。
 今年はディフューザーがほとんど全部無くなって、短い整流版が2枚だけというずいぶんすっきりした形状になり、その代わりスポイラーは2インチから3インチへとかさ上げしてバランスを取りました。

 フェニックスではケビン ハービックが最多の9勝を挙げて当ブログでもずっと『砂漠王』と書いてきましたが昨年に引退して今は放送席。これで現役最多勝利者はカイルとロガーノがそれぞれ3勝ずつで並んでおり、これに2勝のハムリンを加えた3人が複数の優勝経験者。ハムリンは現役ドライバーで平均順位が最も好成績です。過去のレースの優勝者をスタート順位別に分けた場合、確率が最も高いのは1位と3位でいずれも8勝・勝率14.55%。これに2位スタートの5.45%を加えるとトップ3からスタートしたドライバーの勝率が34.55%です。

・レース前の話題

 大谷 翔平と山本 由伸が加入したことで日本でも話題が多いロサンゼルス ドジャース。その本拠地球場であるドジャー スタジアムを使用してレースを開催できないかNASCARがドジャースと交渉しているのではないか、という情報が流れました。フォーミュラEと連携して市街地レースを行うのではないかといった観測もあり、これを受けてNASCARのスティーブ フェルプスはNBCに対し

「驚くことではありません。それは単なる調査の一環です。何かがヒットすれば素晴らしいですし、そうでなければそれはそれで構いません。しかし、スケジュール面だけでなく、限界に挑戦し続ける必要があると思います。私たちはそれを見てきましたし、ファンもメディアもそれを見てきました。我々はこれまでとは違う考え方をする意欲があり、それはうまくいっています。」

と答えました。3年間開催されたLAコロシアムのレースですがどうやら契約は3年で一区切りだったようで、前回書いた通り来年はメキシコとカナダでのレースが予定されていて、それでいてNASCARがカリフォルニア州南部のレースを残す意向です。ただフォンタナの改修工事が終わりそうもないので別の場所を探しており、これもその候補地探しの一環と考えられます。メキシコを開幕前の余興で使う予定なので、こっちは選手権に組み込むかそうでなければオールスター戦になりますからスタジアムはさすがに無いんじゃないの?とは思うんですが、もし開催されたらセレモニーにオオタニさん出てきそうですね(*´▽`*)

・ARCA Menards Series General Tire 150

 今週はARCA全国シリーズがデイトナ以来の第2戦。トヨタ育成の2人の17歳が優勝を争いました。ポールシッターのウイリアム サワリッチと、これがデビュー戦となるジオ ルジェーロがリスタートのたびに激しい争いを見せてレースは進みましたが、残念ながら150周が予定されていたレースは終盤に落雷が発生し115周で中断。FOXの中継カメラも機能が止まって全体を見れるカメラが無い状態だったようで、その後に雨が降って短縮で終了となり、115周のうち66周をリードしたサワリッチが通算5勝目を挙げました。

 3位にはクラフツマン トラック シリーズでお馴染みのグラント エンフィンガー、5位にはこれまたデビュー戦だった19歳の女性ドライバー・イザベラ ロブストが入りました。読売ジャイアンツの選手と同姓同名のカイル ケラーは18位、NTTインディーカー シリーズでお馴染みマルコ アンドレッティーは21位、古賀 琢麻は23位でした。

・Xfinity Series Call 811.com Every Dig. Every Time 200

 昨年のマーティンズビル以来となる啓発系のイベント名、前回は『掘削の前には必ず811に連絡して』でしたが、今回は『掘削する時は毎回毎回811に連絡して』とちょっと語気が強まった気がしますw
 レースは終盤に驚き連発、144周目のリスタートからの争いでC.スミスがネメチェックを斜め後ろから押してしまい、スピンしたネメチェックがさらに後続を10台ほど巻き込む大混乱。先週は優勝を争ったチームメイト同士での潰しあいとなってしまいます。その後はジャスティン オールガイアーがスミスを退けて3秒差の大量リードで残り5周となりましたが、ターン1でなんと左後輪がいきなりパンクしクラッシュ。
 オーバータイムとなったレースでしたが、最後はスミスがリスタートを決めてリードを守り切り昨年のリッチモンド以来となる通算2勝目を挙げました。シェイン バン ギスバーゲンがこのレースで6位に入っています。

・カップシリーズ
 予選

 ブッシュポールはハムリンが獲得、2位にギブスが入ってジョー ギブス レーシングが1列目を占拠。3位からチェイス エリオット、エリック ジョーンズ、バイロン、レディック、グレッグソン。先週は強風のためにスタート前のセレモニーで髪の毛が大変なことになっていたらしいチェイス ブリスコーが8位でした。なんとホースバーがQ2に進んで予選10位です。

・ステージ1

 ギブスが好スタートを決めてリードを奪いますが5周目にいきなりコーション発生。クラウスがターン2にあるちょっとした段差でスピンしてそこにシンドリックとオースティン ディロンが巻き添え。

 ディロンは今回モーガン&モーガンのスキームですが、修復のためにおじさんの顔の近くに思いっきり金づちを叩きつけてるのがシュールです。車体に人の顔を描くとこういう時困りますねw
 13周目にリスタートするとここからギブス、ジョーンズ、ハムリン、レディックとトップ4をカムリが独占。ここから先もギブスが「ブレーキが熱くなっている」と言いつつも全周をリードしていましたが、最後の最後にレディックが背後に迫りステージ残り3周でリードチェンジ。レディックがステージ1を制しました。首跡さんはあえて期待しない30位予想でしたがこれは行けそう感ありますね。

・ステージ2

 1番ピットのハムリンがピットでリードを奪還。ステージ1の主役だったギブスはピットで3つ、ジョーンズは6つも順位を下げたのでカムリ軍団は解体され、今回はリスタートを決めたハムリンが2位のレディックを20周で2秒以上引き離す独走となります。
 その後ハムリンが周回遅れに遭遇し始めると1.2秒ほどの差に縮小はしましたが、115周目・ステージが残り70周ほどと折り返しが近づいて来たのでピット サイクルになりました。ハムリンは後ろの動きを見て119周目にピットに入りますが、ボックスに入る際にスアレスと重なって冷や汗。ピット後も他の車に引っかかったので理想的ではなく、アンダーカットを狙ったレディックに逆転こそ許さなかったものの真後ろに来てしまいました。
 リスタート時は早々に離されたレディックでしたが、今回は内圧を調整したのか最初からハムリンの後ろに付いたまま離れることがなく、ついに133周目に内側からかわしてリードを奪還。この間3位にはベルが浮上しており、予選では13位とまとまらなかったものの金曜日の練習走行で速かったので、優勝争いの候補と放送席で最初から名前が挙がっていました。

 ベルはレディックを上回る速さで周回、ピットを終えた時点で5秒以上あった差を毎周0.1~0.2秒ほど詰めるものすごい勢いで追い上げて170周目にはまずハムリンを抜くと、175周目にはもうレディックが射程圏。
 
 レディックも粘りましたがステージ残り5周でとうとうベルが前に出て、そのままステージ2を制しました。ハムリン、バイロン、トゥルーエックス、ブレイニーが続きます。コーションが出なかったのでリードラップ車両は19台まで減っており、今週はあんまり速くないロガーノも周回遅れになってフリー パスも得られませんでした。

・ファイナル ステージ

 まあそうなるだろうと思いましたが、ハムリンは1番ピットな上にクルーの作業も完璧に近くてまたピットで逆転。レディックが2位、ベルは右後輪の作業で躓いて5列目からのリスタートとずいぶん下がってしまいました。195周目にリスタートしましたが、翌周にカイルが序盤のクラウスと似たようなスピンをしたためすぐにコーション発生、これが4回目。
 203周目にリスタートすると、ハムリンはリスタートを決められずレディックが先攻。しかしここも2周後に5回目のコーションが出て水入りとなります。ネメチェックがロガーノに追突し、ラジョーイ、クラウスを巻き込む多重事故になりました。無線では「すまん、ロガーノの減速が思った以上に早かった」と言っていたネメチェックでしたが、レース後にロガーノが激怒していたせいかレース後は「自分のミス」と改めて謝りに行く意向を示したそうです。

 213周目にリスタート、ここで3列目からリスタートしたトゥルーエックスが大外からゴボウ抜きを見せていきなり3位となりレディックとハムリンを脅かします。レース序盤以来久々のカムリ軍団によるリーダー争い、と思いきやリスタートの2周後でした。

 ターン4でふらついたハムリンがレディックに軽く当たりつつまさかの単独スピン。ダウンフォース削減の影響なのか、ベテラン勢の思わぬスピン連発で最終ステージに入ってコーション祭り、そしてこれでレースの流れが大きく変わりました。リーダーのレディックを含む多くはここでピットへ、しかしトゥルーエックスとさっきの5回目のコーションでピットに入った人がステイアウトを選択。さっき入った人は節約すれば最後まで走れるだけの燃料があると見られ、こういう展開を期待していたと思いますがまさにそうなりました。

 221周目にリスタート、トゥルーエックスがリーダーですがおそらく彼だけはもう1度ピットに入るドライバーなので事実上争っていません。ただ気になる話としては、トゥルーエックス陣営は燃料が足りる足りないの話以前にタイヤがダメになってピットに入ると言っているので、追いかける人たちも燃料が足りたところでタイヤはもつのか?ということになる可能性もありそうです。
 その追いかける側の人たち、実質の1位争いということになる2位争いでは246周目にギブスがライアン プリースをかわして2位に浮上。ギブスはステイアウトではなく先ほどのコーションで2輪交換して最初にピットを出ており、10位リスタートから内回りして一気に順位を上げていました。
 しかしステージ2で圧倒的に速かったベルも10列目リスタートながら4輪交換の良さを活かして255周目の段階で3位浮上。261周目にはギブスを抜いて2位、つまり実質の1位となります。方やステージ2までのもう1人の主役・レディックはリスタート順位ではベルよりも前方だったものの、集団でのハンドリングが悪いのかトップ10にもなかなか入って来ず完全に埋まってしまいました。

 トゥルーエックスはコーションを待つために引っ張るのではなく、できるだけ早いペースで走るために残り41周でピットへ。4輪交換してギブスの後ろ=1周とちょっと遅れで合流しました。時間にするとだいたいリーダーのベルから30秒差といったところです。
 これがリッチモンドなら新品と中古でタイム差が大きく1周1秒追い上げることもできるかもしれませんが、さすがにここはそこまでではないのでトゥルーエックス脱落、そしてリーダーとなったベルを追いかけるドライバーは皆無。過去4回のフェニックスのレースでは平均で残り22周に最後のコーションが出ている、歴代のオーバータイムの数も多い、という解説が頼みの綱(?)でしたが、最後までコーションは出ませんでした。
 ベルが今季初勝利、通算7勝目を挙げました。何よりも最終戦の開催地で圧倒的な速さを示すことができた、というのがチャンピオンを目指すうえで最大の収穫だったかもしれません。ちなみにベルは13位スタートでしたが、冒頭のスタート順位別優勝者ランキングで言えば4位以下の順位でなぜか最も優勝者が多いのが13位で、今回のベルで6勝目。2012年以降に限ると1位と3位と13位がそれぞれ4勝で最多タイになっています。何で13位なんやw


 2位は残り11周でギブスをかわしたブッシャー。4位からケゼロウスキー、ブレイニー、チャステインと続き、ギブス以外の4人は全員最後のコーションでステイアウトした人たちでした。トゥルーエックスは鬼の追い上げでベルから約14秒遅れの7位、そして8位のマクダウル、9位のブリスコーがこれまたステイアウト組、レディックは10位までしか巻き返すことができませんでした。
 結果としては、5回目のコーションでピットに入って最後まで走れる燃料をたとえギリギリであっても確保しておき、6回目のコーションでステイアウトするのが正解の戦略だったことになります。その中でベルは圧倒的な速さを活かして抜きまくることで覆し、ギブスは2輪交換とリスタートでまず前に出たことでうまく戦いました。最後にブッシャーに抜かれたあたり、やっぱりブレーキ踏みすぎとかまだまだ足りない部分は感じますが自信になるレースだったと思います。


 今回の新しい空力パッケージ、正直見ていても昨年と何か変化があったとは感じないものでした。ドライバーの反応も特に今までと大差ない印象を受けている人が多いと思われ、エリオットは金曜日の段階で「彼らがその件について話すまで忘れていたよ。実際に大きく変わったようには見えない。」と寂しい感想。そもそも低速トラックでちょっとした空力部品の調整だけでレースの質を劇的に変えること自体が期待しすぎですからね。
 一方でNASCARのブラッド モーランは「データの観点で見ると多くの追い抜きがあった。」と、数字上はGen7車両のフェニックスとしては追い抜きの数が増えたことを挙げました。1戦だけではもちろん情報として不十分なのでこれから精査をしていくそうですが、どうなんでしょうかねえ。ハムリンは今年は昨年よりも良くなっているとはしつつも、エンジン出力上げたらええやん、と身も蓋も無いことを指摘。ただNASCAR側は耐久性≒費用面の問題から簡単には変えられないとしています。
 今回のレースはステージ毎に圧倒的に速い人がいて優勝争いが白熱するような展開にはあまりならず、仕事でややお疲れモードの私はウトウトしかけたのが正直なところ。ただ1点挙げると、ダウンフォースが削られる仕様になるとみんな摩耗を気にしてかなり慎重に走ってしまって何も起きない、というのはこの10年ぐらいわりと繰り返されている話でもあるので、NASCARはこの仕様の効果を検証するでしょうが、チームとドライバーも検証して次第にもっと攻めには行くと思うので、最終戦で帰ってきた時にどうなっているのかを、そんなに期待しないで楽しみにしておこうと思います。トヨタ勢が速かったという点でも楽しみかもしれません。

 次戦はブリストル、春のブリストルとしては久々の舗装路面です(・∀・)

コメント

Cherry さんのコメント…
チェイス!!!うあぁぁぁぁぁ!!!(泣)

いくらなんでもトヨタ強すぎますw
アールグレイ さんの投稿…
JGRもこれで32年連続のカップ戦勝利ですね。
ベルはトラック選ばずに結構活躍できるイメージが大きくなった感じがあります。
ロードコース、ダートトラック(無くなったけど)、ショートトラックと得意な部分が複数あるのが強みですね。
去年最多の7ポールで一発の速さも証明てきたと思いますし、次のチャンピオンもあり得そうだと思います。
日日不穏日記 さんの投稿…
ベルがどんどん上がってくるのに、レディックが埋もれているのが不思議でした。今シーズン初のレッドの出ないレースでしたが、デイトナ、アトランタのインカーカメラを観ていると、いつもながら衝撃は大きく、デイル・ジュニアや、カートの他に、脳震盪でキャリアを終わらせるドライバーが出るような気がして心配になります。チャンピオン未経験者の勝利数のランキングが出来てましたが、ハムリンがダントツの51勝。50勝のジュニア・ジョンソンはドライバーと言うよりは、チームオーナー。ランキング2位に5回入ったマーティンは40勝、33勝のファイアーボール・ロバーツは知りませんでしたが、デイトナ500、サザン500を制し、ワールド600(当時)で焼死した悲劇のドライバーだったようです。ハムリンは過去の実績からも、今年こそ、<アレ>を達成して欲しいと願っています。カイルとケセロウスキーのファンではありますが。
SCfromLA さんの投稿…
>Cherryさん

 予選順位はそこそこだったのに、結局レースでチェイスが光る場面も特にないまま気づいたら順位下がってましたね^^;
SCfromLA さんの投稿…
>アールグレイさん

 ベルはタイヤへの入力の仕方がうまいんだろうなあと思いますね。今のところ個性という点であんまり際立ったキャラクターになっていないのが惜しい(?)ところですが、今年も有力なチャンピオン候補だなと改めて思いました。
SCfromLA さんの投稿…
>日日不穏日記さん

 オカマ掘られたロガーノの車載でも壁に当たった時の衝撃がかなりガツンで痛そうな音だなと思いました。だいぶ改善はされているものの、立て続けに何度も起きると影響が出ないか未だに私も心配です。
 ハムリンのアレに最大の壁はひょっとしたらチームメイトのベルになるかもしれませんね、世代交代が喜ばしいような、もうちょっと待ってほしいようなw