F1 第2戦 サウジアラビア

FORMULA 1 STC SAUDI ARABIAN GRAND PRIX 2023
Jeddah Corniche Circuit 6.174km×50Laps=308.45km
winner:Sergio Pérez(Oracle Red Bull Racing/Red Bull Racing RB19-Honda RBPT)

 F1第2戦はサウジアラビア、全開率が70%を超える高速のヤバい市街地です。2021年から加わったこのレース、ジェッダ市街地に照明をふんだんに使ったいかにもお金のある国らしい夜間レースが売りですが、こことは別に常設サーキットを建設予定であくまでこのレースは開業までの数年だけの予定でした。しかし、サーキット建設計画がまだきちんと進んでいないようで、2027年まではここを使うことになったようです。結局完成しないのでは(っ ◠‿:;...,

・ルクレール、もうグリッド降格

 開幕戦ではレース前に『データ上に懸念が見られた』ので、年間2基しか使えないES(蓄電装置)とCE(制御装置)を交換したシャルル ルクレール。結局決勝では電気系の問題でリタイアし、やはりCEに不具合が起きたようです。フェラーリは原因を特定したとし、このレースにICE(内燃機関)、MGU-H、CEの3点で新しいものを投入。これでCEは今季3基目なので、まだ開幕2戦目なんですが10グリッド降格が決まりました。カルロス サインツにも2基目のICEを投入しており、開幕戦仕様が信頼性の面で問題を抱えている様子を伺えます。

・予選

 なんとQ2でマックス フェルスタッペンにドライブシャフトの故障が発生。アタックを失敗して改めてやり直しのアタックに入った途中だったので、実質タイム無し状態で予選15位に沈んでしまいます。
 しかしこんな時に頼れるセルヒオ ペレス。昨年のこのレースに続いて2年連続のピレリ ポール ポジションでマックス不在でもライバルを前に出しません。2位はルクレール、3位にフェルナンド アロンソ。ルクレールはグリッド降格があるので、決勝ではアロンソがペレスのお隣からのスタートです。ジョージ ラッセル、サインツ、ランス ストロール、エステバン オコン、と来てようやく予選8位にルイス ハミルトンの名前。「車との一体感が無い」とハミルトン、去年の開幕に逆戻り・・・


・決勝

 ソフトが使いにくいのでほぼ全車ミディアムを選択、ルクレールだけはちょっと違うことをしようとソフトでのスタートです。「開幕戦はオコンがスタート位置が違っていてペナルティーを食らったので気を付けないといけませんね」なんて話をしつつ決勝スタート。ペレスの蹴り出しが今一つでアロンソが完全に内側に並んでターン1に入り前に出ました。
 ところが、半周もしないうちにアロンソにスタート位置違反の嫌疑がかかり、すぐに5秒ペナルティーの判決。停止位置が左にズレていた、というあんまり利益も無い出来事での言ってしまえばしょうもないペナルティーでしたが、この件を伝えられたアロンソは怒るかと思ったら「了解」と冷静な反応。実は自分でも薄々気付いてた?4周目にペレスはそんなアロンソを抜いてリーダーに戻りました。それにしても遠く離れたフジテレビ放送席のフラグを回収するとはおそるべしアロンソ。



 抜かれたアロンソですが8周目あたりまでペレスのDRS圏内を維持して追走、3位のラッセルはこの間に既に5秒以上離れており、戦略を考慮しなければペナルティーを受けても順位を失わなくて済むところまで逃げることに成功しました。ストロールも1周目にサインツを抜いて4位で今日もアストン マーティンがゴキゲン。一方ハミルトンは上位勢で唯一のハード選択でグリップが低くフキゲン。

 13周目、ストロールを抜けないサインツに対してピットの指示が出ると、これを聞いたストロールが反応。サインツ陣営はストロールを釣り出しました。作戦はほぼミディアム→ハードの1ストップ一択なのでハードへの乗り換えですが、固いタイヤで先に入ると損でした。サインツはタイヤを使い切って2周後にピットに入り、ストロールをオーバーカット。
 ストロールにはさらに不幸が襲い掛かり、18周目に車に問題が発生し停車を指示されました。ターン13の外側に車を止めてSC導入となり、まだピットに入っていない人はピットの絶好の機会、入っていた人はちょっと損となります。

 ハードでスタートしたハミルトンは本来ならもっと引っ張るつもりでしたが、ここでタイヤを換えておくしかないのでミディアムへ。リスタート順位はペレス、アロンソ、ラッセル、フェルスタッペン、サインツ、ハミルトン、ルクレールとなります。フェルスタッペン、なかなか順位を上げられなかったものがいきなりの4位で優勝をかっさらう可能性が出てきました。
 一方、ルクレールはSC前に入って損した組の1人、ハミルトンに逆転されるのを阻止すべく、エンジニアのザビー マルコスから無線で指示が来ますが

マルコス「(この前に他の話があったと思われる)それと、セーフティー カー ライン1から飛ばしてや、ハミルトンが今ピットに入っとるからな」
ルクレール「ザビー、それ先に言えや(怒)」←既にハミルトンに前に出られた模様
マルコス「そやな」

 フェラーリ、まだまだ改革は途上のようです(っ ◠‿:;...,

 20周目にリスタート、ペレスはうまくリスタートでタイミングを外してアロンソを追い払いました。アロンソはラッセルへの防御に手を取られてすぐにペレスから1秒以上離されます。しかしペレスにとっての最大の敵はフェルスタッペンで、25周目にはもうアロンソを抜いて2位となり、ペレスまで僅か5.7秒差。ペレスは去年のこのレースでもSCのタイミングに泣かされて優勝を逃していますが、また同じ運命でしょうか。 

 「オーマイゴッド、ブレーキが壊れた」と言ってるアレクサンダー アルボンがピットに入らずもう1周していたり、ラッセルはまだアロンソが5秒加算を持ってると勘違いしていて、チームとの交信で誤解に気付きちょっとテンションが下がったり。各陣営なんとなく3月なのでまだ勘が取り戻せてないのかな、とかテキトーなことを想像しつつレースは進行、フェルスタッペンの追撃からペレスが必死に逃げています。残り20周で5秒差。

 一方アロンソ異世界おじさんは無線で「ピットに入ってタイヤを換えたらいくつ順位を失うんだ?」と質問し、エンジニアは「俺たちの心を読んでいるのか?まさに今それを話し合い始めたところだ」と返答した模様。おじさん、また魔法使いましたね?イキュラス スラドラーチ。

 ペレスとフェルスタッペンはお互いにほぼ同じタイムを出し合い、ペレスがターンをショートカットしたら5秒後にフェルスタッペンも全く同じラインでショートカットする謎のシンクロ。しかしフェルスタッペンはドライブシャフトに異変を感じるとしてチーム側に確認を始めました。エンジニア側からは「ブレーキ バランスがズレてるんだ」と返事がきますが、「そうじゃなくて俺はドライブシャフトの話をしてるの!」と反論。企業に問い合わせをすると、こっちの話を聞かずにテキトーな原因と解決策を提示されることってありますよねえ(謎)
 そんなサポートセンターあるあるをやりつつもフェルスタッペンは特にペースを落とさず、そうするとペレスも落とせず。ペレスはこのパターンで譲らされたことが多すぎてフェルスタッペンが追い付いてくることにかなり神経質と思われ、エンジニアのヒュー バードとのやり取りは

バード「目標タイムは32.6、+0.4秒」
ペレス「マックスも同じことやってんのか?」
バード「マックスの前の周が32.6」
ペレス「じゃあ何で俺に33.0で走れって言ってんの?」
バード「目標に+0.4ってことね、よくやってる。」
ペレス「意味も無く飛ばすことはしないけど・・・まあそっち次第」

 ペレスは32.2で走っていたので、バードはたぶん「目標タイムよりさっきの周は0.4秒速い」と伝えたかったと思うんですが、ペレスは必死過ぎて「32.6から0.4秒落として33.0で走れ」という意味に誤解したっぽい会話でした。まあずっと高速コーナーが右に左に続くコースを走りながら冷静に考えろと言う方が無理な話なんですが、超の上にもう1つ超が付く一流ってそういうことを平気でできるんですよね、アロンソとかw
 一方3位争いでは、ラッセルの誤解だと思われたアロンソのペナルティー問題が再燃した様子、どういうわけか「ひょっとしたらレース後に加算されるかもしれない」という話になり始め、ラッセルが5秒以内に踏みとどまろうと攻めます。しかしそれを聞いたアロンソ側も念のためペースを上げ5秒の境界を争う攻防に。でも、もし5秒ペナルティーを正しく消化しなかったのなら罰則は10秒になるはずで、これだとラッセルは余裕で5位のハミルトンとの差が大事。なんとこっちもギリギリ10秒前後の境界線でした。

 最後はフェルスタッペンがファステスト狙いに切り替えて温存走行に入ったのでチーム内でのタイム競争にはようやく終止符、ペレスが結果としてはフェルスタッペンに5.3秒の差を付けて通算5勝目を挙げました。フェルスタッペンは最後にファステストを記録して2位、レッド ブルは2戦連続でのワンツーで、これは2009年のイギリス・ドイツで達成して以来チーム史上2度目。ペレスが1位でフェルスタッペンが2位だったのは初めての出来事です。


 3位はギリギリで目標通り、ラッセルに5.1秒差を付けたアロンソが入り通算100回目の表彰台、だったんですが、レース後に表彰式まで終わったあたりでペナルティーに関する審議。なんと5秒ペナルティーをきちんと消化していなかったとしてレース結果に10秒加算。これで3位ラッセル、4位アロンソに変わってしまいました。ハミルトンとはこれまたギリギリで10.3秒差だったので、4位に1つ落ちるだけで済みました。
 違反の内容としては、ピットでの静止ペナルティーを行う際に作業をしてはいけないことになっています。この『作業』にどこまで含めるかという話で、クルーが車に手を触れたら作業と見做しますね、というのはみんな合意形成がとれていました。しかし今回、触れていたのはクルーが待ち構えていたジャッキでした。レース審査委員会側は『ジャッキも手と同じで、触れるのは作業に含まれるって話になってましたよね』と認識し、ジャッキが触れていたという情報がレースの終わりごろに来たので発表が遅くなった、としました。

 ところがこの結果にアストンマーティンがすぐさま反論。「手は触れたらあかんけど、ジャッキの話は聞いてへんぞ」と伝えるとともに、言った言わないの水掛け論だけではなく「過去にジャッキが触れてても合法になってた例がこんだけあるで」とすぐに証拠も提出。事態を覆す決定的な証拠が提示されたので改めて検証され、結局アロンソへのペナルティーは撤回されました。なんとも締まらない終わり方ですが、無事見た目通りの着順になったので良しとしましょう。私はフォーミュラE見てるからこんなの慣れてますよ、ハハハハ。

 ハミルトンはミディアムで30周以上走ってよくもたせたなと感心する5位だった一方、サインツがこのペースから少しずつ置いて行かれ、ルクレールもサインツの乱気流のせいか全然前に来れないまま存在感無くレースが終わり、フェラーリを応援している人からするとションボリな結果になったなと思いました。
 角田 祐毅はずっと抑え込んでいたケビン マグヌッセンにあと5周というところで抜かれて2戦連続11位、マグヌッセンの方はSC前にピットに入って9周古いタイヤでしたが、ペースとしては全然歯が立たなくて前にいるからなんとかなっている、という状態だったので今年のアルファタウリAT04は何かしら完全に失敗したような状態です。SC運が無ければもっと後ろだったかもしれませんし、よくなんとかあそこまで耐えたな、というのが正直なところでした。あと関係無いけど今年のハースとアルファタウリ、見分けが付きにくいですw

 とりあえずレッドブルが圧倒的に速いので、しばらくは表彰台の3番目ぐらい手にしたいフェラーリにアロンソがどれぐらいレースで嫌がらせをしてくるのかを楽しむ、というシーズンになりそうですね。次戦はオーストラリアです。前のレイアウトの方が良かったなあ・・・

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