フォーミュラE 開幕前情報

 気づけば2023年もあと1か月を切りました。F1、SUPER GT、NASCARと多くのカテゴリーによる余興が終了し、ここからいよいよ世界のモータースポーツは最大にして世界一のエンターテインメント・フォーミュラEの開幕が近づいてきました()10年目となるABB FIA フォーミュラEの開幕に向けた情報をまとめてみます。

※ 1月10日 ハイデラバードE-PRIX中止に伴い一部内容を修正しました。


・日程

 まずは開催日程です。


 メキシコシティー、ディリーヤ、ハイデラバードの流れは昨シーズンと同じはずでしたが、残念ながらハイデラバードは開催が土壇場になって中止となりました。地元政府の政治的混乱を背景に開催が暗礁に乗り上げた形で、フォーミュラEの運営側は契約違反を訴えています。また、シーズン9ではハイデラバードに続く第5戦にあったケープタウンも日程に入っていません。
 ハイデラバードの中止により第3戦とずいぶん空白ができて第4戦にサンパウロ、そしてその後第5戦に新規開催の東京が入りました。日本での初開催レースとなり東京ビッグサイト周辺の駐車場や道路を使用することになるみたいですね。全然土地勘が無いですが発表されたコース図と衛星画像から推察するに たぶんこうだろうと思います。数本の長い全開区間と小さいターンを組み合わせた1周2.582kmのコースになる予定です。
コーナーの半径はてきとー

 東京を終えると4月はイタリアに向かいますが、昨年まで開催されて好評だったと思われるローマではなく常設サーキットであるミザノでの2連戦となります。ローマは狭くて全開走行するS字部分に凹凸があり、これが原因で大事故が起きる事例が複数回発生したため安全上の懸念から開催が見送られました。
 その後はモナコ、ベルリンとお馴染みのレースですが、ベルリンはテンペルホーフ空港が大規模な改修工事を進行中で、その過程でレースで使用するレイアウトも結果的に変更となって昨年とは違う形状となっています。コース図を見ると今までは空港の外周側にあったピットとストレートが内側になってひっくり返っているようで、特徴的な270度ぐらい回り込むターンは無くなってるっぽいです。
 そして第11・12戦は中国の上海へ。中国での開催はシーズン5の山亜以来となりますが、開催地は上海市街地ではなくなんとF1でお馴染みの上海国際サーキット。まだレイアウトは公開されていませんが、あのだだっ広いコースは短絡路を通って1周を短くしたところで波乱は起こりにくそうなので、徹底した節約レースが想像できます。このイベントはジャカルタがインドネシアの大統領選挙の影響で開催できないことから代替的な位置づけのようです。
 その後はポートランド、そしてお馴染みロンドンで各2連戦して16戦のシーズン10が終了。アメリカも本当は市街地を探したいけどニューヨークの代わりになる場所がすぐ手配できないので常設サーキットのポートランドでとりあえずごまかしている感じですが、運営側も来季あたりはどこかしら開催地を見つけたい考えと思われます。

・規則

 新規定車両2年目のシーズンなので大きな変更はありませんが、昨シーズンは結局導入されずじまいだったアタック チャージに関連する規則は、まだやってもいないのにいくつか見直されています。

 アタックチャージがレースに適用される場合、FIAはレース開催の21日前までにその旨を通達することとし、アタックチャージ適用レースでは必ずレース中に一度急速充電のためにピットに入ることが義務付けられます。作業には充電プラグを挿してから、作業を終えて走行レーンに戻るまでの時間を基準に最低停止時間が設けられ、規定より早く作業を終えて合流するとペナルティー対象です。基準時間はレースごとに通達されます。
 競技規則37.5では充電について『技術規則7.5に従って割り当てられた全てのエナジーを充電する必要がある』と記載されており、その技術規則7.5には『レース中に行われる急速充電は3.85kWhに制限される』と書いてあるので、3.85kWhをきっちり充電しないといけません。
 アタックチャージを行うにはバッテリー残量が規定された範囲内(例えば30%以上・70%未満、という具合)に収まっている必要があり、残量がまだ多すぎる/少なすぎるタイミングでの充電は無効。タイヤ交換は充電を完了するまで行うことができない規則で、充電待ちの間についでに交換することはできません。
 一方で、昨年の規則では『SC/FCY中の充電は既にピットロードに入っていた車以外できない』と記載されていましたがこの文言は削除されました。ということは当然SC中にみんなピットに殺到することが予想され、これに対応すべく『同一チームの2台が同時にピットに入ってピット内で待機するダブル スタック』は禁止と明記されています。展開によっては1台は切り捨てられるかもw
 アタックチャージの義務を果たしていない場合、昨年の規則では90秒ペナルティーと記載されていましたが、これは『20秒+ピット通過に相当する時間(イベントごとに設定)』と改められました。それでも重いペナルティーに変わりはなく、これはレースが何らかの理由で途中で打ち切られてしまって消化できなかった場合でも問答無用で適用されます。
車両乗り換え時代以来久々のピット義務

 アタックチャージ適用レースでは急速充電完了後にアタックモードの使用が解禁され、これ以降に所定の操作をしてアクティベーション ゾーンを通過すると出力が350kWに向上します。アタックチャージが適用されないレースは昨年と同様に最初の2周は使用禁止でそれ以降に使用が許可されます。割り当てられたアタックモードの時間は全て使い切らないといけません。
 シーズン9ではアタックモードの総量は2回で合計4分とされ、4分をどう割り振るかは3パターンからドライバーが選ぶ、という規則になりました。『何分使うかの組み合わせはドライバーが最初にアタックモードを使用する際に決める』という内容は今季も規則の付帯事項に記載されていますが、例示されているのが合計4分ではなく

2分+6分
4分+4分
6分+2分

と合計8分で例示されており、今季は8分を基本にするつもりなのかもしれません。また、シーズン9の競技規則では『アタックモードは2つに分けて使用される』という2回縛りの文言が記載されていましたが、シーズン10の規則では『2つに分けて使用される』が削除されて2回縛りが無くなっています。
 現時点でアタックチャージについては2連戦が開催されるレースの片方でまず導入されるのではないか、という情報が流れており、これらの話を総合して勝手に想像すると、アタックチャージ無しのレースではアタックモードは2回、アタックチャージありの場合は1回だけ、というような使い分けが行われるのかもしれません。
 規則上は2回より増えても良いわけで、実際シーズン8以前の規則にはそういう文言は無く運営の裁量だったため4分×3回という変化球もありました。しかしドライバーが割り振りを選ぶ現行規則で3回以上にすると混乱しそうなので、まあ1か2だろうと想像しています。この辺は規則を読んで想像した私の脳内情報なので根拠は何も無いですm(_ _)m
 
 細かいところだと、昨シーズンは1年目であることを考慮して年間2基に制限されているMGU、ギアボックス、インバーターについて場合によっては追加で最大2基の"ジョーカー"が認められる可能性があることについて明記されていましたが、この文言は削除されています。
 予選開始10分前に使用するタイヤを申告する義務は削除され、またデュエルスで出力を350kWモードに切り替えることに関しては『アウト ラップのセクター3にいる間に切り替えなければならない』から『アウトラップのセクター3に入るまでは切り替えることはできない』に文言が変更されています。前者だと切り替え忘れや不具合で300kWのまま走ると失格になってしまう表現で、実際にベルリンではこれで記録抹消になる事案が発生しました。後者だと任意なのでうっかり忘れてアタック途中から切り替えても大丈夫ということになります。
 また、予選中にコース上で停止してしまった車については従来の文言だとその後の復帰は許可されませんでしたが、文言が追加されて『自力で再合流できなかった場合その後のセッションに参加できない』と修正され、グループ予選で飛び出して赤旗が出て、その後動いて戻れたら再開後も走れることになります。常設サーキットが多いことを考慮したんでしょうかね。
 
 レース中に使用可能なエナジー総量についてはシーズン9開始前の当初の技術規則では『38.5kWhに制限される』と記載され、しかし実際に開幕したら41kWhが使用可能で規則もいつの間にか『41kWhに制限される』と変更されていました。結局はレースごとに設定がまちまちで、シーズン9は後半に向けてバッテリーの信頼性と競技性の両面からごっそりと使用可能量が削られたので、技術規則から具体的な数字は削除され『FIAが発行するイベント ノートに記載される』と変更されました。具体的な一次情報は見つけられませんでしたが、一応性能的には41kWhよりももっと多く使えるのは使えるっぽいですね。ただ余白が無いと『まだ使い切って無いのに電圧下がった!』みたいなことが起きるのでかなりゆとりをもたせてあります。

 面白いところでは『参加車両は競技会ごとに実質的に同じリバリーでなければならない』という文言が削除されており、これにより規則上は同一チームの2台がバラバラの色をするインディーカーのような状態でも構わなくなりました。とりあえず2台で色が違うチームはテストではいなかったと思いますが、今後何かしら宣伝に活用するチームは現れるでしょうか。

・チーム/ドライバー

 それではシーズン10の参加者をズラっと並べてみます。昨シーズンのチーム順位の順番に並べました。名前の横の成績は特に表記が無ければシーズン9の数字です。

Envision Racing/Jaguar I-Type 6(4勝)
  4 Robin Frijns(アプトから移籍 最高位9位/選手権22位)
16 Sébastien Buemi(最高位3位/選手権6位)

 エンビジョンはニック キャシディーがジャガーへと"昇格"し、一昨年まで所属していたロビン フラインスが出戻り。フラインスはキャシディー中心に動いている雰囲気があるチームと反りが合わなくてアプトに移籍した様子があるので、本人がいなくなったら弱小チームでくすぶる理由は無くてヨリを戻した、とザックリこういう感じかなと思います。
 セバスチャン ブエミは日産からエンビジョンに映って元気を取り戻した様子ではあるものの、クラッシュで怪我したりちょっと謎なペナルティーを受けたりと色々あって結果を見るとキャシディーと大差が付いてしまいました。中堅のフラインスと組む今季、どちらが中心のチームになるのかはちょっと見ものです。


Jaguar TCS Racing/Jaguar I-Type 6(4勝)
  9 Mitch Evans(4勝/選手権3位)
37 Nick Cassidy(エンビジョンから移籍 4勝/選手権2位)

 チーム選手権でカスタマーのエンビジョンに負けてドライバー選手権でも届かなかったジャガー。あまり言いたくないとはいえ、サム バードがチームメイトを撃墜するミスを2度もやらかした影響は軽いとは言えずバードは再契約ならず。エンビジョンで大活躍したキャシディーが加入してニュージーランド人コンビになりました。
 何度もタイトルに片手が届きながら獲れなかったエバンスとすると、同郷の仲良しと組める一方でシーズン途中で先行されていると自分がサポート役に回される可能性もある強力な相手だけに、シーズンが始まったら関係性がどうなるのか楽しみですね。エバンス推しの私からするとキャシディーにはあと2年ぐらいは待ってもらってまず先にキャシディーがチャンピオンになるべきだと思います()

Andretti Formula E/Porsche 99X Electric Gen3(2勝)
  1 Jake Dennis(2勝/ドライバー選手権チャンピオン)
17 Norman Nato(日産から移籍 最高位2位/選手権10位)
Reserve:Zane Maloney

 シーズン1から参戦してきて9年目、ポルシェのカスタマーとしてワークスを破ってジェイク デニスが世界王者となったアンドレッティー。元々複数年契約だったデニスがもちろん引き続きエースとして君臨することになりますが、相棒はGen3車両になかなか適応できず苦労したアンドレ ロッテラーに代わって日産からノーマン ナトーが加入。
 ナトーはシーズン終盤に成績を上げてきてチームメイトを上回る成績だったのに、契約してもらえなくて市場に出たところアンドレッティーにたどり着きました。思い返せばシーズン7でデビューして最終戦で優勝したのに翌年のシートが無く、シーズン8は怪我をしたバードの代走でジャガーから2戦だけ出場。そして日産でまた1年だけ戦って翌年が無い、という実力の割にものすごくめぐり合わせの悪いドライバーに思えます^^;
 アンドレッティーはこの秋に組織の名称を『アンドレッティー オートスポート』から『アンドレッティー グローバル』へ変更、F1参戦も見据えてブランドの構築を狙っているようですが、フォーミュラEに関しては上記の名前を見ても分かる通り、冠スポンサーがいなくなりました。昨年は分散型金融プラットフォーム関連事業のアバランチがスポンサーでしたが、冠スポンサーのわりに最も目立つ車両側面に企業ロゴが無いので危なそうだなあと思っていたんですが、1年で去ってしまいました。
 また、リザーブは昨年ポルシェと共同でデイビッド ベックマンでしたが、今季はバルバドス出身でFIA F2に参戦している20歳・ゼイン マロニーが起用されます。余談ですがバルバドスは本当はバーベイドスという発音ですね。


TAG Heuer Porsche Formula E Team/Porsche 99X Electric Gen3(4勝)
13 António Félix da Costa(1勝/選手権9位)
94 Pascal Wehrlein(3勝/選手権4位)
Reserve:David Beckmann/André Lotterer

 シーズン9開幕から2人合わせて5戦で3勝/5表彰台と圧倒的な滑り出しだったのに、その後ジリ貧になって最後はカスタマーのアンドレッティーとちょっとした軋轢まで生まれたポルシェ。ドライバーに変更はなくアントニオ フェリックス ダ コスタとパスカル ベアラインのコンビで2年目です。
 シーズンの中盤あたりでは、どちらかというとポルシェ99Xは中高速コーナーをできるだけ速度を落とさず効率よく走るのは得意だけど、ブレーキでの安定感でやや劣っていてストップ&ゴーには相性が今一つ、という評価を自分たちでもしていましたが、終わってみたらカスタマーのデニスがチャンピオンを獲っているので同じ道具のワークスは言い訳できない状況。
 シーズン終盤の大事な局面で予選のデュエルスに進めない場面も多く、パワートレインよりもタイヤの使い方など自動車の走行性能側でセッティングの何かしらの発見ができなかったのかな、とも感じさせられました。特にダコスタの苦戦からはそういう印象を受けたので、慣れてくる2年目の復活に期待です。ただ、ダコスタは速くなるとだいたいチームメイトと揉めますw
 リザーブは昨年同様のベックマンに加えて、ロッテラーも引き続き開発兼リザーブとして名を連ねています。東京ではチームに帯同するんでしょうかね?


DS Penske/DS E-TENSE FE23(1勝)
  2 Stoffel Vandoorne(最高位4位/選手権11位)
25 Jean-Éric Vergne(1勝/選手権5位)
Reserve:Robert Schwartzman

 シーズン9開幕前のテストでは速かったのに、いざ開幕したらズッコケたDSペンスキー。ジャン エリック ベルニュは持ち直して『ジャガー/ポルシェ以外の選手で最上位』になった一方で、前年度王者としてメルセデスEQから移籍してきたストフェル バンドーンは表彰台にも上がれず苦戦を強いられました。
 さらにチームはポートランドで許可されていないRFID読み取り装置をピットに持ち込んだとして罰則を課せられ、実態がどうだったかは別にして『スパイ行為を行うインチキチーム』という印象もまとわりつき、シーズン終盤はベルニュもまた尻すぼみになってしまいました。
 テチーターからペンスキーに提携相手が変わったDSでしたが、ほぼ下位でシーズンを過ごす事が多かったペンスキーというチームとの擦り合わせ等で苦労した点は否めなかった様子、それでもドライバーは2人とも比較的前向きに考えているのが救いのようです。
 また、リザーブ選手としてはF1でフェラーリのリザーブも務めているロバート シュワーツマンの起用が発表されています。

Maserati MSG Racing/Maserati Tipo Folgore
  7 Maximilian Günther(1勝/選手権7位)
18 Jehan Daruvala(新人)

 DSと同じパワートレインを使用するマセラティー、DS同様テストで速くて開幕からコケてしまいましたが、マキシミリアン グンターは時々やらかしてチームを失望させながらもシーズン後半に向けて競争力を上げて行き、1勝を含む4度の表彰台でDS勢としてはベルニュに続く成績を残しました。序盤のやらかし具合から『残留は厳しくてニック デ フリースと入れ替えになるのでは』とも言われていましたが今年はエースとしての活躍が期待されます。
 一方で相棒だったエドアルド モルターラは前身のベンチュリー時代から6年間在籍したチームを離れることになり、加入したのはインド出身の25歳・ジェハン ダルバラ。昨年はマヒンドラのリザーブでしたが、インド系チームを飛び出してマセラティーからデビュー、FIA F2を4年経験し通算4勝、シーズン最高順位は7位のドライバーです。
 マセラティーはシーズン中のテストでフェリペ ドルゴビッチを起用していたことから有力候補の1人とみられていましたが、F1でアストン マーティンとマクラーレンのリザーブを務めるドルゴビッチはそうそうこっちに来てくれないというのもあったと思われます。ドルゴビッチはアンドレッティーも狙っていたという情報があります。


Nissan Formula E Team/Nissan e-4ORCE 04(最高位2位)
22 Oliver Rowland(マヒンドラから移籍 最高位6位/選手権21位)
23 Sacha Fenestraz(最高位 4位2回/選手権16位)

 日産はシーズンで唯一表彰台を獲得したナトーと契約せずに、3シーズン前に所属していたオリバー ローランドが出戻り。振り返ると日産はシーズン5のドライバーとしてアレクサンダー アルボンと契約したはずが、急遽レッド ブルに横取りされてF1へ行ってしまったので、その穴埋め的にローランドがシートを得ました。しかしシーズン7の終了を待たずにローランドは日産に残留しないことを表明してマヒンドラへ移籍。複数年契約したとみられ2シーズンを過ごしたものの、第9戦モナコを最後にチーム力の無さに失望して残るシーズンに出場せず途中で契約を打ち切ってしまいました。
 元々日産を離れた要因として、ルノー時代からの提携チームだったe.DAMSを日産が買収して体制が変更され、DAMSとは縁があったローランドがこの体制変更の過程で影響を受けたという事情もあったようです。日産時代からちょっと無茶な飛び込みをしてぶつけて他のドライバーからブチ切れされることが多くマヒンドラでもあまり変わらなかったので、この癖を出さないように気を付けないといけないでしょう。
 一方日本でもおなじみ、J SPORTS用のインタビューにも応じてくれるサッシャ フェネストラズは2年目。予選では既に速さを見せたものの、日産のパワートレインそのものの効率もあってポールを含む5度の4位以内からのスタートで表彰台無しと洗礼を浴び、結果としては経験者のナトーに獲得ポイントでもずいぶん離されました。チーム力が底上げされれば慣れてきた2年目は期待大だと思っています。


NEOM Mclaren Formula E Team/Nissan e-4ORCE 04(最高位3位)
  5 Jake Hughes(最高位5位3回/選手権12位)
  8 Sam Bird(ジャガーから移籍 最高位2位/選手権8位) 

 撤退したメルセデスEQの体制を引き継いで日産のカスタマーとして参入したマクラーレン。いきなり新人のジェイク ヒューズが3戦連続で予選トップ3、かつ3戦目でポールを獲得するなどワークスを上回る活躍を見せたので『やっぱりレースは組織として現場での戦いに慣れた人材が大事やなあ』と思っていたらだんだん低迷して結果的にはワークスの1つ下の順位に収まりました(´・ω・`)
 その掘り出し物ルーキー・ヒューズはポールを2回獲った一方でローマでは予選で大クラッシュ。第7戦ベルリン以降のレースでは3回しか入賞できずに課題としてはフェネストラズと似たような内容でした。
 一方昨年の相棒はレネ ラストでしたが、BMWでのレース活動に集中したいためフォーミュラEを去ることになり、空席にはジャガーのシートを失ったバードが収まりました。昨年は色々やらかしたとはいえ、フォーミュラEに関してバードはラストより遥かに多くの経験と実績がありヒューズは先生役として良いチームメイトと出会えたかもしれません。バードとしてもやらかしすぎてちょっと肩身が狭いチームから気分を一新してまた新たな気持ちで戦ってもらいたいですね。
 カスタマー側の選手ではありますが、日産系の4選手の中でも圧倒的に実績と経験があるので日産全体としても頼りにしたいドライバーではないかと思います。


ERT Formula E Team/ERT X24(最高位5位)
  3 Sérgio Sette Câmara(最高位5位/選手権20位)
33 Dan Ticktum(最高位6位2回/選手権17位)

 ちょっと待てお前誰や、というERTフォーミュラE、昨年までのNIO 333です。車両も当然昨年のNIO 333 ER9そのまま。元々NEXTEVという名称の中国の電気自動車メーカーとしての参戦で、NIOはNEXTEVのブランド名という立ち位置でしたがその後NIO自体が社名に。ただフォーミュラEとしてのNIOは2019年の段階でチームが外部の投資家へと売却されており、以後はあくまで『冠スポンサー』でした。今回、NIOがスポンサーからも外れた形ですが、名称変更については声明では『電動化の専門知識を新たな市場に拡大するための高い野心と広範な計画を持って新たな章を始めるため』としています。
 現在のパワートレインはヘリックスというブランド名で展開するインテグラル パワートレインというイギリスの会社が製造しており、この会社はフォルクスワーゲン ID.Rのパワートレインを手掛けた会社です。以前はフォーミュラEでもドラゴン レーシングのパワートレイン製造を受託していました。
 シーズン7からインテグラル製を採用して開発を進めた成果が多少は出たのか、昨シーズンはダン ティクタムが7回も入賞してシーズン4以来となるチーム選手権1桁順位に貢献しました。ブレーキングでは意外と勝負できるらしく、とりわけティクタムの予選での速さは圧巻でグループ予選で同組になった上位チームのドライバーを蹴落としてデュエルスに進む場面は繰り返し演じられました。
 セルジオ セッテ カマラも同じく残留、こちらは2回しか入賞できませんでしたが本来はティクタム同様にびっくりするようなタイムをいきなり記録するタイプのドライバーです。まあそんなにいきなりレースで強くなることは無いと思うんですが、少なくとも予選では楽しませてくれる組み合わせなので注目しておきましょう。なんかJスポではティクタムが予選で上位に食い込むとネタみたいに扱われますけど、問題児なだけで速さは元々知られていた選手です。問題起こさないでね☆

Mahindra Racing/Mahindra M9Electro(最高位3位)
21 Nyck de Vries(F1から復帰 シーズン7チャンピオン)
48 Edoardo Mortara(マセラティーから移籍 最高位4位/選手権14位)
Reserve:Jordan King
     Kush Maini

 マヒンドラはローランドが途中でいなくなり、複数年契約を結んでいたとみられるルーカス ディ グラッシも『方向性の違い』から離脱。結果として2人ともドライバーが変わることになり、1人はマセラティーを離れたモルターラ、そして2人目はなんとF1へ行ったは良いけどあっさりアルファタウリに切られて居場所がなくなったニック デ フリースでした。
 言ってみれば昨年のドライバーは2人とも『こらこのチームではあかんわ』と思ってしまったわけですが、元FIAのフォーミュラE担当で昨年からチームの代表となったフレデリック ベルトランはチームの体制強化に尽力する意思を示し、結果として経験ある2人のドライバーが話に乗って契約してくれました。2人ともシートが他に無いという事情もありますが、ローランドもディグラッシもそうやって良い話に誘われて入ったのでは・・・とか思うと大丈夫かなと思ってしまいます^^;
 デフリースに関してはF1のシートを失った直後からフォーミュラE復帰の話は出ており、当初は日産やマクラーレンも候補だとされていましたが、結局みんな今走っていて市場に出たドライバーを先に獲得してしまい、『デフリースが復帰する道はほぼ閉ざされた』とまで書かれていただけに、シーズン9で明らかに劣勢だったマヒンドラとの契約は驚きのものでした。
 経験値で言えば2人とも豊富ですし、勝てる組織で戦っていたというのはいつの時代もけっこう大きな財産だったりするので、彼らに愛想をつかされないようにベルトランさんも頑張らないといけませんね。
 なお、リザーブとしてはシーズン7から契約しているジョーダン キングと引き続き契約を結んでいます。2013年のイギリスF3チャンピオン、FIA F2にも2年間参戦したドライバーです。彼の父はセインズベリーというイギリスの大手スーパーマーケットの最高経営責任者を務めたこともあるジャスティン キングという実業家で、一時期マノーF1チームに関わったこともある人です。
 また、12月には新たに23歳のインド人ドライバー・クッシュ マイニとの契約も発表されています。現在FIA F2に参戦するマイニは2020年のBRDCイギリスF3選手権で年間2位の成績を収めています。


ABT CUPRA Formula E Team/Mahindra M9Electro(最高位6位)
11 Lucas di Grassi(マヒンドラから移籍 最高位3位/選手権15位)
51 Nico Müller(最高位6位/選手権19位)

 マヒンドラのカスタマーなので同様に苦戦しまくったアプト。唯一輝いたのは雨で路面がびしょ濡れだったベルリンで予選1位・2位を独占した場面だったと思います。フラインスはエンビジョンの空いたシートに喜んで戻って行ってしまい、代わってディグラッシがマヒンドラから移籍してきました。移籍しても同じパワートレインなので似た成績した出ないんじゃ・・・とか思いますが、元々アウディーが撤退するまではずっとアプトで走っていた古巣なのでこっちは『方向性』が同じなのかもしれません。

・事前テスト開催も事件発生

 10月24日から27日の4日間、スペインのリカルド トルモ サーキットで開幕前のテスト走行が行われました。フォーミュラE公式サイトによると合計で4960周・16745kmの走行が行われ、車両の完成すらギリギリでちゃんと走るのかどうかすら分からなかった昨年よりはマシなテストになったと思われます。
 最速を記録したのはエバンス。2位にキャシディーが続いてジャガーはテストでも好調を見せました。とはいえ最下位となったERTのティクタムまで1秒以下の差しかありません。

 最終日には27周の模擬レースによるテストも行われ、レース終盤にフラインスがちょっとダコスタを押し出し気味にかわして1位、エバンスもダコスタをかわして2位となりました。ここもジャガーI Type-6が好成績。


 一方で心配される事態も発生、初日午後の走行時間帯にシュワーツマンのDS E-TENSE FE23がコース上で停止。充電式エナジー貯蔵システム(RESS)=要するにバッテリー関係の問題が確認されたために車両は取り決めに従って隔離された場所に運ばれて、RESSを取り外して置いていました。ここで『RESSとの間で通信ができない』という問題が発生していることが確認され、製造元であるWAEのガレージへとRESSを移動させて置いていたところ、火花が出て出火。車が停止した段階から見ると90分が経過していたとのことです。これを受けて初日の残りと2日目の走行は中止となり、4日間のはずのテストは2.5日になってしまいました。
 マヒンドラはWAEの隣のガレージだったことから消火作業で悪影響を被ってしまい、車両1台が使えなくなってしまったので残るテストは1台だけの参加になりました。そのため保障として別の走行機会が設けられることになりました。

 リチウムイオン電池は取り扱いが難しく、何かあると発火してしかも爆発的に燃えるので処理が大変な上に消火もしにくい、というのは知られていますが、フォーミュラEではこれまでバッテリーに関連する重大事故を起こすことなくここまで来ました。今回出火に至った直接的な原因について報告書では記されておらず特定には至っていないようですが、WAEとフォーミュラEはさらなる安全な取り扱いのために手順を設けることにしています。

 以上、フォーミュラEシーズン10の開幕前情報でした。

コメント

Cherry さんのコメント…
取り敢えず今の目標はTokyo E Prixに行けるように頑張るになってますwというか何が何でも行きます笑
来シーズンの心配事でいうと相変わらず日産は下に沈み続けるのか、ミッチとキャシディーがボカスカチームメイトバトルして同士討ちしたりして全然違う違うチームにチャンピオン取られるとかないかですねw
SCfromLA さんの投稿…
>Cherryさん

 フォーミュラEだけは事前予想が全くアテにならないですからね~、始まったらマヒンドラが異常に速いかもしれませんよ~w