NASCAR 第16戦 ソノマ

NASCAR Cup Series
Toyota/Save Mart 350
Sonoma Raceway 1.99miles×110Laps(25/30/55)=218.9miles
winner:Martin Truex Jr.(Joe Gibbs Racing/Bass Pro Shops Toyota Camry TRD)

 NASCAR カップ シリーズ・第16戦はロード コースのソノマ。カップシリーズでは1989年から使用されているお馴染みのトラックです。時系列でいうとこのレースが始まる数時間前にはフランスでのル マン24時間レースが終了しており、特別参加のカマロ ZL1は285周を走って総合39位で無事完走。普段NASCARを知らない世界の方々にカップ車両ベースのカマロをアピールしたと思われます。普段のストック カーにライトはありません、念のため。


・レース前の話題

 ルマンを走るカマロが日本でもSNS上で話題になったようですが、今週もう1つ話題になったのが小林 可夢偉のNASCAR参戦でした。第24戦インディアナポリスに23XIレーシングからスポット参戦します。過去にカップ戦に出場した日本人ドライバーは2002年、2003年の福山 英朗しかおらず、可夢偉が出場すれば史上2人目となります。福山さんよりは明らかに恵まれた体制での参加なのと、デイトナ24時間には4度出場して2勝とアメリカのレースの空気感には既に触れているので楽しみにしたいところです。
 オファー自体は他メーカーの方が先にあった、ということなのでひょっとしたらトラックハウスからも声がかかってたんじゃないかと思いますが、出るならトヨタじゃないといけないよね、ということで今回の決定になったようです。NASCARもライセンスが必要で、具体的な要件があるわけではなく運営判断になるので簡単には乗れないんですが、デイトナに出ていたことは大いに役立ったと思われます。

 一方カップシリーズの小林くんことチェイス エリオットは出場停止処分から復帰。得意のロードコースから気持ちを入れ替えてプレイオフ進出を目指す戦いが再開ですが、ソノマではまだ過去6戦で優勝がありません。インディアナポリスで小林対決にならないかなあw
 また、先週のゲートウェイでブレーキが壊れて大クラッシュとなったノア グレッグソン、脳震盪のような症状が出たためにこのレースには出場できず、代走でグラント エンフィンガーが出場。普段はクラフツマン トラック シリーズに出ているエンフィンガー、ちょうど先週のゲートウェイで優勝したばかりですが、2011年のカップシリーズ最終戦で予選落ちしたのが唯一の参戦経験なため、これが38歳でのカップ戦デビューとなりました。

・ARCA Menards West Series General Tire 200

 練習がてら複数のカップとエクスフィニティー選手が参加したARCAのレース。ポール ポジションのライアン プリースが64周のうち50周をリード、2位のサミー スミスに8秒ほどの大差を付けてポール トゥー ウインとなりました。

 ライリー ハーブストが3位、コール カスターはトラブルで18位、古賀 琢麻もトラブルがあったようで24位、あと結果を見ていて初めて気づいたんですけど、阪神タイガースの選手と同姓同名のカイル ケラーという18歳のドライバーがいて、このレースは13位でした。

・Xfinity Series DoorDash 250

 長年にわたって基本的にカップ戦とARCAの2本立て構成だったソノマ、昨年は24年ぶりにトラックシリーズが開催されましたが、今年はエクスフィニティー シリーズのレースが初めて開催されました。
 こっちもカップ戦のドライバーが大挙して押し寄せ、ポール ポジションはカイル ラーソン。決勝もスタートから快走し、ステージ間コーションが無いので27周目のリスタートから61周目にコーションが発生するまでの間、2位のA.J.アルメンディンガーに13秒もの大差をつけてリードしていました。
 しかし残り15周のリスタートでステイ アウトの車に完全に行く手を阻まれてエリック アルミローラに先行を許すと、抜き返そうと攻めすぎて残り8周のターン11で内側のタルに当ててしまう痛恨のミス。これで単独となったアルミローラがそのまま逃げ切り、エクスフィニティーでは2017年のタラデガ以来の勝利。また2013年から参戦しているRSSレーシングにとっての初優勝でもありました。

 アルミローラ、アルメンディンガー、ラーソン、タイ ギブスとカップのドライバーが上位を独占し、エクスフィニティー選手の最上位はパーカー クリガーマンの5位。ロス チャステインは18位、ダニエル スアレスは27位でした。

・予選

 カップシリーズの予選はデニー ハムリンがブッシュ ライト ポールを獲得。首跡さんから2勝目を熱望されているタイラー レディックが2位、マイケル マクダウル、クリストファー ベル、アルメンディンガー、ギブスと続きます。ソノマで通算3勝のマーティン トゥルーエックス ジュニアが8位、昨年のここで初優勝を挙げたスアレスが9位、エリオットが10位、プリースは22位、代走のエンフィンガーは35位スタート。

・ステージ1

 まずはハムリン、ベル、レディック、トゥルーエックス、ギブスとトヨタ勢トップ5独占で1周目を通過。スアレスはいきなりシフト操作を完全に間違える大失敗、加速中に下のギアに落として9700rpmも回してしまい、エンジンが壊れなくてよかったですが29位まで後退。
 10周目あたりになるとベルがハムリンとの差を詰めたのでタイヤ マネージメント巧者のベルが優位に進めるのかと思いきや、ここからハムリンが再び差を広げてむしろ13周目にはMTJがベルをかわし2位へ。
 中団のドライバーは20周目の前後に早くもピットに入り、単純に考えると4ストップになる計算。一方ハムリンは自分のペースで安定して走り、25周目を先頭で終えてステージ1を制しました。3秒ほど離されてトゥルーエックスが2位。ベル、アルメンディンガー、マクダウルが続き、レディックは6位、ギブスは8位とモンスター エナジーを背負う2台はいずれもややロング ランでベテラン勢に食われました。


・ステージ2

 ポイントを貰ったら26周目の終わりに上位勢はそのままピットへ。ハムリンは1位で入って1位で戻りトゥルーエックスが2位、3位には早めに入ったチェイス小林、4位も同じく早めに入ったラーソン。ここからアジャストが効いたのかトゥルーエックスがハムリンを追い上げると33周目に見ごたえのある争いの末トゥルーエックスが先行、今日初めてハムリン以外のドライバーがリーダーとなります。

 45周目を終えてもこの2人の差は1秒程度、タイヤの古いヘンドリック2台を抜いてベルが3位に戻りはしたものの、ハムリンとは11秒ほど離れている上にチェイスとラーソンも古いタイヤでしっかり走っており、さらにここにマクダウルとアルメンディンガーも追いついてきて3位争いが5台になります。そして、誰かがターン11のタルにぶつけたらしく場所が明らかに移動して道が広くなっています、事後情報で犯人はケビン ハービックだと分かりました。

 ところが50周目、ゼイン スミスのピット作業中にホイールが明後日の方向へ転がってピット内の走行路へ。壁に囲まれたピットだしそれほど車も混んでいないのでささっと回収するのかと思いましたが、やっぱり車が来たら危ないという判断でコーションになりました。
 ステージ2終了まであと5周ですが、ポイントを獲りに行ったらレースで詰むので2回目のタイヤ交換をしていない車両は一斉にピットへ。ハムリンは右前輪の交換でちょっと手間取ってしまいトゥルーエックスが先行しましたが、既に早めに2回目のピットに入ったドライバー9人がステイ アウト。なおコーション中にドラム缶は正しい場所に置きなおされたようですw
 54周目、カイル ブッシュとジョーイ ロガーノの1列目でリスタート。リスタートを決めたカイルがそのまま55周目を先頭で終えてステージ2の勝者となります。この後ろではチャステインが2列目リスタートからはっちゃけようとしましたが、ロガーノに思いっきりドアを閉められて3位で引っかかってしまいました。チャステインはスミスと同じタイミングでピットにいた実質新品タイヤなので大チャンスでしたが、世の中そんなに甘くありませんでした。

・ファイナル ステージ

 せっかく置きなおしたタルをコリー ラジョーイが豪快に吹っ飛ばした最終ステージ、ロガーノが後続のペースを抑えているせいもあってカイルが引き続きリード。それにしてもGen6車両でここにぶつけたらもうちょっと車が壊れた気がするんですけど、平気な顔して走れるGen7ってマジで頑丈ですねw
 
ゴツッ

 62周目、チャステインがようやくロガーノを攻略した、と思ったら直後にターン2で思いっきり滑ってしまい絶好のチャンスを手放すと、この周の終わりには逆にトゥルーエックスに抜かれました、ちょっと左リアがオーバーヒート気味な動きなのでロガーノを抜こうとしてタイヤを使いすぎた感じですね。
 トゥルーエックスは続く63周目のターン11でロガーノもかわして残る相手はカイルのみ。カイルはかなりタイヤに気を付けて走っている様子が見えますが、グリップ低下は否めずにあちこちでズルズル。69周目のターン7でトゥルーエックスがリードを奪い返しました。

 戦略的には、残り57周でリスタートしたのでこれを半分に割って80周目・残り30周あたりで最後のピットというのが定石。しかし普通に行ったら勝負権が無い人たちはこれではダメなので、残り38周あたりからピット サイクルが始まり中団勢がレースを動かしに行きます。
 下手に違う動きをしてリスクを抱えないため、残り35周でトゥルーエックスとカイルもピットへ。この後ひとまずは逆張りの作戦に出たチェイスが見た目上のリーダーとなり、こちらは残り30周でピットへ。仲の悪いケビン ハービックがその後ろで同じ行動に出ています。

 サイクルが一巡して残り25周、トゥルーエックスは2位のカイルに4秒差の大量リード、3位はカイルからさらに2秒離れてマクダウル。かなり調子は良さそうなんですが、前のスティントでロガーノを抜くのに時間を使い、ピットでアンダーカットされたのでこのスティントでまた抜く羽目になって足止めを食らっています。
 暫し何も起きない時間が続きましたが残り19周、10位を走行していたハムリンがターン12の内側の壁に当ててしまい、外側に弾かれてスタート/フィニッシュ付近で右の壁に強打。けっこう想定外のクラッシュでコーションとなりました。ハムリンはこれでサスペンションを壊しこのレースで唯一のリタイアでした。

 多くのドライバーはタイヤを換えてから既に20周前後経過しておりリードラップ車両がピットへ、トゥルーエックス、カイルの順でピットを出ますが、チェイス、レディック、ライアン ブレイニーの3台がステイアウト。トゥルーエックスは2列目となります。マクダウルはピットでかなり時間を食って勝負権を失いました。

 残り15周でリスタート、チェイスからすると後ろの2台に壁になってほしかったはずですが、MTJは多少無理して大急ぎで2台を抜くと、翌周のターン7でチェイスをあっさりとかわしあっという間にリード奪還。カイルもこれに続きます。
 後方ではレディックがタイヤをパンクさせてターン11で完全にバーストしたようですが、このままだと3輪で1周しないといけないので、なんとターン11の内側を通ってコースを逆走しピット入り口へ。さすがにこれは違反と見做されてペナルティーを受けました。コーションを出して邪魔にならないように配慮したのにペナルティーを受けてレディックは不満気。
 レース後、NASCAR側もレディックがコーションを出さないでくれたことには感謝を示す一方で、コースをショートカットしてはいけないのは決まり事であり、本来あるべき場所より遥かに有利な状況でコースに戻ったのは事実だとしました。リタイアが全然いないレースなのでレディックは33位でレースを終えました。

 この後もコース上でスピンが散発しますが幸いコーションは出ずに続行、何割かはレディックが逆走してくれたおかげですw カイルは序盤こそトゥルーエックスに食い下がっていましたが、付いていくためにタイヤを使わされたか最後は3秒差まで突き放されてしまいました。マーティン トゥルーエックス ジュニア、110周のうちおよそ半分の51周をリードして今季2勝目、通算33勝目、ソノマでは通算4度目の優勝となりました。

 2位からカイル、ロガーノ、クリス ブッシャー、エリオットのトップ5。アルメンディンガー、マクダウル、ラーソン、ベル、チャステインのトップ10で、エンフィンガーは26位で初のカップ戦を終えました。カイルは12位スタート、ロガーノも17位スタートでしたが、アンダーカットと粘り腰とコーションのタイミングでうまく立て直してまとめた印象でした。速さで言えばマクダウルの方が上だったと思いますがこのあたりはチーム力の差を見せられた感じもあります。
 トゥルーエックスはさすがにソノマでの走らせ方を心得ているとでも言いますか、タイヤを潰さない走りを心がけて他の追随を全く許しませんでした。車が曲がらないとつい早めにアクセルを踏んでパワーオーバーを使って脱出したくなりますが、それをやると特にターン4と11でタイヤを潰し、タイヤが落ちれば落ちるほど中速コーナーで全部力が横に逃げて益々オーバーヒートの原因になる悪循環。ラーソンもデビューしたころはこれですぐタイヤをダメにしていましたが、今回もチャステインあたりはそういう傾向を感じました。
 アルメンディンガーは期待されているロードコースで開幕戦以来のトップ10を記録。ここまでのシーズン、不運な巻き添え等もあって苦戦していたところからここ3戦は14位、14位、6位と少しまとまったレースができてきたのは安心材料ですが、優勝争いには力不足でした。
 チームが彼に期待しているのはレギュラー シーズンで1勝してプレイオフに進み、オーナー ポイント16位以内に入って来年以降多くの分配金を貰う事、と言って差し支えないと思います。この先プレイオフまでにシカゴ、インディアナポリス、ワトキンスグレンとロードが3戦残っているので、争いに加わりたいところです。

 さて、この次の週末はなんとシーズンで唯一のお休みです。エクスフィニティーもトラックもお休みの完全休養な父の日を経て、次戦は3シリーズともナッシュビルに集結します。放送局はここから最終戦までNBC/USAネットワークになります。

コメント

日日不穏日記 さんの投稿…
カイルは、優勝には届きませんでしたが、プレーオフポイントを取ったので、まぁ、良いかって感じです。アルメンディンガーは、残念でしたが、マクダゥエルが不運でした。カイルや、ケセロウスキー、AJが去ったら、推しにするつもりでいるので。まぁ、彼らもすぐには去らないでしょうけど。
トゥレックスはソノマでの戦いを知ってるって走りでしたね。スチュワートのラストイヤーにファイナルラップでバトルをしたハムリンが1度も優勝していないのは意外でした。
首跡 さんの投稿…
レディックは勝てませんでしたが、珍プレーを見せてくれたので良しとします(え)
それにしても、ロードコースにおけるふなっしーの安定感が凄い!
ケゼロウスキーを含め、RFKは昨年よりも確実に進歩しているので今年こそプレイオフに進出できると良いなとか思っています。
SCfromLA さんの投稿…
>日日不穏日記さん

 ハムリンはロードでも速いのに、運も含めてやっぱり何か1つ最後のピースが足りない感じがありますね。トニー組長に最後ぶつけられるかも、と意識しすぎて自分からミスったっぽいあのソノマも、振り返るとハムリンらしい勝ち損じです^^;
SCfromLA さんの投稿…
>首跡さん

 期待に応える素晴らしい珍プレーでしたw ふなっしーは途中えらいズルズルだったので大丈夫かと思ったらその後盛り返してきたので底力あるなと思いました。高速オーバルでダウンフォースを出す方法論がチームとしてもう少し手に入ると一気に優勝争い常連になりそうなんですけど簡単じゃないんでしょうね~。