NASCAR 第18戦 シカゴ

NASCAR Cup Series
Grant Park 200
Chicago Street Course 2.2miles×100Laps(20/25/55)=220miles
※雨により75周に短縮したところからNASCARオーバータイムで結局78周で終了
winner:Shane van Gisbergen(Trackhouse Racing/Enhance Health Chevrolet Camaro ZL1)

 7月最初のNASCARは75周年のシーズンを彩る初の市街地レース・シカゴ市街地。シカゴにある都市公園・グラント パークの周辺を使った1周2.2マイル(Wikipediaには2.14マイルと書いてある)のトラックです。グラントパークはシカゴ マラソンの発着地点として知られています。2021年にまずiRacingの公式レースで架空のレースとして開催された後、2022年にこれを実際のレースとして開催すると発表した、という今時らしい経緯も話題でした。


 NASCARでは2001年から2019年まで隣町のジョリエットにあるシカゴランド スピードウェイでレースが開催されていましたが、2020年にCOVID-19の影響で開催が中止になると以降はレースが復活せず。これでイリノイ州でのレースは無くなっていましたが、4年ぶりに、しかもシカゴの真ん中に帰ってきた形です。NASCARは3年契約での開催を見込んでいますが、自治体との協議等もあるので確定はしていないようです。

・レース前の話題

 今回はロード コースと言うことで普段とは異なるドライバーが数名参加。リック ウェアー レーシングには今季2度目となるジェンソン バトンが、そしてトラックハウス レーシングはNo.91でシェイン バン ギスバーゲンを起用します。ニュージーランド出身のギスバーゲンはオーストラリアのスーパーカー選手権で2016年、2021年、2022年の3度チャンピオンを獲得している34歳のドライバー、バサースト1000でも2勝、またマクラーレン650S GT3で2016年のバサースト12時間でも優勝しています。


 一方、本来参加するはずだったジミー ジョンソンは参戦を取りやめました。妻・チャンドラ ジャンウェイの両親と甥が銃によって全員死亡するという悲劇的な事件が発生したためでした。現地報道によると、6月26日夜にオクラホマ州のマスコギーという町で事件が発生。捜査関係者によれば、テリー ジャンウェイが夫のジャック ジャンウェイと、11歳の孫であるダルトン ジャンウェイを銃で殺害した後に自身も銃で自殺したとみられています。
 これ以上の詳しい情報は分からず、ジョンソン家としても深い悲しみの中でプライバシーを重視してほしいということで発信を行っていませんが、ジョンソンにとっても義理の両親にあたりますから、レースどころではない状況となってしまいました。

・Xfinity Series Loop 112

 コール カスターがポール ポジションを獲得して始まった土曜日のエクスフィニティー、カスターがステージ1を制し、ステージ2もそのままカスターのリードでレースが続いていましたが、25周目に近隣での落雷があってコーションとなり、その後も大気の状態が不安定なため日曜日に順延されました。
 ところが日曜日は朝から天気が悪く、今度は雨によってレースを開始することができませんでした。NASCARの規定では、レースはステージ2を終了するか総周回数の半分を完了していれば成立ですが、今回はステージ2の終了が30周で、なおかつ周回数は55周だったのでどちらにも届いておらず本来なら不成立の状態です。
 通例であればNASCARは月曜日や火曜日まで待ってでも続きを行いますが、今回は市街地開催のためにこの手段を使うことができず、苦肉の策として特例的にレースは成立したと認定し、カスターを勝者としました。

・予選

 カップ シリーズは予選からギスバーゲンが実力を発揮、Q1のB組でセッション終盤まで待機して一発でタイムを出しに行くも、チェイス エリオットがクラッシュして赤旗に。これで時間が全く無くなって本当に一発勝負になりますが2番手タイムを記録してQ1を突破します。
 Q2でも暫定1位でセッションは終盤を迎えますが、最後にデニー ハムリンがこれを逆転。レギュラーの意地を見せてブッシュ ライト ポールを獲得しました。ハムリンに続いてタイムを更新したタイラー レディックが2位、ギスバーゲンはデビュー戦でなんと3位。クリストファー ベル、ダニエル スアレス、マイケル マクダウル、カイル ラーソンと続き、バトンもなんと8位。ロードが得意なA.J.アルメンディンガーは10位、ぶつけてしまったチェイスは他の数名とともに予備車両で後方スタートになりました。

・決勝

 この日、シカゴでは場所によって20mmほどの降水量を観測する大雨となりました。カップ戦は午後4時に開始したかったんですが、さらに雨が来たので開始時間は5時半とかなり遅い時間になり、100周を全て走ることはできないだろうと予想されました。スタート時に雨はもう降っていないようですがかなりの路面水量です。安全のため、スタート/リスタートはとりあえず普段の2列ではなく1列で行われることになりました。
 レースが始まると早速ターン5でレディックがハムリンをかわし、後方ではエリック アルミローラがスピン。さらにターン6で全く止まれなかったエリック ジョーンズがまっすぐ突っ込んできたのでブラッド ケゼロウスキーとノア グレッグソンを巻き添えに3台で軽い事故も発生します。
 続く2周目にはハムリンがターン2で思いっきりミスってタイヤ バリアに突っ込み12位に転落、なんかまともにレースが進む気がしないなと思ったら3周目のターン6ではカイル ブッシュがバリアに突っ込んで車が埋まり、自力では出れなくなってとうとうコーションが出ました。トラックに引っ張ってもらわないと出れません^^;
カイルブシャー!

 6周目にリスタート、レディック、ベル、ギスバーゲンの3台が抜け出します。やがてベルがレディックに対して後ろから無言の重圧をかけ始めると、9周目のターン6でレディックはブレーキに失敗。がら空きの内側からベルがかわして2人目のリーダーとなりました。
 13周目、今度はギスバーゲンがレディックに迫っていましたが、ターン6でグレッグソンがクラッシュしまたもやタイヤに埋まって自走不能、2回目のコーションとなります。路面は少しずつ乾いているんですが、走行ライン以外には水たまりも多く、舗装も荒れていてすぐに車が跳ねるので安定して車を止めるのが非常に難しいようです。それにしてもレガシーM.C.はここまで良いことがありませんね。

 中団の車はここで給油やタイヤ交換を行い16周目にリスタート、ここも上位3台が抜け出して20周のステージ1が終了、ベルが今季初のステージ勝利を挙げました。レディック、ギスバーゲン、マーティン トゥルーエックス ジュニア、マクダウル、スアレス、ラーソン、アルメンディンガー、ギブス、そしてバトンが10位でまだ踏ん張っています。

 22周目、後方でチェイス ブリスコーがスリックに交換する一方で、ターン6ではレインを履いたロガーノがタイヤに刺さる難しい状況。ここで、F1時代にはこういう状況でタイヤ選択の正確性に定評があったバトンが23周目にピットに入ろうとしましたが、最終コーナーで追突されてスピン。運悪くそこにさっきスピンしたロガーノがピットに入ろうとしてあやうく衝突でした^^;
 バトンは最終コーナーで内側に付けなかったので、後続のクリス ブッシャーはおそらく相手がピットに入るとは考えなかったと思われます。ストック カーにはウインカーが無いので後ろのドライバーにピットの意思を伝えるのは重要なんですが、と書いたところでバトンがそもそもライトの無いF1で何年も走ってたんだから今さらであることを思い出します。『窓から手を出して合図する』はF1ではやらないですけどね、バトンはここで順位を落としたのが痛く21位でした。

 しかし状況は着実にスリック寄りになっており、24周目に4位のトゥルーエックス、25周目には1位のベルと、ギスバーゲンに抜かれて3位に落ちたレディックもピットへ。ギスバーゲンもこれを見て26周目に入りますが、イン ラップで周回遅れのケゼロウスキーに詰まってペースが上げられず、ピットを出ると既にベルが先行していて6.5秒の差を付けられました。

 ライン上以外には水があり、特にターン10~11の短い直線だけは舗装のくぼみにすごい量の水が溜まっていて絶対避けられない状況。ミスが許されない中でチェイスも自爆して順位を下げていましたが、30周目のターン6でまたグレッグソンがバリアに直行しコーション、13周目とそっくりなところにささってまた牽引トラックのお世話になりました。

 34周目にリスタート、出遅れたギスバーゲンをレディックがターン1でズバッとかわして2位を奪還。ギスバーゲンの方はこの後5位まで後退したものの互角に渡り合う好レースを続けています。ただ無線に不具合が発生しているようで初レースの人間にはかなりの難題です。
 40周目、ハムリンがターン11手前の水たまりに完全に足を取られ、前を行くアレックス ボウマンにミサイル。スピンしたボウマンはアクセルでくるんと回って復帰しようとしたものの、失敗してターンのエイペックスで立ち往生し事態が悪化、コーションになりました。

 上位勢は45周目のステージ2終了が間近なのでピットに入りませんが、中団の10台ほどがピットへ。レースが80周あたりで打ち切られると予想し、燃料的には40周ほど走れるはずなので、ここで給油すれば自分たちは最後のピット、入らなかった人がもう1回どこかで入るので自分たちが前に出るはずだ、という戦略です。
 44周目にリスタートしますが、先ほどクラッシュして車の前部をそこそこぶつけたボウマンの車が煙を吐いてコース脇に停車。場所としては走行する車両から見れば壁の影に隠れたほぼぶつからない安全な場所ではあるものの、このままでは車を排除できないのでふたたびコーションとなりました。これでステージ2の勝者もベルとなります。フォーミュラEだとこういう時とりあえず放置して黄旗だけずっと振ってることがありますよね・・・

 ここでNASCAR側は日没時間を考慮し周回数を75周へと変更することを決断、さきほど42周目に入っていない大半の車は、これで今給油するとレースを走り切れることが確実になったのでピットに入りました。これで狙い通り先ほどピットに入った人たちは前方へ。
 49周目、ジャスティン ヘイリーを先頭にリスタートしますが、この周のターン11で大事件発生。まずウイリアム バイロンがミスって単独で壁に当たると、おそらくケビン ハービックはこれを見てやや早めにブレーキを踏んだんだと思いますが、後ろからそうとは知らないコリー ラジョーイが追突。これで2台が絡んでターンの出口に止まり、コースの左側を塞ぎました。
 もうここから連鎖的に車が詰まっていき、最初はコースの右端が辛うじて空いていたのですり抜けた車がいたものの当然ながらコーション。その後脱出を試みたハービックが動いたら見事に逆効果で完全に道がふさがりましたw
フォーミュラEで時々見る光景

 ベル、ラーソンは運悪くこれに引っかかり、レディックやギスバーゲンは右端をすり抜けたんですが、コーション発生時のリスタート順位は『コーション発生直前の計測地点での順位』となっています。これだけ車がぐちゃぐちゃだとその判定がすぐには決まらず、各車が居場所を求めていったり来たり、空撮だとただの交通渋滞みたいな映像となりました。


 結果的にレディックは7位、ラーソンが14位、ベルは15位、ギスバーゲンは18位からのリスタート、ちょっと勝負権の無い位置にまで下がってしまいました。一方でそもそものきっかけを作って壁に刺さっていたバイロンが10位、ハービックが11位、ラジョーイが12位からのリスタートなので、周囲のドライバーは「なんでやねん」と思ったことでしょう。

 53周目、ヘイリー、オースティン ディロン、チェイスの順でリスタート。ちょっと暗いせいもありますが正面から見ると白と青のシボレーでちょっとNAPAスキームのチェイスっぽく見えるヘイリーですが、ストップ&ゴーは案外早いのでそのままリードを維持します。一方グレッグソンはまたターン6でクラッシュ、これを見て「グレッグソンは仮にシカゴに遊びに来てもこの道は走りたくないだろうな」と思ったら実況が同じこと言ってて笑いましたw


 57周目、レディックが混戦となっていた4位争いの壁を全員突破しますが、これで前を追いかけると思ったら翌周のターン6でバリアに一直線、脱出不能でコーションとなります。この前の周にはベルもターン1で自滅しており、レースの多くを引っ張ってきた2台のカムリは勝負所で立て続けに優勝戦線を離脱しました。ベルはこのレース18位、レディックは28位で、これで4戦連続28位以下です。

 61周目・残り15周でリスタート、ヘイリーがブレーキでタイヤをロックさせていてかなり危ういですがリードを守ります。レディックもベルも消えたので上位3台の争い、あとはチェイスがいかに前の2台を攻略するかが注目だと思っていたら、気づいたらその後ろではギスバーゲンがすごい飛び込みで7位に上がっています。信じられないことに、ギスバーゲンは53周目のリスタート以降57周目以外の全ての周回で必ず1台以上の車を抜いていました。
 62周目、2位のディロンが根負け。最終コーナーで内側の壁に当ててしまい、弾かれてそのまま外側の壁にかなりの勢いで衝突。サスペンションが折れてしまいました。もやはまともに走れないけどピット入り口もすぎているので、ディロンは全車の通過を待って出口から逆走でピットへ、コーション発生は避けられました。
 これでヘイリーを追うのはチェイスとなりますが、65周目のターン1でとうとうギスバーゲンが3位に浮上、1周1秒近いペース差があります。後方ではターン1で多重事故が起こりますが、全員現場を離脱できたので幸いこれもノーコーション。しかしターン10~11だけ未だに乾かないので、ズルっと行きそうで見ていて冷や冷やします。

 残り8周、ギスバーゲンはターン2でチェイスをかわし2位となると、さらにターン7でヘイリーもかわしますが、ほぼ同時にトゥルーエックスがターン1でクラッシュしていました。残念ながらコーションは追い抜きよりも前に発生しており、ギスバーゲンのリードは幻、ヘイリーは命拾いします。トゥルーエックスはブレーキがダメみたいですね。


 残り5周でリスタート、ターン1ではリードを保ったヘイリーでしたが、ギスバーゲンの速さは別格でターン2で狙いすましたように内側からかわします。一旦ターン3で交差してヘイリーが前に出ますが、ギスバーゲンは相手の動きをよーく見てターン4で交差に交差でお返し。「それ止まれんの!?」と思わずにはいられない飛び込みを見せて再逆転し、とうとうリードを奪います。
 ところが75年間その座に居座るNASCARの神様はそれほど優しくありませんでした。残り2周、ターン1でバッバ ウォーレスがブレーキが壊れたっぽいタコ踊りブレーキになり制御不能、リッキー ステンハウス ジュニアが不運にも撃墜されてコーションとなり、レースはNASCARオーバータイムとなります。

 スポット参戦したゲストと、プレイオフへの千載一遇のチャンスを掴みたい伏兵と、怪我で欠場が多いので勝ってプレイオフを決めておきたい元王者。後ろから圧がかかっていることはギスバーゲンも感じたでしょうが、リスタートを落ち着いて決めると全く危なげの無い走りを披露。そのままヘイリーに何もさせずにトップでチェッカーを受け、なんとカップシリーズのデビュー戦で優勝という歴史に残る記録を打ち立てました。

 2021年にヘンドリックからチップ ガナッシ レーシングにパフォーマンス ディレクターとして移籍したダリアン グラブ。そのままトラックハウスでも同職に就いて普段は見えないところで仕事をし、91が走る時だけクルー チーフを兼任していますが、まさか自分の担当する車が優勝するとは思っていなかったでしょう。グラブにとっての通算24勝目は2015年のダーリントンでカール エドワーズと組んで優勝して以来です。


 カップシリーズのデビュー戦で優勝したドライバーは史上7人目、1963年・デイトナ500予選レースでのジョニー ラザフォード以来で、1972年以降のいわゆる近代NASCARでは初の出来事でした。ラザフォードはCARTが主戦場のドライバーで、後の1980年にはチャンピオンを獲得しています。

※追記:当初『デイトナ500』と記載していましたが『デイトナ500の予選レース』の誤りでした。情報の確認不足でした、お詫び申し上げます。デイトナ500の予選レースは1971年まで公式戦として扱われていました。

 他の5人も軽く触れておくと、まず1人目のジム ローパーは1949年のシャーロット。これはNASCARの記念すべき初レースなので当たり前なんですが、ローパーは新聞記事でレースがあることを知り、自身のリンカーンを地元カンザス州から1000マイル運転してレースに参加したそうです。着順では2位だったのが、1位のドライバーが規定違反で失格になったので繰り上げ優勝、ローパーは同年の第3戦にも出場し、参戦経歴はこの2戦だけでした。
 史上2人目は1949年の第5戦・ハンバーグ スピードウェイで勝ったジャック ホワイト。1951年までの3年間で合計12戦に出場した経歴があり、翌年のハンバーグでも5位に入りました。
 3人目はハロルド カイト。1950年の開幕戦・デイトナ ビーチで優勝しました。カイトは1956年までに8戦に出場したあと一旦レースを離れ、1965年のシャーロットで再びレースに戻ってきましたが、悲しいことに1周目に多重事故が発生して命を落としました。後年、彼は地元ジョージア州のレース界の殿堂に選出され、優勝したトロフィーは施設内に展示されているそうです。
 
 4人目は1950年・ノース ウィルクスボロで勝ったレオン セイルス。残り8周でジャック スミスをかわしてリードを奪いデビュー戦勝利を挙げました。スミスは後に通算で21勝を挙げ、最高で年間4位に入ることになるドライバーです。セイルスは通算8戦に出場し、優勝以外にダーリントンとマーティンズビルで一桁順位を記録しています。
 そして5人目は1951年、オークランド スタジアム スピードウェイという調べてもほとんど出てこない開催地のレースで優勝したマービン バーク。250周のレースのうち156周をリードして圧勝したものの、この1戦にしか出場しなかったドライバーです。調べてもほとんどどんなドライバーか分かりませんが、本来はミジェットやスプリントでダートを走っているドライバーだったと思われます。

 
 それにしてもギスバーゲンの優勝は驚きでした、予選結果は見ていたのでなんとなく文章の中に盛り込んでいこうとは思って観戦しつつ下書きしていたんですが、まさか勝つとは・・・ということで、そうそう勝てるわけがないレースで彼が勝てた要因、自分なりにいくつか考えました。
 1つ目は、そもそもスーパーカーとストックカーは思想が似ていてなじみやすい車だったことがあるでしょう。ちょうどスーパーカーも今年からGen3という新しい規格の車両になり、こっちの方が少し軽くてダウンフォースもあるんですが、少なくともGT500やF1から乗り換えるより遥かになじみやすい環境です。

 2つ目に、同じロードコースでもCoTAのようなレイアウトだとこのロクなダウンフォースが出ない車から少しでもダウンフォースを生むための細かいセッティングと、それをどうにか走らせる力量が必要になるので優勝争いするにはいくぶん特殊な技術が必要ですが、ストップ&ゴーだとそれよりもアクセルとブレーキの操作が何より大事でダウンフォースはその次になります。
 しかも今回のシカゴは初開催で全員が未経験で条件はより均等になり、なんならスーパーカーでアデレード等の市街地レースを経験しているギスバーゲンの方がむしろ馴染みがあるかもしれないぐらいでした。

 3つ目は路面状況で、カップドライバーも水たまりだらけのコースや、そこから乾いて行って濡れた路面をスリックで走るような経験はほとんどありません。ここもむしろギスバーゲンは慣れた条件です。バサーストなんて1周が長いし高低差もあって、コース状況の変化に逐次対応できないと即リタイアですからね。
 そして4つ目、これも雨の関係ですがリスタートが全て1列だったのも大きく影響しました。最後のリスタートが仮に2列ならギスバーゲンは1列目の内側を選ぶと思います。ヘイリーが正直に外を選んだら後ろからチェイスが来ますし、ヘイリーが自爆覚悟で2列目の内側を選んで思いっきり押してきたかもしれません。それ以前のリスタートも1列なので、普通なら1列って順位を上げにくい、波乱を起こしにくいですが、今日のギスバーゲンに限っては1台1台着実に食えるのでむしろ好都合でした。

 こうして振り返るとなんだか彼のために全てがお膳立てされたような流れですが、知らない環境でおそらくほぼミスなく走らせ続けた技術力と集中力が何より最大の勝因です。ラインを外して内側から抜くのは、本当に止まれるのか分からないのでみんなあまり動きを見せていなかったと思いますが、彼だけは限界を正確に把握していました。だからこそ毎周追い抜いて順位が上がりました。
 最後はものすごく彼の応援に力が入りましたが、記録にも記憶にも残る素晴らしいレースだったと思います。NBCでは過去6年間のNASCARで最も視聴者数の多かったレースとなり、昨年NBCが中継したレースでの平均視聴者数と比べると1.7倍ぐらいの数字を記録しました。現地のお客さんも雨の中で待たされた上にずいぶんと帰宅も遅くなったと思いますがあの盛り上がりを見ると、待っていてきっと損は無かったと思います。レディックとグレッグソンのファンだけは「チックショーーーー!」って叫んで帰ったかもしれませんけど。

 さて、感動のシカゴを終えて次戦はアトランタ、今季2度目のスーパースピードウェイもどきレースです。

コメント

ネコパス さんのコメント…
不慮のトラブルや、タイヤバリアに車が食べられたりと、大波乱のシカゴランドでしたが、チェッカーの30分ほど前からの激しいバトルに、す立ち膝で叫びながらテレビ視聴(笑)

アンブローズおじさんも喜んでいるといいな!
カイル・プッシュ さんのコメント…
シカゴ、面白かったですね!
雨とか初のコースとか不確定要素がたくさんあったこともあるのですが、視聴者数が物語っている通り、見てて目が離せない!と思えたレースでした!
そしてあの結末!楽しませてもらいましたー!
アールグレイ さんのコメント…
僭越ですが
デビュー戦で初優勝したドライバーの部分で1963年・デイトナ500でのジョニー ラザフォード以来と書かれていますが、
正しくはデイトナ500の予選レースです。(1971年までは予選レースのデュエルも公式戦扱いでした)

デビュー戦がデイトナ500で勝ったら今ではすごい騒がれるでしょうね。
デビュー2戦目であればトレバー・ベインがいましたが…
SCfromLA さんの投稿…
>ネコパスさん

 「タイヤバリアに車が食べられる」って良いですね(笑)終盤は私も「この速さなら絶対勝てるやろ」という思いと「そんな上手い話起きひんやろ」という思いが交錯して釘付けでした。
アンブローズおじさんといえば、今回のギスバーゲンの参戦と連動する形だと思いますがグレンで優勝した時の車がレストアされてオーストラリアに到着したそうですね。
https://www.v8sleuth.com.au/revealed-ambrose-nascar-cup-winner-lands-down-under/
SCfromLA さんの投稿…
>カイル・プッシュさん

 よりによってこんな時に豪雨で運が無いなあ、グダグダになるだろうなあ、と思ったらすごい結末が待っていたのでものすごく良い意味で裏切られましたね、カイルはしれっと上位に戻って来たし(笑)
SCfromLA さんの投稿…
>アールグレイさん

 ご指摘ありがとうございます&大変失礼いたしました!m(_ _)m 他のドライバーは情報が少ないので逆に数か所で情報探したりしたのに、ラザフォードだけは名前が通ってるせいで最初に雑な文章の読み方をしたそのままの思い込みで文章を書いてしまいました。
日日不穏日記 さんの投稿…
最近にない面白いレースでした。ギスベルゲンは、コーション前にピットストップしたドライバーをパスして、頂点に立ちました。オートスポーツの記事を後で読んだんですが、カイル・ブッシュや、カイル・ラーソンがその速さを絶賛していて、凄いドライバーだと思いました。
実況も終盤から「SVG」と連呼していて、現地で、そう呼ばれているんですかね。ヘイリーが大奮闘して、最後まで優勝争いをして、これ、AJ危ないんじゃないの?って心配になりましたw。
さて、インディ/ロードは、GAORAで生中継されます。これ一線のみですが、HPを観ると解説、アナウンサーとも知らない人でした。20年ぶりだそうで、ウィンストンカップ時代以来ですね。レポーターで、天野さん、解説に福山さんだったら、良かったかなって気もしますが、さすがに無理でしたかね。
首跡 さんの投稿…
ギズバーゲンのデビューウィンは衝撃的でした。いつかまたNASCARに参戦してくれると嬉しいです。
レディックはモンスターエナジーを飲みすぎた結果、抑えが効かずにハジけたのでしょう… ええ、そうに違いありません。チックショーーーー!(´・ω・`)
SCfromLA さんの投稿…
>日日不穏日記さん

 AJは本来ならここで目立ちたかったと自分でも思っているはずなので契約を考えると確かに痛手ですね。ヘイリーとはたまたま作戦が逆だったというのはありますが、48周目はギスバーゲンの後ろからリスタートしていて、何ならあの事故渋滞で彼の右リアに玉突きで追突したのがAJなんですが、そこから抜いて行ったSVGと抜けなかったAJという点でも比較されるので、二重の意味でお株を奪われてしまいました。
SCfromLA さんの投稿…
>首跡さん

 それ半分薬物中毒w ギブス勢はみんな終盤に事故ってたところを見ると、ブレーキダクトの設定ミスってみんなオーバーヒートしてた可能性がありそうですが、攻めすぎもあったでしょうねえ。