F1 第10戦 イギリス

FORMULA 1 ARAMCO BRITISH GRAND PRIX 2023
Silverstone Cuircuit 5.891km×52Laps=306.198km
winner:Max Verstappen(Oracle Red Bull Racing/Red Bull Racing RB19-Honda RBPT)

 F1第10戦はイギリス、今になってオートスポーツなど多くのメディアは中止になったエミリア ロマーニャもそのまま数えていて、このレースが『第11戦』だということに気づきました。資料集めで時々お世話になっているF1 DataWebというサイトでは私と同じ数え方でやってないレースは数えてないんですけど、数えるのが主流なんでしょうかね。
 個人的には、1つたまたま中止になってしまったぐらいなら良いものの、2020年みたいに中止と代替が複数発生するとこの数え方では対応が不可能になってくるので、実施したものだけ数えた方が良いかなとか思っているんですけど。


 さて、イギリスといえば昨年のレースでは川井 一仁が3年ぶりに現地解説に赴いたのに、決勝当日にSARS-CoV-2陽性で隔離されて解説ができずに連続解説出場記録が途切れてしまうというF1界を揺るがす大事件がありましたね(え)。川井ちゃんは今年も現地へ。
 去年はレースの方でも雨の予選でカルロス サインツがポールを獲り、決勝の1周目に周 冠宇の横転事故が起きて背筋が凍り、マックス フェルスタッペンは角田 祐樹とピエール ガスリーの接触で発生した身内の破片を床下に引っかけて競争力を失い、そしてレース終盤のSCでフェラーリが優先事項を曖昧にしたような戦略を採ってしまってシャルル ルクレールが大損し、サインツがF1初優勝を挙げた、けどこれらの状況を解説する肝心の川井ちゃんがいなかった、というある意味非常に印象深いレースでした。今年は川井ちゃんがちゃんといるか、複雑でないレースを祈りますw

・レース前の話題

 7月1日にスパ フランコルシャンで開催されていたフォーミュラ リージョナル ヨーロッパ選手権 バイ アルピーヌ・第4ラウンド レース2で事故が発生。18歳のオランダ人ドライバー・ディラーノ ファント ホーフが亡くなりました。フォーミュラリージョナルは以前の国内F3に相当するカテゴリー、若手にとってはFIA F3へと道が続く登竜門です。
 30分+1周の設定で行われるレースはやや悪天候の中で始まり、開始から14分・6周目に入ったところで接触事故によりSC導入。SCは翌周の終わりに退出して8周目にリスタートするはずでしたが、不具合でコース上に止まった車が新たに出たので引き続きとどまることになり、そうしているうちに雨量が増えてきて次第に視界は悪化していきました。
 10周目にリスタートしたものの、ラディオンで2位のティム トラムニッツがスピン。このスピンそのものはそこまで大事ではなかったはずが、視界が非常に悪いことから後方で多重事故が起きてしまい、そしてファントホーフが犠牲になりました。
 スパでは2019年のFIA F2でアントワーヌ ユベールが死亡する事故があり、これもやはりラディオンの先でスピンした車両が発生したことに起因する多重事故であったため類似性を指摘する声が上がり、当然F1ドライバーからも多くの反応がありました。
 中にはコースそのものの安全性に対する意見もありますが、今回の場合は視界の悪さとレース再開の判断の方に検証する余地があるように見えました。今回SCは故障車両のためにいわば余分に留まって先導したことになりますが、9周目の終わりにSCが退出して先頭のアンドレア キミ アントネリが計測ラインを通過した時点でレースの残り時間は15秒ほど、つまりあと2周しかありませんでした。そして、15分前と比べて明らかに路面の水量が増えて視界は悪化していました。

 コースの安全性に関して言えば、安全性の格付けをすればスパが上位でないことは確かでしょうが、フェルスタッペンが指摘している通りそれならジェッダ市街地なんてもっと危険で、正直何で開催が許可されてるのか分からんレベルだと思います。
 「だからコースは悪くない、悪いのは運営だ!」とか、「そもそも危険な競技なんだから安全安全うるさい!」みたいな意見は次元が低いので、運営には課題がある、でもコースの安全性についても常に考える、そしてそこは二重基準にならないようにする、こうした姿勢が大事です。
 施設側が対処すべき問題と、シリーズ運営組織が対処すべき問題と、国際自動車連盟自身が対処すべき問題と、内容によって担うべき組織が異なっている話を跨ぐのでF1だけでどうにかする話ではないんですが「中東でお金があるから何でも許可されるの?」というような議論も場合によっては当然必要でしょうし、これを見てみぬふりしてスパだけどうにかすれば良い話でもありません。厳しい言い方しますけど、それができない人は安全を語ったり組織を率いてはいけないと思いますね。

 そしてもう1つ、来季の暫定日程が発表され、2024年の日本は4月7日に第4戦として決勝が開催される史上初の春開催となることが明らかになりました。明らかになった、と言っても衆議院議員・古屋 圭司がこれより前に、フォーミュラEの東京開催が発表されたタイミングで「来年3月末には、フォーミュラEをビッグサイト公道を活用して開催予定。次週には鈴鹿でF1開催」と、まだ未発表の情報をうっかりお漏らししてしまったので公然の秘密でした。
 シーズンはバーレーンで開幕しますが、現地のラマダーンの関係で決勝が3月2日の土曜日というやや変則日程で、つまりフリー走行は2月29日の木曜日。一方後ろの方はというと第23戦カタールの決勝で既に12月1日と12月にさしかかり、最終戦アブダビは12月8日。さすがにちょっと多すぎ、長すぎやしないかと思う全24戦の日程です。
 開幕戦のFP1から全て見たい人で、かつF1の時期だけ放送契約するような人だとこの1日のために2月から契約し、12月まで契約しっぱなしなのでほぼ通年契約になってしまいますね。さすがに2月29日のFP1のためだけに契約する人は、そもそもオフ期間も何かしらの番組のために契約し続けていると思うのでまずいないとは思いますけど^^;

・予選

 イギリスに話を戻すと、またもや予選は雨がらみ、そしてまたもやセルヒオ ぺレスがやってしまいました。Q1はまだ濡れた部分があるとはいえスリックで走り続けてどうにかする状況で、ペレスはなかなかタイムが伸ばせず当落線近く。そこに残り3分ほどで赤旗が出てしまい、これは再開後すぐタイムを出さないと大変だとばかりにピット出口の先頭に並んでアタックに向かいましたが、結局15位のフェルナンド アロンソに0.019秒届かず16位で落ちました。
 結果的に最後の駆け込みアタックは後ろの人ほど路面状況は良かったので先頭は裏目に出てしまいましたが、それでもペレスの後ろで走っていたウイリアムズの2人はペレスを上回っており、車の力を考えるとやはりタイムを出さないといけない立場だったことに変わりはなかったと思います。あのアロンソでも15位だったんだから、というのはあまり慰めにならないですね・・・
 結局本日もピレリ ポール ポジションはフェルスタッペン。今回唯一の失敗は赤旗中にガレージから出る際、壁にぶつけてウイングを1本壊したことでしたが、コース上では無敵でした。そして驚くべきは2位にランド ノリス、3位がオスカー ピアストリとマクラーレンが続いたこと。オーストリアでも速かったマクラーレンですが、車の空力効率が問われるシルバーストーンでのこの順位はかなり明るい材料です。
これでQ1落ちしたら面白かったのに(ボソッ)

 その後ろにシャルル ルクレール、カルロス サインツ、ジョージ ラッセル、ルイス ハミルトン、とチームごとに綺麗に並ぶ形になりました。アレクサンダー アルボンは今回も8位と大健闘。一方Q1を通過した後イン ラップにコース上で止まってしまったバルテリ ボッタスは、どうやら保健所に提出するためのスープのサンプルを残していなかったようで失格になりました。業務停止命令を受けなくて良かったですね(?)

・決勝

 ちゃんと川井ちゃんはグリッドで取材して放送席へ到着。タイヤは多くがミディアムを選択、上位では6位のラッセルがソフトを選んでスタート。グリッドに車を並べているときは晴れていたのに、川井ちゃんが放送席にたどり着いたころにはかなり曇って路面温度も下がりました。
 スタートではノリスが偶数列ながら抜群の蹴り出しを見せ、フェルスタッペンは空転が多かった様子でターン1をノリスが制しました。ピアストリも2位を狙っていきますが、チャンピオンはさすがにそこまでの隙は見せませんでした。ただノリスが1位で帰って来たので地元イギリスのファンは大歓声、フェルスタッペンのファンはオレンジ色のグッズを身に付け、ノリスのファンもマクラーレンのオレンジ色を身に付けているのでキャラが被っています。
 しかしいくら抜けないシルバーストーンでも車の自力が違うのでいつまでもノリスが先頭とはいかず、フェルスタッペンは5周目のターン6でノリスをかわしてリード奪還。ノリスも特に抵抗する意思がなく、そしてマクラーレンはチームとして争わず2台で戦うことを確認。相手は後ろにいるフェラーリですね。
 そのフェラーリは2台の間にラッセルが入ってルクレールを攻撃中ルクレールはちょっと危ない動きでラッセルを抑え込んで怒りを買っています。マクラーレンにとってはそのまま表彰台を奪うのに好都合な展開、ラッセルもイギリス人なのでここは頑張るとお客さんが喜んでくれます。

 15周目にはフェルスタッペンとノリスの差は3秒、そこからピアストリまで2秒、ルクレールまでさらに3.8秒。タイヤのことを考えると2秒ぐらいは離れて走った方が良いコースなので、付いて行けないのか間を空けているのかちょっと判断しにくいとも言えます。近隣では雨雲が発生していて、これに由来するとみられる強風も影響し、雨はすこーーーしだけ降っている模様、決してラッセルの汗ではありません。そのラッセルは延々とルクレールのDRS圏内にいて、ソフトを履いてるのによくその場にい続けられるもんだなと感心しますが、いかんせんW14は直線が速くないので抜くにはちょっと足りない様子。

 18周目、そのルクレールが上位で最初にピットへ、ミディアムからハードに繋いだのでたぶんここから長く走る1ストップ。一方、ラッセルから2.5秒ほど離れているサインツに対してはリカルド アダミから「プランBで行くぞ」と声がかかりますが「プランBって何やったかなリッキー、ごちゃごちゃなって忘れたわ」。本当に忘れたのか、作戦に納得がいかないからそういう意地の悪い言い方をしてるのか、ここだけ放送されてもちょっと真意が分かりにくいですね。アダミは「後で言うわ」って言ってましたけど^^;

 フェラーリの戦略プランに関しては、単純に
A=1ストップ
B=2ストップ
みたいなパターンではなく、
A=ミディアム→ソフト→ミディアムの2ストップ
B=ミディアム→ハードの1ストップ
C=ミディアム→ソフトの1ストップ
みたいにタイヤの組み合わせで細かく内容が分かれていて、他チームと比べると相手がパッと聞いた時にすぐには内容が分かりにくいような構成になっていることがけっこう多い印象なので(だからDとかEとかが出てくる)、走ってて分からなくなるというのもあり得るかなあとは思います。


 さてコース上に話を戻すと、ルクレールに続いてすぐピットに入る人は誰もおらず、26周目になって作戦をお忘れになったかもしれないサインツがピットへ。こちらもミディアムからハードです。路面温度が低いせいもあって、気づけばソフトのラッセルが未だにタイヤをもたせた状態でレースは折り返しを過ぎました。ただフェラーリはタイヤへの攻撃性がやや高いと言われているので、単純に「ラッセルがソフトで半分走ったから俺たちもソフトで行けんじゃね?」という単純な話にはなりません。
 28周目、サインツにアンダーカットされると困るのでラッセルもピットに入ってミディアムへ。フェラーリとは逆にメルセデスは荷重がかかりにくく寒いのがやや苦手と言われており、ハードは使い勝手が悪そうです。続く29周目には3位のピアストリもピットに入りますが、こっちはミディアムからハードへ、マクラーレンも高負荷系の車とみられています。

 31周目、タイヤを換えてルクレール 対 ラッセルの第2ラウンドが始まりますが、今回はブルックランズからルフィールドへかけて、コーナー2つで勝負が終わりました。古いハードで新しいミディアムには対抗できず、ラッセルがこれで実質4位へ。
 ところが33周目に水を注す出来事、予選でも車が止まっていたケビン マグヌッセンがまたもやエンジン関係と見られる問題でターン5の先に車を止めてしまい即座にVSC発動、まだタイヤを換えていなかった人は一斉にピットへ、そしてハードが遅くて苦戦するルクレールも9秒のロスで済むなら換えたほうが良いので2回目のピットに入りました。
 当初はVSCだったものの、ちょうどフェルスタッペンとノリスがもうすぐピットにたどり着くころにSCに変更。フェルスタッペンはソフトへ繋ぎますが、ノリスは残り周回数が少ないのにそれでもハードへ。暫定3位のハミルトンはソフトへ繋ぎました。事後情報によれば、マクラーレンはVSC継続を見込んでハードを選び、実際にはピットに入る前にSCへ切り替わったものの、これで混乱すると困るのでソフトに変更することはしなかったそうです、手堅い。

 このVSC/SCは明らかにまだ入っていなかった組に有利に働き、リスタート順位はフェルスタッペン、ノリス、ハミルトン、ピアストリ、ラッセル、アロンソ、サインツ。ハミルトンは順位で得した上にソフトを選んだのでリスタート直後が狙い目です。ラッセルはせっかくめっちゃ頑張ってたのに結果的に損したのでガッカリ。

 39周目、残り14周でリスタート、後続を揺さぶる必要性皆無のフェルスタッペンはSCが離れていくと早い段階で加速を開始してさーっと逃げていき、注目は2位争いへ。ハミルトンがノリスに仕掛けますが、ハードでもノリスは踏ん張ります。その後ろでピアストリを追いかけているラッセルが「マクラーレンはハードのくせにはええなあ、オラびっくりだ」と口にしているので熱が入ってしまえば速いと思われ、マクラーレンの2人はリスタートの順位を維持して立ち上がりをしのぎました。
忍法・雲隠れの術!


 ここから上位勢に大きな動きはなくそのままチェッカー、フェルスタッペンが自身6連勝で今季8勝目、レッド ブルは昨年の最終戦から11連勝として1988年のマクラーレンが持つ最多記録に並びました。同一シーズンで、という縛りを付けた場合はあと1つで並ぶことになります。6連勝を記録したドライバーはアルベルト アスカリ、ミハエル シューマッハー(2度達成)、セバスチャン ベッテル、ニコ ロズベルグに続く史上5人目・6度目。また11戦連続で表彰台が続いており、こちらは歴代4位タイです。
 ノリスは2021年イタリア以来2度目の2位、マクラーレンのドライバーがイギリスで表彰台に乗るのは2010年のハミルトン以来。新人のピアストリも自己最高位の4位に入ってマクラーレンは一気に30点を獲得、前戦までの合計が29点だったので、1戦だけでそれまでの9戦より多くの得点を一気に稼ぎました。

 イギリス祭りになっていますが、2位のノリスと3位のハミルトン、イギリス人ドライバー2人が表彰台に乗っており、イギリスGPでこれが記録されたのは1999年以来です。この時はデイビッド クルサードが優勝、エディー アーバインが2位でした。アーバンテサンバイン!ではなかったんですね、惜しい!

 今回アロンソは影が薄くて7位、フェラーリはSC運に2台とも見放されたのでルクレールとサインツがまさかの9位、10位。アルボンはコース上で下げた順位をVSC時のピットで取り返した形になって8位で今季3度目の入賞。ウイリアムズが母国イギリスで入賞したのは2015年のフェリペ マッサとボッタスまで遡らないといけないらしくずいぶん時間が経ちました。アルボンはライセンスの国籍自体は母親の母国であるタイで取得しているのでタイ人ドライバーとして扱われますが、出身も育ちもイギリスなのでこれもイギリス祭りの仲間ですね。
 一方同じイギリスでもやや祭りから外れた感のあるアストン マーティン、ここ2戦影が薄くて定位置に近づいた感じですが、コース特性的にあまり長所が生きるタイプのコースではない、というのはあると思う一方で、ライバルがアップデートで伸びてきたのに対して伸びを欠いている面も否めない気はします。
 モナコGPで事故ったペレスの車がクレーンでつり上げられてフロアが見放題になった、という事件から時間が経ち、早いチームではここで得たアイデアを活かした部品が投入できる時期に来ているみたいです。丸々写真で撮ったデザインをパクることは禁止で、仮にパクれたとしても空力は全体のバランスなのでそこだけ真似てもダメなんですが、空力を考える人は料理人みたいなものなので、他の人の料理を食べたらそれを参考に自分のレシピを改良できる人たちです。
 マクラーレンの場合これとは関係なく、全体的に空力を見直して車をガラッと変えるようなイメージでオーストリアから順次アップデートしていき、ノリスの車は言うなれば 『MCL60.11』 みたいな仕様になっています。2台同時に全部盛れないのでピアストリは1段階遅れて 『MCL60.1』 の状態みたいですね。次戦はノリスが60.12になっているはずです。その他軽微な不具合を修正しました。今後ともマクラーレンを(ry
 アストンマーティンは開幕の段階で先行し、その空力思想はレッドブルを大いにパク・・・参考にさせていただいたと言われていますが、山の途中までそれで登ったとしても、そこから先の登り方は自分たちで考えないといけないので後ろからみんな追いつき始めている、とこういうこともあり得るのかなと思います。逆にマクラーレンは道を間違えてもちゃんと戻ってくるあたり人材がしっかりしてるなと思いますね。アルファタウリは・・・また来年?(っ ◠‿:;...,

 さて、次戦は1週間休みを挟んでハンガリー。例年だとこれで夏休みに入るんですが、今年はなんとその翌週にベルギーがあっての夏休みです。ハンガリーって暑いし、なんか休み前でみんな疲れて変なことが起こる印象があるんですが、今年はまだもう1戦あるのでもう一回気合を入れておかないといけませんね。そしてスパで事故が起こりませんように、七夕なのでお願いしておきます・・・

コメント

Cherry さんのコメント…
やっと!旧マシン規定時代以来の!上位で戦えるマクラーレン!この調子でこの先も伸びてほしいですしマックスにアンラッキーがあったら棚ぼたでランドが勝てるような展開があることを祈ってます!
Go!! Landooooooooo!!!!!←実はランド推し
SCfromLA さんの投稿…
>Cherryさん

 ノリス良いですよね~、私は獰猛なタイプより知的なタイプのドライバーを応援しがちなのでノリスお気に入りです。