F1 第18戦 アメリカ

Formula 1 Lenovo United States Grand Prix 2023
Cuircuit of The Americas 5.513km×56Laps=308.405km
winner:Max Verstappen(Oracle Red Bull Racing/Red Bull Racing RB19-Honda RBPT)

 F1は暑くて死にそうだったカタールからアメリカへ、ここからアメリカ→メキシコ→ブラジルの3連戦な上に、このうちメキシコ以外はスプリント方式という3連戦というか5連戦状態。忙しすぎて今度はスタッフさんが死にそうにならないか心配・・・(´・ω・`)決勝の開始時間はアメリカ東部時間15時ですが、裏でNASCARは14時半開始なのでがっつり被っています。でも視聴率の数字からは両者のお客さんはあまり重なっておらず、主におっさんはNASCAR、若者はF1を見ている傾向があるので大丈夫ですw

・レース前の話題

 オランダGPのフリー走行で怪我をしたダニエル リカードがこのレースでようやく復帰、レースに先だってナッシュビルで開催されたレッド ブルのイベントに参加し、2011年型の車両であるRB7を使ってデモ走行を行いました。本人が思っているよりも治るまでに時間がかかってしまったようですが、いきなりの3連戦で大丈夫でしょうか。


 そのレッドブル、セルヒオ ぺレスがここ最近ガタガタで得点を伸ばせずに風当たりが強まっているのは明らかですが、カタールでもまたペレスがトラックリミット違反連発するなどガッカリな結果。これにレッドブルのヘルムート マルコは
「チェコはすぐにでも結果を出さなければならない。アルファタウリには3人のドライバーがいる。ローソンは4台のマシンのリザーブドライバーだ。つまり、いろいろなことが起こり得る」
とレッドブルお馴染みのじわじわ嫌な言い方でドライバーを追い込むやつ。こういうのがドライバーを潰してることが多いってそろそろ気づいてもらいたいんですけど・・・

・予選

 再舗装したところですぐに路面が荒れて凹凸が酷くなるオースティン、シンガポールほどではないもののレッドブルにはマイナスに働くようで、マックス フェルスタッペンにいつもの圧倒的な力がありません。Q3の1回目のアタックでは最終セクターでタイヤがへたってきた様子で暫定3位、2回目はタイヤを最後まで残そうと温め方を変えたのかターン1でいきなり失敗。失敗を取り返そうと攻めまくったらターン19出口ではみ出してしまい、一旦は1位タイムになったものの記録無効で最終結果は6位となってしまいました。
♪デデーン「マックス、アウト~」

 ピレリ ポール ポジションはシャルル ルクレール。無線でザビー マルコスから「トラックリミット」と言われ、その後に「フェルスタッペンが」と変な倒置法で情報を伝えられたので、自分がはみ出したと勘違いして一瞬だけ落胆。笑い話で済んでますけどこういう情報伝達は常にきちんとしないとレースの大事なところで出るんですよね。日本だと本山 哲がこういうのめっちゃ厳しく注意してたのはSUPER GT+でよく放送されていました、帝王怖かったなあw
 2位からランド ノリス、ルイス ハミルトン、カルロス サインツ、ジョージ ラッセルと続きました。角田 祐毅は惜しくもQ2敗退で11位、アストン マーティンは大規模な車体改良を行ったものの、フリー走行でランス ストロールにブレーキの不具合が発生。この確認に追われてパーツの評価もセッティングも整わず、ストロールは19位、フェルナンド アロンソをもってしても17位に沈みました。

・スプリント シュートアウト

 スプリント予選ではフェルスタッペン復活。この週末初めて使うミディアムでSQ1、SQ2をささっと抜けると、SQ3ではルクレールを0.055秒差で下しました。アメリカに来ると元気なハミルトンも0.069秒差で3位でした。アルファタウリは今度はリカードが11位、角田はSQ1の最後のアタックに入る前に時間切れして19位で撃沈しました。

・スプリント

 サインツだけがソフト、他は全員ミディアムを選んだスプリント。好発進したルクレールに対してフェルスタッペンがコース外まで押し出す幅寄せ。これで内回りしたうえにタイヤも汚れたルクレールをハミルトンがかわして2位へ。ハミルトンは久々にフェルスタッペンの後ろを走ってトラックリミット監視員をやっていましたが、そう長持ちせずおいて行かれました。
 フェルスタッペンは19周のレースでハミルトンを9.5秒離して圧勝、たださすがに複数台でごちゃついているならまだしも、単騎の相手をコース外まで追い出したのはいくらスタート直後の争いとはいえちゃんと罰則与えた方が良いと個人的には思いました。ペナルティーが出ないならみんな同じことやって「フェルスタッペンだってやってた」と言い訳するようになります。今は問題なくても数年後にこれが原因でまた押し出し上等、屁理屈と言い訳にまみれたドロドロのチャンピオン争いとか見たくないですから。同じことをケビン マグヌッセンがやったらボロカス叩かれません?


 4位にノリス、5位はペレス、ソフトでスタートしてグダグダになるかと思ったらうまいこと耐えてサインツが6位。ラッセルは7位でチェッカーを受けましたがコース外から抜いたことに対して5秒加算のペナルティーを受けており、ピエール ガスリーに順位を明け渡して8位となりました。サインツを抜いてればよかったんですが予想以上に手ごわかった様子です。

・決勝

 ハースとアストンマーティンの合計4人がピットからのスタートを選択しグリッド上には16人。アストンマーティンに関しては新装備が全然しっくりこないのでアロンソはごっそりカタール仕様に戻し、ストロールも一部仕様変更する突貫工事を行いました。レコノサンスを終えたストロールはピットスタートだと言ってるのにいつも通りグリッドへ車を停めてしまい、クルーには車を押し戻す余計な労働が発生しましたが幸いペナルティーは出ませんでしたw
 グリッド上の人は全員ミディアムを選んでのスタート。信号の消灯までかなり溜めたせいかどうか分かりませんがルクレールがやや出遅れ、ノリスがターン1でリードを奪います。その後ルクレールがサインツと争ったせいもあってあっさりと2秒差に。ハミルトンはスタートで1つ順位を下げたもののペースは良いので6周目にはルクレールを抜いて2位に浮上。フェルスタッペンの方もまずは4位まで上げてとりあえず様子見をしている雰囲気です。

 様子見モードを解いたのは下位勢がピットに入り始めた11周目、ターン12でルクレールの内側に飛び込むセオリーどおりの追い抜きで3位へ。突っ込みすぎてルクレールをコース外に押し出した感がありましたがペナルティーはありませんでした。一方初優勝の芽があるノリスですが、ハミルトンが少しずつ近寄って15周を終え2秒差。「何が起きてるのかわからんけどターン8と9でバランスが悪い」と調子はよろしくない模様、縁石を避けて走ることを助言されます。ターン8~9あたりは斜面を登った高い位置なので風の影響は受けやすい区間です。

 16周目、ハミルトンの4.5秒後ろにいたフェルスタッペンが1回目のピットへ、ミディアムからもう一度ミディアムへ。後ろが動いたことで翌周に入ったのはノリスとサインツ、こちらはハードです。じゃあハミルトンはいつ動くのか?と思ったらピーター ボニントンから「あと5周行けるか?」と聞かれており考え方が違う様子。1ストップの可能性もありますがハミルトンは「分からん、けっこうキツイ」と答えます。
 そのままとりあえず20周まで走ったところで「フェルスタッペンが自分たちのウインドウ内に入った」とお知らせ、ハミルトンは「なんやねん!キツイ言うとるやろ!」とお怒りの様子でここでピットに入ってハードへ、ボノの情報取りフェルスタッペンの後ろで合流しました。1ストップ狙いでちょっと失敗したようにも思える一方、ハミルトンはハードを1セットしか持っていないので最後のミディアムから逆算してできるだけ最初を引っ張りたかっただけ、という可能性もあり意図がまだはっきりとは見えません。ボノは「履歴差を作った」と説明してますけど。

 ここからさらに探り合いが激しくなります。ノリスに対してフェルスタッペンが2.5秒差まで迫りますが、ウィル ジョセフはノリスに対して「フェルスタッペンはミディアム、ミディアムで繋いでもう1回ピットに入る。こちらはプランBで行こうと思う」と伝達。序盤にプランAだと言っていたばかりなんですが、Bが意味するのは額面通り受け取って1ストップなのか、実はAが1ストップでBが2ストップなのか、単に次に使うタイヤの種類の話なのか。何も起きてなくても想像で5周ぐらい暇つぶしできます。
 
 28周目、暇つぶしとか言ってられないフェルスタッペンがターン12でノリスをかわし本日初リード。奥まで突っ込んでブレーキを踏んでトラックリミットを超えないギリギリで曲げており、これはよく止まったなあとただ感心するしかありません。6位スタートからレースの半分で定位置に来ました。

 ここからノリスは少しずーつフェルスタッペンから離され、一方3位のハミルトンはフェルスタッペンとほぼ同じペースでノリスにだけ追いついていく状況。ここから34周目にノリスが先に動いてまたハードを選択しました、結局プランBってどういう意味やったんや?
 これを見てフェルスタッペンも翌周に反応、少し作業に時間を要して、といっても静止時間3.3秒ですが、ノリスの2秒ほど前方でコースに戻りました。ここからはお互いにハードでの競争、フェルスタッペンはブレーキへの不満を口にしており、問題があるようならまだチャンスはあるかもしれません。

 ハミルトンは38周目まで引っ張って当然ミディアムへ、ノリスの後方6秒で戻りました。これで見た目上の1位はこっちこそ1ストップ作戦と思われるルクレールがいましたが、ちょうどハミルトンがピットに入っている横、39周目のターン1でフェルスタッペンがかわしました。ノリスもこの周にルクレールを抜いてフェルスタッペンを逃がしません。ルクレールはなんか失敗っぽいですが今さら2ストップに変更しても遅いので何か起きるの待ちです。
 ハミルトンがルクレールを抜いたのはそこから4周後、まだフェルスタッペンまでは6.2秒とピット前と変わらず対ノリスも3.4秒ほどでさっきと似たような状況。「まだ前と遠いぞ!」と愚痴るハミルトンに対してボノは「2位が見えてきてうまく行けば優勝だ」とハゲまします。フェルスタッペン側も意識するのはハミルトンのようで、ジャンピエロ ランビアーズは無線でハミルトンとの差を伝えますが、マックス君は「ブレーキング中に話しかけんといて」。

 先を急ぐハミルトン、48周目のターン13からのクネクネでノリスを抜こうとしたもののこれを退けられ、続けて翌周のターン1ではノリスもかなり強烈な進路変更を試みたのでなかなか怖い映像にはなりました。それでも相手にブロックさせてグリップ力のあるタイヤでクロスをかけるセオリーどおりの争いでノリスを攻略し2位、フェルスタッペンとは5.5秒ほどの差です。


 ここからハミルトンがまだ徐々に近づいて来るのでジャンピエロからフェルスタッペンにタイム差が伝えられますが「だからブレーキング中に話しかけんなって!」。情報はできるだけ迅速に伝えたいので気にせず話しかけるらしいジャンピエロ、怒られたらとりあえず「了解マックス」と返答。接戦だからこそ起きるやり取りですが、ジャンピエロはよくフェルスタッペンの意向を無視して指示を出したりちょっと焚きつけたりしてるし、フェルスタッペンもしょっちゅう言うこと聞かないし、お互いこの関係性がちょうどよくて仲良くやってるっぽいのでやり取りは常に面白いですね。

 ハミルトンは毎周0.8秒ほど追いついて来ますが計算上は普通に走ったらなんとか耐えられる差、一体いつ以来だろうというフェルスタッペンが追い上げられるレースになりましたが、なんとか逃げ切ってフェルスタッペンが今季15勝目を上げました。昨年自身が記録した年間最多勝利数記録に早くも並び、通算50勝目でもありました。ハミルトンは1.8秒差まで追いついたものの最終周はもう諦めたか2.2秒差の2位でした。

 ノリス、サインツ、ペレスと続き、1ストップで苦戦したルクレールはギリギリでラッセルを抑えてなんとか6位でした。ラッセルはスプリントでサインツを抜けず、今日はルクレールを抜けなくて全体的に消化不良なレースでした。
 再調整で息を吹き返したアストンマーティンはストロールが9位、アロンソもこの前方を走っていましたが残念ながら車が壊れてリタイア。そしてちょっとびっくりは角田で、10位を走っていた残り2周、このあたりの順位争いでは非常に珍しくフリー ストップを得られる状況だったのでピットに入ってソフトに交換。セクター1・2をけっこうコース幅いっぱいまで攻めると、さすがに最終区間では余裕を持った走りで最速ラップを記録しました。

・ステージ 車検場

 さあやってきました真のラスボス・車検場()なんとハミルトンとルクレールの2台が最近SUPER GTでも聞いた気がするスキッドの厚み違反でまさかの失格、もしハミルトンが逆転優勝していたら大騒ぎになるところでした、って最近NASCARでも同じこと書いた気がするな。ルクレールは途中2ストップのサインツに道を譲って「どうして譲らないといけないんだ、後で話そう」とモノ申したい意向でしたが、ミーティングの内容は急遽変更でしょうか^^;
 これでフェルスタッペン以外のドライバーは全員1~2個ずつ順位が繰り上がり、表彰台はフェルスタッペン、ノリス、サインツの顔ぶれ、角田はこれで8位+ファステストで合計5点も獲ることができました。結果的にメルセデス・フェラーリ・アストンマーティンから1台ずつ消え、マクラーレンもオスカー ピアストリが1周目に接触があった影響で冷却装置が壊れてリタイアしたのでかなり"繰り上がった"形ではありますが、そういうレースで良い場所にいられたのは予選11位という結果と堅実なレースの賜物だと思います。コンストラクターズ選手権で一気にハースと2点差になりました。ウイリアムズもアレクサンダー アルボンが9位、そしてローガン サージェントが初めて入賞して10位で1点獲得しました。母国レースで結果が出て良かったですね☆


 今回はなかなか見ごたえのあるレース、のち失格というオチでした。2人も同じ理由で失格になった要因は、凹凸がハゲしくて底を擦りまくるこのコースの特性に加えてスプリント方式でフリー走行が60分1回しかなかったことが大きいと考えられます。車両保管規則によって各車両は予選が始まった瞬間から大きくは変更できず、スキッドも取り替えられないので削られていくばかり。チームは予選~スプリントシュートアウト~スプリント~決勝、を走り切ってスキッドが規定の厚さ以上残っているように計算して、ギリギリの車高を考えないといけません。
 練習時間が短いと燃料を目いっぱい積んで走り込んでなどいられないので車高の下限はシミュレートに依存する度合いが大きくなります。で、実走した際に実際の路面の凹凸、風向き、走らせ方などによる不確定要素をじゅうぶんに補えないことで今回のような問題が起きたと思われます。メルセデスはフロアが新型でハミルトンはこの性能にご満悦の様子でしたが、ダウンフォースが出たことで底を思ったより擦った、なんてことは考えられます。フェルスタッペンに切れ味が足りなかったのはレッドブルがちょっと余裕をもって車高を見積もったからだった、という可能性もあるのかもしれません。
 車検はGTと同様全車両に対して行っているわけではないのでひょっとしたら他にも同じようなことが起きたドライバーがいて、実はハミルトンだけではなくラッセルもサインツも削れていた可能性だってゼロではないですが、何せ時間と次戦への移動の制約があります。一次情報の公式文書にたどり着けなかったですが、二次情報によればスキッドの検査対象はトップ3とランダム選択のルクレールだったと思われます。

 まだまだ綺麗な舗装のトラックなら相変わらずレッドブル優位は揺るがないだろうとは思うんですが、今回もノリスには『ひょっとしたら』と思わせてくれるものがありましたし、ハミルトンも車高の攻め具合がどの程度タイムに影響したかは分かりませんがどん底からは回復しつつあり、見ている側とするとちょっと希望が出て来た感じです。次戦はメキシコですが、私は日曜日の早朝にはさいたまスーパーアリーナへ向けて旅立っているので、予選を見ることすら数日後になると思われます。

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