FORMULA 1 PIRELLI GRAN PREMIO D’ITALIA 2023
Autodromo Nazionale Monza 5.793km×53Laps=306.72km
※フォーメーション ラップ追加により51周に減算
winner:Max Verstappen(Oracle Red Bull Racing/Red Bull Racing RB19-Honda RBPT)
F1はヨーロッパ最後のレース、イタリア。今年2度目となるATA方式でのレースです。ATAではタイヤの配布数が11セットとなり、とりわけソフトの配分が大きく減らされる一方で予選ではQ1をハード、Q2をミディアム、Q3はソフト、と使用コンパウンドが予め制限されています。3周だけ使って捨てられてしまうソフトを減らそう、という意図で、来年以降にこれを本格導入するかどうかの試験的意味合いがあります。
マックス フェルスタッペンはこのレースで勝つと前人未到の10連勝達成となります。ただ、イタリアGP、連勝記録、といえば思い出されるのは1988年。開幕から11連勝していたマクラーレン ホンダはこのレースでもアイルトン セナが優勝するかと思いきや、周回遅れのジャン ルイ シュレッサーと不幸にも接触しリタイア。アラン プロストもリタイアしており連勝記録が止まりました。
結果的にこのレースがシーズンで唯一勝利を手にできず、優勝したのはフェラーリのゲルハルト ベルガー。フェラーリ創始者・エンツォ フェラーリが亡くなった約1か月後のことでした。果たしてフェルスタッペンは歴史を塗り替えられるでしょうか。シュレッサーは代走でこの1戦にだけF1の決勝に出走して、たまたまそこにいてミスった結果事件の当事者になりましたが、後に2001年のダカール ラリーでは増岡 浩との優勝争いで一悶着起こしたことでも知られ、何かと日本のファンからすると恨まれている気がします^^;
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・レース前の話題
最近はここで特別なスキームを用意するのがお約束になってきたフェラーリは、今回ル マン24時間で勝って気分が良いので499PのイメージをSF-23に反映させて、赤い車体に黄色い要素を追加しました。せっかくならレースも6時間レースにしたらいいんじゃないかと思いますが残念ながら300kmです。また、アルファロメオも限定販売の新車・33ストラダーレの発売記念で特別な色合いになっています。お車の方は既に完売なさっているそうです^^;
前戦オランダのFP2で不運にもダニエル リカードがクラッシュして手を骨折してしまい、急遽代走でデビューしたリアム ローソン。ぶっつけ本番が雨だらけという悪条件で無事に車を完走させましたが、アルファタウリはこの先もリカードが復帰するまではローソンを起用すると発表しました。
これがコンストラクターズ順位を争ってたりチームの大黒柱だったらできるだけ早く元に戻ってほしいでしょうが、そもそもリカード自身もニック デ フリースがクビになって急に復帰した代役みたいなもんなので、チームの首脳陣としては「リカード戻ってきて~」なのか「もうこうなったら予想よりデビュー早まったけどローソン見極めたろ、リカード急がんでええよ」なのか、どっちの気持ちなんだろうなとか思ったりしますね。
そして、イタリアGPといえば予選でスリップストリームを巡って低速走行の渋滞が発生することで恒例になりましたが、土曜日になってFIAが具体的な動きを見せました。予選ではアウト ラップを含む全ての周回で第2SCライン(要するにピット出口あたり)~第1SCライン(要するにピット入り口あたり)の区間タイムについて1分41秒よりも遅く走った場合には罰則を受ける可能性があると『レース ディレクターズ イベント ノート』という、各レースごとの個別の注意事項や限定的な決まりについて記されたものに内容が付記されました。
そもそも国際モータースポーツ競技規則には不必要に遅く走ってはいけないことが明記されており、前に出てほしいためにわざと遅く走って待つのはこれに該当するわけですが、明確な基準が無いために適用が難しかったり、公平性に難があります。そこでこのレースの独自ルールとして具体的な数字を設けた形です。
・予選
練習走行ではダウンフォースガリガリ君のフェラーリが速さを見せて始まった予選。いきなりQ1でガリガリ君が1分41秒を超過したとしてセッション後に審議が行われるとの情報が流れます。
しかしとりあえず予選は続き、FP2、FP3とも最速だったカルロス サインツが予選のQ3でも最速。フェルスタッペンを0.013秒差で下してピレリ ポール ポジションを獲得しました。3位にもシャルル ルクレールが入ってガリガリ君が奇数列の2つをゲット。しかし審議があるからなあ、と思ったらこれは意外とあっさり『お咎めなし』の裁定が下りました。
ディレクターズノートには基準タイムが示されていますが、トラック リミットのように『はみ出したら問答無用でアウト!』というものではなく『不必要に遅く走ったとみなされる恐れがある』という内容なので調査を行い、その結果『遅いのは安全に道を譲ったせいで不必要な低速走行ではない』とみなされました。
だったら基準があっても意味がないんじゃないか、フェラーリだからセーフなんだろ、そんな批判を受けるでしょうが、基準が無いとやりたい放題、厳格すぎるとおそらくそれを利用して意図的に相手とタイミングをズラして相手に譲らせて予選失格にさせてやろう、なんてことすら起きかねないので、舵取りが難しいのも分かります。そもそも『問答無用でアウトではない』ことが周知されずに『1分41秒以上はアウト』という印象で広まってしまったというのもあるかなあと思いました。
スタート順位はサインツ、フェルスタッペン、ルクレール、ジョージ ラッセル、セルヒオ ペレス、アレクサンダー アルボン、オスカー ピアストリ、ルイス ハミルトン、ランド ノリスという順になります。角田 裕毅は惜しくもQ2で落ちて11位、入賞のチャンスはあるけどモンツァで11位ってめっちゃ危なそうです。グランツーリスモだと私は『もういっそ最後尾にしてくれ』と思う時があります、ってこれ前にも書いたことある気がするなw
・決勝
タイヤはほぼ全員ミディアム選択、8位のハミルトンがハードを選んだ最上位。もしハミルトンの蹴り出しが悪かったらちょうど角田あたりは車が殺到して危ないんじゃね?とか思ったらそれ以前の問題が発生。なんと角田の車がフォーメーションで1周する途中に止まってしまいました。PU関係の不具合だそうですが、煙は出てるし、ギアが噛んだまま戻らなくてマーシャルが押せないし、油圧関係?
これではスタートできないのでとりあえずフォーメーションを1周追加したものの、車をすぐにコース外に排除できなかったので結局スタート手順を停止、仕切り直しになって当初予定からすると20分押しの現地15時20分に再度フォーメーションになりました。2周余分に走りましたのでレースは2周減らされて51周となります。
待たせたせいか点いた信号がすぐに消えてスタート、フェラーリは2台で縦に並んでフェルスタッペンを3位に落としたいところでしたが、フェルスタッペンを含め3人全員がほぼ同じような蹴り出し。結果サインツは真っ直ぐ走ってルクレールを引っ張るよりも、ブロックのため内側へ。フェルスタッペンとするとサインツを攻略できなくとも、これでルクレールの妨害を阻止して2位を守り、サインツ1台だけ攻略すればよくなります。
全体的にも落ち着いたスタートで、ハードで出てもハミルトンはノリスに抜かれただけの9位、ピアストリは一旦アルボンを抜いたものの翌周にすぐ抜き返されました。アルボンは去年のこのレースを虫垂炎で欠場し、代走でデフリースが出たことがきっかけで今ここにローソンがいるわけですね。風が吹けばコンビニが儲かる。
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| 気づいたら内外の関係が入れ替わってた |
フェルスタッペンは6周目のターン1でサインツを外から抜こうとしたものの、ちょっと厳し目の防御を食らって退けられます。意外と抜けそうで抜けないモンツァにガリガリ君相手なので、ここからフェルスタッペンは無理せずしばらく我慢の時間となります。サインツはおそらくパッドで走ってるのでタイヤの摩耗がハンコン勢より早いはずです。
この後ろではペレスがラッセルを抜けずに我慢の時間をずっと続けていましたが、14周目に2台揃ってブレーキを頑張りすぎたようで曲がりきれず。ペレスは「押し出された」って言ってますが、見た感じそもそも自分が止まれていないのでラッセルがいようがいまいがシケインは曲がれてないでしょうね。ここでは抜けませんでしたが、結局16周目にあらためてラッセルを抜きました。
一方サインツの方はタイヤがじわじわ厳しくなっているようで、15周目のターン1でロックさせてしまい立ち上がりが鈍って、ターン4でフェルスタッペンにかわされました。やはりタイヤ持久戦になったら追い込まれてしまったサインツ、パッドじゃどうしても厳しいからハンコン買いましょう(^^)/
サインツはペースガタ落ちでルクレールをつまらせる形になってしまい、19周目に上位で最初にピットへ。同時に5位のラッセルも入りました。ここからハードで最後まで行く、が基本線です。
翌周にフェルスタッペンとルクレールもピットへ。フェルスタッペンは特にどうということは無いですが、フェラーリはピット後のターン1でサインツがギリッギリでルクレールの前に出る形になり、2台で争って身内で時間を奪い合ってしまいます。
ピット出口の問題は他にも起こり、ラッセルはピット後のターン1で止まりきれず、外にいたエステバン オコンの進入を完全に阻んだ上に自分はシケインを通過してそのまま走り去ったので、コース外を走って利益を得たとして5秒ペナルティー。
マクラーレンは後ろを走るノリスを先にピットに呼んでタイヤを換えるついでに前後を入れ替えたかったんだと思いますが、翌周にピアストリがピットを出たらこれまたターン1で際どい勝負になりタイヤ同士が接触。たまたま事故にならず空力部品も壊れていない様子ですが、チームとしての管理不足と言えそうです。こういう時はちょびっとだけ手心を加えて作業をゆるーくやるのがおススメですw
第2スティントに入るとフェルスタッペンは全然映像に映らなくなり、サインツ、ルクレール、ペレスの3位争いが多く取り上げられます。31周目、ペレスはターン4で外からルクレールを抜こうとしましたが軽くブレーキング中にコース外へ追いやられました。ルクレールは以前にもここで他車を思いっきり追い出したことありましたけど、他のサーキットやターンではあんまりこういう動きを見ないのに、なぜここだけ追い出すのか謎です、あとマジで危ないのでこれは黒白旗お願いします。
ただこれでルクレールはサインツのDRSから千切れたので、ペレスは翌周にあっさりとルクレールをかわし3位。この後思いの外ルクレールがぴったり後ろに付いてきますが、2台でサインツに追いついていきます。タイヤが僅かとはいえ古い上にタイヤの摩耗もハゲしいサインツ、果たして耐えられるか。
この後ろのラッセルは5秒加算を食らっているものの、単独で走っていて実質影響が無さそうな状況、対戦相手がいません。6位のアルボンは15周目にタイヤを換えたので後ろから来るノリスを抑えるのに苦労していますが、ディフェンスマシーンはそう簡単に道を通してくれません。ノリスが詰まり続け、ピアストリはできることがなく、そこに後半にミディアムを使うハミルトンが追いついて4つ巴の争い。
41周目、ハミルトンは手前から組み立ててターン4で内側からピアストリを抜くと思われましたがブレーキング中に接触。ハミルトンが見切りを誤って自分からぶつけた感じで、ピアストリはウイングを折ってしまい緊急ピット。これでハミルトンは5秒ペナルティー、レース後に全面的に非を認めましたが、個人的にはドライブスルーぐらい与えるべきだと感じましたね、ただ真っ直ぐ走れば良い場所で相手に当ててレース壊して5秒は軽いです。
元々5秒ってドライブスルーでは処分として重すぎるけど無罰もなあ、というような軽微な違反に対しても適切に罰則を課せるように作られた階級のものだったと思いますが、なんか最近は何やってもほぼ5秒になっていて運用が硬直的に思うのは私だけでしょうか。単に悪質性だけではなく起こった結果も大事だと思うんですけど。
2位争いの方はペレスがサインツに攻撃を仕掛けますが、序盤のフェルスタッペンと同様にターン1で外から行くと強烈に抑えられてしまいます。違うのはペレスの場合危ない手前で引くのではなく、並んで行ってシケインを直進してしまうことでしょうか。かなり怒りを露わにするペレスでしたが、46周目のターン1で自力で攻略に成功して2位となりました。フェルスタッペンは12秒前方。
これでフェラーリ同士で表彰台最後の1席を争うことになり、47周目にルクレールがサインツをかわしたかと思ったらターン1でちょっと行き過ぎて失速。これでターン4でサインツが抜きかえしますが、ここはサインツが行き過ぎてロックさせ2台ともシケインを通過。危なくルクレールはウイングを踏まれかけていてなんだか危ない状況です。フェラーリはとても自由な風土なのでこういう争いが多く見られて良いですね(棒)
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一方テレビに映らないフェルスタッペンですが、ペレスとの差が妙に縮まっていきます。放送には乗りませんでしたが、フェルスタッペンは無線で「前方の周回遅れに追いつかないように」という趣旨の指示が出ていた模様。3秒ほど前方にはピエール ガスリーがいて、さらに2台がその前方にいたので追いつくとしばらくは乱気流の中を走ることになりますが、おそらく冷却の面でマズいことがあったとみられ、わざとガスリーのペースに合わせていました。
これでペレスとの12秒差はどんどん削れていきましたが、フェルスタッペンは6秒の差を持って無事に51周に減ってしまったレースを制し、とうとう個人の連勝記録を10に伸ばしました。レッド ブルとしてはこれでなんと15連勝で今季6度目の1-2フィニッシュ。レッドブルがモンツァで1位、2位というのは初めてで、シーズンで6回と言うのもチーム史上最多となりました。15連勝してて6回しかないのね、とちょっと思ってしまってごめんなさい。
ガリガリ君は「リスクを冒さずに争ってね」とドライバーにリスク管理を丸投げして最後までやや危なかったですが、サインツが今季初表彰台となる3位、ルクレールはたぶん前に出たら速かったのに4位でした。5位にラッセル、そして6位にはノリスもアルボンも必死で抜いたハミルトン。どっちも5秒加算されましたが、どっちも順位に影響がありませんでした。
アルボンはハミルトンには抜かれましたがノリスは最後まで抑え込んで7位、自身初めて2戦連続で入賞しました。影の薄かったフェルナンド アロンソが9位、バルテリ ボッタスが10位でカナダ以来今季3度目の入賞でした。今季ここまで角田しか入賞していないアルファタウリはローソンが11位。非角田車としてはデフリースの最上位12位、リカードの同13位を上回って今季最高の成績です。
今回はスタートでルクレールが2位になって2台でフェルスタッペンを抑え込めるかが唯一の分岐点だろうと思っていましたが、フェルスタッペンは偶数列を感じさせないスタートでそれを見事に阻止しましたね。サインツ相手にもそのうち相手が落ちてくるだろうという落ち着いたレース展開で無茶せず相手を自滅させて、いわゆる横綱相撲という感じでした。
フェラーリとしても、ダウンフォースを削ってとりあえず予選とスタートで前を抑えてあとはどうにか、という形しかやりようが無かったと思いますが、狙ったレースで精いっぱいの結果を出したのでその点はすごく良かったかなと思いました。お客さんも楽しめましたし、偶然のSC等があった際に大逆転できる仕様でもありました。ささっとルクレールを前に出しておけばペレスからひょっとして逃げることも、、、と思いましたがまあサインツが3位に入ったので良しとしましょう。
次戦は1週間空けてシンガポール、そして連戦で日本へと続きます。リカードの回復具合によっては、ローソンは思わぬ形で鈴鹿を走ることになりそうですが今どんな具合なんでしょうかね。2戦してまともに角田と比較できる状況が作れていないので本人もチームもちょっと困惑してそう^^;








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