NASCAR 第10戦 タラデガ

NASCAR Cup Series
GEICO 500
Talladega Superspeedway 2.66miles×188Laps(60/60/68)=500.08miles
※NASCAR オーバータイムにより196周に延長
winner:Kyle Busch(Richard Childress Racing/McLaren Custom Grills Chevrolet Camaro ZL1)


 NASCAR Cup Series、10戦目は今季2度目のスーパー スピードウェイのタラデガ。デイトナよりちょっとだけ大きい、シリーズで最大のトラックを使った疑似直線レースです。今回は公式動画の公開が金曜日までずれ込んだので見るのが随分と遅くなりました、4月29日が祝日で良かったw

・レース前の話題

 もうだいぶ前の話になってしまいましたが、第4戦フェニックスでルーバーに認められていない改造を行ったとして減点と罰金の処分を受けていたジャスティン ヘイリー。上訴しても結果が覆らずにコウリッグ レーシングは最終上訴を行いましたが4月18日に結論が出され、結果として罰金とクルー チーフへの出場停止が維持される一方、ポイント剥奪は取り消しという、同レースでヘンドリック モータースポーツに対して下された上訴審の結論と同じ内容になりました。
 NASCAR側の声明によれば、今回はNASCARから国内モータースポーツ上訴委員会に対して、公平性の観点から内容をヘンドリックの処分と揃えるように要請があったとのこと。以前にお伝えしたように、今後の同様の上訴に対しては『罰則の一部撤回』というような裁定は下せないように規則が変更されましたが、今後を厳しく取り締まる一方で今回に関しては無用な争いは避けることになったようです。これにて一件落着(?)

 そして、今回はスーパースピードウェイということでお馴染みNo.62のビアード モータースポーツがオースティン ヒルを擁して参戦。他にもドライバーが普段と異なるチームがあり、元々の予定通りフロント ロウ モータースポーツはNo.38がゼイン スミス、普段38に乗っているトッド ギリランドは今回No.36となってチームは3台体制。
 リック ウェアー レーシングのNo.15はスチュワート-ハース レーシング推薦枠でライリー ハーブストが出場し、本来ならJ.J.イェリーはお休みのはずですが、No.51のコディー ウェアーが出場停止中なのでこちらに乗っての参戦です。


・ARCA Menards Series General Tire 200

 ここから2週間はクラフツマン トラック シリーズがお休み、今週は若手の登竜門ARCA メナーズ シリーズの第3戦が併催され、76周のレースを18歳のジェシー ラブが制しました。ARCA西部地区シリーズで史上最年少優勝記録を持ち、ヘイリー ディーガンがトヨタからフォードの育成ドライバーに転身した際に後任としてその枠に収まった期待の若手のようです。今年はトライコン ガレージからトラックシリーズにも3戦出場予定。

・Xfinity Series Ag-Pro 300

 エクスフィニティーはステージ1からステージ勝利を争って強烈なブロックが見舞われなんだか危うい雰囲気。ステージ2・48周目にはちょっとした接触のはずみからブレイン パーキンスの車が6回転する大事故が発生し、内側でもデクスター ステイシーの車がかなり悪い角度で壁に当たって衝撃で外れたホイールがトラックを横断。パーキンスは病院へ搬送されましたが幸い大きな怪我には至らなかったようです。
 その後も小刻みにコーションが発生しこのレース合計で10回、8周以上グリーン フラッグが続いたのはステージ1とステージ2の55~64周目のたった2回だけという乱戦で、残り3周で発生したクラッシュではダニエル ヘムリックの車が横転するまたもや大きな事故になりオーバータイムへ。
 最終的にまともにレースに加われたのは17台だけで、そのうち数台もまた最後の最後にクラッシュしたので、真っ直ぐ走ってチェッカーを受けた人は10人もいなかった気がしますが、序盤から上位を争っていたジェブ バートンが優勝しました。エクスフィニティーでは2年前のこのレース以来の通算2勝目、2021年から参戦を開始したジョーダン アンダーソン レーシングにとっては念願の初優勝でした。

・予選

 カップ シリーズの予選はデニー ハムリンがスーパースピードウェイでは自身初となるブッシュ ライト ポール賞を獲得。エリック アルミローラ、タイ ギブス、チェイス ブリスコーと続きますがまあ予選の結果なんてここでは大した話じゃないですね。

・ステージ1

 始まって早々にアルミローラとブリスコーがハムリンの前に出て隊列を引っ張りますが、2周目に後方でマイケル マクダウルの車に問題が発生したようで単独スピン、大事故は免れたもののコーションとなりました。先にサスペンションに異常があってタイヤがパンクしたようですが原因が分からず、マクダウルは結局このレースずーーっと遅くて35位でした。
 後方の車両は燃料を注ぎ足しに行って7周目にリスタート、暫くはブリスコーが内側、バッバ ウォーレスが外側の隊列を引っ張る時間が続きます。

 22周目にウォーレスが内側に下りるとレース展開は第2章という感じになり、その後35周目にトヨタ勢がピットへ。ところがここで外側の隊列からのピットとなったタイラー レディックがブレーキで突っ込みすぎて堪え切れずにスピン。壁にぶつけてしまい完全に隊列から離れてしまいます。外から入ろうとすると追突されるのを避けるためにちょっと無理な動きをするので、やはり事前に内側にいないと難しいですね、危うく他のカムリも巻き込むところでした^^;
 この後39周目にシボレーの一部、41周目にフォード勢がピットに入りますが、今度はブリスコーが全く止まれずにスピン。それだけならよかったんですが、右前輪をパンクした結果車が前に進まなくなってピボット動作になってしまい、ピットの走行レーンで延々ともがいていたのでコーションを招いてしまいました。今日は側面にオーナーのトニー スチュワートの絵が書いてありますw

 このコーションでまだピットに入っていない人はピットへ、上位に来たのはシボレー勢の中で最初にピットを出たヘンドリック勢でした。チェイス エリオットとアレックス ボウマンの1列目でステージ残り13周からのリスタートとなります。対照的にトヨタ勢はピット組で最も後方だったのでステイ アウトする旨味があまりないため潔くこのコーションでもピットに入りました。
 ステージ終盤には3列目を作ろうとする動きや、逆に危ないから自分から後方に離れる動きも見られたものの、さすがにステージ1から無茶する人はいなくてそのままチェイスがステージ1を制しました。怪我により6戦を欠場しているチェイス、今季初のステージ勝利です。

・ステージ2

 ステージ1終盤は手抜きして流していたハムリンが給油のみでピットを出たので、再びハムリンを先頭にステージ2が始まりました。お隣はヘイリー、後ろにいるのはあんまり仲が良くないケビン ハービック、ヘイリーの後ろは因縁の相手ロス チャステイン、居心地があまりよくなさそうな状況ですw
 ここは数人のドライバーが時折先頭を入れ替えながらレースが進みステージ2も折り返しを過ぎますが、95周目あたりから後方で3列目を作る動きが起こり、この流れを利用したウォーレスが一気に最前列へと巻き返しあっさりとリードを奪います。ウォーレスが内側に下りたら3列目は勢いを失ったので、彼のための3列目みたいな感じでした。
ほんの一瞬だけカムリが3列独占

 103周目からピットサイクルとなって概ね3つの集団に分かれて消化。さっき色々やらかしたので今回はさすがにみんな慎重でしたが、ロガーノは速度違反を犯してしまい一人だけ後方へ。サイクルを終えた隊列は3ワイドの状態でしたが、ステージ残り10周あたりから一気に消滅して2列目戻ります。
 2列に戻った隊列の先頭はまたもやピットで順位を上げたチェイスと、ピット前に急速に順位を上げたウォーレス。並走のままステージは残り5周となりますが、ここで周回遅れにはなってもフリー パスだけは絶対に欲しいロガーノが道路のど真ん中を走って全くどかなかったので、外側のウォーレスは慌てて回避、これで外列は割を食って勢いが少し鈍りました。
 見ていて一瞬多重事故を覚悟する場面でしたが失速だけの影響で済み、ロガーノも狙い通りこの集団に紛れ込んでフリーパスの位置を確保。ウォーレスはその後再度追い上げてステージ最終周となったものの、最後はチェイスをすっと抜いたアルミローラがステージ2を制しました。なんと2020年以来のステージ勝利だそうです( ゚Д゚)
 スポッターからチェイスには上に動いてブロックするよう指示が出ていましたが、無用な事故を回避するためにチェイスはあえて何もしませんでした。まだ故障明けですし、まだステージ2ですからね。

・ファイナル ステージ

 コーション中の真正面からの映像を見るとアルミローラの車はかなりリバース スキューが付いてるので何かしらSHRは策を講じてそうだなあと思いつつ最終ステージ。ハムリンなんかももちろんスキューはあるんですけど、なんかカニ走り感が他より強い気がするんですよね。案外マクダウルのサスペンションが壊れたのって、無理やり規則内でスキューを作るせいで何か変な負荷がかかってるせいだったりして^^;
右を向いてますが真っ直ぐ走っています

 リスタートすると内側の先頭だったウォーレスがいきなり外へ動いてアルミローラの前を抑えたので、空いた内側でハリソン バートンがリーダーとなります。お母さんのキム バートンが心配そうに見守っています。従兄弟のジェブが昨日勝ってますから、バートン家としては今日も勝ったら最高でしょう、後ろには新人のノア グレッグソン。
 しかし不慣れな人が前に来ると事故りがち、というのはスーパースピードウェイあるあるでして、142周目にグレッグソンがターンで変に押したのでバートンがハーフ スピン。バートン自身は90度真横を向いて芝生に突っ込みながらもどこにもぶつけず見事に立て直しましたが、びっくりブレーキが波及して隊列後方で接触事故が発生しました。オースティン ディロンとスミスがこのクラッシュでリタイア。
 
 このコーションで全車ピットに入り、燃料的には前の車を風よけにして走ればなんとか走り切れそうな残り41周でリスタート。内側はブレイニーとアルミローラ、一方外側はウォーレス、ハムリン、トゥルーエックスと身内のカムリで固めています。
 ところがカムリ同士で押しあいすぎたか、ウォーレスがバックストレッチで姿勢を乱して外側は少し混乱。ただ、ここは内側からギブスがすぐに外へ出てウォーレスをドラフトに入れてあげる救出作戦に向かったため、被害を最小限に抑えました。結果的にウォーレスは風よけだけ作ったので得したかもしれません。

 先頭を走りつつもスロットルを調節して燃料も節約するブレイニーに対し、ギブス君は全力で走っているようなのでこのままだとどっかでガス欠して捨て石になることは確実ですが、新人なのでそこは百も承知といったところでしょうか。後ろからウォーレスが押していますが、よっぽど前の車に対してこすりつけるように押しているのか、ウォーレスの車はグリルに書かれた CAMRY のデカールがどんどん剥がれていき、もうCとRしか残っていませんw

 残り20周あたりでリッキー ステンハウス ジュニア、10周あたりでチェイスが3列目を作る動きを見せたものの、影響を受けるのは外側の人だけで内側を走るブレイニーは淡々とリードを維持。しかし残り5周、今度はコリー ラジョーイが後方で作った3列目の流れに乗ろうとロガーノが外へ出たところで


 多重事故になりました。ラジョーイに押してもらうつもりだったロガーノですが、自分と同時に前にいたボウマンも外に動いたので一瞬スロットルを戻した様子。なおかつ内側のギリランドにはサイド ドラフトを浴びせられて一気に失速してしまい、あまりの速度差にラジョーイもスロットルを戻し、急に車が詰まって連鎖的に接触が起きたと思われます。ハリソン君はこの事故に巻き込まれてリタイア、バートン家連勝とはなりませんでした。レースはお約束のNASCAR オーバータイムへ。

 オーバータイム、ブレイニーとグレッグソンの1列目でリスタート。外側はちょっとお互いに押しあいすぎた様子で、最終的に2番手のチャステインがグレッグソンの内側に潜り込んで明らかに無理な3ワイドになってしまいました。
絶対あかん角度^^;

 グレッグソンが弾き出されてスピン、3番手にいたラーソンもスピンしてすっ飛び、エイプロンからバンクへと急に戻ったところにライアン プリースが直撃して最も酷い衝突になりました。ラーソンの車はロール ケージの一部が完全に壊れているように見えるのでかなり危険な事故でした。プリースは一旦前の車と距離を取ってから、再加速して現場をさっさと通過しようとした瞬間に左から突然ラーソンの車が飛んできた形だったので最高速ではありませんがほぼ減速はしていない状況でした。

 壊れ方が普通ではないので、NASCARはラーソンの車を詳細に検証する予定で、プリースの車両とともに回収されました。本当に怪我がなくてよかったです、これ左側だったらホント危なかったですよ・・・

 上位勢は燃料がヤバいよヤバいよの状態で2回目のオーバータイム、ブレイニーとカイル ブッシュの1列目でリスタート。リスタートの瞬間にはギブス君がガス欠しもうみんな余裕がない状態なのは明らか。
 リスタートからカイルがリードしウォーレスが付いていきますが、最終周に入るところでウォーレスが前に出てブレイニーが追随しました。最終周に入るとウォーレスがブレイニーを鬼ブロックしますがターン1の段階から動きに無理があり、ターン2でウォーレスがスピンして多重事故に発展。コーションが出てこれでレース結果が確定し、この2台の争いを横目に内側を通過していったカイルが優勝。早くも今季2勝目を挙げました。

 燃料がカツカツだったカイル、リスタート前には「フォードの連中は前を走ってたのにステイアウトとか、一体どうやってんだ」と漏らし、最終的にランドール バーネットから「ピット、ピット、間に合えば!」と言われたものの「もう遅いわ」と手遅れでステイアウトという状況でした。結果的に間に合わなかったのが優勝に繋がったので何が幸いするか分かりませんねw
 2位からブレイニー、クリス ブッシャー、ブリスコーと、なんと1位から4位まで全て苗字がBから始まる人でした。5位は名前がBから始まるブラッド ケゼロウスキーでRFKレーシングは3位と5位だったことになります、レース中あんまり目立たなかったけど^^;


 何も起きないで終わると退屈ですが、エクスフィニティーほど荒れるとさすがに事故が多すぎなので、ちょうどええ具合のスーパースピードウェイ、という感じでした。一度もシングル ファイルにならなかった、というのも大きかったですね。本来ならタラデガはターン4を出た後の最後の争いが面白いのでその前に終わってしまったのはちょっと残念でしたが、今回はたぶんそこにたどり着く前にガス欠祭りになってどっちみちグダグダだったでしょうw
 見ていて面白かったのは空力と隊列の関係で、2列で走っている時は対等だったのに、誰かが3列目を作ろうとして後方で動きが出ると、なぜか真ん中の隊列が遅くなって内側のリードが拡大していたことでした。先頭を走る人にはまだ何の影響もない中団~後方の出来事でも、
中団の人が右からサイド ドラフトをかけられてちょっかいを出される→前の車から距離が空く→バンプもリーディング ドラフトも機能しない→その前の車が遅くなる→バンプも(以下略)
の連鎖で結局隊列全体の勢いに影響してしまうわけですね。

 今回のレース展開では、最短距離で走れるという点でも、3列目の影響を受けないという点でも内側には利点があり、おかげでブレイニーは先頭を走りながらも燃料を節約して理想的な状態で最後までたどり着いたわけですが、ウォーレスのえげつないブロックを前に撃沈してあと一歩でした。去年から未勝利が続くブレイニーですが、最後はほとんど運なので今日は良いレースをしたと前向きに捉えて次の機会を待ってほしいところです。

 さて、次戦はモンスター マイルのドーバー、現地情報では天候不良が予想されるために開始時刻が本来より1時間繰り上がって午後1時になるそうです。フル動画のアップも早めにお願いしますね☆

コメント

ネコパス さんのコメント…
ARCAのレース車両は少し前のカップカーを使用してますが、どこからピックアップしてるのでしょうか?メーカーから部品供給があるのでしょうか?NASCARマニアQよろしくお願いします!
日日不穏日記 さんの投稿…
 3日経っても、動画がアップされないので、木曜日には違法動画を観ていました。金曜日にはアップされましたが、冷や汗でした。カイルの優勝は幸運だったけど、シボレー勢に行けば、スーパースピードウェイでも勝てると思ったので、15年ぶりの優勝でした。来年のデイトナ500に期待。
ドーバーは、ジョンソンがスポットで出てくると思ったら、48号車のエントリーはベリー。スプリントカーのレースの怪我だそうで、欠場。今年のヘンドリックは呪われてるんでしょうかね。
ChaseFun9 さんのコメント…

Chaseが帰って来たらAlexがいなくなったです(-_-;)
SCfromLA さんの投稿…
>ネコパスさん

 カップシリーズの車両もそうですけど、実際のレースカーの各種装備品はそれぞれに製造業者さんがいるのでそこから購入する形ですね。例えばARCAのボディーはFIVESTAR Racecar Bodiesという会社のサイトを見ると、一式をネット通販感覚でカートに入れて注文できることが良く分かります。
ARCAのエンジンはARCAイルモア396という形式の共通エンジンか、許可されたいくつかのエンジンを性能調整して使用することになるので、これもNASCAR経由でイルモアから買うかエンジンビルダーからの入手になると思われます。ちゃんと産業として成り立っているので自動車メーカーが直接何かをする必要は基本的になくて、本当にブランドの名義だけ提供してる感じですね。(だからARCAでカムリにTRD/トヨタのエンジンは乗っていないと思われます)
SCfromLA さんの投稿…
>日日不穏日記さん、ChaseFun9さん

 今度はレース活動の中とはいえ、さすがにヘンドリックのお偉いさんも対応をどうするか頭が痛い問題ですね。そしてなぜかJayskiさんのサイトにボウマンが怪我した記事が無いから見落とすところでしたよ^^;
ネコパス さんのコメント…
すごく丁寧な解説ありがとうございます!とても勉強になりました!(*´▽`*)
SCfromLA さんの投稿…
グランツーリスモのデカールを作る際にたまたまFIVESTARのサイトを色々見た経験が役に立ちましたw(ちなみに次戦の記事にもARCAのちょっと変な車が出て来る予定です)