F1 第12戦 ベルギー

FORMULA 1 MSC CRUISES BELGIAN GRAND PRIX 2023
Circuit de Spa-Francorchamps 7.004km×44Laps=308.052km
winner:Max Verstappen(Oracle Red Bull Racing/Red Bull Racing RB19-Honda RBPT)

 学生の皆様は既に夏休みに入っている方が多いと思われ、投資家さんもこの時期は夏休みに入って取引量が減るので俗に『夏枯れ相場』とか呼ばれたりしますが、F1も夏休み前最後のレース・ベルギーです。まず最初にお詫びを申し上げます、前戦ハンガリーの記事でコメントをいただいたW.Jiyangさんに返信コメントを書く際、うっかりミスでさんを書き忘れて思いっきり呼び捨てにしてました、大変申し訳ございませんでしたm(_ _)m
 さて、先週のハンガリーはタイヤの配布数を通常よりも削減するATAという制度で行われましたが、今週のベルギーはスプリント方式の週末。ATAで持続可能性と言っておきながらスプリントで燃料と部品をギャンギャン注ぎ込んでるのはどうなんだと思うわけですが、今年スプリントは6回が予定されていてこれが3回目、あと3回あります。持続可能性というなら働く人の負担と資材を減らすために開催レース総数の削減や『連戦の場合は土日の2日間開催』みたいな仕組み作った方が良いと思うんですけどね・・・

・レース前の話題

 夏休み前にアルピーヌが人事異動を発表。代表を務めていたオットマー サフナウアーと、スポーティング ディレクターのアラン パーメインがこのレースを最後に退くと発表され、最高技術責任者のパット フライも退任してウイリアムズへの移籍が発表されました。オットマーさんに思わぬ夏休み到来( ゚Д゚)

 ルノーでは2020年7月にルカ デ メオが新たな最高経営責任者に就任、アルピーヌ部門は2021年初頭にローラン ロッシがデメオさん直属の部下として最高経営責任者に送り込まれました。ロッシは元々ルノーに務め、一時はコンサルティング会社やグーグルでも仕事をした後ルノーに戻ってきた人物で、最近のアルピーヌF1の活動の低調に不満を示していたようです。
 アルピーヌ部門は6月末に株式の一部を投資家に売却しておよそ300億円の資金調達を行い、この資金をF1の設備投資にも使うと発表、7月に入るとモータースポーツ部門を率いる立場の人物としてブルーノ ファミンを起用しました。ファミンはロッシの直属の部下としてモータースポーツ部門を統括する仕事が与えられたわけですが、そこから10日も経たないうちになんとロッシが退任。後任としてフィリップ クリーフが最高経営責任者になりました。ファミンからすると従うべき上司がいきなり交代したことになります、まあ外からはそう見えても中では最初から決まってたのかもしれませんけど。

 で、こうして上層部での組織再編が一段落したところで、今度はF1現場での首脳陣刷新へと話が進んだ流れでした。とりあえずサフナウアーの後任はファミンが自ら引き受けることになり、テクニカルディレクターはドライバー育成組織・アルピーヌ アカデミーの代表を務めていたジュリアン ラウズという人が務めます。
 サフナウアーはBARホンダからフォース インディアに移籍後10年以上にわたってチームを率先し、とりわけ『小規模予算で入賞して得点を稼ぐためにはどうすればよいか』という部分で手腕を発揮。全ての性能を追うのではなく一部分に特化した車で獲れそうなレースを獲る、いわば費用対効果の高い仕事ぶりは高く評価されていました。チームが財政難で潰れそうになった時は必死に売り先を探して取引をまとめる、スマートフォンでファンが手軽にレースの情報を見れるF1アプリもたしかサフナウアーの発案だったと思います。
2017年のFインディア

 メーカー系とはいえ予算規模はやや小さいであろうルノーとするとサフナウアーの効率的な手腕に期待し、彼もまた今までより大きな組織で仕事するのを期待した、双方にとって良い話だったろうと思います。折しもF1に予算制限規則ができましたしね。しかし結果的にアルピーヌは短期間で大きな成果を出せないどころか昨年から今年にかけてやや立ち位置が下降気味でした。
 想像するに、中小企業のアイデアマン社長的なサフナウアーにとっては今までとやや勝手が違い、すぐに結果を出してほしいルノーとは見ている景色が違ったんだろうと思います。ルノーは一時期子会社である日産の利益に助けられていましたが、その日産も気づけば魅力的な新車を出せずに主力の北米で安売り路線に傾倒して採算性もブランド力も低下。ルノーはルノーで先鞭を付けたはずのロシア事業がウクライナ戦争で消し飛んで本業があまり楽な状況ではありませんから、ブランド力強化へ手っ取り早く結果が欲しいと考えがちだと思います。

 ちょっと話はズレますが、長年成績が低迷した阪神タイガースは1998年のオフに監督として野村 克也を招聘。ヤクルト スワローズで4度も優勝した名監督を呼べばきっと勝てるだろう、と上層部は考えたようですが結果は3年連続最下位。そして2001年のオフに今度は星野 仙一を呼ぶわけですが、星野が阪神側に言ったのは要するに「金をかけて補強しないと勝てん」というもので、星野の直談判と熱意により阪神は大型補強へと舵を切り、俗に『星野が阪神の金庫を開けさせた』と語り継がれています。
 もちろん予算制限もあるし本体の経営状況で出せるお金なんて限度があるわけですが、お金はそんなに出せない、でも結果を出しなさい、と言われてできることなんてまあ無いわけです。会社側は果たしてF1の現場側と、どう優先順位をつけて、どういう時間軸と過程で、最終的にどこを目標にするのか、きちんと擦り合わせできていたのかな、と思ってしまいました。こういうのはどこの組織、会社でもまま見られることだと思いますけど。ここをきちんとやらないと誰が組織を率いても同じ結果しか出ない可能性が高いです。


・予選

 金曜日は天気が悪くFP1は雨と赤旗でロクに走れない状況。幸い予選前には雨が上がったので、Q2の途中からスリックに履き替えて戦う流れになりました。
 ピレリ ポール ポジションはやっぱりマックス フェルスタッペン。Q2では少し上手くいかなかったようで10位とギリギリでしたが、Q3は圧倒的でした。ただ、今回マックスはギアボックス交換があるので5グリッド降格。そのためスタート順位はシャルル ルクレール、セルヒオ ペレス、ルイス ハミルトン、カルロス サインツ、オスカー ピアストリ、と来て6位にフェルスタッペンです。

・スプリント シュートアウト

 土曜日のシュートアウトは開始時に雨が重なって35分の順延、前日の予選とほぼ同じ路面条件で進行しました。各セッション時間が予選よりも短いのでスリックが使えるようになったのはSQ3からとなり、無謀にもSQ2でミディアムを注ぎ込んだランス ストロールはあえなく自爆。雰囲気としては「もう履いてもうたもんはしゃあないからとりあえずアタック行ってこい!」な感じでしたが、ゲームならまだしもリアルなら車を壊すリスクをチームもドライバーももうちょっと考えないといけないと思いましたね。ストロールは「交換するの早すぎやわアホ」と言ってたんで、それでも行かされた以上はチームが悪いと思うかもしれませんけど。
 シュートアウトもフェルスタッペンが1位、ピアストリが惜しくも0.011秒差で2位。サインツ、ルクレール、ランド ノリスのトップ5でした。こっちはグリッド降格が無いのでフェルスタッペンがそのまま1位からスタートできます。



・スプリント

 シュートアウトが35分押したのでスプリントもそのまんま規則により35分押し、レース開始を待ってる間にみるみる天気が悪くなってしまい、スタート手順は停止され、天候回復待ちでさらに待ち時間が長くなりました。
 結局さらに30分遅れでまた予選ぐらいの路面状況になったであろう段階でSC先導全車ウエット装着義務付けでフォーメーション周回が始まりました。と言っても隊列走行の段階でみんなこの路面状況なら絶対インターミディエイトに交換しないといけない、と確信しています。ウエットが使えるような条件が少なすぎて、ウエットの出番が来る状況はほぼ赤旗だったりします^^;
 先導走行を差し引いて15周の予定だったレースは11周へ、同じチームで2台同時に入ると渋滞するのでどのチームもまずは1台だけをリスタートと同時にピットに呼んでタイヤ交換しました。フェルスタッペンは混雑を避けるために1周だけ走行してピットへ。これで先に入っていたピアストリがフェルスタッペンをアンダーカット、1.5秒ほど前方で1位となりました。
 今回ダウンフォース増し増しのマクラーレン、セクター2では速いものの直線では当然ながらカモ。抜かれるのも時間の問題かと思ったら、3周目になんとフェルナンド アロンソがプーオンで単独スピン、砂場に埋まって即座にSC導入となりました。やや地盤沈下気味のアストン マーティン、アロンソが開幕からの上機嫌ととんでもない献身の姿勢から変貌しないと良いのですが・・・
 6周目にリスタートするとカモさんはケメル ストレートであっさりとマックスに抜かれました、これはしょうがない。そのままスプリントはフェルスタッペンが制し、ピアストリも順位を守って2位でした。6位と好位置からスタートしたピエール ガスリーが後ろに迫るフェラーリを退けて耐え抜き3位、先週は貰い事故で事実上コーナー1つでレースを終えてしまい、ここ5戦で2点しか獲れていなかったのでスプリントとはいえ6点も貰えて精神的にかなり大きな結果だったと思います。

・決勝

 日曜日はお天気上々、上位6台ではピアストリだけがミディアムを選択し他の人はソフト。一方7位から11位は全員ミディアム、以降はまたほぼソフト選択となりました。マクラーレンはタイヤしんどいですからソフト使いにくいですね。
 先頭スタートのルクレールはスタートの動き出しではよかったものの、RB19の直線に対抗できずレコームであっさりとペレスに抜かれました。そして後ろではターン1でサインツとピアストリが接触、ピアストリは壁に挟まれてしまいました。オー ルージュへ向かう途中で車がおかしくてピアストリは急に加速をやめたのでかなり危険な状況でしたが、幸い二次災害はありませんでした。
 ただピアストリは結局ピットへたどりつけずに0周リタイア、そしてサインツも車体側面にそこそこ大きな穴が開いてしまって空力性能が大幅に低下し、全く競争力がなくなったので最終的に23周を終えてリタイアとなりました。この接触、どっちが悪いのか不可抗力か難しいところですが、サインツが最初のブレーキで行きすぎてロックし、追突回避のためにゆるゆるゆるゆると内側に寄って行ったことでピアストリは内側に突っ込むしかなかったように思うので、基本的には最初のサインツの動きがきっかけ、ただペナルティーを与える類のものでもなくここのコースだとしゃあないかな、と感じました。

 上位勢は1位ペレス、2位にそこから徐々に離されてルクレール。6周目にフェルスタッペンがハミルトンを抜いてもう3位です。ハミルトンはルクレールに対して「あのフェラーリ毎回ターン9ではみ出してるぞ」とトラック リミット監視員復活。

 中団の人たちは早々に1回目のピット サイクルとなっている9周目、フェルスタッペンはレコームでルクレールを大外刈りし2位、ペレスとは3秒差です。いくつかの陣営では20〜30分後に雨が降ると話しておりこの存在も気になるところ。
 レースは完全に上位4台とそれ以外という感じになり、その中でハミルトンが最も早く12周を終えてピットへ。4位で入って4位のまま戻りました。すると翌周にはペレスとルクレールもピットへ。これで見た目上先頭になったフェルスタッペンは14周目にピットに入りました。みなさんソフトからミディアムです。
 フェルスタッペンはおそらくペレスとの作戦の問題で色々と言っていると思われ、ジャンピエロ ランビアーズから「頭を使って走るのを忘れないでくれよ」「頼むから俺の言うことに従って信頼してくれ」とちょっとなじり気味に諭されます。一方で、「10分後ぐらいに雨が降ると予想してるけどどう思う?こっちはこの周でピットに入れたいと思ってるんやけど」と聞かれると「えー、えーっと、俺雨雲レーダー見られへんから分からんわ」と割と正論で返しました。ピットに呼んでから雨が降ったらまた色々言われそうなので一応聞くしかないわけですね^^;

 ただフェルスタッペンにちょっとした作戦のどうのこうのはあんまり関係なく、タイヤを換えて2位で戻ったらアホみたいな速さでペレスに追いつき17周目のケメルストレートであっさりとリードを奪いました。抜いた後もすぐに秒単位の差になってペレスは何も言いようがありません。ちょうどそのころ、18周目あたりから軽い雨がスタブローあたりで降り始めて神経質な時間帯となります。


 徐々に雨はコース全域に広がり、走りに明確に影響するだけの量が降ってはいるもののインターミディエイトを使うほどではない状況。一発逆転を狙って雨待ちをしていた人たちはここで新品のソフトに交換し、別次元のタイムで走り始めました。ただそれも25周目あたりで終了、雨が通り過ぎて影響がなくなるとミディアム勢もまた普通に走り始めました。上位ではフェルスタッペンが危うくラディオンで事故りかけた以外に特に大きな出来事は無かったと思われます。

 そして27周目あたりから上位勢は2回目のピットサイクル、ちょっと距離が残っていますがみんなミディアムからまたソフトに戻しました。フェルスタッペンはペレスと10秒以上の差があって無理する必要は皆無なんですがちょっと速く走りすぎているようで、ジャンピエロから「アウト ラップでタイヤを使いすぎだ」「もうちょっと頭使って走ろうや」となおも挑発気味に若造を指導。
 ところが若造は違う方に頭を使ったようで「ほんならもっと飛ばしてもう1回ピット入ろか?そしたら多少ピット作業の練習にもなるやろ」と爆笑の反論。そんな気の利いた皮肉を言う暇があるならペース落とせw

 フェルスタッペンはマジで数字上なら1回ピットに入れるだけの差までペレスを突き放してしまいましたが、もちろんそんなことはせずに44周を走り切ってマイアミから圧巻の8連勝、これで2013年にセバスチャン ベッテルが記録したF1史上最多連勝記録の9連勝にあと1つと迫って前半戦を締めくくりました。なお、今回の6位スタートでの優勝は自身初でこれで9つの異なるスタート順位から優勝、これもアロンソが持つ最多記録に並びました。
 レッドブルはチームとしてこれで昨年から13連勝、開幕からは12連勝。1988年にマクラーレンが達成した開幕11連勝を塗り替えてこちらもF1史上最多です、もうあとは年間最高勝率ぐらいしか塗り替えられる記録が残っていないのではw

 右端で一人で喜んでるみたいになってますがルクレールが3位、ペレスから10秒遅れというとよく頑張ったような気がしますが、フェルスタッペンから32秒遅れと聞くとなんか絶望的に負けている気がしてきます(っ ◠‿:;...,
 4位はハミルトンで、最速ラップの1点も加えてこれでドライバー選手権で3位のアロンソに1点差まで迫りました。開幕からカスタマーに突き放されていましたけどやっと追いつきましたね、そのアロンソはなんやかんやうまいこと走って5位にいるので大したものです。
 そして今回、わざわざ公式動画のチーム無線集でも取り扱われたのが角田 裕毅。予選11位からスタートでうまく順位を上げて入賞圏内を走り、ミスのない走りで最後は後ろから追ってくるガスリーを振り切って10位で今季3度目の入賞となりました。無線の角田は久々の入賞だから吠えたりするのかと思ったら、レース後とは思えないぐらい冷静な声でけっこうビックリしました。
 このレースは元々少ない練習機会がほぼ潰れてドライ タイヤがどの程度摩耗するのかもデータがほぼ無く、やってみたら案外ソフトが長持ちしました。路面温度が低かった上に、人によっては雨の時間帯を走って摩耗が抑えられたためだと思います。アルファタウリはコース上の順位を考えつつの2ストップで、角田は最後にソフトで20周走ることになりましたがしっかりとした走りを見せ、抜くべき相手は一発で抜いた良いレースだったと思います。ガスリーに一時かなり近いところまで迫られましたが、ホンダPUの効率性もきっとこの僅差の勝敗には貢献したことでしょう。

 まあ何も起きないレースでしたが、スパは荒れるときは荒れるし、何もない時は何もないですからね、今年に関しては死亡事故があって間もない時期でしたし、無事に走り切ったのが何よりだったと思います。来年以降の安全対策も考えないといけませんね。

 これでF1は1か月ほどの夏休み、次戦は8月末のオランダから怒涛の後半戦に入ります。フェルスタッペンは勝ったら母国オランダでベッテルの連勝記録に並び、ベッテルが初優勝したイタリアで記録を更新する、ということになるわけですね。ただイタリアは1988年にマクラーレンが連勝記録を阻まれた地でもあります。とりあえずオランダでは勝った状態でのイタリアが楽しそうですかね~。

コメント

W.Jiyang さんのコメント…
返信いただいた件、言われて初めて気がつきました。
取り敢えず私は気にしておりませんので、大丈夫です。
さて、近年複数のカテゴリで大きめの事故が続いているスパでの開催でしたが、今年のF1は何事もなく安心しました。
好きなサーキットではあるのですが、いくつかの事故はライブ中継を見ていたので、少し身構えてしまいます。
SCfromLA さんの投稿…
>W.Jiyangさん

 私は今回、失速したピアストリの後ろに複数の車が詰まりかけた時に一瞬大事故を覚悟してやっぱり身構えました。たとえばこういう危ない部類のコースでは最大燃料流量を引き下げて速度抑制するとかそういう手段って採用できないんでしょうかな、とか思います。