NASCAR 第17戦 ナッシュビル

NASCAR Cup Series
Ally 400
Nashville Superspeedway 1.333miles×300Laps(90/95/115)=399.9miles
winner:Ross Chastain(Trackhouse Racing/Worldwide Express Chevrolet Camaro ZL1)


 1週間のお休みを挟んでNASCARは後半戦へ、ここからカップ シリーズは休みなく最終戦までの20週連続開催です。まずはそこそこ高速だけどブレーキも使うしコンクリート舗装なのでなかなか難しいナッシュビル。カップシリーズは今年が3度目の開催、昨年は天気は悪くて中断を挟んだ長いレースになってしまいました。

・レース前の話題

 お休みの間にドライバー契約に関して大きな動きがありました。と言っても既に噂されていたものですが、今季限りで引退するケビン ハービックの後任として、来季からスチュワート-ハース レーシングにジョッシュ ベリーが加入することが正式に発表されました。32歳の苦労人、おそらくチェイス エリオットが負傷して代役を務める、ということが無ければこの流れにはならなかったのではないかと思いますが、レース人生で最大の機会を得ました。ちょっとF1のニック デ フリース的流れなので早期に結果を求められる重圧がありそうですけどね^^;
 
 一方、ジョー ギブス レーシングはチームの株式の一部を投資会社のハリス ブリッツァー スポーツ&エンターテインメントと、アークトス パートナーズに売却したと発表しました。HBSEは現在NBAのフィラデルフィア 76ersと、NHLのニュージャージー デビルスのオーナーを務めるなど、スポーツや不動産を手掛ける投資会社です。チーム名に変更はなく、HBSEは広告宣伝部門等を担うことになるようですが、あくまで小額投資にとどまるのか、今後徐々にギブス家が持ち分を減らしていくことになるのかが注目されそうです。

・Craftsman Truck Series Rackley Roofing 200

 年間22戦しかないためレギュラー シーズンが残り4戦となったクラフツマン トラック。過去4戦連続で5位以内と好調を見せるカーソン ホースバーが111周目のリスタートでリーダーとなると、残り3周で迎えたリスタートからゼイン スミス、ニック サンチェスとの争いを制して今季2勝目を挙げました。トリプル トラック チャレンジのボーナス5万ドルも獲得です。振り返れば初勝利は第5戦のテキサスで、この時は優勝を争っていたサンチェスとスミスが最終周に事故ったので漁夫の利で転がり込んだ自身初勝利でした。今回はその2人を抑えての2勝目です。


 また、今回大会スポンサーが自身のスポンサーのいわゆるホスト大会になっていたマット ディベネデトーは7位と健闘。これで4戦連続8位以内とポイントを安定して稼ぎ、10人が進出できるプレイオフに向けて現在8位と圏内になっています。次戦は2週間後にミッド-オハイオでの単独開催です。

・Xfinity Series Tennessee Lottery 250

 エクスフィニティーは滑りやすい、曲がりそうで曲がらないトラックにみんな手を焼いたようで、ステージ間を含めてコーション11回の荒れた展開、有力ドライバーもことごとく何かしらに巻き込まれていきました。
 ステージ1の勝者はタイ ギブスでしたが、ステージ2開始早々オースティン ヒルに撃墜されリタイア。その後もコーションが続く展開となり、レース終盤には大半の車両がピットに入る中を燃費走行で走り切る賭けに出たパーカー クリガーマンが一時リーダーとなりますが、残り12周でA.J.アルメンディンガーにかわされます。
 ところが残り6周、チャド チャステインのスピンでレースはオーバータイムへ。オーバータイム1回目もクラッシュでコーションとなって2回目に突入しましたが、AJは最後までリードを譲りませんでした。ステージ2でギブスが撃墜された際、貰い事故で左後部を破損していましたがコーションの続く展開で立て直してエクスフィニティー通算17勝目、2マイル以下のオーバルに限ると2021年第22戦ミシガン以来の勝利でした。カップでは苦戦が続いていますが、1つ良いきっかけにしたいところです。

・予選

 弟はエクスフィニティーで2回スピンしましたが、カップの予選では兄のロス チャステインが自身初のブッシュ ライト ポールを獲得。トラックハウス レーシングのレース組織としての拠点はノースカロライナ州コンコードにありますが、母体であるトラックハウス エンターテインメントの拠点はここナッシュビルです。
 タイラー レディック、ジャスティン ヘイリー、ジョーイ ロガーノ、ウイリアム バイロン、マーティン トゥルーエックス ジュニアが続きました。脳震盪から復帰したノア グレッグソンは予選30位、もう1台のトラックハウス・ダニエル スアレスはQ2に進んだもののクラッシュしてしまい、決勝は予備車両で最後尾からのスタートとなりました。

・ステージ1

 まずはチャステインとレディックのリーダー争い、いわばまっささんと首跡さんの代理競争です。一方カイル ブッシュは右リアのタイヤに不具合発生で16周目に緊急ピット。カイル・プッシュさん早くも戦線離脱・・・
 ずっと0.3~0.7秒差で続いていたリーダー争いでしたが、徐々に首跡さんが息切れして41周目にとうとう1秒差、ちょうどステージ1の折り返しが近いのでこのあたりでピット サイクルとなり、43周目に2台同時にピットに入りました。
 ピット後も似た展開が続きましたがチャステインは周回遅れのグレッグソンに詰まってしまい、この動きをよく見ていたレディックが61周目にグレッグソンとチャステインを立て続けに攻略、このレース初めてリードを奪いました。チャステインもかなり慎重に行っている印象を受けます。

 ステージの最後は複数の周回遅れがいたので上位4台がかたまってしまいましたが、レディックがステージ1を制しチャステイン、バイロン、トゥルーエックスが続きました。カイルは緊急ピットから74周を耐えてステージ7位で終えることができました。てことはけっこうタイヤもちますね。

・ステージ2

 カイルはせっかく取り戻した順位をピットの速度違反で台無しにしてしまいました。そして今年のお約束でピットでバイロンが先頭に出て始まったステージ2。いきなり3周にわたる3ワイドの争いが発生し、結局2列目から出たトゥルーエックスがリードを奪いました。バイロンがずっと外のチャステインばっかり牽制してMTJをほぼ無視していたのは相手との信頼度の問題だろうかw

 そのままMTJのリード、レディックがバイロンをかわして2位という状況で135周目あたりからピットサイクルへ。ところが
ぐぎゃぁ

 ピットに入ったレディックの右後輪はちゃんと締まっていなかったらしく、異変に気付いてピットへ向かおうとしたもののターン4で脱輪スピン、コーションを招いてしまいました。外れた車輪はスピン後にピット内に向かって転がったので二次災害が無いことが救いでした。規則上、トラック上で脱輪すると2周ペナルティー、ピット内なら最後尾リスタートで済まされますが、これは後者と判定されたのでさらなる罰則は回避、といってももはやこれでは勝負権はなく首跡さんはこのレース30位でした。

 サイクル途中のコーションでデニー ハムリン、ブラッド ケゼロウスキー、バッバ ウォーレスはまだピットに入っていなかったので得しました。147周目、トゥルーエックスとハムリンの1列目でリスタートしましたが、なんと2列目のケゼロウスキーが全然加速しませんでした。結果その後ろで接触が起きてライアン ブレイニーがすっ飛び、ピット出口付近のSAFERバリアではないコンクリート壁に真正面から突っ込んで車が中破。ケゼロウスキーが加速しなかったのは不具合ではなく、後ろから強く押されたはずみでシフターから手が滑ったみたいですね。

 カイルが2015年のデイトナで骨折したのもちょうどこういう位置にあったコンクリート壁でしたが、まさかまだカップ開催地でこんなSAFERバリア未設置の危険地帯が残っているとは思いませんでした。ブレイニーは「人生で最も大きな衝撃を受けた」と衝突による衝撃の強さを語っています。NASCARは再発防止のため、こうした見落としが無いか確認するそうですが、これ見落とすか普通・・・

 153周目、今度はちゃんとリスタート。トゥルーエックスとハムリンが4周半にわたってずーっと並走していましたがハムリンがリードを奪いました。抜かれたMTJは抜き返す気満々のようで、ハムリンに近づいて、ダウンフォースが抜けて離れて、を繰り返します。だからこそ前に出てしまいたいわけですが、でもダウンフォースが抜けるからそれができないわけで、同じパターンを繰り返します。
 日没が迫って来て路面温度も下がっていく中、ステージ終盤にはチャステインが2台の背後にまで迫りましたが追い上げはそこまで。ステージ2をハムリンが制しました。

・ファイナル ステージ

 残り108周の最終ステージ、ハムリンはリスタートで抜け出し、2周半かけてチャステインを振り切ったトゥルーエックスが2位。ここからさっきと同じ展開になります。トゥルーエックスが攻めてるというべきか、ハムリンがパターンにハメてるというべきか、ハムリン課長が「パターン入ったよ!」と車内で喜んでいる様子が頭に浮かびます。
 一旦は少し離れたチャステインが追い上げてくるのもステージ2と同じ流れで、ここは227周目にチャステインが上手い動きを見せてトゥルーエックスをかわし、231周目にハムリンも一発で仕留めました。基本的にハムリンと同じラインを走りたいトゥルーエックスと違い、チャステインは別のラインでも速いので乱気流の影響を受けにくく自由自在でした。タイヤ自体がまだまだ残ってる動きに見えます。

 残り60周あたりからピットサイクル、上位で最初に入ったのは3位のトゥルーエックスで、これを見て翌周にチャステインとハムリンも反応。ピット作業も早かったチャステインは実質のリードを守り、トゥルーエックスはハムリンだけアンダーカットできました。
 あとはクリーン エアーを活かして逃げたいチャステインでしたが、20位あたりのちょっと速い周回遅れが複数出てきてなかなかそうもいきません。追い上げてきたトゥルーエックスが背後に迫り油断できない展開、つい「この中にチャステインと因縁のあるヤツ誰かおったかな」と記憶を辿ってしまいます。
 それでもチャステインは非常に安定して淡々とした走りを見せ、周回遅れが一段落するとトゥルーエックスの方が段々ルースになってきて根負け。そのまままっささんが逃げ切ってチェッカーを受け今季初勝利。トラックハウスは本拠地で勝利を挙げました。チャステインが昨年勝ったのはCoTAとタラデガなので、普通のオーバルでは初勝利ですね。今日のチャステインは誰にも文句を言わせない完璧できれいなレースでした。
 チェッカー後、チームメイトのスアレスもチャステインと一緒にバーンアウトしてはしゃごうと思ったようですが、後方確認が不十分でチェイス ブリスコーと衝突。これでサスペンションが折れてしまい、はしゃぐどころではなくなりました。笑いごとで済んだので良いですが普通に危険行為なので必ず安全確認は行いましょう。ズラスポーツから良い子へのお願いです。


 スポンサーのワールドワイド エクスプレスはトラックシリーズでホースバーも勝っていますのでこの週末2勝です。スイカ投げの勢いでうっかりギターも投げて粉々にしないか心配でしたが大丈夫でしたw

 2位トゥルーエックス、3位ハムリン、4位にチェイス、5位はカイル ラーソンでした。今回目を引いたのは8位のエリック ジョーンズ。ゲートウェイで共通部品に認められていない改造を加えたとしてレース後車検に引っかかり60点の減点を食らっていますが、これが今季3度目のトップ10。過去2回はアトランタとタラデガでいずれも特殊トラックですから、普通のオーバルではようやく初のトップ10です。
 カイルが9位、アルメンディンガーも健闘して10位、リスタートでお騒がせになってしまったケゼロウスキーが11位、スアレスはレース後に事故りましたが12位でチェッカーを受けていますw

 何かと問題ばかりが目立ったチャステイン、今日は会心のレースでした。ダーリントンで暴れまくった後にオーナーのジャスティン マークスと会談の機会を持ち、この勝利を受けてマークスはレース後にその中身を明かしました。この時のことをチャステインは、内容は明かさなかったものの「厳しい対話だった」と発言しており、普通に考えたら「落ち着け」と言われたのだろうと思いますが、マークスはこう話しました。

「私は彼に落ち着けとは言っていません。私は彼に落ち着けとは言っていないんです・・・つまり、この私たちの会話はすべて、メディアで一人歩きした物語なんだと思います。私はロスと一緒に、彼が経験しているものと同じことを経験しています。私はこのシリーズの経験豊富なチーム オーナーではありません。だから、上司と従業員とかではなく、友人として、競争相手として、そしてただこの道が何なのかを一緒に考えようとしている人間として会話をしているんです。」
「私たちが交わした会話は『いいかい、ここには素晴らしいチャンスがある。トラックハウスレーシングの素晴らしい人たちが、レースで勝てる速さの車を用意してくれてるんだ。そのチャンスを生かそう。ダーリントンでのスロウバック レースに勝てば、僕らにとっては素晴らしいことだったろうが厳しい週末になってしまった。だから、そのようなチャンスを無駄にしたくない。僕たちはそれを少しずつ乗り越えてきたんだ』」。

 栗山 英樹が頭に浮かびましたw 栗山マジックとでも言うべき名言や行動は色々ありますが、私の記憶に残るのは大谷 翔平の入団を巡る話。ドラフト指名を拒否し、直接アメリカに行く意思を曲げない大谷の自宅をチームのスタッフとともに訪れ、『直接アメリカに行くよりも、日本でプロ野球を経由する方が何より大谷のためである』という複数の資料を、本人ではなく両親に託した、というやつです。当時を振り返った番組で栗山監督はこう言っていました。

「僕は翔平に対して『ファイターズに来てくれ』とは一度も言わなかった。ただ、『僕が大谷翔平だったら、ファイターズを選びます』とだけ言って帰ってきた」と。

 今年のワールド ベースボール クラシックで改めて栗山流の人心掌握術が取り上げられ、なんか野球人を一気に飛び越えて理想の上司みたいになっている最近の栗山さんですが、NASCAR界に新風を持ち込むような存在であったマークスもまたそういう人の気持ちを上手く乗せる才能みたいなものがあるのかもしれない、と勝手に想像を飛躍させました。
 たぶん他にももちろん色々話しこんで、だからこそのチャステインの言う「厳しい対話」だったんだと思いますし、過去3戦は存在感が全然ないぐらいひっそりと走っていた(それでもなお他車と絡む場面は起きてしまった)ので、まず落ち着いてきちんと走ることを第1目標に据えなおしたのも事実だろうと感じました。
 今回は、目先の争いで前に出られても50周先を見据え、一方で周回遅れに取り囲まれた場面で2台の間を見事にすり抜ける、いわゆる『スレッド ザ ニードル』と呼ばれる動きも見せるなど、車もレース展開も自身の精神も全て制御下に置いていたように思います。大きな波乱はなくとも見事なレースを見せていただいて面白かったです。

 さて、次戦はいよいよ登場、シカゴ市街地レースです。

コメント

まっさ さんのコメント…
♪───O(≧∇≦)O────♪
キターーーーーーーーーーーー!スイカスマッシューーーーーー!!!
主役登場じゃぁぁぁぁ。どけどけどけーーーーっ。(至って冷静。取り乱しておりません。)
大人なスイカ男はいかがでしたでしょうか!
コメントする気力も起きないレースが続いててしょげてたのはナイショです。
ロード、スーパースピードウェイ、コンクリートと異なるコースで勝ちです。
これはフェニックスで勝つフラグ?ワクワク(((o(*゚▽゚*)o)))
11が迫っている時は恐怖でしかなかったですが19が犬と猿の間に酉として居てくれたのがポイント。
MTJにはスイカ1年分をお中元に送るのを忘れないでくださいっ。

あぁ、このまま大人なスイカ男になってくれーー。
去年取り逃がしたチャンピオンを今度こそ!
そこのあなた。今から推しても古参ですっ。
スイカ男要チェック!
首跡 さんの投稿…
正直なところ、予選結果を見た時点で満足感を得られたので、決勝は「45も1もトップ10に入れると良いなぁ~」と思いながら、気楽に見ていました(^_^;)
結果的に45は30位でしたが、1が勝てたのは本当に嬉しかったです。
日日不穏日記 さんの投稿…
チャステインは、クリーンで良いレースでした。他の動画で観ていたら、NBCのスタジオに割ったスイカを持ち込んでインタヴューを受けているのには笑ってしまいましたが。レディックも不運でしたが、ブレイニーが、マシンから出て、座り込んだように観えたのは、相当な衝撃だったんでしょう。あとでインタヴュー受けていて、安心しましたが。
さて、レースハイライトは、FOXとNBCもアップしてるんですが、担当が変わったのか、NBCは、殆どのレースでハイライトを出すようになってます。
元々、FOXは、シーズン通してハイライトを出してるんですが、映像の権利関係って、何処にあるんでしょうかね。ソノマまで、NBCがレースハイライトをずっと動画にアップしてたので、つい、そんな事を考えてしまいました。
SCfromLA さんの投稿…
>まっささん

 割れたスイカの中からまっささん登場!(笑)記者会見でヘンドリック御大から間接的にかけられた苦情&激励と、オーナーからの指導と、その他諸々が1つ形になってよかったですね。この後がシカゴ、アトランタとまた変なトラックなので、流れをぶったぎらないで進めるかに注目してます。
SCfromLA さんの投稿…
>首跡さん

 レディックは脱輪して無ければ最後まで争ってても不思議ではなかったので非常にもったいなかったですね、普通に走れば高い確率で入れるはずのトップ10になぜかなかなか入れない^^;
SCfromLA さんの投稿…
>日日不穏日記さん

 私もFOXでNBCの映像を引き続きハイライトとして使用してアップしているので面白いなと思ったところです。たぶんダイジェストの映像使用権はNASCAR本体からの公式動画も含めてクロスライセンスになってるんじゃないかと思います。NBCも自分のチャンネルのフォロワーの人に16戦までのレースを見てもらってる方が17戦以降の自社枠への誘因効果が期待できるし、FOXもその逆でしょうからね。
私のハンドルネームの元ネタですが、ESPNのスポーツ番組・スポーツセンターは自社以外の放送した中継映像をライセンス契約して使用することで全米のあらゆる競技の中継映像からハイライトを用意して番組を作ってますし、元々そのあたりの放映権、映像使用許可の考え方が根底にはあると思いますね。