NASCAR 第15戦 ゲートウェイ

NASCAR Cup Series
Enjoy Illinois 300 presented by TicketSmarter
World Wide Technology Raceway 1.25miles×240Laps(45/95/100)=300miles
※NASCARオーバータイムにより243周に延長
winner:Kyle Busch(Richard Childress Racing/3CHI Chevrolet Camaro ZL1)

 NASCAR Cup Series、第15戦はワールド ワイド テクノロジー レースウェイ、通称WWTR・またはゲートウェイ。昨年カップ戦が初開催されて今年が2回目、昨年はトラック ポジション重視の戦略が機能したレースで、ちょっとタイヤが長持ちしすぎたのでロング ランに動きが無くて単調だったと昨年の私は記しておりますw

・レース前の話題

 先週のシャーロットでチェイス エリオットが思わずプッツンしてデニー ハムリンに報復攻撃を行ってしまい出場停止処分に。ヘンドリックの代走と言えばジョッシュ ベリーですが、今回の代走はなんと普段スパイアー モータースポーツから出場しているヒゲ男・コリー ラジョーイ。今週末はエクスフィニティーが遠く離れたポートランドでの開催なのでここにベリーがいません。

 じゃあラジョーイにも代役がいるわけで、こちらは普段クラフツマン トラック シリーズに出場しているカーソン ホースバーがデビューすることになりました。ホースバーは去年のゲートウェイでのトラックシリーズで最終周にでっかい事故に遭って骨折したいやーな思い出のある場所なんですが、一転して素晴らしい場所になる、ことを願います。

・Craftsman Truck Series Toyota 200

 スタートから好調だったのはタイ マジェスキー。コーションとの絡みでステージ勝利こそないものの上位を走り、最終ステージも一旦埋まったところから巻き返してきました。ところが残り6周、リードを取り返そうとゼイン スミスの内側に入ったら突っ込みすぎてスミスもろともクラッシュ(っ ◠‿:;...,
 これでごっつぁんでリーダーとなったグラント エンフィンガーがオーバータイムを制して今季2度目の優勝、トリプル トラック チャレンジの賞金5万ドルも手にしました。



・Xfinity Series Pacific Office Automation 147

 ポートランド インターナショナル レースウェイでのエクスフィニティーはジョン ハンター ネメチェックがある意味大暴れ。ステージ1ではポールシッターのシェルドン クリードを抜きあぐね、ステージ最終周にようやく抜いたのに最終コーナーでミスって抜き返されステージ勝利を逃すと、ステージ2は最終コーナーでクリードにぶつけて勝利をもぎ取ろうとしたものの加速が鈍ってコール カスターに抜かれてしまいまたステージ2位。
 当然ながら怒りを買って最終ステージ開始早々にクリードにやり返されると、その後はチームメイトのサミー スミスから強烈なミサイルを食らい、これにキレてチームメイトなのにすぐさまぶつけ返す大暴れで最終的に10位でした。
 レースの方はオーバータイムになり、3位のパーカー クリガーマンがリスタートで一発狙ったら止まり切れずにリーダーのジャスティン オールガイアーと2位のクリードを両方ともコース外へ押し出し、何もしていないカスターが4位から1位になりそのまま今季初勝利を挙げました。最後にオールガイアーもぶつけようと思えばできたんですが、クリーンなレースで2位でした。

 なお、このポートランドのイベントではARCA Menards Series West・Portland 112も併催され、日本人ドライバーの古賀 琢麻が8位でした。

・予選

 カイル ブッシュが今季初・通算33回目のブッシュ ライト ポールを獲得、ライアン ブレイニー、デニー ハムリン、ケビン ハービック、マーティン トゥルーエックス ジュニア、ジョーイ ロガーノと続きます。ブレイニーは金曜日の車検で2度引っかかったのでカー チーフが除外され、ピット選択権も失いましたが予選結果には影響ありませんでした。ホースバーは26位、ラジョーイは30位スタート。

・ステージ1

 それほど大きくない観客席は今年も満員御礼、レースが始まって早々2周目のターン1でタイラー レディックがスピンしていきなり1回目のコーションが発生しました。これとは別にラジョーイはボタンを誤爆したらしく車の電源が落ちてしまいピットで再起動、いきなりビリになります。するとここでたまたま近隣地区で落雷が観測され、隊列はそのままピットへ退却、その後雨も降ったので1時間45分ほどレッド フラッグで中断となりました。

 この中断が最もありがたかったのはFOXの解説者・マイケル ウォルトリップでした。マイケルはスタート前にトラック上であれこれと仕事していた最中に携帯電話(iPhone)を落っことしてしまい、放送を通じて情報提供を呼び掛けていました。結果的には走っている際にポケットからこぼれてストレート上の壁際に落っことしていたんですが、長い中断のおかげでAMRセーフティー クルーが目撃情報を基に電話を発見、無事に持ち主の手元に戻りました。
 
 iPhone紛失事件で間を持たせ(?)大変長らくお待たせされて9周目にリスタート、2時間近く待機しててもターン1から激しく争えるプロってすごいですね。なお路面温度はスタート時点で56℃もあったのが41℃まで下がったそうです。こうなると摩耗的には助かりますが車のバランスは全く別物になりますね。
 リスタートからリードするカイルをブレイニー、ハムリンが追いかける展開で静かなレース。一方カイル ラーソンはえらく苦戦して31位まで後退しラジョーイと戯れる状態に。ホースバーにすら抜かれています^^;

 ステージ1は短いので何も起きずそのままカイルが勝利、ブレイニー、ハムリン、トゥルーエックス、ロガーノ、ハービックが続きました。

・ステージ2

 シーズンで一番狭いピットを潜り抜けないといけないゲートウェイ、残念ながらトゥルーエックスは給油缶が抜けなくてペナルティーを食らい最後尾へ。54周目にステージ2が始まりますが、2輪交換で6位からリスタートしたマイケル マクダウルがロス チャステインとの接触でスピン。チャステインは内側を維持できずに少し外へ行ってしまい、マクダウルも曲がれなさそうな相手を少し絞りすぎた感じがありました。レーシング インシデントなんですが、50周目から勢いよく3ワイドを作ってしまうのが、、、というやつでしょうか。
 
 59周目にリスタート、カイルが当然リスタートを決めるかと思ったら、ブレイニーが相手と接触しないじゅうぶんな距離を取りつつも2周かけて紳士的にカイルをかわしました。カイルには続いてハムリンが勝負を仕掛け、並走するとすごくペースが落ちるのでブレイニーの単独走行になります。

 そのまま90周目を迎えてコマーシャルに入ったと思ったら、YouTubeの公式動画はなぜかいきなり時間が進んだようで、ホースバーがブレーキの破損により単独クラッシュしている模様。91周目の出来事で、砕け散ったブレーキ ローターが運悪く後続のチェイス ブリスコーのラジエーターに命中してブリスコーも修復のためガレージ送りとなりました。ホースバー、やっぱり嫌な思い出の場所になりましたね。。。

 なぜ妙なワープが発生したのか謎ですが、リード ラップ車両がピットに入ってブレイニーを筆頭に5台が2輪交換を実行。4輪交換のカイルは6位へ。リスタートからブレイニーが大きな差を築いて独走します。どうもさっきの妙な編集以降テロップが『FOX仕様から順位表示を消したもの』になっているようなので何かしら起きたようですが、厄介なことに数年ぶりにテロップが無いレースになりました。
 ただ、不幸中の幸いはレース展開に動きが少なかったことで、カイルは2位となって前が開けるとブレイニーを追い上げはしたものの、追い抜くほどの決定的な差は無くそのままステージ2をブレイニーが制しました。ステージ最終周になって急に突貫工事感のあるFOX仕様テロップが出てきましたw

・ファイナル ステージ

 今回は上位勢でレディックだけが2輪交換、そして先週に続いてまたもバイロンがピットで順位を上げ、最終ステージはレディックとバイロンの1列目、2列目にブレイニーとハムリンというオーダーで149周目にリスタートしました。
 左側のタイヤが踏ん張らないレディックをバイロンが簡単に内側からかわしてリードを奪い、しばらくはレディックが壁になるので後ろを気にしなくても走れる時間です。テロップは相変わらず突貫仕様、左上の広告と、車載映像では各車両ごとにこれまた右下に広告テロップがあるので、これにNASCARロゴをかぶせて強引に隠して対応しています。
 その後レースはバイロン、ハムリン、ブレイニーのトップ3で動きが無く進んでいましたが175周目にレディックが単独でクラッシュ。ホースバーと同様にブレーキローターが砕け散ったようです。バイロンはこのころタイヤに異変を感じる無線が交わされていたためありがたいコーションでしたが、ブレーキの地雷は誰にとってもたまったもんじゃありません。

 リードラップ車両が最後かもしれないピットへ、ここで普通に走ってたら埒が明かないラーソンが2輪交換を仕掛け、これにハムリン、カイルが続いてバイロンは4番目。そしてここで狭いピットの問題が浮き彫りになり、エリック ジョーンズのピット クルー・トーマス ハッチャーがオースティン ディロンの車と接触してピット上で倒れ、救急車で搬送されました。
 ハッチャーはレガシー モーター クラブの自前のクルーではなくジョー ギブス レーシング所属の出向クルーで、この後病院で検査を受けて帰宅し、追加で脳震盪の検査を受けてから今後の活動を検討することになる見込みです。現地コマーシャル中に仰向けに倒れて動けない、あるいは意識が一時的に無いような様子に見えたので非常に怖い出来事でした。

 184周目・残り57周でリスタート、カイルが2列目から抜群の立ち回りを見せて2台を見事にかわし久々にリードを奪還。逆にバイロンは完全に穴にハマって数周で14位まで後退しました。抜けないトラックでこんなに順位を落とすと致命的^^;
 しかしブレーキ爆弾はまだ終わらず、198周目にノア グレッグソンのローターが壊れてクラッシュし7回目のコーション。さっきまでの2件はストレート上で壊れて壁沿いに車が走りましたが、今度はターン1へ向けて旋回を初めていたのであまり減速しないままスピンして壁に突っ込み車が大破。オイルがかなり漏れてローターの破片も散乱しているので本日2度目のレッドフラッグになってしまいます。グレッグソンはこれで脳震盪の影響があったようで、次戦を欠場することになりました。こっちも心配。

 10分ほど中断してコーションに戻り、上位16台はステイ アウトして残り37周でリスタート。ところが翌周のターン1でオースティン シンドリックに当てられてクリストファー ベルがスピンし8回目のコーション。ちゃんと内側を空けてたのに相手が滑ってぶつかってくるとベル君は打つ手なし。
 残り31周でリスタートしますが、これも3周後にグレイ ゴールディングの車がトラブルで止まってしまったのでコーションへ逆戻り。さらに残り23周でのリスタートも翌周に15位あたりの争いでディロンとリッキー ステンハウス ジュニアがクラッシュ。コーションがコーションを呼ぶ、を地で行く展開です。
 この事故のきっかけはシンドリックとディロンの接触で、 ディロンの方は「わざと当てられた」と先週のハムリンと同様にデータを持ち出してペナルティーを課すよう主張しましたが、NASCAR側は明確な根拠が無いとして処分を課しませんでした。とりあえず巻き込まれたステンハウスは気の毒で、リッキー推しのあゆむ★★☆さんは肩を落としたことでしょう、今日はブラッド ケゼロウスキーもエンジンの不具合でレースに参加できてないし^^;

 ターン1のSAFERバリアに車が何度もぶつかりすぎたため、ここでNASCARはバリアの修復のために本日3度目のレッドフラッグを発動。5分ほどかかりました。想像以上に長いレースになりましたね^^;
 残り15周でリスタート、ブッシュとラーソンのカイル対決は何回リスタートしてもさすがにブッシュが制するのでリーダー争いに動きはありません。一方で、7回目のコーションで4輪を交換してコーション連発で順位を上げていたトゥルーエックスはさすがに抜けなくなってきて8位あたりでもがいており、新しいタイヤは切り札にはならない状況です。そのままレースは残り5周になりましたが、ここでバッバ ウォーレスがまたブレーキ破損で単独クラッシュ。まさかのオーバータイム突入です。

 こうなるといよいよ無茶な飛び込み、いわゆるダイブ ボムが怖いオーバータイム。しかしラーソンはリスタートで出遅れてしまい、ターン2を出たのはブッシュ、ハムリンの順でした。ここからハムリンとラーソンがなおも2位を争ったのでこれでほぼ決着。カイル ブッシュ、カップシリーズ通算63勝目で当然ながらゲートウェイでは初勝利。カイルにとって25か所目のトラックでの優勝だそうです。

 2位からハムリン、ロガーノ、ラーソン、トゥルーエックス、ブレイニーのトップ6。最後の3回のピットを全て2輪交換にする大胆な策を採ってきたマイケル マクダウルが粘って9位になりました。オール-スターで珍しくキレた姿は面白かったですが、彼の真骨頂はやっぱりこういう地味なレースですね。代走ラジョーイは21位でした。


 雨でレースが長引いて路面状況も想定とはだいぶ変わってしまったと思いますが、カイルは予選での速さがそのまま決勝でも持続されて、121周のリードでほぼ全ステージ制覇の59点獲得ですから文句なしという感じでした。
 やはりタイヤの摩耗がそこまで大きくないので一旦1列になってしまうと何も起きず、ステージ距離もそれぞれあまり長くないので不確定要素も少ないので他のレースに比べると地味な感は否めません。せめてリッチモンドみたいにタイヤがズルズルになると加減速でのタイヤの使い方がもっと影響するんでしょうけど、舗装との兼ね合いでそうはならないんでしょうかね。
 その裏返しの状況として2輪交換がそこそこ機能するところが戦略上のポイントですが、現状だとここは案外ステージ制をロード コース型の『コーション無し方式』にして、タイヤか燃料が尽きるまでチームにペース配分を考えさせて走らせた方が不確定要素は増えるかもしれません。
 NASCARとFOX/NBCが結んでいる10年間の放映権契約は来年で切れるため、2025年以降も高い放映権でレースを売るためにNASCARは来年も日程に大胆な手を加える意向を示しています。長年開催されているお馴染みのトラックはそこまで極端に変わらないでしょうが、昨年急にぽっと出て来たここあたりは別の開催地と入れ替えられてしまわないかちょっと気になります。

 そして今回はブレーキがやたら壊れました。過去にもポコノーで何度かこういう展開がありましたけど1.25マイルで、しかもブレーキの容量が大きくなったGen7車両で起きたのはけっこう意外でした。解説によれば、マーティンズビルみたいに常時ブレーキ多用で熱々になっていればそれはそれなりになんとかなるものが、ここは強烈にブレーキを踏んで加熱したあとそこそこ長い直線で冷えるので、逆にこの温冷サイクルがローターに負荷をかけてしまったみたいです。
 だとしたらポコノーでも同じことが起きるんじゃないかとちょっと心配ですが、ここは安全にかかわる問題なので壊れた車とそうでない車で冷却の仕方等に何か違いや傾向はないのか、単に運転手さんの問題なのか、といった情報を可能な範囲で共有して、参加者全体でブレーキ地雷レースを起こさないように協力してもらいたいなと思いました。

 さて、次戦はロードコースのソノマ、FOXでは今季最後の中継であるとともに、このレースの翌週はシーズン中で唯一のカップシリーズがお休みの週末が待っています。

コメント

アールグレイ さんの投稿…
初めまして。
カイルブッシュは2017年当時のカップ戦が行われていた全トラックで勝利を挙げた経験がありますが、
2018年以降に追加されたトラックでは、今回の勝利で残すのはCOTAとナッシュビルとシャーロットのローバルとシカゴのストリートコースとインディのロードコースのあと5つですが、カイルなら近いうちに残りも勝って2回目の全トラック制覇を達成すると思うと楽しみで仕方なくなってきました。

カップ戦での勝利経験が無かったデイトナのロードコース(非選手権レースでは2021年のブッシュクラッシュで勝利)とロードアメリカ(エクスフィニティーでは2021年に勝利)がスケジュールから消えたのでチャンスが広がった気がします。
日日不穏日記 さんの投稿…
フォンタナでカイルが優勝した時、まだまだ勝つんじゃないか・・・って書いた人がいると思うんですが、タラデガはラッキーだったにせよ、新天地で伸び伸び出来ているのが、好循環になってる気がします。サマンサさんも来てて、熱烈に応援。気分屋のカイル後押し。マルチウインは、2019年にチャンピオンを獲得して以来だから、乗ってる気がします。
小林可夢偉のインディ/ロードへの参戦が決まりました。23Ⅺですから、純国産での参戦ということで、楽しみです。20年前の福山さんの時とは違い、大分体制に恵まれている気がします。
匿名 さんのコメント…
途中テロップが消えたのは現地でネット障害が起きていたせいだそうです
そのせいでチーム側もネットに繋げなくて色々苦労したそうです
首跡 さんの投稿…
先に3勝目を挙げたのはRCRの方のカイルでしたね。
あとはロードコースとショートオーバルで勝てば、さらに勢いを増して超絶モーメンタム(日テレG+風)間違いなし... といったところでしょうか。
今後の活躍も楽しみですが、次戦はレディックの今季2勝目を願っています(>人<;)
SCfromLA さんの投稿…
>アールグレイさん

 はじめまして、詳細情報ありがとうございます。カイルの車には昨年のレディックのロードでの実績があるのが多少なりとも好材料ですね。インディアナポリスはオーバルに戻ってロードが消える可能性もある一方で、来年もまたどっか入れ替わりで増えるかもしれないのでモグラたたきになりそうですw
SCfromLA さんの投稿…
>日日不穏日記さん

 なんか今週は可夢偉とルマンで週に2回もNASCARがSNSで話題になったっぽいですね。いつもながら最後の10周ぐらいずっとサマンサのリアクション待ちでカメラが撮ってますけど、よく考えたらそのためにカメラマン1人を割くってけっこう面白いなとか思いました、そして期待通りのリアクションをしてくれるw
SCfromLA さんの投稿…
>匿名さん

 チーム側が情報を取れなくて苦労している、という話は出てましたけど放送側も影響してたんですね。気になって転がってる違法動画を見たらFOXも一時現地回線が途切れてるし、公式フル動画には『音声と映像がズレてる』というクレームがいっぱい書かれてる(修正済み?)し、あまり普段起きない問題が色々と起きてたようで^^;
SCfromLA さんの投稿…
>首跡さん

 レディックは開幕2連続クラッシュを考えるとポイント10位は思ったより好成績だなあと思う反面、平均順位だとステンハウスより下だったりして、期待値が高いせいもありますけどまだ本領じゃないというかカッチリとレースできてない印象を受けますね~。ロードコースをきっかけに目覚めるシナリオに期待!