LAコロシアムの詳細決定、他NASCAR情報

 NASCAR Cup Seriesは2月15日に開催されるデイトナ500の予選レース・デュエルで本格的に幕開けしますが、今年もその前に前哨戦としてロサンゼルス メモリアル コロシアムでBusch Light Clash at the coliseumが開催されます。NASCARは1月16日にこのイベントの詳細な方式を発表したので、ほったからかしにしていたオフの話題と併せてお送りします。

 一応確認しておきますと、ブッシュ ライト クラッシュは選手権ポイントが懸からないエキシビションのレース。過去に2度夏季オリンピックの会場となり、2028年にも3度目の会場となる予定の伝統ある競技場・ロサンゼルス メモリアル コロシアムが開催地です。ここに1周0.25マイル=約400メートルという本当に陸上競技のような大きさの場所で車がぎゅうぎゅう詰めになってレースが行われます。


 グランツーリスモ7では撮影スポットとして国立競技場の陸上トラック上に車両を置いて撮影できますが、これを現実にやってしまっているような状態と考えると分かりやs、、、いや現実感が無さすぎて分かりませんねw
 イベントは2月3日と4日の2日間で開催されます。流れは大雑把に言うと

練習/予選 → ヒート レース 1~4 → ラスト チャンス クオリファイ → 決勝

の流れになります。1周たった0.25マイルのトラックに40台も入れないので、台数を小分けにしながらイベントは進みます。昨年といくつか変更点があり、とりあえず本戦の出場台数が昨年の27台から23台にダイエットさせられたのが大きな変更点と言えます。

・練習/予選

 2月3日 15時10分開始予定の練習走行と予選は参加車両を3つのグループに分けて行われます。各グループそれぞれに3回の走行セッションが用意されており、このうち最後のセッションで記録したタイムが予選タイムとなります。つまり2回の練習と1回のフリー予選ということになりますね。
 予選で1位だった選手がヒートレース1のポール ポジションとなります。ヒートレースは4組に分かれて行われるので、2位の人がヒートレース2のポール、3位の人がヒートレース3の・・・となって予選5位の人はヒートレース1の2番手スタートとなります。

・ヒートレース

 17時半開始予定のヒートレースは昨年と同様に25周で行われます。グリーン フラッグで完了した周回のみを計上する方式となっており、コーション中ももちろん周回数は増えません。たとえば2周目にコーションが出たら次のリスタートはまた『2周目』で、ここでまた1周しないうちにコーションが出ると次のリスタートもまた『2周目』です。あまりに事故が多いと果てしなく終わらない気がしてきます。
 ヒートレース1~4の各レースで上位5人に入るとクラッシュ本戦への出場権を手にし、脱落したドライバーはLCQへと回されます。本戦出場者もLCQへ回る人も、スタート順位にはヒートレースの結果が反映されますので最後まで1つの順位を大事にしないといけません。この日のイベントはここまでで残りは翌日に行われます。ちなみに、公表されている予定表ではヒートレースは各レース15分想定となっています、ホンマかいな。

・ラストチャンスクオリファイ

 2月4日になって15時40分開始予定のLCQ、ヒートレースで6位以下だった全員が参加します。昨年は2グループに分かれていましたが今年は全員参加の形式となりました。レースは75周で行われ、もちろんグリーンフラッグ周回しか数えません。
 スタート順位はヒートレース1で6位だった人がポール、ヒートレース2で6位だった人が2番手、という形で順にグリッドを埋めていきます。LCQで上位2人だけがクラッシュ本戦へと出場することになるので、昨年の『各グループで上位3人ずつの計6人』と比べると格段に壁が高くなりました。

 これで合計22人の本戦出場者が決まり、ここに最後の1枠として『まだ本戦出場権を得ていない選手の中で2023年のドライバー選手権最上位』の1名が選出されます。

・決勝

 現地17時開始予定のクラッシュ決勝、スタート順位はもうお分かりかと思いますがヒートレース1の勝者がポール、ヒートレース2の勝者が2番手・・・と順にグリッドを埋めていきます。21位がLCQの勝者、22位がLCQの2位、そして23位が救済枠で拾われた最後の1人となります。レースは150周で、やっぱりグリーンフラッグ周回しか数えません。途中75周を終えると一旦休憩のためにレースは必ず中断となります。

 昨年のレースではLCQ2から本戦に進んだフロント ロウ モータースポーツの2台がいずれもガス欠するという珍事がありました。特設トラックゆえに給油するのは別の場所に行かないといけませんが、LCQ2から本戦までは時間が少なくて再給油が行えませんでした。普通に75周と150周を走るだけなら全然問題ないはずが、コーションが連発すると低速走行とはいえ225周のはずのものが230になり、235になり、250になり、、、とどんどん増えていって、当初の見積もりを超えてしまった、逆から言えば搭載量を攻めすぎていました。
 今年はこのあたりの細かい制度上の詰めをどうするのか分かりませんが、とりあえず参加者は際限なく増える可能性のある周回数に注意した方が良いことがよく分かりますw

・併催イベント

 今回は初の試みとしてNASCAR メキシコ シリーズの開幕戦が併催されます。LCQの開始前・現地2月4日の13時30分から150周の決勝レースが開催されます。どうやら60分制限もあるのでコーションが連発しても後ろの予定が押すことはないようです。

 また、2022年からNASCARが研究開発してきた電気自動車がここでお披露目走行されることも決定しました。デイビッド レーガンがドライバーを担当するとのことです。ただ、NASCARが即座にEVに移行するというわけではなく、あくまで研究開発を目的としており、ひとまず走行できるめどが立ったことから今回の走行に至ったようです。ショートトラックでは現行カップカーに結構近い速さで走るという噂も・・・

 ではその他のNASCAR情報です。

・規則の手直しを発表

 予選制度、空力パッケージなどいくつかの制度について変更が発表されました。パンデミック期間の予選無し状態を経てそれ以前と大きく変更された現在の制度、まずは全体をA組とB組の2つに分けて練習/予選を行い、各組の上位5人がQ2へ進出。Q2で1台ずつアタックして上位10人の予選順位を決めるのは昨年と同じですが、昨年までは11位以下の予選順位が純粋なタイム順でした。
 しかし、これだと路面状況の影響でどちらか一方の組の選手が有利になることが起こり公平性に課題があったため、SUPER GTなんかと同様にA組の人が11位、13位、15位・・・と奇数列に、B組の人が偶数列に並ぶことになりました。正直なぜ最初からそうしなかったのかと思いますw
 
 今年のショート トラック/ロード コース用として新しい空力部品が使用されることになりました。高速トラックではGen6時代と比較して非常に質の高いレースが見られるようになったGen7車両のカップシリーズですが、ショートトラックでは接近戦がしにくいという指摘がありました。昨年もディフューザーなどの整流板を削減し、スポイラーの高さも2インチへと下げてダウンフォースを30%削減したとしていましたが、これでも不十分だったようです。
 そこでNASCARはテストを経て床下のダウンフォースをさらに削減することを決定し、ディフューザーを大幅に小型化しました。下の画像、奥に置いてあるのが2023年型の後部床下パネル、手前に並べた銀色のが2024年型で、ディフューザー後端がずいぶんと前進している上に整流板も中央に寄っており、これによってダウンフォースがごっそり削られます。もうここまで来るとディフューザーとも呼べない感じ。



 その代わりスポイラーは2インチから3インチへと少し上げましたが全体で見るとダウンフォースが削減されており、テストでは接近した走行やドライバーがより後部を滑らせながら走る状況が確認できたとのこと。これによってよりドライバーが腕を競える環境とする狙いです。しかし、そもそも後方乱気流を減らすために上面ダウンフォースを削って下面ダウンフォースを増やす設計にしたのに、ショートトラックでは下面を削ってスポイラーを高くするんだからなかなか狙い通りに物事は運ばないもんですなw


 他の変更点としては、パンクして自走不能になった車両を回収する際にあまりに酷い振動で車を破壊してしまうことが問題視されたため、NASCARは新しいレッカー車両を導入して安全に車両を運ぶことにしました。ただし作業に時間がかかるのでまずは練習/予選のみの使用で、決勝ではまだ採用されません。

 昨年はロードコースのレースでステージ間コーションが廃止されましたが、廃止したらインディアナポリスとワトキンスグレンのレースが異様に早く終わってしまったため、今年はまたステージ間コーションが復活することになりました。これによりステージ終了2~3周前にみんなピットに飛び込む状況が復活すると考えられます。
 
 トラック側の変更点としては、昨年デイトナのバックストレッチでライアン プリースの車両がスピンし、芝生に引っかかって激しく横転したことから芝生を撤去することになりました。既に舗装に置き換えられた部分もあり、デイトナ500の終了後にさらに芝生の撤去が行われます。また、ワトキンスグレンのシケインにある縁石が高すぎて衝撃が大きすぎることがデータから判明したとして、別のものに置き換えられます。がっつり縁石に乗ると瞬間的には4輪とも浮いていることがあるぐらいですが、考えようによっては自己責任なんですけどねえ。


 エクスフィニティー シリーズではコスト削減のためにバックアップ車両に制限が設けられ、2台以下の体制のチームでは1台のみ、3~4台体制の場合には2台を保有できます。ただしバックアップ2台持ちの場合でも完成車として準備できるのは1台のみで、エンジンも2台で1つだけとされました。2台ぶつけたら、1台は元々の車からエンジンを乗せ換えて使いなさい、ってことですかね。
 そして地味な削減策として、このバックアップ車両はラッピングされていない単色状態となります(!)。色はチームが事前に申請した色となり、もし出番が来たらそれからデカールを貼ることになります。ただし、物流や日程の都合上やり繰りが難しいと予想されるイベントに関しては規制が除外される場合もあるとのことです。

 エクスフィニティーとクラフツマン トラック シリーズでは燃料の給油缶の容量も削減され、従来の11ガロンから9ガロンになりました。これによって15kgほど軽量化されるため、クソ重たいものを自在に運べる筋力自慢の人に極端に依存せずとも給油作業を担当できるようになることを利点に挙げているそうですが、それでも重たいと思うんだ・・・
 NASCARはこれに併せて小容量化された新しい給油缶を発注しています。各チームは旧型缶を容量を削減する改造を施して、NASCARから承認を受けることで継続使用することも可能とされています。でもうっかり違反して罰金とか食らうぐらいなら買った方が安いだろうなとは思います。

・グラーラがRWRへ

 リック ウェアー レーシングはNo.15のドライバーとしてカズ グラーラを25戦で起用すると発表しました。25歳のグラーラはカップシリーズには通算7戦の出場、有名なのは2017年のトラックシリーズで、フル参戦初年度となった開幕戦のデイトナでクラッシュをくぐり抜けて優勝し、18歳1か月26日というデイトナにおけるNASCARの史上最年少優勝記録を樹立しました。NASCARではデイトナは規定で18歳未満だと出場できないので、塗り替えるにはそもそも誕生日がうまくハマっている人でないとなかなか難しい記録です。なお、グラーラは開幕戦のデイトナ500にはフロントロウのNo.36から参戦することも発表されています。
最前列で起きた大事故と、それをすり抜けて勝ってしまったグラーラ

 RWRと言えばオーナーの息子・コディー ウェアーの動向も気になりますが、暫定的な予定として4月にはカップに戻る、としておりグラーラとNo.15のシートを分け合うものと見られます。ただ、逮捕からの一連の騒動でスポンサーを全て失ったそうなので、まずはスポンサーを戻すところから始める必要があるためその状況次第という側面もありそうです。

・FRM、提携相手をペンスキーに

 マイケル マクダウルのクルー チーフ・トラビス ピーターソンはラジオ番組で、フロントロウモータースポーツは従来の提携相手であったRFKレーシングから、今季はチーム ペンスキーへと提携相手を変更したことを明らかにしました。ピーターソンは

「小規模なチームは、生き残るためにそのようなことをしなければなりません。私たちには大規模なエンジニアリング部門はありません。」
「技術提携の多くはシミュレーション ツールの支援を得ることだけです。 あるいは部品を計測する工程であるとか。 私たちはRFKで長い間常にそうしてきたのです。」
「新しいものについてはまだ詳細を詰めている最中です。でも、要するにうちのショップには情報を提供してくれるエンジニアが20人もいないということですね。ですから、それを持っているチームと連携して、その情報を利用すればいいのです。」

とペンスキーとの技術的な連携による効果についての期待を語ったとのこと。現在ペンスキーと提携しているのはウッド ブラザーズ レーシングの1台だけでしたが、これでFRMを加えた連携となります。方やRFKはリックウェアーと提携してショップもRFKの施設内に移動してきて協業を深めています。2021年のデイトナ500と昨年のインディアナポリスで優勝し、過去3年で2度プレイオフに進出しているフロントロウ、この変更がどういった効果をもたらすでしょうか。



・シカゴ市へ200万ドルを支出

 今年2度目の開催となるシカゴ市街地レース、ただしシカゴ市側では昨年の開催でレースが長引いたこともあり、かかった工事や警備の残業代など追加費用の負担についてNASCAR側にも費用負担を求めていました。シカゴ トリビューンは、NASCARが200万ドルを支払うことで合意したと伝えました。ただ、上記費用の総額は350万ドルだったそうで満額回答には至っていないようです。今年のシカゴは昨年よりレース距離が削減されていますが、費用削減が主目的とみられます。

・オーストラリア第3の刺客登場か

 オーストラリアのRepco Supercars Championshipに参戦しているキャメロン ウォータースがRFKレーシングからスポット参戦する見込みであることが分かりました。29歳のウォータースはスーパーカーで通算11勝、2020年と2022年にいずれもシリーズ2位の成績を収めており、長年フォードのドライバーとして活躍しています。ウォータースはロードコースの3戦で出場する予定であると伝えられています。

 同じくスーパーカーに参戦し昨年デビューしたブロディー コステッキも4戦ほどリチャード チルドレス レーシングから出場する見込みですが、彼はシェイン バン ギスバーゲンのように完全にNASCARへの転向を考えているわけではない、という情報も入ってきました。

 今回は以上です!

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