F1 第13戦 オランダ

FORMULA 1 HEINEKEN DUTCH GRAND PRIX 2023
Cuircuit Zandvoort 4.259km×72Laps=306.587km
winner:Max Verstappen(Oracle Red Bull Racing/Red Bull Racing RB19-Honda RBPT)

 短い夏休みを終えてF1は後半戦へ、私なんかは後半戦の開幕=ベルギーというのが頭に染み付いてしまってるんですが、もうベルギーは3週間前に終わったので今年の後半戦はオランダから始まります。8連勝中のマックス フェルスタッペンは母国でF1最多記録と並ぶ9連勝を目指すことになります。

・レース前の話題

 2008年のF1で1点差でチャンピオンを逃したフェリペ マッサ。最終戦の最終コーナーでティモ グロックがルイス ハミルトンにかわされたことで選手権順位が入れ替わり『数十秒だけのチャンピオン』とか『サンパウロの悲劇』とか名前を色々つけられる歴史的出来事として語られていますが、なんと今になってF1運営と国際自動車連盟に対して訴訟を起こす準備を開始したと報道されました。
 この年の第15戦シンガポールでは、ルノーがフェルナンド アロンソを有利にするため、意図的にネルソン ピケ ジュニアにクラッシュを命じてSCを出動させる不正があり、後にルノーや関係者が処分されることになりました。マッサはこのSCでピットに入ったら給油缶を挿したまま発進してしまう大失敗ピットで入賞を逃してしまい、ハミルトンは3位に入っていました。
 もう15年も前の話でしたが、当時のF1の最高責任者・バーニー エクレストンが今年4月に行われたインタビューの中で、最終戦ブラジルGPが決着する前の段階で彼もFIAもピケの事故が意図的だった可能性について情報が耳には入っていたものの、要するに競技を守ることを優先して迅速な対応を取らない決断をした、といった趣旨の発言をしました。そのうえで
「我々は、この問題を調査するのに十分な情報を時間内に持っていた。規約によれば、このような状況ではシンガポールでのレースをキャンセルすべきだった」
とまで踏み込んで語ったために、このあたりを根拠にマッサ側が動いたということです。ブラジルはピケの母国で、ピケの親父さん・ネルソン ピケはあの件について憤慨していたので、レースの現場で直接FIAに情報を伝えに行ったことが端緒になったようですが、具体的な証拠集めをするには時間がかかることもあり、F1とFIAは話を横へ置いてしまいました。
 確かにシンガポールが無効なら結果は変わるものの、彼が無得点だった直接の原因は作業ミスですし、そもそもこの件で損害賠償の請求権があるのかどうかも微妙です。ちなみにエクレストンはマッサが提訴の動きを見せたことで改めて件のインタビューについて問われると「インタビューを受けた覚えもない」とお約束な反応をしているとのこと。

・フリー走行

 金曜日のFP2で残念な出来事が起こりました。オスカー ピアストリがターン3でスピンして壁に当たってしまうと、数秒後に現場に来たダニエル リカードはここにぶつかりそうになったので慌てて自分から緊急回避で壁へ接触。この際にステアリングから手を離しきれなかったか左手の中手骨を骨折してしまい、レースへの出場が不可能となったので代役として急遽リアム ローソンがデビューすることに。


 ローソンにとって練習機会は土曜日のFP3しかありませんが、運悪く雨に見舞われてインターミディエイトで走るしかなくそのまま予選へと向かいました。ちなみにローソンは日本でレースをすることになってコンビニエンスストアのローソンに驚き、せっかく名前が同じなので親近感を持って応援してくれているそうですが、ヨーロッパには進出していません。そもそもキリスト教の宗教観から24時間365日営業という業態は難しいみたいですね。
 なお、オランダでのスーパーマーケットで最大を誇るのがアルバート へイン、それに次ぐのがF3時代からフェルスタッペンのスポンサーをしているユンボです。ただ、ユンボは前経営者がマネーロンダリングの疑いで捜査されて退任して経営体制が変わり、新経営陣は方針を転換したため今季限りでフェルスタッペンとの契約を終了すると発表しています。

・予選

 F2が大雨でまともにレースを行えず『順位は公式に記録されるがポイントは付与されない』という事態に至った後のF1の予選。幸い雨はとりあえず去っていて、途中一時的に降るだけにとどまりました。ただ短いコースに多くの車がインターミディエイトでの連続周回なので、タイヤ交換の判断や渋滞が結果を左右、ルイス ハミルトンが13位でQ2脱落となり、そのハミルトンのアタックを妨害したとして角田 裕毅は14位から3グリッド降格で17位スタートになってしまいます。ちょっと判定厳しいかも?
 Q2の終盤に路面は概ね乾いていたのでQ3はスリックでの勝負。ローガン サージェントとシャルル ルクレールのクラッシュで2度赤旗が出たものの、最後はやっぱりフェルスタッペンがまとめてピレリ ポール ポジションを獲得。2位からランド ノリス、ジョージ ラッセル、アレクサンダー アルボン、フェルナンド アロンソ、カルロス サインツ、となかなか珍しいことに1位から6位まで全員違うチームになりました。最速の車で7位のセルヒオ ぺレス、心境はいかばかりか。。。
アルボンの躍進に沸くウィリアムズのピット

・決勝

 表彰台で何度も何度も聞いたオランダ国歌が流れるレース前式典。私はグランツーリスモ7でTGR GT Cup ラウンド7に参加して、ちょっとミスが多かったのでしょんぼりしながらの観戦&既に眠いので途中で寝てしまう可能性大、何の緊張感もありませんw
 せっかく晴れていると思ったらスタート直後に雨が来るであろうという予想が立ち、ハミルトン以外は全員ソフトを選択。実際フォーメーション周回中にフェルスタッペンのバイザーには雨粒が付着していて、いきなり雨とも戦いながらのレースになってしまいます。

 1周目はとりあえずフェルスタッペン、ノリス、アロンソのトップ3で帰ってきますが、最終コーナー付近ですでにえらい雨になっており、ペレスを先頭に7人はたった1周でピットへリターン。インターミディエイトへ繋ぎます。あっという間にスリックでは無理な路面状況へ一変。そんなに長くないサーキットで、たった1周の違いでこんなに酷い路面水量になるレースってなかなか無いですね。
 2周目を終えてフェルスタッペンとアロンソも入りましたが、なおもラッセル、ノリス、アルボンといったあたりはステイ アウトを選択、ラッセルはターン1でノリスを抜いてリーダーとなります。しかしこの3周目にはもうインターを履いたペレスがラッセルを抜いてしまい、ペースが1周10秒近く異なっている様子。雨雲が小さいのでどうせすぐにまたダメになるだろう、というのがステイアウト組の考えでしたが、あまりに損失が多すぎました。

 これで1周目にタイヤを換えた組が大きく利益を得てリーダーはペレス、2位に周 冠宇、3位はピエール ガスリーとなります。ただガスリーは5周目にはフェルスタッペンに捕まり、ジョウも7周目にかわされました。これでレッド ブルがワン-ツーで、ペレスがマックスに追いかけられる毎度のパターンへ。
 雨はドシャッと降ったけど時間が短かったので10周目にはもうかなり路面が乾いてしまい、中団以降はぞろぞろとピットへ。ずっとソフトで我慢していたピアストリあたりのタイムがインター組の参考指標になりました、というかよくここまで換えずに我慢したなあw
 ペレスと2.7秒差にまで迫ったフェルスタッペンも11周目にピットに入ってソフトへ、前にいるのに優先権を貰えなかった感じのペレスは翌周のタイヤ交換となり、これでフェルスタッペンがアンダーカットして元いた場所に戻りました。さっきと逆に自分がペレスに対して3秒リードです。ぺレスからすると何で自分に優先権が無いのかと思うでしょうが、正直客観的な状況を見たら仕方ないです。
 15周目あたりではちょうどピット近辺でにわか雨に見舞われたものの大きな影響は無く、暫くはドライでのレースになるのかと思ったら16周目にサージェントがクラッシュしてしまい、あの土砂降りですら出なかったSCがここで出てしまいました。サージェント、コース脇の芝生上でガックリ。予選でクラッシュしらルクレールもコース脇の椅子に座って休憩してましたが、どうしてもブラジルGPで椅子に座って寛いでいたマクラーレンホンダ時代のアロンソが頭に浮かんで面白く見えてしまいます。みんなあれやりたいんですかねw


 SCは意外と長引いて気づいたら22周目になってようやくリスタート、近隣にまだまだ積乱雲があって次はいつ降るんだ、というのを睨みながらのレースになっています。リスタート順位はフェルスタッペン、ペレス、アロンソ、ガスリー、サインツの順で、リスタート後しばらくはアロンソがペレスをDRS圏に捉えて追いかけていましたがそこまで長続きはしませんでした。
 31周目にはフェルスタッペンが「黒い雲が近づいてるよ~」と伝え、ジャンピエロ ランビアーズも「はいよ、ありがと」。前戦では「頭使って走れ」「こっちの指示に従って」と繰り返されたフェルスタッペンですが、F1GPニュースによるとあれはオー ルージュ〜ラディオンでの走り方の話で、普通はみんな全開で通過すべきところを、レッド ブルだけはタイヤ摩耗低減のためにあえてスロットルを戻させていたそう。フェルスタッペンは前の車を抜くためにこれをしなかったことで注意されたみたいです、ていうか事実上の直線でアクセル抜いて速いってこの車どんだけ速いんすかw

 視聴者は雨でも降ってくれないと何も展開が変わらないので期待したいところですが、残念ながらしばらくは何も起きないので国際映像は角田、ノリス、ハミルトンの3台による8位争いを延々と映しています。入賞圏を維持するためには相手のアンダーカットを阻止するしかない角田ですが、周回が進んで後続がピットに入りはじめてもなぜかそのまま放置。解説の川井 一仁が「え〜!?」とマスオさんみたいな声で驚きますが、どうやら雨が降るまで耐えてそのまま雨タイヤに交換して大きな利益を得ようとしているみたいです。

 一方上位争いでは45周目にペレスがピットへ、既にフェルスタッペンとは8.5秒離されていました。続いて48周目には3位のアロンソもピットに入りましたが、左前輪がなかなか外れない問題が発生、作業時間8.5秒の失敗ピットとなってしまい、7周前にピットに入っていたサインツにアンダーカットを許してしまいます。それでもペースが全然違うため、52周目にアロンソはサインツをかわして自力で3位に戻しました。
 雨はなかなか降らないので角田はただただ遅くてさっき自分たちの後ろでピットに入った人たちが追いついてきてしまい、次々抜かれて完全に作戦は失敗。一方スタート直後のステイアウトで既に作戦が崩壊していたラッセルはSC以降をハードでずーーーーーーーっと走っていましたが59周目にあやうく自爆。しかも真後ろにハミルトンがいたのでエライ迷惑をかけるところでした。
 国際映像がその危なかった場面をリプレイで映していたら、なんとその最中に大雨が降ってきたみたいでライブ映像に戻った瞬間ペレスがピットに入っていました。しかも急な判断だったらしくタイヤがまだ用意されておらず11秒の失敗ピット。国際映像、レースの大事な部分をうっかり捉え損ねましたね^^;
 フェルスタッペンも翌周にインターミディエイトに交換して1位をきっちり確保。スタート直後と同様に一気に雨量が増えて、特にターン1はかなりの危険地帯となったようで63周目にペレスが全然止まれず真っ直ぐ行ってアロンソに抜かれてしまうと、翌周には角田も止まり切れず飛び出し、さらにその後ろでジョウがほとんどブレーキも利かない状態で壁に突っ込むそこそこのクラッシュ。もうインターミディエイトでは無理なのでウエットに換えるためまたピットに入る車すら出てきましたが、さすがにこれは赤旗になりました。
※ボッタスではない


 エステバン オコンは最初からウエットを履かされ「最悪の決断だ」と怒っていましたが、怒った数十秒後にはむしろウエットが正解な酷い状況へ一変。しかしウエットが必要になる条件ってたいていは悪化の一途でレースが止まってしまうので、結局ウエットはあんまり出番が無いんですよね。SUPER GTでミシュランが強雨の条件をバッサリ割り切ってそれ以外で速く走れる特化型タイヤを作ったのも良く分かります。
 で、なんやかんやここまで起きて見ていた私ですが、さすがに23時半を過ぎてるし再開するとしても日付を跨ぐに決まっているのでここで寝る1ストップ作戦になりましたw

     
 40分ほど待って現地時間17時14分に再開手順が始まり、2周の先導走行を経て67周目にローリングでリスタート。2位のアロンソとすれば再開後すぐが唯一の希望なのでラインを色々と変えてフェルスタッペンの隙を探しに行ってみたものの、さすがに何も起こせませんでした。一方3位のペレスは大急ぎでピットに入った時に止まり切れずにピット内の壁に軽く接触、この時に制限速度を超過していたため5秒加算ペナルティーを食らいますが、アロンソを抜けずに後続と5秒差を付けることができません。

 結局これだけ色んなことがあっても全く取りこぼしのなかったフェルスタッペンが今季11勝目、自身9連勝となりセバスチャン ベッテルが持つ同一シーズン最多連勝記録に並びました。また、フェルスタッペンはこれでポールからスタートしたレースで12連勝となり、これもミハエル シューマッハーに並ぶ最多記録です。


 2位にアロンソ、ペレスは3位でチェッカーを受けたものの5秒加算が痛すぎて1つ順位が下がってしまい、代わって3位にはガスリーが浮上しました。ガスリーは2021年アゼルバイジャン以来となる表彰台、1周でインターミディエイトに交換した判断から混乱したレースを適切に進めました。一方のアロンソはこれで『初めての表彰台から最後の表彰台までの期間』でシューマッハーを抜き歴代最長になりました。初表彰台が2003年のマレーシアなので期間は7462日、ミハエルの記録は7399日でした。20年選手でないと超えられない記録です(。∀゜)

 サインツが5位、予選で最悪だったハミルトンが6位、アルボンが決勝でも頑張って8位に入りウイリアムズとすれば勝ったぐらいの結果です。アルファタウリではローソンが13位で無事完走、角田は雨待ち作戦が失敗した上に、オコン相手の危険なブロックで黒白旗を受けた状態でラッセルともミスって軽く接触したために5秒加算まで受けてしまい15位でした。
 雨待ちはエンジニアと情報交換した上で納得して決断したとのこと。お互いに『他所と同じことをやってもどうせ入賞圏外』という認識を持っていたようですが、せっかく最初に雨が降った1周目にタイヤを換えて順位を上げたわけですし、雨がまた降ること自体が不確定要素なので、誰もやってない裏をかくよりは正面から勝負した上で次の交換サイクルそのもので勝負しても良かったんじゃないかな、とは思いました。

 一方フェルスタッペンは本当に崩れないですね。どれだけ勝てる車でもこういう不確定要素のある時には優勝をかっさらわれるものですが、たとえタイヤ交換が1周遅れたってコース上で追いつけるし、無茶して攻めなくても余裕があるし、焦って攻める必要がないから失敗しないし、という好循環。前提として普通の状態で走って圧倒的に速い、追いかける者がいない余裕があるわけですが、一番速い人が一番ミスらないならそりゃあ他の人は手が出せません。
 アロンソはコース脇の大型スクリーンを見て自分から見えないはずの他所のレース状況まで勝手に把握してピットに指示を出したりしていますが、フェルスタッペンもあの狭い運転席にいながら視野はヘリコプターで上からコース全体を見てるぐらいに冷静に状況を把握して運転しているようにすら思えます。ちょっと集中力を削ぐために今度から車載カメラにマイクも取り付けて実況配信してもらいましょうかw

 次戦はヨーロッパ最後のレースとなるイタリア、タイヤの配布数が少ないATAフォーマットお試しイベント第2弾です。

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