F1 第16戦 日本

FORMULA 1 LENOVO JAPANESE GRAND PRIX 2023
Suzuka International Racing Course 5.807km×53Laps=307.471km
winner:Max Verstappen(Oracle Red Bull Racing/Red Bull Racing RB19-Honda RBPT)

 F1が今年も鈴鹿にやってきました。シーズン第16戦(1戦中止になってズレてるので、当初予定としては第17戦)日本、昨年は決勝で雨が降って途中に中断が挟まり、結果として競技規則で何十年も放置されたままになっていた抜け穴が露呈した、けどなんか有耶無耶になって全部前年のレース ディレクター・マイケル マシのせいにされて可哀そうだった、というレースでした。レース内容よりそっちかい、と思いますが印象強いんですよね^^;

・レース前の話題

 この週末を前に契約の話題が続きました。マクラーレンはオスカー ピアストリと2026年までの長期契約を締結したと発表、ランド ノリスとは既に2025年までの契約があるため再来年まではこの顔ぶれでとりあえず固定されることになりました。また、リザーブとして平川 亮と契約したことも発表され、平川はトヨタ ガズー レーシングの一員として世界耐久選手権への参戦を継続しつつ、マクラーレンの一員としてシミュレーションや旧型車を使った実走試験を行うとしています。

 そして、これは日本のファン向けのタイミングという側面があるのかアルファタウリも来季のドライバーを発表し、角田 裕毅とダニエル リカードが引き続き来季もドライバーとなることが発表されました。現在リカードは負傷離脱中、代走のリアム ローソンは突然のデビューながらここまで健闘していますが、残念ながらこの後リカードにシートをお返しして来季もそのままとなります。この発表より前にローソンは「リザーブには戻りたくない」と言ってたんですけどね。

 その角田は前戦シンガポールで予選中にマックス フェルスタッペンにアタックを邪魔されてしまい、しかしフェルスタッペンは戒告のみでグリッド降格を受けませんでした。この件に関してシンガポールと日本でレース スチュワードを担当するマッテオ ペリーニが「3グリッド降格を課すべきだった」と誤審を認めました。
 フェルスタッペンはチームから無線で何も知らされなかったことが情状酌量の余地がある、と判断されていましたが、判断に疑問を持ついくつかのチーム代表が話し合いに行った結果こういう話になったようです。また、こうした判断には過去の判例が大きく影響するので、この件に関してはデータベースから抹消され、今後判例として用いられないようにする措置も取られました。
 しかし、その場でできるだけ手早くささっと判断しないといけないレース中の接触案件ならまだしも、予選の終了後に落ち着いて状況と証拠を整理する時間がある問題で後から判断ミスを謝罪するっていったいどういうことなのか、とは思いますね。夜遅いからさっさと切り上げたかったのかな(。∀゜)

・予選

 先週はボロボロだったフェルスタッペンですが鈴鹿に来たら復活。決勝を見据えて持ちタイヤを ソフト3/ミディアム3/ハード1 と割り振ったので使えるソフトがめっちゃ少ない条件でしたが、Q1、Q2を1セットで乗り切ってQ3に新品2本を投入。このケチケチ予選でも圧倒的速さで『フレキシブル ウイング規制でインチキがバレた論』を封じ、1分28秒877と唯一の28秒台でピレリ ポール ポジションを獲得しました。ポールタイムが1分29秒を切ったのは史上4回目ですかね。

 契約延長御礼か2位にピアストリ、3位にノリスとダウンフォースが大きいマクラーレンが飛び込み、シャルル ルクレール、セルヒオ ぺレス、カルロス サインツが続きました。先週は頑張ったメルセデスでしたが、今日はルイス ハミルトンが7位、ちょっと傷心なジョージ ラッセルは8位。角田はさすがにQ3には新品ソフトを1セットしか残せませんでしたが、予選全体を通してきっちりとタイムを出し9位を獲得。Q2の1回目のアタックはかなり良かったので2回目のアタックに出ない賭けをしていたら2セット残せたんですが、さすがにそれやって失敗したらあまりに残念なので堅実に行きました。

・決勝

 タイヤ選択は上位8人がミディアム、角田、フェルナンド アロンソ、リアム ローソンと9〜11位の3人がソフトを選びました。この人たちはどちらかというと前よりも後ろから今の順位を維持する立場かなと思いますが、果たしてこの選択がどう転ぶのか。
 ちょっと長めに待って信号が消えるとフェルスタッペンの蹴り出しがあまり良くなく、ピアストリを牽制しに内側へ行った、ことでがら空きになった外からノリスが狙っていきました。しかしフェルスタッペンは全部防いでリードを守り、結果的にノリスはピアストリだけを抜きました。マクラーレン的にはまだまだレースではノリスが上だと思っているでしょうから、勝手に入れ替わってくれたのは良かったのかもしれません。
 そして後続はターン1に入るまでに複数の接触が発生、2列目の集団は4台も並んでしまってペレスとハミルトンが接触、さらに後方ではバルテリ ボッタスとアレクサンダー アルボンもタイヤ同士が当たるちょっと危険な接触でアルボンの車は一瞬浮き上がりました。ボッタスが大きくウイングを破損してその破片でチームメイトの周 冠宇もウイングを破壊されあっちこっち破片だらけ。SC導入となります。

 この混乱でアロンソはしれっと空いた場所に入り込んで6位に上げた一方、角田とローソンはターン2からスプーンでSCが導入されるまでほぼずっと抜きつ抜かれつを繰り返して身内で時間とタイヤのつぶしあいになっていました。最後は角田がコース外に追いやられてローソンが先行していますが、ハードとミディアムが1セットずつしかないタウリンは自分たちでソフトを潰すとマズいです。作戦分けたらよかったのにね。

 5周目にリスタート、レースを続行していたボッタスですが今度はヘアピンでローガン サージェントに当てられて吹っ飛ばされふたたび砂場へ。今日はもうスープ売り切れでこの後閉店となりました。
 ソフト勢は早々にタイヤが減ってきて9周目から角田、ローソン、アロンソと順にピットに入りました。アルファタウリの2人はミディアム、アロンソはハードへ。しかし続く12周目、スタート直後の接触でウイング交換して後方から追い上げるはずだったペレスがヘアピンで強引に飛び込んでケビン マグヌッセンに接触、またウイングを壊しました。
 ヘアピンが破片だらけの状態でしたがちょっと間を置いて14周目にさすがにVSC宣言、ちょうどこのタイミングでピアストリがピットに入っており、ピットに入った後にVSCが出たので完全な恩恵は受けられませんでしたが6秒ぐらいは通常のピットより時短になったと思われます。
 一方で大損したのはノリスでした。ペレスがウイングを壊して2度目のピットを終えてコースに戻ったものの、「車が何かおかしい」と通常より低速での走行。ノリスはVSC中にこれに引っかかり、VSC基準ペースと比べても明らかに遅いので事故車を抜く不可抗力と考えて抜こうとしましたが、ペレスが後ろを見ていなかったのかスプーンでコース外に押し出されました。これでVSC解除後にフェルスタッペンとの差が4秒ほど余分に開いて9秒差になってしまいます。ペレスはガレージ送り。
 そしてメルセデスの2人もまたアルファタウリ同様に身内同士で争ってしまい、16周目にはハミルトンがデグナーの2つ目ではみ出してタイヤを汚し、その状態でラッセルから順位を守ろうと必死になりすぎてスプーンで並走、ラッセルにラインを残せずハミルトンもろとも白線の外へ出てしまいチームとしてえらく損をしています、何やってんだか。

 ペレスの謎援護により楽になったフェルスタッペンは16周を終えてピットへ、ミディアムから次のミディアムへ繋ぎます。なんならまだもう1つミディアムの在庫があります。この後各車がピット サイクルに入りますが、さっきはみ出したラッセルはミディアムで延々と走行。開き直って1ストップに作戦を切り替え、結局24周まで走ってハードに交換しました。ハミルトンは普通に2ストップだと思うので当分出会うことはないでしょう。

 一方別の問題が起きたのはマクラーレン、先に入ったピアストリがVSCの恩恵+アンダーカット効果+ペレスの妨害(?)のせいでノリスの前に出ていましたが、ノリスは追いついたら先に行かせてもらえる約束でした。26周目にノリスは追いついて直線でDRSも使い、ピアストリはミラーを見て大外まで車を振ったので譲ってくれる、と思ったらそこから普通にターン1に飛び込みました。ノリスからしたら急に外からかぶせられる形になり、ここから丸々1周抑えられたので無線で激怒しました。毎回捨て駒にされるのでピアストリはちょっと抵抗したでしょうか^^;
身内の揉め事、本日3回目^^;

 ここから各車しばらくは残っているタイヤと前後関係を見ながらのレースになり34周目から上位勢の2回目のピットサイクル。ノリスは36周を終えてピットに入り、1ストップ作戦のラッセルの背後で合流してすぐに攻勢をかけます。ラッセルもあまり2位を守る意思はないらしく、38周目にすぐさまノリスが実質2位になりました。ラッセルはさすがに3位は欲しかったのでピアストリ相手には少し抵抗したものの、42周目のターン1でピアストリが豪快に外から抜いて3位、初表彰台が見えてきました。

 この後ルクレールにも抜かれたラッセル、せっかく作戦を分けたのに後ろに2ストップのハミルトンが来てしまいます。普通に考えたら遅いラッセルは譲らないといけない立場ですが、たぶん序盤にラッセルが損させられたこともあるんでしょう、ハミルトンには最初「お互いにじゅうぶんな空間を残すように」という指示。もう押し出すなよ、とクギを刺されたわけですが、見方を変えれば安易に入れ替えることもしないということになります。でも後ろからさらに速いペースでサインツも来ています(;・∀・)
 もたもたしていると2台とも食われて俺たちのメルセデスになってしまうので49周目に決断、ハミルトンとラッセルの順位は入れ替えられます。ただし、前に出してもらったかわりにハミルトンには『ラッセルをDRS圏に入れてあげてサインツに抜かれないよう援護する』という任務が課せられました。ハミルトンもこれには従ってわざとアクセルを抜いてラッセルにプレゼントをあげましたが、残念ながらラッセルはDRSがあってもトラクションがかからなくてサインツに抜かれてしまいます。
 この『わざと後ろの車にDRS与える作戦』は先週サインツが勝つために使ったもの、そのためサインツは無線で「あいつら、俺のトリックを俺に対して使ったのか!?」となんかマンガで出てきそうなセリフを呟きました。サインツとすると130Rでもうしっかり追いついてラッセルにブロックの動きをさせ、シケインの立ち上がりで相手の加速を鈍らせたことでトリックを打ち破りましたね。

 そしてレースは最終周へ、全然テレビに映らなかったフェルスタッペンがノリスに対して19秒の差を付けて圧勝、今日からまた連勝記録を一から作り直すのかどうかは分かりませんが、今季13勝目・通算48勝目を挙げました。そしてレッドブルは今季のコンストラクターズ チャンピオンを決めました。

 ノリス、ピアストリが2位、3位でマクラーレンが見事に表彰台を獲得。ノリスの2位は今季4度目・通算5度目です。コンストラクターズ5位のマクラーレン、上を行くアストン マーティンとはまだ49点差がありますが最近の成績だとチームとしては追いついてやりたいと思っていそうです。パパイヤ パワー!
 アルファタウリはソフトでスタートして作戦の幅が狭かったことが結果に響き、角田は1回目のピットでローソンをアンダーカットしたのに、ミディアムではむしろローソンよりかなり引っ張ってまた順位が入れ替わってしまい、最後はタイヤの新しい角田がローソンに詰まったまま終わるなんともいえない結末。2台でわちゃわちゃやりつつ後ろの車には作戦で抜かれていて11位、12位でファンからすると消化不良だったかもしれません。
 そしてある意味一番目立ったのはペレスでした。最初の接触は完全な不可抗力でしたが、SC中にピットに入った際に第2SCラインより手前で先行者を抜く、という完全にうっかりミス、何の利益もない規則違反をやらかして5秒ペナルティー。そしてその後に接触事故でピットに入り、ここでこの5秒は消化しましたが、接触に対する5秒がまた別件で発生していました。
 このままリタイアすると未消化で次戦のグリッド降格に繋がるため、レッドブルはペレスをレース終盤にコースに送り出し、ペナ消化のためだけに走って再度ガレージ行きでリタイア、というなかなかセコイ策を採りましたw
 レッドブルはできるだけ邪魔にならない場所を探してコースに送り出した様子でしたが、レース後の話では4位のルクレールがとんでもない大迷惑を被っていたことが分かりました。ペレスはとっくにリタイアしたと思っているルクレール、ゆっくり走るレッドブルを見てフェルスタッペンが何か問題を抱えたのだと勘違いしてしまい、これで自分が3位になったと思ったそうです。なんたるぬか喜び!ていうかチームも無線で教えてあげて!!w

 というわけでなんかチーム戦が色々あった鈴鹿でしたね。ノリスがスタートで前に出ていれば多少は、というところですが、ノリスは非常に冷静で合理的なドライバーなので、たとえ一時的に前に出たところでフェルスタッペンから優勝を奪えることにはまず繋がらないということを理解していると思います。ですから、レース開始前から目標はいかに2位、3位をチームとして守り、もしフェルスタッペンに何かあった時に優勝できるようにしておくか、という現実的な面に重きを置いていたのではないかと思います。スタート直後に必要以上に無理をしようとは思っていないでしょう。
 ただ、だんだんとチームが2番手の立場に近づいてきているので、この位置をある程度確保できるようになってくると、レースによっては戦力差が小さくて勝負できるところも出てくるかもしれません。そこでいよいよノリスの真の力が見えてくると思うのでけっこう楽しみにしていますし、マクラーレンにはそのレベルまであともう一方詰めて欲しいなと思います。ノリスは無理に争って消耗しないことを徹底する一方で、必要な時には100%以上の力を爆発させられるので、正面からフェルスタッペンとぶつかるとどうなるのか、かなりワクワクしますね。

 次戦は1週間のお休みを挟んでカタールに飛びます。カタールとか存在マジで忘れてた!w

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