NASCAR Cup Series、開幕戦の予選まであと2週間となってきましたが、2023年の規則変更についての発表がありました。主な内容としては
・ロード コースでのステージ間コーション廃止
・"ヘイル メロン"の抑止
・"ヘイル メロン"の抑止
・ショート オーバルでの雨天用タイヤ導入
・脱輪に対するペナルティーの変更
といったあたりです。
・ロードコース戦のステージ制については、私はかなり前から「相性が悪いから廃止すべき」とここで書いてきました。レースに勝とうと思うとステージ終了前にピットに入るのが最適なケースが多く、そのために作戦がパターン化。ステージ残り2周で上位勢がみんなピットに入ってしまう、ということが常態化して極端なことを言えば『全然コース上でレースをしていない』風景が繰り広げられていたためです。どうやらこの認識は現地でも変わらなかったらしく、NASCARによればファンの意見や業界での議論に基づいて決定されたとのことです。
具体的には、ロードコース戦では従来通りステージ制に基づいた周回数の区切りが設定され、その周回時点でステージ ポイントが付与されますがコーションは出ません。周回だけ設定してポイント付与はするけどレースは止めないので、コーションは完全にレース展開次第となります。
規則はカップ シリーズ、エクスフィニティ― シリーズ、クラフツマン トラック シリーズに共通ですが、カップ戦と併催されず単独開催されるエクスフィニティ―のポートランドとロード アメリカ、トラックのミッド オハイオに関しては、従来通りのステージ制レースになります。
なお、NASCARからは各レースのステージ距離の発表も行われています。こちらは後日、過去記事の2023年の日程のページに追加しておきます。
・2022年のNASCAR、というかモータースポーツ界全体にとっての一大事となった、ロス チャステインのいわゆる壁走り。アメリカン フットボールでは、試合の最後に一発逆転を狙って長いパスを投げることを『ヘイル メアリー』と呼び、チャステインのスイカ男キャラと引っ掛けてあの壁走りには『ヘイル メロン』というあだ名が付きました。そんなヘイルメロン、今後は難しくなりそうです。
『NASCARとNASCAR イベント マネージメントにとって安全性は最優先事項である。したがって、イベントの安全性を危うくする、または競技者、関係者、観客、その他の人たちの安全に危険をもたらすとみなされる違反は、最大の深刻さをもって取り扱われる。安全違反はケースバイケースで処理される。』
を厳格に解釈することになります。ヘイルメロンは、例えばたまたまあの時は見事にチャステインの前方が空いていましたが、場合によっては前走車に早い段階でかなりの速度差で衝突した可能性や、破片を観客席にまき散らした可能性、どこかで出っ張りに引っかかってクラッシュし、他車を巻き込んだ多重事故を巻き起こした可能性がある、と判断されれば違反対象と考えられます。違反となった場合、タイム加算等の罰則が課せられるとのことです。
ケースバイケースということは、実際に違反であるかの具体的な線引きは行われていないわけですが、それゆえに安易に手出しはできないことになります。ただ、曖昧ゆえに場合によってはスーパー スピードウェイでの極端な進路変更やバンプ ドラフト等でも「安全違反だ」という抗議が出されるような状況が想定されます。かといって、これを無視すると壁走りだけ取り締まるのはご都合主義とも取られかねないですし、NASCAR側の慎重な対応、対外的な丁寧な説明能力、そして参加チームの阿吽の呼吸が求められそうです。
余談ですが、トラックハウス レーシングはチャステインのヘイルメロン車の保存を発表しており、マーティンズビルは次回のレースが開催されるまでの期間だけ、車がこすったあの壁をそのまま保管する予定であると発表しています。また、ミニカーを扱っているライオネル レーシングによれば、2022年に最も売れた同社のNASCAR商品は、チャステインのマーティンズビル仕様"ヘイルメロン"だったとのことです。
・NASCARでは現在ロードコースでのみ、雨天用のワイパーとレイン タイヤが用意されており雨でもレースを開催していますが、オーバルでは実施されていませんでした。基本的にオーバルは高速でタイヤへの負荷が高く、仮に高性能なレインタイヤを作っても、それは排水能力が高いことを意味するため水煙が酷くて結局レースにならないからです。
ただ、速度域の低いショートオーバルであれば可能なのではないか、とNASCARは2021年からグッドイヤーとともにタイヤ開発テストを開始しており、2023年に実戦投入されることになりました。対象となるのは1.1マイル以下でバンク角の低いトラックとなり、カップシリーズで対象となるのは
マーティンズビル スピードウェイ、ニューハンプシャー モーター スピードウェイ、フェニックス レースウェイ、リッチモンド レースウェイと、非選手権が開催されるロサンゼルス メモリアル コロシアム、ノース ウィルクスボロ スピードウェイの6箇所。
これに加えて、トラックシリーズのみが開催されるミルウォーキー マイル、ルーカス オイル インディアナポリス レースウェイ パークが対象となります。1マイル以下のトラックでも、バンク角が高くて高速な上にコンクリート舗装であるドーバーとブリストルは対象外ですね。
・ピット作業でナットがきちんと装着されないことで発生する脱輪。カップシリーズが5穴から真ん中1本のシングル ナットになったことで逆に発生件数が異様に増えてしまいましたが、罰則の内容が変更されることになりました。
従来は脱輪させるとクルー チーフと2人のピット作業クルーに対して4戦の出場停止という罰則が課されましたが、新たな規則ではピット ロード内の脱輪に対してはパススルーのペナルティーか、コーション中なら隊列最後尾への降格ペナルティーが課せられます。もし脱輪がトラック上だった場合は、より危険なのでペナルティーは『2周ペナルティー』とかなりの重罰となり、さらに2名の作業クルーに2戦の出場停止が課せられます。
従来はどちらかと言えば、脱輪はどうせまたピットに戻ってこないといけないのでこれだけで大きく遅れており、競技上のペナルティーをさらに課すことにあまり意味が無いと考えていたのかな、と思いますが、規則の変更で脱輪の損+締め直す損+ペナルティー、となるのでオーバルなら周回遅れは免れないと思われます。
・他にも変更された規則がいくつかあり、車両修復を制限する規則・通称ダメージ ビークル ポリシーは制限時間7分に設定されました。元々この規則が始まった時には5分だったものが6分になり、2022年の終盤には10分に変更されたものが、再び変更されたことになります。たぶんこれは状況を見ながらまた見直しもあるでしょうね。
・また、車両がピット ボックスに入る際に車がはみ出すなどして他所のピットに停車してしまった場合、従来はボックス外で作業をするとペナルティーでしたが、新規則でははみ出して他陣営のクルーの邪魔になった場合にもペナルティー対象とされることになりました。
・プレイオフの出場資格に関して『ポイントで選手権30位以内(エクスフィニティ―とトラックは20位以内)』という要件が削除されました。フル参戦義務だけでじゅうぶんだと考えられたんでしょうかね。
・リスタートの際に各ドライバーが内側か外側か自由に選ぶ通称・チューズ ルール。新たにスーパー スピードウェイとダートも実施対象に追加されました。これにより、チューズが行われないのはロードコースのみとなります。
また、NASCARは試験的な試みとして開幕からカップシリーズの第5戦となるアトランタまでのレースに限って、従来よりリスタート ゾーンを50m拡大することも決定。拡大によってリスタートの展開がどうなるのかを検証し、その後の運用を見極めるとしています。
では、その他に前回の記事以降に出た話題から気になったものをまとめて紹介します。
・ルマン参戦ドライバー決定
NASCARは1月28日、ル マン24時間レースのガレージ56枠で参戦するシボレー カマロ ZL1のドライバーを発表しました。ジミー ジョンソン、マイク ロッケンフェラー、そしてなんと、元F1世界王者・ジェンソン バトンが起用されることになりました。
カップシリーズ通算83勝を挙げているとはいえ、ここ数年はNASCARを離れていて戻って来たばかりのジョンソンと、2009年の世界王者とはいえNASCARとは縁が無いバトン、そしてルマンに10回出場経験があるものの、これまたあまりNASCARとは縁が無いロッケンフェラーという、すごいようなどうリアクションしたらいいか分からないような顔ぶれになりましたw
バトンはNASCARのストリート/ロードコースのレースに興味を示しており、具体的な話が決まっているわけではないようですが、ジョンソンは自身もスポットで乗ることにしているレガシー モーター クラブのNo.84に乗せることについてまんざらでもない反応を見せています。
・トヨタは台数増を検討
一方、NASCARが相談もなくシボレーと組んでルマンに参戦する話を進めたのでちょっと不公平感を口にしていたトヨタ陣営。TRDの社長・デイビッド ウィルソンは、現在2チーム/6台がフル参戦している状況から2024年には9~10台へと供給を増やしたい意向があるとメディアに対して語りました。どのチームと組むのかは気になるところです。
・ブリスコー、複数年契約を締結
フル参戦2年目ながら、第4戦フェニックスで驚きの初勝利を挙げると、プレイオフでも粘り強い戦いでドライバー選手権8位となったスチュワート-ハース レーシングのチェイス ブリスコー。チームは1月26日、ブリスコーと複数年契約を結んだことを発表しました。大ベテランのケビン ハービックが今季限りで引退、エリック アルミローラも来季で引退すると思われることを考えると、ブリスコーがSHRのエース的立場になっていきそうです。ちょっと荷が重い気はしますが^^;
・ハーブスト、RWRからデイトナ500参戦
そのSHRから2023年のエクスフィニティ―にフル参戦する23歳のライリー ハーブストですが、リック ウェアー レーシングのNo.15からデイトナ500にスポット参戦することが発表されました。この車はチャーターを持っているので、予選落ちすることなく決勝に出場することが可能です。
一方、参戦の可能性が取りざたされていた4度のインディアナポリス500勝者・エリオ カストロネベスは、残念ながらデイトナ500に参戦しないことを本人が明かしました。
・インディアナポリス、再びオーバル開催も?
インディー500といえば、インディアナポリス モーター スピードウェイの社長・ダグ ボールズがラジオ番組で
「ロードコースに移行したとき、オーバルに戻るつもりはないと正式に言ったことはなかったと思います。」「オーバルでの勝利は特別です。 ある時点でオーバルに戻りたいと思っています。 問題はいつそれを行うか、そして永久にオーバルに戻るか、それとも何年かはオーバル、何年かはロードコースのローテーションを開始するか、それとも10 年ごとに行うか、などです。」
と、私見として現在ロードコースで開催されているインディアナポリスのレースをオーバルに戻す可能性を示唆しました。オーバルの復活や交代制は私もここでたぶん書いたと思いますが、良い案だと思いますね。
今回は以上です!
コメント
ルール改正、ロードコースのコーションなしはいいと思います。元々の狙いであったはずの「3回のフィニッシュ」が実現されそうです。
メロンは残念ですが、仕方ないのかな、、
ヘイルメロンは1回だから盛り上がったけど、繰り返されたら興ざめしかねないですし、幻のスイカだからこそ希少価値があった、ということでどうでしょうw
若いっていいですねえ、若くてもそんなことしてる人は他に聞いたことないですけどw 私は今年もYouTubeで見れる前提で考えているので、見れなかった場合どうするかのプランBも考えないとなあ、と思いつつ今年も調べないまま開幕目前になりました^^;
IMSオーバル回帰も大歓迎ですがそれでロードコースが減らなければ意味が無いですね(オーバル原理主義者)
マジか!と思って調べたら去年の11月末に海外向けトラックパス終了のお知らせが出てたみたいですね。海外向け放映権のページが置いてあるものの、1月30日時点ではタイ、オーストラリア、シンガポール等のテレビ局の名前はあるものの日本の放送局の名前はもちろん無し・・・Cherryさんの4時起きも強制終了かも^^;
NASCARを、しかもNEXT Gen初年度に広めたのです。(超ポジティブ)
チームは違えど、カマロがLeMansに挑むタイミングで残した功績はデカイです。
トラックハウスもベースはガナッシとは言え新チームですから名前売るには充分すぎる結果です。
ライコネンの時だけ注目!にならなくてホント良かった♩
今シーズンはどんな奇策が生まれるかワクワクです。
今年も日本一スイカ男を愛する男として活動しますのでよろしくどうぞ。
これだけ運営が目を光らされてるのにまだそれを超える奇策を出して来たらもやは神の領域ですねw