NASCAR 前哨戦 ロサンゼルス

NASCAR Cup Series
Busch Light Clash at The Coliseum
Los Angeles Coliseum 0.25miles×150Laps=37.5miles
winner:Martin Truex Jr.(Joe Gibbs Racing/Bass Pro Shops Toyota Camry TRD)

 NASCAR Cup Series、例年通り開幕戦の前に選手権とは関係の無いレース・ブッシュ ライト クラッシュで幕を開けます。昨年に引き続き舞台はロサンゼルス メモリアル コロシアム、オリンピック競技場に特設の0.25マイルのトラックを設置したものすごくせせこましいレースです。


・イベント方式

 いつものように40台で走るわけにはいかないので、レースは複数段階に分けられます。まず2月4日土曜日に練習と1台ずつによる予選が行われます。予選の結果に基づいてドライバーは4つの組に振り分けられ、翌日にヒート レースが行われます。予選1位の人がヒートレース1組目のポール、2位の人が2組目のポール・・・と横方向に振り分ける形です。
 ヒートレースは25周で、上位5位以内に入るとクラッシュ本戦の出場権を獲得します。4組ありますので、これで20人の出場者が確定します。ヒートレースで6位以下だった人は、最後の出場枠を懸けたラスト チャンス クオリファイへと回ります。
 LCQも2組に分けられており、LCQ1はヒートレース1と3の落選組、LCQ2はヒートレース2と4の落選組です。レースは50周で、ここで上位3人に入れば本戦へ進出となります。そして、最後にもう1枠の救済があり、これはここまでの26人に入っていない中で2022年のドライバー選手権最上位の選手に与えられます。ですから、チャンピオンであるジョーイ ロガーノは絶対に本戦へは出場できます。
 そして2月5日夜にクラッシュ本戦が開催されます。27台で開催されるレースは150周。途中75周を完了したところで、一旦休憩が挟まります。なお、周回数は全てグリーン フラッグで走行しているものだけを数え、完了していない周回とコーション中の周回は数えません。例えば、8周目にリスタートして、8周目を終える前に事故が起きてコーションになると、リスタートまで周回数は進まず、しかも8周目を完了していないので次のリスタートはまた『8周目』からになります。これをエンドレスエイトと呼びます(嘘)


・予選

 予選最速は昨年もこのレースで頑張っていたジャスティン ヘイリーでした。2位にリチャード チルドレス レーシングへ移籍した初戦となるカイル ブッシュ、3位クリストファー ベル、4位にウイリアム バイロン。それぞれヒートレース1~4のポールとなります。


・ヒートレース

 1組目は2位スタートのエリック アルミローラがヘイリーをかわし1位で通過。2組目は元チャンピオンが5人も入る鬼部屋になり、途中オースティン シンドリックがケビン ハービックの内側に無理に入ったため、当然のようにその後に仕返しされてスピン。今年で引退するベテラン、相変わらずの船出です。最後はリッキー ステンハウス ジュニア、チェイス エリオット、ハービックの3人が5位をめぐって大人げない争いを繰り広げ、ハービックがしれっと5位に滑り込みました。勝ったのはマーティン トゥルーエックス ジュニアでした。
 3組目は早々に無風になってしまいますが、半周遅れの8位争いをしていたダニエル スアレスとブラッド ケゼロウスキーが何度もやりあった末に最後は当てられたケゼロウスキーがスピン。追いつけないからわざとやったんじゃねえの?と笑わずにはいられないコーションで残り6周から仕切り直しになり当然ここからは殴り合い状態。結果、ほぼもらい事故ベルが回されて後方に沈むことになりました。このヒートはデニー ハムリンが勝ちました。最後の4組目はヒートレースで唯一コーションが出ないレースとなり、バイロンがポールからそのまま一抜けしました。

・ラストチャンスクオリファイ

 マイケル マクダウルを先頭に始まったLCQ1、2位スタートのベルは外側が災いして早々に6位にまで落ちそうになりますが、ここから踏ん張って立て直し追い上げを開始。トッド ギリランドを抜いて3位に戻ると、ハリソン バートンには重圧をかけ続けて自滅を誘います。結局マクダウルは1周もリードを譲らずLCQ1を制しました。
 LCQ2はチェイスを先頭に始まり、開始早々に後方でコディー ウェアーが無茶苦茶な飛び込みをしてはしゃいでいましたが意外と事故無く進行。チェイス、タイ ギブス、A.J.アルメンディンガーのトップ3で淡々とレースが進みました。最後にギブスが少しチェイスに仕掛けたものの、危険を冒す場面ではなくそのままチェイスがLCQ2を制しました。これで26人の顔ぶれが決まり、最後の1人はクリス ブッシャーとなりました。

・本戦

 クラッシュ本戦はアルミローラとトゥルーエックスの1列目でスタート、アルミローラは10周で2位を1.5秒引き離す快走を見せますが、17周目にエリック ジョーンズがスピンして最初のコーションが発生したことが思わぬ災いを呼びました。このトラックはリスタートで外側にいると次々に車が押し寄せてくるので絶対に1位の人は内側を選択してリスタートしますが、アルミローラはなぜか外を選択。
 アルミローラによれば、まだペース カーの近くを走るように言われていたのに、いきなりチューズ コーンのすぐ近くでレーン選択の指示が出され、そのために選ぶ間もなくペースカーに付いて外を通ってしまったようです。当然これでは不利で、リスタートでハムリンに抜かれ、さらに内側に次々車が入ってきて6位まで転落してしまいました。この後24周目にライアン ブレイニーがスピンして2度目のコーションとなります。

 リスタート後はハムリンがリードしますが、43周目にアルメンディンガーのスピンでコーションとなると、次のリスタートでバッバ ウォーレスがオーナー様の車を軽く押しのけてリードを奪い取ります。抜かれた上に外側に出たハムリンは負の連鎖にハマって後退。不運にも順位を下げたアルミローラはこのランで周回遅れに^^;
 そのまま75周の強制コーションは目前でしたが、74周目にハムリンがロス チャステインに後ろから当てられてスピン。トラックがあまりに小さすぎて、入った人が悪いのか締めた人が悪いのかの判断が全然分からないですが、今年もこの2人の間でまた何か起きそうなのはよく分かりました(っ ◠‿◠ c)この後2周だけして75周完了でまたコーション、レースは小休止となります。

 後半戦も早々にコーション連発でなかなか話が進みませんが、そんな中をモディファイド ツアーで鍛えた腕が活かされたのか、16位スタートのライアン プリースがリスタートの度に猛烈に順位を上げて2位に急浮上。大多数のドライバーは圧倒的不利な外ラインを嫌って、少々速度を犠牲にしてでもできるだけ早く内側に入ろうとするので、それを逆手に取ってがら空きの外側からブレーキの甘いライバルを出し抜きました。
 9回目のリスタート、82周目にプリースはウォーレスを外からかわしてリーダーへ。そのまま複数回のリスタートを経てリードを守ります。


 113周の時点でコーションが14回、リスタート直後のコーションで重複した周回数があるとはいえ頻繁に止まっていたレースですが、この14回目のリスタートからは長いランとなってようやく落ち着いたレースになります。すると、ロング ランで速さを見せたのはトゥルーエックスでした。
 残りが30周を切ったところで単独でプリースの背後に迫って重圧をかけ、残り25周で本日初のリードを奪います。プリースはこの後電気系統に不具合が出たとのことで車速が鈍る場面があり順位を下げますが、ペースが上がらないことで後続の蓋になったため、その間にトゥルーエックスは独走態勢になります。
new leader,MTJ


 レースはそのまま残り10周になりますが、マクダウルの車がトラックの内側をノロノロと走行。結局自力でうまく退出できずに止まってしまい、コーションを呼んでしまいました。何か致命的に車が壊れたのかと思いきや、マクダウルはなんとガス欠。ヒートレース開始後は給油が認められておらず、LCQも走ったことで燃料を想定以上に使ってしまって足りなくなったそうです。チームメイトのギリランドもこの後同じ理由でリタイアします。

 残り10周、15回目のリスタートから2位争いが混戦になり、結局オースティン ディロンがウォーレスを吹っ飛ばしてコーション。ディロンはスピンから復帰する際に、わざとディロンが来るのを待って軽く報復行為に出ました。ウォーレスは危険行為で後方リスタートのペナルティーを受けましたが、元々後方だしもうレースも終わりなので実質無罰。去年のこともあるから抑えることも覚えようね^^;

 残り7周でリスタート。ここでカイルがディロンを抜いて2位に上がりますが、直後に立て続けにミスって結局抜き返されてしまい、ただRCR2台で無駄に時間を使っただけになってしまいました。結果的にトゥルーエックスを大きく助けてしまいます。

 じゃあ他の順位争いで誰かスピンするかといったらそんなことも起こらず、あれだけ荒れたレースは最後の最後にえらくあっさりとした結末でした。マーティン トゥルーエックス ジュニアが開催2度目のLAコロシアムを制しました、クラッシュでの優勝も初めてです。今回、NASCAR75周年記念とオリンピック会場ということで、レース後は表彰台でメダルを授与されました。

 2位にディロン、3位カイルとなりました。カイル、実は1月末に夫婦でメキシコを訪れた際、帰りにカンクン国際空港で逮捕されていたことが後に明らかになります。アメリカでは合法的に銃を所持できる許可を得ているとするカイルですが、メキシコ国内では勝手な銃の携帯は禁止されており、出国時に検査で引っかかったとのこと。これにより、3年半の禁固刑とドル換算で1100ドルの罰金刑が確定したとメキシコ当局側から発表されていますが、実際に刑をいつ執行するのか、といったことは不明なままひとまずカイルはアメリカに戻っています。
 日本のプロ野球でも、稀に外国人選手が銃刀法違反で警察に検挙される事例がありますが、自国のルールが世界で通用するわけではありませんからね。ただ今のところカイルがNASCAR側から何か処分されるということは無いようです。

 プリースはこのレース最多の43周をリードしたものの7位でした。それでも、一旦はシートを失い、控えを経てスチュワート-ハース レーシングで再びフル参戦の機会を得た彼にとって、まずは上々のアピールになったように思いました。リスタートは抜群でしたしね。
 チャステインは壁走りしなくても8位、吹っ飛ばされたウォーレスは22位、予選の段階から既に元気が無く、本戦では途中から明らかに車がおかしくてただ道を譲るだけになっていたチェイスは21位でした。

 昨年はGen7車両と開催地、双方の目新しさで注目されたLAコロシアムですが、正直2回目は映像で見る側とすると物足りなさが前に来ました。9台で走るヒートレースは見た目が寂しすぎるし、コーションが多すぎた本戦は中だるみを起こしているように感じました。
 遠くのトラックへ足を運ばなくてもスタジアムでレースと様々なショーを見れる、という点でライブ イベントとしてお客さんが楽しめているのなら少々テレビ映りが悪くてもしょうがないかなと思いますが、あまり続けていくと尻すぼみになりそうな雰囲気を感じました。 
 一方でこれとは真逆の話も出ているようで、オートクラブ スピードウェイが今年のレースを終えると改修工事に入って1~2年は開催できないため、その穴埋め候補の1つとして、コロシアムのレースを通常の選手権レースとして開催するという案もあるそうです。同じカリフォルニア州南部であり、改修後のオートクラブが0.5マイルのトラックになってどのみちショート オーバルなのでそうした考えが来ているようですが、やるとなると40台走れないといけないでしょうから0.25マイルでは無理だし、どうするんでしょうかね?


コメント

Cherry さんのコメント…
今回のコースもイレギュラーでデイトナもチーム力は出るもののマシンの決め具合はそこまで出ないですし早く第二戦が見たいですwもちろん今年もチェイスEをイチ推しにして、トッギリくんとプリースさん、帰ってきたAJを応援します。ギブスくんは何もしなくても戦績は大丈夫でしょうw
あと実は今週末がデイトナ500だと思ってたので死にそうです...禁断症状が出てしまう...大人しくラリースウェーデン見て落ち着きますw

SCfromLA さんの投稿…
>Cherryさん

 デイトナでのクラッシュなら本番1週間前でしたけど、LAは2週間前なんですよねw
カイル・プッシュ さんのコメント…
ボクはあんまり楽しくありませんでした。
コーションラップの方が多かったくらいじゃないですか?You Tube、早送りばっかりしてました。
SCfromLA さんの投稿…
>カイル・プッシュさん

 このレースは面白いかどうかがかなり割れる内容だったなあと思うので、そういうものだと思いますね~、デイトナを待ちましょう(っ ◠‿◠ c)