NASCAR 第19戦 アトランタ

NASCAR Cup Series
Quaker State 400 Available at Walmart
Atlanta Motor Speedway 1.54miles×260Laps(60/100/100)=400.4miles
※雨により185周で終了
winner:William Byron(Hendrick Motorsports/Axalta Chevrolet Camaro ZL1)


 大雨に見舞われつつもシカゴでの市街地レースを結果的には成功で終えたNASCAR。成功と言っても、設営作業の際に作業員の方に感電が原因とみられる死亡事故が発生したほか、土曜日のエクスフィニティーのレースが中止になった後、夜間に特設コース内に不法に車で侵入した疑いで46歳の男性が警察に拘束されるなど、イベントとしてはけっこう綱渡りだった様子も伺えます。
 そして今週はアトランタ、スーパースピードウェイ仕様の車両で開催される、言うなれば『疑似・疑似直線レース』。今回はエクスフィニティー シリーズ、カップ シリーズとも夜にレースが始まるナイト レースとなっています。アトランタでは2014年以来だそうです。最初に発表されていた段階では、イベント名は『~Presented by Walmart』だったと思うんですが、気づいたら『Available at ~』に言い回しが変わってましたw

・レース前の話題

 そのアトランタ、安全面の理由から春のレースではピットの入り口・速度制限開始地点がターン3の入り口側に移設されました。しかしかなり長い距離を45mphの制限で走るとロスが大きいため、今回NASCARは規則を手直しして速度制限区間を2種類に分けました。グリーン中はターン3と4に該当するセクション1と2では90mph制限、その先の普段見慣れたピット入り口にあたるセクション3から先だけが45mphになります。ただしコーション中は引き続き全域で45mphです。
 また、ダメージ ビークル ポリシーの規定作業時間はピット入り口からカウントが始まる仕様なので、ピットが長いと実質の作業時間が短くなってしまいます。そのため、この週末は通常より1分追加されてカップ シリーズは8分となっています。

 そしてもう1つ、シカゴで衝撃のカップ戦デビュー勝利を記録したシェイン バン ギスバーゲン。普段の活動の場はオーストラリアのレプコ スーパーカーズ チャンピオンシップで、今季も3勝を挙げてチャンピオンを争っています。彼はトリプル エイト レース エンジニアリング(レッド ブル アンポール レーシング)と2024年までの契約がありますが、チームのマネージメント ディレクター・ジェイミー ウインカップはFOXに対し

「彼とは来年までしか契約していない。 しかし今ここに座っている私は、もちろんできる限り事業をうまく運営しようと努めていて、最高のドライバーが必要だ。でも、ドライバー、エンジニア、従業員が私のところに来て『地球の裏側で何か他のことを成し遂げるのが夢なんだ』と言ってきたら、立ちはだかるわけにはいかないだろ?」
と、仮にギスバーゲンがNASCARへの転向やさらなるスポット参戦を望んだ場合には容認すると解釈できる発言をしました。ちなみにウインカップはスーパーカーで通算7度のチャンピオンを獲得しているシリーズで最も成功を収めたドライバーの1人です。

・Craftsman Truck Series O’Reilly Auto Parts 150
 
 今週のクラフツマン トラックはアトランタではなくミド-オハイオ スポーツ カー コースでの単独開催。しかし決勝前の大雨で路面は水浸しになっており、いざレースが始まってもコーナー1つでコーションが出る不安しかない幕開け。

 67周のレースで10回もコーションが出て、11回のグリーン フラッグ ランのうち4周以上走れたのは4回だけ、スタート時点では水浸しだったものが強い日差しで最後はとても良い天気になる混とんとしたレースになりましたが、結果的にはポールシッターのコリー ハイムが30周をリードして優勝し今季2勝目・通算4勝目を挙げました。


・Xfinity Series Alsco Uniforms 250

 何度か事故を挟みつつ、レース終盤はコウリッグ レーシングのジャスティン ヘイリーがチームメイトのダニエル ヘムリック、チャンドラー スミスと協力してレースを優位に進めていました。しかし残り3周、オースティン ヒルのスピンでオーバータイムとなると、リスタートでヘイリーの後ろから押す役だったはずのスミスがガス欠で失速^^;
 援護の無いヘイリーを横目にジョン-ハンター ネメチェックとヘムリックが抜けだすと、そのままジョンハンターが逃げ切りました。彼がレースをリードしたのは最後の3周だけ、一方ヘイリーはこのレース最多の80周をリードしながら4位に終わり、自身も最後はガス欠気味でした。このMobil スキーム、シンプルでけっこう好みです。



・予選

 エリック アルミローラがブッシュ ライト ポールを獲得、今季初・通算では5回目だそうです。ライアン ブレイニー、チェイス ブリスコー、ジョーイ ロガーノ、ハリソン バートン、ケビン ハービック、とここまで全てフォードで、そもそもQ2に進んだ10台中8台がフォードでした。

・ステージ1

 大きな雨雲がこちらに向かって進んでおり、ひょっとしたら途中で降ってきて打ち切られるのでは、という予想もある中で決勝。アトランタは2001年、デイトナ500で亡くなったデイル アーンハートの車を引き継いだハービックがわずかデビュー3戦目にして初優勝を挙げた地。引退するハービックに敬意を表し、パレード周回にはハービックと、そして当時のハービックの車をリチャード チルドレスが運転して2台で隊列を先導しました。


 レースが始まるとデイトナ、タラデガでは暫くは2列になりますが、ここは外ライン有利なのでポールのアルミローラがそのまま外側を走ってリード、あっという間に全体は一列になってしまいます。しかし現地コマーシャル中の17周目にバートンのスピンで最初のコーション。その後ろはたまたま3ワイドになっていましたが誰にもぶつかりませんでした。

 24周目にリスタート、引き続きリーダーはアルミローラですがここではロガーノが前に出たそうにしており、40周目に一度抜いてすぐ抜き返されたものの、48周目に再度仕掛けるとブレイニーが援護。これでロガーノがリードを奪います。アルミローラは抜き返そうとラインを変えたことが裏目に出て隊列から外されてしまいました。なんとか隊列に戻りたいアルミローラがかなり無理に隙間に割り込んだので、危うくタイラー レディックが事故るところでした^^;
 ステージ1も残り少ないのでここから動きが激しくなっていき、最終的にはロガーノを裏切ったブレイニーがカイル ラーソンを鼻差で制してステージ勝利を挙げました。ブレイニー、ラーソン、マーティン トゥルーエックス ジュニア、ブレイニー、ウイリアム バイロンのトップ5でした。

・ステージ2

 ピット内で、ステージ8位だったマイケル マクダウルとステージ3位のMTJが接触。ぶつけたマクダウルは右前をそこそこ破損、ぶつけられたMTJはスピンして順位を下げたので仕方なく燃料を注ぎ足して後方リスタートを選択。ピットがそんなに広くないんですよねえ。
 ピットを最初に出たのはラーソンでステージ2を先頭でリスタートしますが、ロガーノの支援を受けてブレイニーが先頭へ。ブレイニーは自分だけすぐ外ラインに出るのではなく、ロガーノもラーソンを抜き切ってくれるまで内側で待って引っ張り上げる動きを見せ、さらにオースティン シンドリックも来たのでこれもちょっと苦労して引っ張り上げペンスキーがトップ3を独占します。
 そのまま流れてくれたらペンスキーの思い通りだったんですがそうはいかず、80周目にバイロンがコリー ラジョーイに引っかけられてスピンしコーション。ここで大半の車は給油のみのピット作業をこなしますが、逆張りで数台がステイ アウト。しかし86周目のリスタートから僅か7周で今度はラーソンがスピンし4回目のコーション、逆張り組はピットに入りました。ラーソンはとりあえず最低限の確認とタイヤ交換でピットを出たものの、フェンダーとタイヤが噛んでいたのか隊列に追いつこうと走っている道中に右前タイヤがバースト、スピンよりこれが致命傷になってリタイアし36位となりました。

 99周目にリスタート、クリス ブッシャーがリーダーに。段々雨雲が近づいて来たのでみんなできるだけ前に行きたい雰囲気を出しています。上位8台ぐらいはまだ落ち着いているものの、以降の人たちは誰か動いて、失速して、詰まって、押して、抜いて、並んで、失速して、詰まって、の無限ループ状態です。
 ブッシャーの後ろにはA.J.アルメンディンガーが付けていましたが、フォードで固めようという意思があったかペンスキーの3台がセットでブッシャーの後ろに入り、シボレーのAJが孤立しそうになります。あちゃ~、AJハメられた、と思ったら123周目に事故発生。ラジョーイとエリック ジョーンズが接触し数台も巻き添えに。最大の被害者はロス チャステインで、車が直せずリタイア・35位でした。

 もうここはいつ雨が降るかという気象予報との兼ね合いでの戦略、給油すべきか判断は分かれますが、とりあえず上位のフォード軍団はステイアウトして129周目にリスタート。ふなっしーがリードしているものの、いつ終わるか分からないレースなのでみんな殺気立っており、131周目にシンドリックがブッシャーをかわしてリードを奪います。
 しかしブッシャーの代わりに今度は上司のブラッド ケゼロウスキーが現れて延々と並走してシンドリックを揺さぶり、最終的にブレイニーの助けも借りてリードを奪います。ケゼロウスキーのスポッター・T.J.メジャーズは元デイル アーンハート ジュニアのスポッターでこの種のレースは得意分野、解説のジュニアさんもよく知ってる相手なのでちょっと解説でひいきが入る気がしますねw


 ブレイニーも当然お人よしではないのでケゼロウスキーを落としにかかりますが、ここは部下のブッシャーがきっちりと後ろから支えてRFKレーシングがワンツーなっしー!
 と、私はここでふと気づきます。"本来の"周回数で言えばまだ100周以上残っているのに、気づけば完全に最終周の気持ちを持ったままこの数十周を見続けている状態になっていることに。これ、ステージ2が終わっても降らずに最終ステージがリスタートしたらテンションをどう持っていこう、と謎の不安が頭をよぎります。ところがその不安は一旦解消、155周目にアレックス ボウマンが滑ってハムリンに接触。2台ともスピンしてコーションになって一旦気持ちがリセットされましたw
 そのままステージ2は終了してケゼロウスキーが勝者となりますが、雨はどうもまだもうちょっと来ないみたいです。

・最終ステージ

 ステージ2上位勢は81周目に給油した人が多く、彼らはもってあと数周なのでピットに入って給油とタイヤ交換。一方、4回目と5回目のコーションで給油した人は燃料がまだあり、すぐ雨が降ると考えるなら給油していられないのでステイアウトです。最終ステージはアルメンディンガーとマクダウルを1列目にリスタートしました。アルメンディンガーは5回目のコーションで給油しているので燃料がたっぷりあります。
 どっちも今季未勝利、かつ普通のレースではなかなか勝てない人なので勝ったらプレイオフ的に盛り上がるんですが、この2台の争いをみて上手く立ち回ったバイロンがリーダーになりました、バイロンも5回目のコーションでの給油組です。どうせ途中終了するなら意外な勝者を見たいのにバイロンが勝ったらあまりサプライズにならないから誰かがんばって!w
オサキデース


 ターン4ではとうとう軽い雨が見え始める中、173周目にハービックが接触で単独スピンしましたが、エイプロンに向かってすっ飛んで行って安全に内側を走ってくれたのでノーコーション、運営も今どういう状況か分かっているのでレースを止めたくありません。
 上位では95周目に給油したマクダウルの燃料がもうあと数周しかもたないという情報で、万一前方の車がガス欠したら大惨事だ、という話になって心配されましたが、178周目にライアン プリースがスピンしてバッバ ウォーレスを巻き添えにクラッシュしコーションとなりました。せっかくレースを止めずにひっそりとピットに入ったハービックのファインプレーが霞んでしまいます。

 今回プリースのスポンサーは車載用音響機器のソニー モバイル ESということで結構ビッグなスポンサーだと思う、というかソニーって珍しいなあと思いながら見てたんですがクラッシュで残念ながら24位でした。
 こうなるともうレースの継続は絶望的、雨脚が強まってレースはそのまま185周を終了した時点で終了となり、バイロンがダーリントン以来の今季4勝目を挙げました。19戦でトップ10が11回の安定感、決勝平均順位11.4は全体2位です。ではここでクイズです、第19戦終了時点で決勝の平均順位が最も高いフル参戦ドライバーは誰でしょうか?答えはページの最後で。(Racing-Reference.infoのデータに基づきます)
ちょっとおいしそうなトロフィー

 2位は終盤にバイロンの背後について逆転の機会を待っていたらその前に終わったダニエル スアレス。アルメンディンガー、マクダウル、カイル ブッシュのトップ5。ケゼロウスキーはステージ2を終えてピットに入り17位に落ちたところから、新しいタイヤでインベタお構い無しの気迫の走りで追い上げましたが6位が精いっぱいでした。でも個人的に最も印象に残ったのはケゼロウスキーでしたね。
 そして7位にはなんとJ.J.イェリーが入りました、5回目のコーションで給油してステージ2後のコーションをステイアウト、10位からリスタートしてなんか上手いこと切り抜けていました。イェリーがカップシリーズでトップ10に入るのはなんと2013年のデイトナ500以来10年ぶり、一桁順位となると2008年ニューハンプシャーでの3位以来15年ぶりみたいです。
 ハービックは自身の20年以上に至るレース人生の転機になったであろう思い出の地で最後に勝てれば最高だったんですが、スピンしたので30位。でもコーションを出さずに絶妙に制御して見せたのは、彼のアトランタに対する思い入れがレースを止めさせなかったんだ、となんかいい感じの文章だけ勝手に妄想して付け足しておきますw

 疑似直線レースといえば勝負は最後の数十周でそこまでは土台作り、というのがセオリーですが、今回は雨のせいで終わりが分からなくなり、結果的にステージ2に入ったらみんな毎周が最終周、とまではいかないものの残り15周ぐらいの雰囲気を出していて、普段ならあるはずの何も起きない時間帯が訪れないレースになりました。図らずも『普段の400~500マイルにある途中の過程いらなくね?』という感想を生み出した可能性がありますね^^;
 そんな中で雨がいつ振るかを読むことが大事だったわけですが、ステージ2終了近辺と読んで3回目のコーションからとどまった人たちは完全に外れてしまいました。これもまたNASCARですが、きっとみんな後から振り返って「いやあ、本当はもうちょっと降るのは後じゃないかとも思ったんだけど、今さら給油して順位を失いたくないと思って意地張っちゃったんだよね・・・」みたいな反省もあるんだろうなあと思います。

 さて、次戦はイェリーが15年前に3位になったニューハンプシャー、調べたらこのレースも雷雨でレースが17周短縮されてピット戦略でこうなったみたいですね。このレースの優勝はカート ブッシュ、4位にトゥルーエックス、8位にハムリンがいました。そう考えると長いことやってますよねえ。




・クイズの答え カイル ブッシュ(平均順位=11.2)
 
 

コメント

日日不穏日記 さんの投稿…
バイロンがポイントトップ、プレーオフポイントも27で、カイルに10ポイント差。2020年代、3人目のヘンドリックのチャンピオンが見えてきた気がします。キャリア8勝のうち、今年で4勝だし。今回はチャステインが気の毒だった気がします。AJが3位に入りましたが、君が活躍するのは、インディとグレンだと思わず言いたくなってしまいました。オーバルでも勝てれば文句ないんですけどね。
SCfromLA さんの投稿…
>日日不穏日記さん

 実際に出ている結果は別として、AJ本人は「俺はオーバルだってやれるんだ!」と主張したい様子なのはエクスフィニティーのナッシュビルで勝った時に感じましたね。ポイントを稼いで16位もまだ見える範囲にいますからここでの40点はけっこう大きいですね。(スアレスと13点差ってむしろスアレス稼げてなさすぎ^^;)
Cherry さんのコメント…
スアレスが得点稼げてないのはスアレスあるあるの巻き込み事故に遭いすぎ!が今年は最近に比べやけに多いからなんですよねぇ…トラックハウスはなんでこうもしょっちゅう事故を起こして自分は無傷だったり巻き込まれたりする人しかドライバーにいないのか笑
どんどんプレイオフが迫る中チェイスがまだ勝ててないので毎週心臓に悪いのでそろそろ勝ってくれえええ!!でもNHを取るのはベルの予感……
カイル・プッシュ さんのコメント…
カイル、がんばってるじゃないですか!平均なんで、案外マクダウエルなんかなとか思いました。
にしても、11.2位でトップってことは、いかにトップ10に入ることに価値があるかってことですよね。
あと、JJイエリーって、そんなに長く乗ってたんですね。それにもびっくりです。
SCfromLA さんの投稿…
>Cherryさん

 スアレスの巻き込まれの多さには、多少は運だけじゃなくて事前に危険を察知して危ない場所を避ける力が足りてないのかな、とも思いますね。さてニューハンプシャーでベルは個人5連勝を達成できるか見ものです^^
SCfromLA さんの投稿…
>カイル・プッシュさん

 平均順位は2021年以前を見ると一けた台の人が場合によっては複数いたのに、去年は最も良いチェイスで12.5。今年も11が最上位であることを考えると、Gen7になって上位を争う人が増えてレースが拮抗していることを裏付ける1つの数字かなと思います。徐々に強いところが固定化されていくと10に近づいていくことになるでしょうが、見る側としたらそうならない方が面白いですね~