F1 第8戦 カナダ

Formula 1 Pirelli Grand Prix du Canada 2023
Circuit Gilles-Villeneuve 4.361km×70Laps=305.27km
winner:Max Verstappen(Oracle Red Bull Racing/Red Bull Racing RB19-Honda RBPT)

 F1はふたたび北アメリカ大陸へ戻ってきて第8戦はカナダ。今週末はNASCARが唯一お休みの週なのでF1はNASCARに視聴者を奪われる心配なく開催することができます(え)
 開催地はお馴染みのサーキット ジル ビルヌーブですが今回少し変更が加えられており、ターン1~2のショート カットを防ぐために従来よりも壁が延長されました。従来はターン1で止まれなかったり外へ追い出されたらターン2をほぼ無視して真っ直ぐコースに戻ることが可能でしたが、壁の延長によってかなり速度を落とさないと合流できないので、飛び出たせいで利益があるのないの、ということが起こりにくくなると思われます。最初に文字だけで『壁が延長される』と聞いたときは全部壁で囲われてしまうのかと思ったんですが、見た目としてはわりとちょびっとに見えますw
 ちなみに、NASCARは2024年に向けても開催地の変更を企画しておりここでのレースを復活させることも選択肢の1つに入っているとされています。2007年から2012年まで6年連続でエクスフィニティー シリーズが開催された後は途絶えているイベントですが、NASCARはやはりカナダ、メキシコでのイベントはさらなる活性化に必要と考えているそうで、やるとしてどのシリーズを持っていくかは不明ですが、再びここをストック カーが走る可能性はありそうです。

・フリー走行がバタバタに

 金曜日のフリー走行は思わぬ波乱。FP1で運営管理システムに不具合が発生してしまいほとんど走行ができないままセッションが終了。さすがに酷いのでFP2は通常より延長された90分となりましたが、こっちは最後の最後にまともに走れない豪雨が襲い掛かりました(っ ◠‿:;...,
 あんまり参考にならなさそうですがルイス ハミルトン、ジョージ ラッセルが1位、2位で並びました。

・予選

 土曜日も雨に見舞われ、予選ではアタック妨害が各所で発生と今日もバタバタ。Q2はタイヤ選択に悩む条件になり、シャルル ルクレール、セルヒオ ペレスが脱落して11位、12位になってしまいます。ルクレールはスリックへの交換を提案したものの、チームからは「とりあえずインターミディエイトで1回計測しよう」と言われて従い、そうしたら見事にスリックと雨の具合がかみ合いませんでした。ル マン24時間では見事に優勝し『まさかあのフェラーリが…』と思った人がいたりいなかったりしましたが、F1はいつも通りでした。
 といっても、ルクレールにしろペレスにしろインターミディエイトで他のドライバーが記録したタイムを考えると、きちっと1回のアタックをまとめていたら脱落せずに済んだ可能性があるので、全部チームのせいというわけではないと思いますけどね。

 Q3になると大雨で、マックス フェルスタッペンが先頭で道を切り開いて最速を記録する中、開始5分でオスカー ピアストリがクラッシュして赤旗。回収作業はそれほど時間がかからなかったものの、待っている間にさらに路面水量が増えてもうタイムを更新できる状態ではなく、フェルスタッペンがそのままピレリ ポール ポジションを獲得しました。
土砂降りに^^;

 2位は赤旗発生の直前に周回を完了できたニコ ヒュルケンベルグが幸運にも滑り込み、フェルナンド アロンソ、ハミルトン、ラッセルの順。ところがヒュルケンベルグにはこの後赤旗中の安全義務違反で3グリッド降格が課せられてしまいました。
 ギリギリで滑り込んだがゆえでもありますが、赤旗が出た際に彼はターン1あたりを攻めており、本人がイヤホンから聞こえる警告音の意味を誤認したせいもあって赤旗発生直後の一時期に規定の平均速度を超過。その後の区間では規定通り走っていて事故現場も安全に通過したものの、規則の文言に違反していたことは揺るぎないので、本来の10グリッド降格から諸事情を勘案して減刑し3グリッド、という裁定になったそうです。というわけでヒュルケンベルグは5位から、アロンソおじさんまた1列目スタートに。
 フェラーリはQ3でもちょっとやらかし、雨が強くなるのですぐ走った方が良いのにコースに送り出すのが遅れてしまい、結局カルロス サインツは8位タイム。そしてQ1でのアタック妨害により3グリッド降格して決勝は11位スタート、ルクレールがこれで繰り上がって10位スタートとウマゴンは仲良く中団に埋まりました。

・決勝

 この時期としてはちょっと寒いけど晴れた決勝、大半の人がミディアムを選んでスタート。3位からハミルトンの蹴り出しが抜群でターン1までの短い距離でアロンソに微塵も抵抗させずに2位へ。ラッセルも便乗して狙いましたがここはアロンソに抑えられます。
 フェルスタッペンは定石通りハミルトンをすぐにDRS圏外へ、一方アロンソはハミルトンをDRSを使って狙っていきますが、7周目にはローガン サージェントが重大な不具合発生とのチームの指示でコース外に車を止めVSCとなります。ピットが一瞬ざわつきますが、止めた場所が良かったのであっという間にVSC終了、ピット戦略どうこうという話にはなりませんでした。

 12周目、フェルスタッペンから「鳥に当たったと思う」と無線。ここはカモメが多く飛んでてレース中にもよく映像に映っているので画面の前で合掌していると、ラッセルがカモメではなくターン9の壁にぶつけてしまい、大量の破片によりSC導入。これを見て即座にミディアム勢がピットに入りました。


 メルセデスの作業が少し遅かったこともあり、ハミルトンとアロンソはピット内でNASCAR的な争い発生、そしてぶつけたラッセルは絶対リタイアだろうと思ったらピットでウイングとタイヤを換えてコースに戻っていてこっちもNASCAR的でした。あとは金づちと金属バットとキックで車を整形したら完璧だったな。

 リスタート順位はフェルスタッペン、ハミルトン、アロンソ。これにミディアムでスタートしてこのSCはステイ アウトを選んだルクレール、サインツ、ハードでスタートしたペレスが続きました。この人たちはタイヤを換えて集団の中を走るよりは、タイヤが古くても空いた場所を自分のペースで走りたい考えですね。17周目にリスタート。
 フェルスタッペンは夜中に部屋の中を飛んでる蚊ぐらいすぐに逃げてしまって捕まらないですが、ハミルトンとアロンソの争いは継続。ピットでの危険な発進についても審議中ではありますが、22周目にDRSを使ってアロンソがハミルトンをかわしました。やり返されないようにハミルトンをDRS圏外に追い出します。結局この審議はお咎めなしとの判断になりました。
 
 そのまましばし時間が流れ35周目、13位争いでちょっと意地を張りすぎたケビン マグヌッセンとニック デ フリースがターン3で絡んで2台ともコース外へ。国際映像担当者は思い込みがハゲしいのか、ついその前の周まではこの位置にいて、たった今ピットに入ったのでここにはいない角田 裕毅と誤認してテロップの表示を複数回間違える痛恨のミスを犯します。変なとばっちりをうけた角田は19位スタートからの変則的な作戦が展開とかみ合わずにこのレース14位、デフリースは完走者でビリの18位でした。
デフリース「ワシはツノダやで~」
 
 40周目、ハミルトンが2回目のタイヤ交換、在庫があるのはミディアム。翌周に2位のアロンソもピットに入り、こちらは在庫がハード。当然フェルスタッペンもこれに合わせてピットに入り、こちらはどっちも在庫がありましたがミディアムを選びました。
 ここからはハードのアロンソとミディアムのハミルトンによる争い、アロンソは珍しく47周目のターン8で止まり切れずにシケインを飛び出して1秒以上失い、ハミルトンとの差が5秒台から3秒台へとなってしまいます。この失敗の前なのか後なのかは分かりませんが、無線ではこんなやり取りが。

アロンソ「リフト&コーストが不要になる時を教えてくれ。これをやめたい。」
クリス クローニン「そないするつもりやけど、今はまだ続けといてくれ。」
アロンソ「俺は勝ちてえんだよ。」

 見ているこっちはフェルスタッペンだけを別領域に置いてハミルトンとの2位争いだと思っていましたが、走っている側は前を見ていました。この無線、絶対総集編とかで使われるやつですね。この後ハミルトンは残り10周となるころには2秒以内にまで迫りますが、1.9秒差だと聞かされたアロンソは「任せろ。」と言ってまた突き放しました。おじさんスゲエ。

 一方のフェルスタッペン、今日は何十秒も差が付くわけではなく決して楽な走りではなかったようですが、そうは言ってもアロンソに7秒以上の差を付けて安全圏。しかしレース終盤、タイムから推察すると64周目かなと思いますが、こちらもターン8で少しだけラインが乱れ、ターン9内側の縁石でジャンプ。

フェルスタッペン「危うく縁石に乗って自爆するところだった、ハハッ」

 笑い事じゃないんですけどw

 結果的には笑い話で済んで、フェルスタッペンが本日も快勝。4連勝で今季6勝目、通算では41勝目でアイルトン セナに並びました。そしてチームはこれが節目のF1通算100勝目です。9.5秒差で2位にアロンソ、そこから4.6秒置いて行かれて3位にハミルトンでした。アロンソの勝負勘からすると、今日のフェルスタッペンは決して盤石ではないので重圧をかければあるいは、という読みが働いたからこその「勝ちたい」だったのかなと想像。

 ルクレールとサインツはSCでステイアウトして1ピット作戦にし4位、5位で獲れるだけの結果は獲ることができた印象。ぺレスは6位。そして視聴者受けが最もよかったのが7位のアレクサンダー アルボンでした。アルボンは天候をうまく味方に付けて予選でQ3に進み、ダウンフォースの重要度が相対的に低いこのコースでウイリアムズFW45の武器を最大限に生かして後続を抑えきりました。
 最も強烈だったのは手負いのラッセルを従え続けた場面で、結局抑えられすぎたラッセルは事前に想定したブレーキ冷却設定では足りなくて最終的に壊れてしまいリタイアへと追い込まれました。ワークスの次期エースを無言で追い込んだアルボン、こういう持久戦をやらせるとものすごく上手い印象があります。ラッセルはせっかく奇跡的にぶつけても車が無事だったのに、思わぬ別問題で壊れてしまいました^^;
ひたすら抑えたらドライバー オブ ザ デイも獲得

 ちょっとしたミスで一発リタイアのモントリオールは展開に関わらず最後まで面白いですが、今年は予選・決勝とも最終コーナー付近であやうく大事故の追突が起きそうになる場面があったのがちょっと怖かったです。ピットに入る車のブレーキ位置が最終コーナーを曲がる車よりも奥になるので気を付けないと追突する、というのは後ろのドライバーが気を付ければ済む話ですが、予選で最終コーナー手前の変なところで超低速走行されると後続はどうしようもないので、あそこはホントエンジニア側も気を付けてほしいです。
すごい危ない場所にいたサインツ

 ちなみに、ニールセンの調査ではカナダGPのアメリカABCでの平均視聴率は0.77%、平均視聴者数139万4000人だったそうです。マイアミGPほどの人数ではないですが昨年比微増で、ABC/ESPNのF1中継としては歴代3番目の多さとのこと。NASCARあってもなくてもあんま関係ないみたいw
 似た時間帯にESPNでやっていた大学野球の全米選手権・カレッジ ワールド シリーズのテキサス 対 テキサス農工が117万6000人ってすごいですね( ゚Д゚)全くの余談ですが、アメリカの大学名には『ユニバーシティー』と『カレッジ』があり、例えばボストンなんかは両方あるので、通常は前者を『ボストン』、後者を『ボストン カレッジ』と呼び分けます。
 ここで、日本で紹介する際にボストンカレッジを『ボストン大学』と和訳すると、ボストン ユニバーシティーとの区別がつかない、というかこっちこそ『ボストン大学』と訳すべき存在なので、和訳の際には『ボストンカレッジ大学』と書かないと正確に伝わらないことになります、気を付けましょう、何の話やねん。次戦はオーストリアです。間違ってオーストラリアと書かないようにしましょう。

コメント