ABB FIA Formula E World Championship
2024 Diriyah E-Prix
Diriyah Street Cuircuit 2.495km×36Laps(+zero Lap)=90.41km
Race Energy:38.5kWh
winner:Nick Cassidy(Jaguar TCS Racing/Jaguar I-type 5)
ABBフォーミュラEディリーヤ2連戦の2日目。決勝が昨日より1周少ない36周となっているので、節約の必要性がより薄れたレースになります。そして砂だらけで始まった路面は1日イベントをやってかなり改善されたので、予選前のFP3の時点で既に前日の予選を大きく上回るタイム水準になりました。
・ディグラッシブチ切れ
前日のレース、優勝したデニスから31秒遅れの19位でチェッカーを受けたアプトのルーカス ディ グラッシ。目の前を走るチームメイト・ニコ ミュラーが何度もミスをして、でも抜けなくて詰まってしまい、入れ替え指示も出ず、さらにその前方にいたニック デ フリースも同様に遅かったのでレース中から無線で激怒していた模様。チェッカー後にエンジニアが「デニスが遥か彼方で勝ったよ」と、ディグラッシ的には何の役にも立たない情報を入れて来たので完全にキレてしまい
「デニスどうでもいいだろうが!このクソレース見ろよ!何やったか見てみろ!ミュラーだろ、あいつ俺の前で8回もミスりやがった、デフリースと一緒に邪魔しやがって。スタートからだぞ、ふざけてんじゃねえのか?」
放送自粛単語が多すぎてかなり意訳してますが、マヒンドラの競争力の無さに嫌気がさして、かといって競争力のあるシートが無いので勝手知ったる古巣のアプトへ戻ったディグラッシ。いかんせんマヒンドラの車であることは変わりないのでちょっと苦しそうですね、チャンピオンの姿はもう遠い過去・・・(´・ω・`)
A組は昨日の決勝で1周目に他車と接触しリタイアしたサッシャ フェネストラズが最速を記録。最後のアタックを2回計測にしたのが良かったのかもしれません。フラインス、ベルニュ、ストフェル バンドーンの4人がデュエルスへ進み、昨日の上位勢であるベアラインが5位、エバンスも7位で脱落。アントニオ フェリックス ダ コスタはさらに苦しいグループ最下位で、ポルシェの代表・フローリアン モドリンガーによると狭くて高速のこのトラックを自信を持って走れてない状態だとのこと。ベアライン本人も何が悪くてこうなっているのか分からず、スランプに陥っているような雰囲気です。
B組でも日産のオリバー ローランドが序盤から最速の位置におり優勢な状況、マクラーレンの2人も速そうでした。最後のアタックに向けてもローランドはやはり最速で、後続が続々と最後のアタックを終えていくはずでしたが、なんとチェッカーが振られた直後にブエミがターン1で止まれずにバリアに一直線。
ブエミはぎりぎりチェッカー前に計測ラインを通過したので連続アタックへと向かったようですが、おそらくはその関連のやり取りを無線でしていてうっかりブレーキ位置を間違えてしまった模様。事故現場はチェッカー受けた先なのでこれからここを全力で通過する車両はいないわけですが、そうは言ってもあまりに場所が危ないのでレッド フラッグになってしまい、数名は2回目の本命アタックを終えられずに終了となりました。
順位はローランド、キャシディー、ジェイク ヒューズ、そして昨日は大渋滞で酷い目に遭ったダルバラが今回は幸運にも4位で初のデュエルス進出となりました。バードは本人曰くあと4秒のところで赤旗になってしまい7位、デニスも赤旗の影響を受けて8位。ただデニスはそもそも車の感触が今日は良くなかったようです。路面状況が激変しているのでセッティングがなかなか合わないんでしょうかね。
・デュエルス
バリア修復のため予定より少し遅れて始まったデュエルスは日産の2人で明暗。B組のローランドは圧倒的速さで勝ち上がった一方、A組のフェネストラズはタイヤの準備に失敗したかあっけなく初戦敗退を喫しました。デュエルス決勝はフラインス対ローランドの出戻り対決となります。
弱オーバーの車で後ろから車の向きを変えて旋回している印象がある緑の出戻りに対し、ちょっと前は入りにくいけどアクセルを踏んだら真っ直ぐ進んでいる感じの赤い出戻り。勝ったのは1分10秒055を記録した赤い出戻り・ローランドでした。準決勝でも1分10秒098を記録し、10秒0を出せたのはローランドだけでしたからまさに圧倒。自身6度目のジュリアスベアポールポジションを獲得しました。
スタート順位はローランド、フラインス、キャシディー、バンドーン、ダルバラ、ヒューズ、フェネストラズ、ベルニュとなります。ちなみに去年のデュエルスは8秒台の争いだったので、昨日と同様にやっぱり前年比で1.5秒ほど遅い水準での争いとなっており路面状況が影響していると思われます。なんかコース周辺で再開発してて砂ぼこりが酷いらしいですね^^;
・決勝
ブエミの車はサバイバル セルに亀裂が見つかったため、安全性の問題で出走することが不可能になって欠場となりました。Gen3はフロントにも回生のためにドライブシャフトがあるので、ぶつけて壊すと修理する時間が足りなかったり、重量物が入り組んでいるのでモノコックまで破壊してしまうのが難点ですが、ブエミはまさにこれでした。ブエミはWECとの重複でシーズン3のニューヨーク2連戦を欠場して以来の決勝不参加、自分のミスなので終始しょんぼりとした顔をしていました。
スタートは奇数列優位かと思ったら五分五分、ローランドは蹴り出した先で空転が多かったのかフラインスに並ばれて完全に内側を取られてしまい、フラインスがリーダーとなりました。フラインス、ローランド、キャシディー、バンドーン、ヒューズ、ダルバラと上位勢は少しだけ順位が変動します。
先手を許したローランドは4周目にアタック2分を使用、アンダーカットを狙いましたがフラインスも翌周にすぐアタックに入って対抗、同じく2分を選択して阻止しました。しかし、さっさと前に出たいローランドは後続と差が開いていたので6周目に立て続けとなる2回目のアタックへ向かいます。ちょっと計算がギリギリすぎたか4位のバンドーンと並走になりますが、力業で3位を守りました。
ただ並走すると多少なりとも時間を食うので、フラインスも翌周に2回目のアタックへ。2位のまま合流してローランドのアンダーカットを2回ともきっちり阻止しました。その間、2台がアタック合戦したことで前に出ていたキャシディーは、7周目にフラインスの前方で1回目のアタック6分に入りました。後ろの2人はもう2回目のアタックに入っていますから、キャシディーは1位で入って1位で合流。
ここからキャシディーは1分11秒0前後という予選なみのペースですっ飛ばします。フラインスが2回目のアタックで6分を使ったのに対してキャシディーが1回目に6分を選んだというのは、相手との1.5秒前後ある差を守ったまま走り続け、そのまますぐ2回目に入って相手をオーバーカットしたい意図があると思われます。
この動きに対してフラインスは追随、一方3位のローランドはペースの上げ下げには付き合わずに1分12秒0近辺のペースを守ったため、考え方の違いからえらく差が付いてしまいます。ローランドは14周目に1分12秒005、翌周が12秒000、さらにその次が11秒912とおそるべき安定感でした。リーダーのキャシディーは結局フラインスを2秒以上にまで引き離した状態で1回目のアタック6分が終了し、当然すぐに2回目へ。なおも1秒以上の間隔を残して1位のまま合流しました。スタート時点で考えると前にいた2台をまとめてオーバーカットしたことになります。
一方中団では6位のフェネストラズ以下が軒並み多くのアタックを残している状況で、レース展開は昨日と似た感じになってきました。セッテカマラが抜かれまくっているので、やっぱり効率で劣る分だけじり貧になるのは避けられないようです。ところで、そんな集団戦の中でフェネストラズはこんな無線のやり取りをしていたようです。
フェネストラズ「後ろにおるのはグンター?ダルバラ?」
エンジニア「いやいや、おんなじや。1回残しよ。」
フェネストラズ「いやいや違うて、後ろ誰やのん?」
エンジニア「向こうはあと1周残っとるからな、あと1周残り。」
フェネストラズ「ちゃうやん、あ・れ・は・だ・れ?ダルバラ?」
エンジニア「そう、確認した、ダルバラ。」
エンジニアは作戦が大事で乗っているドライバーが誰かとかあんまり重要だと思っていないのか、無線の調子が悪くてよく聞こえていないのを曖昧に理解したのか分かりませんが、ドライバーからの「後ろのドライバーは誰か」という簡単な質問に対して、アタックモードの回数や残り時間を伝えて会話が成立していませんでした^^;
とにかく情報量が多いレースなので多かれ少なかれこんなことは起こっているのかもしれませんが、そんなコース上に話を戻すと20周を超えるあたりから優勝争いは再び三つ巴へ、エナジーの使い方にメリハリをつけたキャシディーはオーバーカットに成功した途端にペースを12秒台中盤へと落とし、追っかけたフラインスも同じ状況。一方ローランドはずっと12秒0近辺なので、やっぱりどこかでは同じ場所に集まる運命です。これが他の競技ではなかなか起こらないこのレースの特徴ですね。
ここからさらに、節約しながら走っていた中団勢もペースを上げて追いついてくるので30周目に入る頃には10位のデニスまでが1位から5秒差以内と入賞圏の人が全員数珠つなぎ。ローランドは機会があれば抜こうと前を伺いますが、エンジニアからは危険を冒さないよう念を押されています。昨日のエバンスみたいになると大量に点数を失いますし、相手がやや節約しているとはいえ予選の1.5秒落ちぐらいだと抜くに抜けず、これを抜こうとリフト&コーストしなかったら特大の代償を払うことになります。
キャシディーは早い段階で前に出てしまって、あとは抜けないレースだからどうにかする、というのが非常に得意なのでフラインスに後ろに付かれても相手にエナジー残量で有利にさせるようなことなく周回を重ねていきました。追いついてきた中団の人たちもこれ以上前に出るためにはやっぱり隊列全体が速すぎるので仕掛けるに仕掛けられず、結局動きが起きないまま最終周となりました。
2位のフラインスは立ち位置としてはキャシディーのスリップストリームを使えてはいるはずですが、残量で優勢になるかというとけっこう目いっぱいで追っかけている様子で、ずっと僅かに残量で負けたままでした。最後はそんなフラインスにトドメとばかりにキャシディーがなんと1秒近くペースを上げて自己ベストを記録しチェッカー、今季初勝利・通算6勝目を挙げました。フラインスは2位でしたがシーズン8・第11戦ニューヨーク以来の表彰台、ローランドもシーズン8・第15戦ソウル以来の表彰台でした。
ヒューズ、バンドーン、フェネストラズのトップ6だったので日産パワートレインは3台がトップ6入り。マクラーレンのもう1台・バードも8位あたりにいましたが22周目のクネクネ区間で壁にぶつけてしまい、サスペンションが折れてしまったので残念ながらリタイアとなりました。
・黄旗追い越し3連発
当初、10位でチェッカーを受けたのはデニスでした。デニスはファステストも記録していたので2点を獲得したはずでしたが、後に黄旗追い越しで5秒加算のペナルティーを受けて正式結果は12位でした。他にも入賞圏外でしたがナトーとセッテカマラにも同じく黄旗追い越しによる5秒加算の裁定が下されています。
この黄旗追い越し、26周目のターン18でダルバラの車に問題が発生してコース外に車を停めてしまったことで出たもので、この時に頭を使ったのがエバンスのエンジニアでした。ターン18の右側にアタックのアクティベーション区間がありますが、今ちょうど黄旗で追い越し禁止の区間内にあります。エバンスはまだ2回目のアタックを使っていませんでしたが、黄旗中に取りに行ったら後ろのドライバーは追い越し禁止なのでラインを外れて走るエバンスを抜けません。そう、相手が真後ろにいるのに、抜かれずにアタックを取れてしまいます。
ということでエバンスは指示通りアタックを取りに行ったんですが、後ろを走っていたデニスは普通に抜いていってしまいました。そして後方でも同じくダコスタがアタックに入ったのにナトーとセッテカマラが抜いてしまいました。
| デニスは抜けないからアタック行くぞ、と指示されるエバンス (カメラは追っているデニスの車) |
抜かれたエバンスは「抜いてったぞ?」と疑問を呈し、エンジニアはすぐ「スコット(エルキンス=レース ディレクター)に伝えてる」と応じていました。一方デニスのエンジニアは「よくやった10位だ、しかもファステストラップも持ってるぞ」と、この時点では気づかずにウハウハでした。
黄旗区間にあるアクティベーションについて使い道をしっかり考えていたエンジニアは非常に視野が広いし頭の回転が速いなと思いますが、一方でそもそも黄旗区間内のアクティベーションが有効ってどうなん?という素朴な疑問もあります。F1だとDRS使用区間の近隣で黄旗が出たら一時的にDRSが封印されますが、フォーミュラEには現段階でそういう仕組みって無いんですね、私もなるほどとは思いましたが、これ絶対ザル法だろうとも思いましたw
黄旗はそもそも安全を確保するために『何かあればすぐ停止できるように減速して備えなさい』ということですから、前の車が遅くてもちゃんと対応して合わせないといけないのが理念からすれば原則です。ということは前の人がアタックに行ってようがちゃんと抜かずに合わせないといけないわけですが、一方で現実的な側面としてはみんなそこそこの速さで走っているので、遅い人にあわせてさらに減速したらむしろ事故を誘発するおそれがあって危険とも言えます。今回はたまたま関係した台数が少なかったですが、何台も連なる隊列の先頭がこれをやったらかなりの確率で追突事故が起きるでしょう。
一番大事なのは作業に当たるマーシャルさんの安全なので、黄旗区間で駆け引きが行われるような状況は起こってはいかんだろうと個人的には思うので、早急に黄旗中のアクティベーションについて規則を見直した方が良いと思います。まあそんなわけでデニスはぬか喜びになってしまい、そしてデニスが入賞圏外になったためにファステストの1点は入賞者の中で最も速かった人の手へ、それは誰かというと優勝したキャシディーでした。最終周に出した自己ベスト・1分10秒606がなんと1点をもたらしました。
開幕から3位、3位、1位で2回もファステストを記録したキャシディーは現在ドライバー選手権で2位のベアラインに対して19点差の独走状態となっています。去年は開幕から2位、1位、1位だったベアラインが結局チャンピオン獲れませんでしたが、この時はデニスが6点差の2位でしたから今年の方が明らかに大差です。
・超絶節約時代は終わり?
ディリーヤの2連戦は先頭を押し付け合うようなレースではなく『ほどほど節約レース』でしたが、いずれも表彰台圏の争いが激しくて非常に面白いレースだったと思います。キャシディーとジャガーは限られたエナジーを展開に応じてメリハリを利かせて配分し、使う時は思い切って使う、その時が過ぎたら多少つっつかれても我慢して耐える、という切り替えが見事でした。キャシディー自身がミスをせず速い、というのがまずあって、そこに技術陣の最適な判断が組み合わさった素晴らしい戦いだったと思います。たぶんフォーミュラE参加者全員が「ああいうレースをしたい」と思うような理想形でしょう。
開幕からの3戦はいずれも節約度合いが少な目で、まずは前にいることを優先して作戦を立てるパターンのレースでした。先頭を押し付け合うレースは批判の対象ともなり、他方で節約度合いが薄いとメキシコシティーみたいに何も起きずに終わるので、運営は毎回シミュレーションしながら頭を抱えていると思います。おそらくは毎回こういう具合のレースをやりたい/やらせたいんだろうと思うので、今回はたぶん上手く行った部類だと思います。
でも、レース展開が"絶妙"と"退屈"の境界線ってコース特性との兼ね合いで非常に繊細なので、そう毎回上手く働くとも思えません。毎回批判はあっても一定数何か起きて確実に沸くのは超絶節約レースの方がお手軽な設定とも言えます。まだ3戦だけですが、わざわざディリーヤのレースを昨年より短く、しかも1戦目より2戦目の方をより短くしたことを考えると、運営は超絶節約の方向性には行かないように考えているのかな、と個人的には感じました。
超絶節約ド変態レースを楽しんでいる私からすると本当にそうなったらちょっと寂しい気もしますが(←変態)、今後はアタックチャージ適用レースも出てくる予定ですし、とりあえず様子見で始まったGen3がここから本格的に展開していくんだと前向きに考えることもできるので、この先のレースも見た目だけでなく運営の意図や中身に引き続き注目していきたいですね。え、レースの見方が根本的におかしいって?そりゃそうでしょう、変態ですから()
次戦はハイデラバード中止に伴ってえらく間が空いてしまい、3月16日のサンパウロへ飛びます。その2週間後が東京です。
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